牙狼ライブの執筆に無茶になっており、こちらの執筆がおざなりになっていました。
ですが、どれだけ時間がかかっても、この話は完結させたいと思っていたので頑張って書き進めました。
今回は、前回出会った梓のそっくりさんであるアズサと共に、ザジ討伐へと向かっていきます。
そんな中、統夜たちを待ち受けているものとは?
それでは、EPISODE4をどうぞ!
統夜が自分の世界から流牙たちのいる世界に飛ばされたのは、黄金騎士を絶滅させようとしている魔獣、ザジの仕業であることが判明した。
ザジの封印が解けぬよう祭壇を守っていた魔戒法師のアズサは、統夜たちに協力を要請するのだが、その容姿は、統夜の恋人でもある中野梓と瓜二つであった。
そんなアズサに統夜は驚くのだが、すぐに世界が違うのだから、別人であると気付くのである。
しかし、別人だとわかっていても統夜はザジを倒し、アズサを守ろうと心に誓うのであった。
統夜たちは、ラインシティを後にすると、ザジが封印されている祭壇へと向かっていた。
「……なぁ、アズサ。ラインシティを離れてそれなりに経つけど、祭壇は遠いのか?」
「あぁ、あと1時間は歩けば着くとは思うが」
「ふーん、確かに遠いは遠いけど、思ったほど遠くはないよな」
「そうかもしれないな」
統夜たちはこのように会話をしながら祭壇へと向かっていた。
「……なぁ、統夜」
「ん?どうした、アズサ?」
「……お前の世界にいる私は……どんな奴なんだ?」
「あっ!それは俺も気になるな!」
「そうね。だって、統夜の彼女なんでしょ?」
アズサは純粋に気になってこの質問をしたのだが、統夜の色恋事情が聞けると判断した流牙と莉杏は、ニヤニヤしながらその話に乗っかっていた。
「ちょっ!?流牙と莉杏まで!!」
アズサはともかくとして、流牙と莉杏は統夜のことをからかってることは統夜も気付いており、統夜は顔を真っ赤にしていた。
「クスッ、可愛い反応するじゃない。統夜もやっぱり年相応の坊やよね♪」
「う、うるさいな!」
流牙よりも莉杏の方が統夜をからかっており、統夜は顔を赤くしたまま、プイッとそっぽを向いていた。
「す、すまない。話をするのが嫌ならこの話はやめるのだが……」
「クスッ、大丈夫よ、アズサ。統夜はただ、恥ずかしくて照れてるだけなんだから♪」
「……そうなのか?」
『あぁ、ここまで照れてる統夜を見るのも久しぶりだぜ』
統夜と長いこと一緒にいたイルバがこう言うのだから、どうやら間違いないようだ。
「……と、とりあえず!話せばいいんだろ?話せば!!」
これ以上からかわれるのが耐えられないからか、統夜は早々に梓のことを語り始めることにした。
「……俺の世界にいる梓は、俺の通っていた学校の後輩で、同じ軽音部だったんだ」
「学校?お前は魔戒騎士なのに学校なんか通っていたのか?」
「まぁな。俺の所属していた番犬所の神官が薦めてくれてな。そのおかけで、俺は守りし者とはなんなのかを知る事が出来たんだよ」
「……俺は統夜の戦いぶりを見る限り、その言葉に偽りはないと思うけどな」
流牙は、統夜と知り合って間もないのだが、統夜が心身共に一流の魔戒騎士であることを肌で感じる事が出来た。
「なるほどな……。守るべきものがあるから、統夜は強いということなのか」
「そうは言っても俺はまだまだだけどな」
統夜は卒業式の翌日に、自分の世界の黄金騎士である冴島鋼牙と互角の戦いを繰り広げたのだが、それでも統夜は自分が未熟だと思っていた。
「……なるほど、お前の世界の私のことはまだわからないが、彼女はお前のそんなひたむきなところに惚れたのかもしれないな」
アズサもまた、統夜と知り合ったばかりなのだが、統夜の世界の梓が統夜に惚れたのも何となくわかる気がしていた。
