真・女神転生デビルサマナー ~時と世界と魔法を超えて~   作:ナベリウス

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皆さん大変お待たせしました。
メガテン4をやっていたら気付いた時には前回の投稿から1ヶ月経っていました……

今回から徐々にリリカルなのは第1部と内容がリンクしていきます。




2013 7/19 13:26 誤字,脱字を修正


第8話 鴉の嘴

「私は表向きこそ、この翠屋のマスターだが裏では那緒実さんと同じヤタガラスに所属している」

 

 

 

 

 

 

「なっ……」

 

 

 何となく予想はしていたけれど、士郎さんの全身から放たれるオーラに気圧されて何も言えなくなってしまう。

 

 

「私がここにいるのは、今月に入ってから突然海鳴市全域で不可解な現象が発生しているから、その調査の打ち合わせのためだったのよ」

 

「今回の現象は人の力では成し得ない何かの強大な力が加わっているとしか思えない。そこで那緒実さんが解決のために駆り出されたという訳なんだ。それを引き起こしているのが悪魔であろうがなかろうが、人々にとって危険な事には変わりないからね」

 

 

 確かにここ最近、ニュースでも前日は何とも無かった道路が次の日には突然陥没していたり、学校の近くの神社の木々がなぎ倒されていたりといったニュースは眼にしていた。俺自身も内心、"これは只事じゃないな"となんとなく思っていたけれど、まさかヤタガラスが動く様なヤバい事態だったなんて思いもしてなかった。

 

 

「ほな、士郎さんもヤタガラスのメンバーっちゅうことは那緒実さんと同じ悪魔召喚師なん?」

 

「いや、私は諜報などといった隠密行動で悪魔召喚師のバックアップを行い、必要な場合は戦闘も行う要員の一人だったんだ」

 

「"だった"?」

 

「士郎君は数年前に悪魔との戦いで重傷を負って第一線から退いたのよ。昔はもう忍者みたいに影分身や水遁の術,土遁の術もこなせる超人だったんだから♪」

 

「嘘はいけませんよ嘘は……と、まあ第一線から退く前から桃子は私がヤタガラスの一員だった事は知っていたから、翠屋をヤタガラスの情報交換の場としても利用させて貰っているんだ。正直済まないとは思っているけれど、外からごく自然に見える形で集まるにはこうするしか無かった」

 

「ヤタガラスってホンマに凄いんやなあ……みんなのために命掛けて戦っとるやなんて正義のヒーローやなぁ」

 

「そこ関心する所か!?」

 

 

 感心するはやてにツッコミを入れつつ、頭の中で色々と考えを巡らせる。何故4月に入ってからその"現象"が起こっているのか、そして何故さっき士郎さんが"美由希"と呼んだ女性に"なのは"という子をこっちに来させない様に言ったのか……気になる点が幾つも出て来る。

 

 

「母さん、士郎さん。幾つか質問が有るんだけど良い?」

 

「良いけど答えられる範囲内でしか答えられないわよ?」

 

「じゃあ一つ目。母さんが調査しているっていう"現象"って、はやての闇の書が原因なのか?」

 

「あ……」

 

 

 はやては一瞬困惑の表情を浮かべる。すると母さんと士郎さんはお互いに顔を合わせた後俺達に再度向かって、

 

 

「YESかNOかで答えれば、間違いなくNOね」

 

「本当ですか!?」

「ホンマなん!?」

 

「根拠としては、闇の書を狙っているのは情報提供者曰く"人間で構成された強大な治安維持力を持つ組織"との事だから、テロリズムの様な無差別攻撃なんて回りくどい事はしないで最初からはやてちゃんを狙ってくるはずよ」

 

「組織の目的はあくまで闇の書とはやてちゃんの身柄。警察や軍のような構成の組織ならば、前もって何らかの通告なりなんなりしてきてもおかしくはないな」

 

「ほっ……良かったわ~」

 

 

 はやてはそれを聴いて胸を撫で下ろす。俺も気が気でなかったからひとまずは安心した。

 

 

「私達は今回の"現象"を暗黒召喚師(ダークサマナー)が使役する悪魔が起こしたものだと考えてる。暗黒召喚師ってのは簡単に言うと悪の召喚師ってところね。人々を脅かす危険な存在よ」

 

「晃祐君、はやてちゃん。もしその現場に遭遇したら迷わずに逃げるんだ。そして安全を確保したら私か那緒実さんに連絡してくれ」

 

「……解りました」

「了解したで~」

 

 

 まず1つは解決したな。それじゃあ次だ。

 

 

「じゃあ次の質問。これは士郎さんへなんですけど、士郎さんと桃子さんの他にもう一人女性の店員さんがいましたよね?それとなのはちゃん……ですっけ?おそらく娘さんだと思うんですけど、店員さんには聴かれても良くて娘さんにはマズいって事はあの人もヤタガラスの一員なんですか?」

 

 

 士郎さんは俺の質問を聴くと、俺達が翠屋に来た時の様な温和な表情に戻り、

 

 

「ああ、さっき店内に出ていたのは高校に通っている長女の美由希なんだ。それで君の言っているなのはが次女になる。それと今はいないが大学生の恭也という息子もいる」

 

「じゃあなのはちゃんは上の2人と大分歳が離れてるんですね……って母さんの後輩なのに一番上が俺より5つも上とか!!」

 

「全然親子に見えへんやん!!」

 

「うふふふふ……やっぱり2人ともビックリするわよねぇ~」

 

「アハハ……あまり詳しいことは"家庭の事情"という事で話せないんだが、恭也と美由希にはそれぞれ高校生になった時に正直に打ち明けたんだ。それに対してなのははまだ小学3年生になったばかりだけど頑固者で視野も狭いし、あの子は何かと良い子振る所があってね。それが上の2人同様高校生になるまでに改善されれば打ち明けるけど、万が一今のまま成長したら……と思うと、ね」

