篠ノ之家の弟は阿頼耶識使い   作:木の人

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白と黒の決戦

 補給を済ませた僕はアリーナの中でイチ兄を待つ。観客席にいる他の人達もさっき行われた僕とセシリアさんの戦いの熱で高ぶっているのかキャーキャーとか言ってる。なんだろ……何人か吐きそうな表情をしてる子もいるけど体調悪いのかな? だったら休んでた方が良いよ?

 

 とか思っているとイチ兄がISを纏って僕の前に降り立った。それは白、僕の身体のように黒く飲み込む様なものじゃなく周りを光り輝かせて不安を取り除くような……そんな感じ。憎い、なんでホカノコバカリ……!

 

 

「悪い、待たせたな」

 

「ううん。ゆっくりしても良かったのに? それがイチ兄のIS?」

 

「あぁ! 白式って言うらしい……凪、約束は覚えてるな?」

 

「勿論。勝った方にご飯を奢る、でしょ?」

 

「おう! 言っておくが負けないぜ?」

 

 

 僕も負けない、確実に殺す。怖いから、憎いから、輝く全てを壊したいから。イチ兄は手に一本の刀のようなものを展開した――なにあれ? ナンデアンナニスルドクテワタシヲコロソウトシテイルノ。なんだろう……酷く体が震える、なんで? あれ(あの刀)を見ていると怖くなる……なんで? 分かんないけど注意しよう! だってたばねぇお手製だもん! さっきのセシリアさんのよりも強力なはずだ!

 

 

「それじゃあ――行くぜ!!!」

 

 

 手に持つ刀が変形して光の刀身を露わにする。やっぱり直視するだけで恐怖を感じる! 怖い……まるで殺人犯に襲われているような気分だ……!

 

 イチ兄は肩の辺りを浮遊している大きめなスラスターからエネルギーを放出させながら僕に向かって直進してくる。速い……! 体が恐怖に包まれて動きにくいけどまだこれぐらいならなんとかなる。刀が地面と水平になりながら僕を斬ろうと迫る、まだ、まだ……ここ! 身をかがめその場で回り瞬時に鉈展開、露出しているふとももの肉を削ぎ落とすように斬る。攻撃の痛みからかイチ兄の反応が一瞬だけ止まる、怖いから離れろ! 頭を掴むために右手を伸ばす――けどイチ兄は地面を蹴って後ろに跳んでしまったから掴みそこなった……ちぃ、杭を撃ってもギリギリ躱された! なんなんだもう!! 距離を取られた上、掴みからの杭射出を防がれた……本当に初心者? やっぱり凄いなぁイチ兄は!

 

 

「あ、あっぶねぇ~……危ないぞ!」

 

「戦いに危ないもないけど?」

 

「いやそうだけどさ……でも、今ので何となく分かった! 次行くぜぇ!!」

 

 

 再びスラスターを吹かして僕に接近、今度は突きの構え。放たれる動作と共に体を斜めにして斜線から外れて左手を伸ばす――けど腕を引いて刀の柄、それも一番下の頭の部分で叩かれる。また! なんで見切られる!!

 

 

「やっぱりな! どれだけ反応が速くてもそれは"凪の動き"なんだ! だったら変にISの動きをするんじゃなくて俺の動きをすればいいだけだ!」

 

「ちぃ! ウザったいな!!」

 

 

 イチ兄は地面に足をつけ刀を振るう。その姿は剣劇を行う侍のようにも見える……突き、上段、袈裟切り、行ってくるもの全ては簡単に躱せるけどそこから先に進めない……どれだけ腕を伸ばそうと、どれだけ鉈で斬りかかろうと、どれだけ杭を撃とうとしてもたった一本の刀の存在で防がれる。何この反応速度……たばねぇ! イチ兄専用だからって力注ぎ過ぎだよ!! 攻めきれない壊しきれない殺せない!! あの光の刃は危険だ……僕の感が、耶識がそれを判断してる。斬られたら殺される、だからその前に殺す。

 

 鉈でダメならと一度閉まってからハンマーを呼び出して地面を抉る。土煙が僕達を囲んだのと同時に身をかがめて前へ。

 

 

「やべっ!?」

 

 

 真下から貫く様にハンマーを振り上げる。さすがに予想が外れたのか分からないけど胴体、腹の部分に直撃、でも僕の鬱憤はまだ収まらない。勢いで宙に舞ったイチ兄の肩を掴んで地面に降ろす、それと同時に膝蹴り。その体制を保ったまま爪先を曲げて回転、腹を蹴って抉りこむように爪先をねじ込んだ――のになんで刀を振って、ぐあぁぁぁ……! 足を、斬られた……!? 拙い……! 出血した(エネルギーを削られた)

 

 

「てて……やっと一撃、当てれたぜ」

 

「まさかあの状態で反撃するなんて……凄いね? 自慢じゃないけど僕、あんまり被弾したことないんだよ?」

 

「そりゃスゲェな。でも、ここからドンドン当ててくぜ? ISの事を教えてくれた時さ、言ってただろ? 乗ろうとしない、使おうとしない、自分はIS、ISは自分だって。最初は何の事だか分かんなかったけど今ならその意味が分かる……俺は白式、白式は俺なんだ。道具でも武器でもない、自分自身そのものなんだ!」

 

「……勉強したかいはあった?」

 

「おう! 鉈にハンマー、そして杭、トドメにど、ドリルか? 何でも来い! 俺は俺の動きで相手してやる!!」

 

 

 イチ兄は刀を手に僕に近づいてそれを振る。確かにその言葉は言ったけどまさかここまでやるとは思わないって!? たばねぇ仕事しすぎだよ! でも――楽しい! 今までは大なり小なり危険が一杯だったけどここまでじゃない。集中しろ、目の前には殺人鬼、僕は今殺されかけている。逃れるためには……どうしようかな? 鉈のリーチじゃ反応されたら無理、というより現在進行形で刀の攻撃を躱した後斬りかかってるけど防がれてるし。ハンマー、重い無理。残りは斧と刀か……斧でやってみよう!