「それでな、俺の世界にいる梓は、真面目で、一生懸命で……。それに、周りの気配りも出来る優しい子だよ」
統夜は、自分の世界の梓がどんな人間なのか、簡単に説明していた。
「……そうか。私とは全然違うのだろうな……」
「そんなことはないけどな。そりゃ、喋り方や俺の呼び方は違うからそこは戸惑ってるけど、俺の知ってる梓とお前の根本は似てると思うよ」
「……!?か、からかうな!////」
統夜のストレートな言葉が恥ずかしかったからか、アズサは顔を真っ赤にしていた。
「……それにしても、統夜の世界にいる梓は統夜に愛されているのね。彼女のことを語るあなたはとても優しい眼をしていたもの」
「統夜、早く元の世界に帰って、彼女と会えるといいな」
「みんなには悪いけど、そのつもりだよ。だからこそ、俺はザジを倒す!……みんなと一緒にな」
統夜としても早く元の世界に戻りたいと思っていたが、その前にやるべきことがあるため、魔戒騎士としての使命を果たそうと考えていた。
それを聞いた流牙、莉杏、アズサの3人は、無言で頷いていた。
こうして、統夜たちは話をしながらザジの眠る祭壇へと向かっていた。
そしておよそ1時間ほど歩き、祭壇の近くまで来たその時であった。
『……統夜!かなりの邪気を感じるぜ。どうやら、奴さんは近いようだ』
イルバがザジの気配と思われる邪気を探知したため、それを統夜に伝えていた。
その直後、ザルバが何かを伝えようとしていることを感じた流牙は、ザルバのバイザーを上げて、ザルバが喋れるようにしていた。
『それだけじゃない。ホラーの気配も感じるぜ。お前たち、油断するなよ!』
「……なるほど、まだ昼で、ホラーの出てくる時間じゃないけど、この邪気の濃さが、ホラーを呼び寄せてるんだな」
通常のホラーは、夜に陰我のあるゲートから現れるのだが、ザジの黄金騎士に対する憎悪は、相当な邪気を放っており、そこからホラーが出現させたようであった。
「っ!?なんて数のホラーだよ!」
「恐らくはザジが復活したんだ。奴の陰我がこれだけのホラーを引き寄せたのだろう」
統夜は多くのホラーが現れたことに驚いており、アズサはこれだけのホラーが現れた要因を冷静に分析していた。
「とりあえず、こいつらを蹴ちらさないと先には進めないわ」
「そうだな……。まずはこいつらを片付けるぞ!」
莉杏と流牙がこう促すと、流牙と統夜は魔戒剣を構え、莉杏とアズサは魔導筆を構えていた。
それだけではなく、莉杏の手にはアキトのとは形の異なる魔戒銃らしきものが握られていた。
「!?それは……魔戒銃か!?」
「あら、これを知っているの?」
「俺の仲間の魔戒法師がそれとは違う形だが、魔戒銃を使っていたんだよ」
「そう……。1度その魔戒法師に会ってみたいわね」
同じ魔戒銃を使う者がどんな人間なのか、莉杏は興味津々だった。
「……来るぞ!!」
流牙がこのように警告をすると、多くの素体ホラーが統夜たちに向かってきていた。
「「……はぁっ!!」」
統夜と流牙は同時に魔戒剣を一閃し、素体ホラーを真っ二つに斬り裂いていた。
そして、アズサは法術を放って素体ホラーを倒し、莉杏は魔戒銃と魔導筆を使い分けてホラーを倒していた。
「流牙!なかなかやるな!」
「統夜……お前もな!」
統夜と流牙は、素体ホラーを倒しながら、互いの力を認め合っていた。
4人とも魔戒騎士や魔戒法師としてはかなりの力を持っているようであり、次々と素体ホラーが倒されていった。
かなりの数だった素体ホラーは4人の奮戦により程なく全滅したのだが、再びどこからか多くの素体ホラーが出現し、統夜たちに襲いかかってきた。
「!?また来やがった!」