 

「なんか話だけ聴いとると、なのはちゃんってどっかの誰かさんにソックリやなぁ~え?兄ちゃん!?」

 

「おい!頑固なのは否定しないけど視野も狭くないし、なにより良い子振っちゃいないだろ!!俺はどっちかっつーと"放課後に窓ガラス壊して回る"とか、"盗んだバイクで走り出す"タイプだぜ!?」

 

「晃祐っ!あなたまさか……そんな子に育てた覚えなんて無いのに……グスッ」

 

「母さん!?嘘!嘘だって!!例えだよ例え、メタファーってヤツ!目ぇ潤ませてこっち見んなって!!」

 

「いや~はやてちゃんの家は何時も賑やかそうで良いねぇ」

 

「まぁウチも色々あるんやけど基本こんなもんやねぇ~」

 

 

 俺が母さんをなだめると最後の質問をする。

 

 

「じゃあ最後の質問。なんでヤタガラスは表立った行動をしないんだろう。今の所ニュースや新聞を見る限りじゃ"現象"で怪我人は出ていないみたいだけれど、いずれは出てもおかしくないし、悪魔が関係しているなら警察や自衛隊じゃ相手にならないでしょ?」

 

「そうや、悪魔の存在は隠しとっても、どどーん!と出れば"怪獣退治の専門家"みたいでカッコええやん?」

 

「それは無理ね」

「それは無理だね」

 

 

 母さんと士郎さんは声を揃えて否定する。

 

 

「ヤタガラスは奈良時代や平安時代の陰陽師の組織、陰陽寮が派生して出来たものだ。陰陽師は表向き天文や時,暦,占いといったものを司る役職だったが、裏では式神や呪術を駆使して魑魅魍魎――即ち悪魔と死闘を繰り広げていたんだ。その後時代が移っていって陰陽寮は明治時代の始まりの頃に解体され、陰陽師自体公式的には姿を消してしまったというのもあって、今や千年以上秘匿されていた事を表向きには出来ないんだ」

 

「それに陰陽師ブームってのがあったでしょ?アレのせいでかの有名な安倍晴明の陰陽道の流れを汲む神社に一時期"陰陽道を学びたい"って言う人がけしかけたから、こっちも動きを抑えなくちゃいけなくなって大変だったんだから」

 

「ううむ……やっぱり公には出来ないのかぁ」

 

「そんなぁ~絶対ええと思うんやけどなぁ」

 

「陰陽師にしろ悪魔召喚師にしろ非科学的なモノだから仕方ないのよ」

 

「現代では"心霊現象は全部プラズマだ!"って言い張る大学教授もいるくらいだから仕方の無い事だよ」

 

 

 現代科学は人々に豊かな暮らしを与えると同時に、目に見えない存在を信じる心を失わせたんじゃないかと思ってしまった。今時、実は悪魔がいてそいつらを退治する連中がいると公表しても頭がイカれてるとしか思われないし、俺も悪魔をこの目で見なかったら絶対に信じられなかったと思う。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

「もう質問は無いかい?」

 

「すいませんありがとうございました」

 

 

 質問が終わるのを見計らって桃子さんが店内に戻ってくると、皆で世間話で盛り上がった。すると携帯が鳴りだしたんで取り出してみると匠真から電話だった。俺は邪魔にならないように店の端に移って電話に出る。

 

 

「おう、どうした?」

 

『兄さん!皆が帰ってこないからって父さんが爆発寸前だよ!!』

 

「チッ……あのクソ親父……わーったよ、翠屋で母さんに会ったから買い物して帰るって言っといて!」

 

『わ、解った!』

 

 

 電話を切ると皆の元に戻り、母さんとはやてに帰る用意をするように告げた。

 

 

「はぁ~全く、あの人は自分で晩御飯ぐらい作れるでしょうに」

 

「いっつも"俺は疲れてるんだ!"やもんねぇ」

 

「晃祐君、実は崇さんとも知り合いなんだけど相変わらず頭が硬いのかい?」

 

「……ダイヤモンド並みですよ」

 

「そうか……もし崇さんの事で不満があったら私達が聴いてあげよう。力になってあげられる事もあるかもしれない」

 

「……すんません」

 

 

 士郎さんと桃子さんに見送られ俺達3人は翠屋を出て、途中商店街で買い物をして帰宅の途についた。母さんはクソ親父の機嫌直しに晩飯をすき焼きにするといい、はやてもそれを聴いて大喜びしていた。夕焼けに染まる街と、夕焼けに染まる母さんとはやての顔を見てこんな平穏な日々が何時までも続いてくれたら良いと願わざるを得ない。でも、この夕焼けの街が数分後には夜の闇に包まれる様に、それが延々と続く訳がないとも思ってしまう事に嫌気が差す自分もいた。

 

 

 そしてそれは数日後、現実のものとなってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回に続く




士郎さんがヤタガラスのメンバーという急展開。
武術の達人で元SPという仕事を発展させると自然にこうなりました。
ナオミにしろ士郎さんにしろ、ヤタガラスで人間の負の側面を見続けてきた結果凄まじい洞察力が身に付いていると思っています。だからなのはの性格も手に取るように解るのではないかと思う訳です。
しかしなのはは幼い頃からある部分で人に耳を貸さない頑固者、言えば尚更意固地になるのではないかと思って言えないでいる……という優しい所を出して行きたいです(相原家の父親である崇との対比という意味も込めて)



それでは悪魔に身体を乗っ取られぬよう、お気をつけて……

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