「しかもさっきより数が多いわ!」
統夜たちは素体ホラーを迎撃していたのだが、先ほどよりも数が多く、少しだけ倒すのに手こずっていた。
その原因は……。
「くそっ!倒しても倒してもキリがないぞ!」
素体ホラーを倒しても、またどこからか素体ホラーが現れるため、数が減らないからである。
「こうなったら鎧を召還して一気に決着をつけるか?」
統夜は鎧を召還してホラーを倒すことを考えていた。
しかし……。
「ダメよ!こんなところで統夜や流牙の体力を消耗させる訳にはいかないわ」
「莉杏の言う通りだ!ザジは並のホラーとは比べものにならない。こんなところで全力を出して倒せる相手じゃないぞ!」
莉杏とアズサが、統夜の意見に反対していた。
それは、これから戦うであろうザジに備えてのことだった。
「それじゃあどうすりゃいいんだよ!?このままじゃジリ貧だぞ!」
「確かにそこは統夜の意見に賛成だよ」
統夜だけではなく、流牙もまた、この状況を良しとしていなかった。
「……統夜!流牙!ザジの祭壇はこの先だ!お前たちは先に行け!ここは私と莉杏で引き受ける!」
このホラーたちを越えればザジがいると思われる祭壇はすぐそこなため、アズサは統夜と流牙を先に行かせようとしていた。
「そうね。統夜!流牙!あなたたちは先に行きなさい!ここは私たちに任せて!」
「っ!だ、だけど!」
「私たちのことなら心配しないで。私とアズサの実力は知ってるハズでしょ?」
「心配するな。私たちは死ぬつもりはない。速やかにこいつらを蹴散らしてすぐに合流するさ」
「そういうこと。統夜!流牙!早く行って!」
「……統夜。行くぞ!」
「そうだな……。2人とも、死ぬなよ!」
統夜と流牙は素体ホラーの相手を莉杏とアズサに任せることにして、ザジがいると思われる祭壇へと向かっていった。
ホラーたちはそんな2人を逃さないために襲いかかろうとするが、2人の行く手を遮るホラーは、優先的に莉杏とアズサによって倒されていった。
「あんたたちの相手は私たちよ!」
「2人の邪魔はさせない!」
こうして、莉杏とアズサの魔戒法師タッグが、素体ホラーの軍団に戦いを挑んだ。
アズサの放つ法術は強力であり、その法術により次々とホラーを蹴散らしていった。
そして、莉杏の法術はアズサの法術には劣るものの、魔戒銃と組み合わせることにより、アズサ以上の火力を引き出すことが出来ていた。
莉杏とアズサ。この2人は、魔戒法師の中ではトップクラスの実力の持ち主であるということが明らかになった。
これだけの攻撃を繰り出しても、未だに素体ホラーの数は減らなかった。
「アズサ。一気に蹴散らすわよ!」
「無論だ!早くこいつらを倒して、統夜たちと合流しないと!」
再び迫り来る素体ホラーを見据えた莉杏とアズサは、魔戒銃や魔導筆など、自分の武器を構えると、さらに攻撃が激しくなり、素体ホラーたちが蹴散らされていった。
「……こいつはとっておきよ!!」
莉杏は、魔導筆を構えると、とある術を素体ホラーの群れに放ち、その術によって放たれた光の塊に向けて、魔戒銃を発砲した。
魔戒銃の弾が着弾すると、光の塊から大きな爆発が起こり、素体ホラーたちは次々と消滅していった。
「……やるな、莉杏。それでは、私もとっておきを見せるとしよう!」
莉杏の本気に焚きつけられる形となったアズサは、精神を集中させると、魔導筆で魔法陣を描いていた。
そしてアズサは魔導筆をその魔法陣に突きつけた。
すると、その魔法陣から鳳凰のような鳥が出現すると、その鳳凰のような鳥は、素体ホラーを焼き払っていった。
「へぇ……」
莉杏もまた、アズサの本気を肌で感じ取っており、感心していた。
アズサはザジが封印されている祭壇を守る魔戒法師であるため、それだけに留めておくのは勿体無いと思ったからである。
そんな2人の活躍もあり、素体ホラーたちは全滅し、今度は増援もないようであった。
「……ふぅ。ずいぶんと時間がかかってしまったわね」
「そうだな……。統夜たちのもとへと急ごう!」
素体ホラーたちを蹴散らした莉杏とアズサは、先にザジのもとへと向かっている統夜と流牙の2人と合流するためにザジが封印されていた祭壇へと向かっていった。
※※※
そしてその頃、統夜と流牙はザジの封印されていた祭壇に到着していた。
「……イルバ。ここが例の祭壇だよな?」
『あぁ。とてつもなく大きな邪気を感じるぜ。統夜、気を付けろよ』
『流牙。お前も油断するな。恐らくザジは手強いぞ!』
「大丈夫だ。統夜と2人なら負けはしないさ!」
流牙は、共に戦っている統夜の力を信じているため、誰が相手だろうと負ける気はしなかった。
流牙がそのような態度をとっていると……。
『クックックック……』
不気味な笑い声が祭壇から響き渡ると、2人の前に、ホラーのような外見をした魔獣が姿を現していた。
「……貴様が噂のザジって訳か!」
『その通りだ!黄金騎士の系譜を受け継ぎし者よ……』
ザジは不敵な笑みを浮かべながら、流牙のことを睨みつけていた。
『そして貴様をこの世界に呼んだのは最大の誤算だったな……。黄金騎士ではなく、白銀騎士の系譜を受け継ぎし者よ!』
続けてザジは、統夜のことを睨みつけていた。
「やっぱり貴様が俺をこの世界に呼んだんだな……」
『その通りだ!俺は2つの世界の黄金騎士をまとめて始末するつもりだった。貴様をこの世界に呼んでしまったのは、貴様から黄金騎士と似たオーラを感じたからだ!』
どうやらザジは、統夜を黄金騎士と勘違いをして、この世界に呼び寄せてしまったようであった。
『その貴様がまさか、白銀騎士の系譜を受け継ぎし者とはな。白銀騎士も、俺にとっては忌々しき系譜。この世界には存在しないが、まさか、別の世界にはいたとはな……』
ザジの説明通り、流牙の世界には統夜と同じ白銀騎士奏狼の称号は存在していない。
正確に言うと、存在はしていたのだが、その系譜はかなり昔に途絶えてしまったのだ。
この世界には奏狼の称号はないと知り、統夜も流牙も驚いていた。
『だが……。黄金騎士の系譜と共に、白銀騎士の系譜も今ここで消し去ってやる!』
「ふざけるな!俺はお前を倒す!生きて元の世界に帰らなきゃいけないからな!」
統夜は速やかにザジを討滅し、そのまま元の世界で自分を待っている梓のもとへ帰ろうと本気で思っていた。
『くだらないことを……。来い!!』
「行くぞ、統夜!奴を倒すんだ!」
「もちろんだぜ、流牙!俺たちならそれが出来る!」
統夜と流牙はそれぞれの魔戒剣を構えると、ザジを睨みつけていた。
そして、2人はザジに向かっていった。
こうして、2人とザジとの戦いの火蓋は切って落とされたのであった……。
……EPISODE5 に続く。
今回はかなり短めになってしまいました。
それにしても、アズサの実力が明らかになりましたね。
アズサは元老院の魔戒法師としても充分に通用しそうなレベルだよな……(笑)
そして統夜と流牙はザジと遭遇。
それにしてもザジは黄金騎士だけではなく、白銀騎士まで目の敵にしているとは……。
それに、知られざる真実も明らかになりましたね。
流牙の世界には奏狼の系譜が途絶えていると。
パラレルワールドみたいな感じなので、そうであってもおかしくはないですが……。
さて、次回でこの番外編は終了となります。
統夜・流牙の2人とザジの戦いはどうなっていくのか?
そして、統夜は元の世界に変えることは出来るのか?
それでは、次回をお楽しみに!