 

 地面を蹴ってハンマーを投げ捨てつつ距離を取り斧を呼び出す。リーチは鉈よりも長くハンマーよりも軽い。でも鉈よりは重い。

 

 瞬間加速でイチ兄に接近して真上から振り下ろすとさっきの僕の様に地面を蹴って背後へ跳んだ。そしてすぐさまカウンターの突きを放ってくるけどスラスターからエネルギーを放出してギリギリの距離感でそれを回避。でもどうしよう……このままじゃジリ貧だ。イチ兄の方がダメージ多いけどあの刀をもう一度受けたら負ける。だって一回斬られただけでシールドエネルギーが半分持っていかれ、あれ? シールドエネルギー? なにそれ……あ、あぁそうだよ。あっぶないなぁ? 単語ど忘れするなんてまだまだ勉強不足だね。でもどうしよう……ん? ハンマーが落ちてる……ちょっとやってみよっか!

 

 

「くっそ! 追いついたと思ってもまだか……! 白式の反応を超えてくる!?」

 

「普通に動いてるだけだけどね!! でも楽しいよイチ兄!」

 

「あぁ! 昔、凪と剣道してた時みたいだ! でも負けねぇ! 負けられねぇ!!」

 

「それは僕だって同じだよ!!」

 

 

 光の刃を受けないように斧で鍔の部分を叩いて弾く。下手に受けるとすり抜けるかも知れない……だから触れないように防ぐしかない。弾き終わった後、その場で回転、爪先を曲げて蹴りを放つけど体を捻って回避され突き出した足を斬ろうと刀を振る体勢に入られた……ま、だ! 終わらない!! たった一瞬、脳裏に描いたものが体を動かした。出した足を下に、軸足を上に、身体を捻ってイチ兄の頭を蹴る。この一瞬! これを逃すと次は無い!!

 

 体勢を崩しながらハンマーが落ちている所まで滑り、それを空高く放り投げる。あれの重さなら数秒と経たずに落ちる――そこで決める!

 

 

「っ……うぉ?!」

 

 

 ドスンとハンマーがイチ兄の近くに落ちる。意識がそれに向いた瞬間を狙って瞬間加速、鉈を呼び出して狙うのは首! これで――

 

 

「――終わりだぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 刃が首に刺さる。全身の力を込めて抉りこませ斜めに引き裂いた……イチ兄。僕の勝ちだ。

 

 

『試合終了、勝者、篠ノ之凪』

 

 

 アナウンスで僕の名前が呼ばれる。はぁ……怖かったぁ~! もうイチ兄! そんなの持ちださないでよ! 怖いんだから!! 地面に座り込んだイチ兄は負けたぁって嘆いてるけど僕的には今までで一番の強敵だった。時に刀の存在感ヤバいね! だってエネルギーを半分削られたんだよ!? たった一回斬られただけで!! もしこれが何度も当たっていたら……考えたくない。うん。でもなんだろう……そんな能力をたばねぇに一回だけ聞いた事あるような……なんだっけ?

 

 

「もうちょっとだったのにな……強いな……完敗だよ」

 

「結構危なかったよ? ホントにIS動かすの初めてなのって動きだったしさ」

 

「あぁあれか? 多分白式が凄いんだろうな。ついていくのがやっとだったよ」

 

 

 それにしてはまさか阿頼耶識使ってる? って言いたいぐらいの慣れた動きだったんだけど……あんな性能のISを作るたばねぇも凄いけどそれを乗りこなすイチ兄も凄いね。僕は阿頼耶識有じゃないと無理だし憧れるなぁ……うーん、それにしても頭がぼーっとする……糖分切れ? チョコ食べないと。色々感想はあるけど今はイチ兄の刀怖い、これだけだね。さぁ~て僕の試合は終わったしゆっくりイチ兄とセシリアさんの試合を見よっと。

 

 一緒にピットに戻ると箒姉が出迎えてくれた。なんだろう……怒ってる気がする……! なんで!?

 

 

「お疲れさまだ一夏、凪。色々言いたいことはあるがまずは――凪!」

 

「は、はい!」

 

「あ、ああ、あんな大観衆の前でお姫様抱っこをするとはは、破廉恥だぞ! ああいうのはこ、恋人にだな……するものなのだ! 次からは気を付けろ!」

 

「え、えぇ~? 何かと思ったらそんな事なの? というか誰でもやらない? ねぇイチ兄?」

 

「ん? どうなんだろうな……あぁでも中学の時、怪我したクラスの子を運ぶ時とかはしてたから多分そうなんじゃないか?」

 

「……そ、うなの、か。お、落ち着けここで怒ってはダメだ……ふぅ、一夏! そのだな……もし私がけ、怪我をしたらお、お姫様抱っこでたの、む」

 

「別に良いけど凪がいるんだし俺じゃなくてもいいんじゃないか?」

 

 

 イチ兄……それ言われちゃったら箒姉は何も言えないよ。ほらその先の言葉が出て来なくて固まっちゃった……きっと「お前でないとダメだ」とかいうとイチ兄を意識していることがばれて恥ずかしいとかだと思うけど。さぁ~てとりあえずまずは糖分補給っと。ISを解除して上の制服を着る。そしてポケットからチョコを取り出してぱくり。う~甘い~!

 

 

「……あれ? 凪のISスーツって制服の下もなのか?」

 

「違うよ? この下にスパッツ穿いてる~あまあま」

 

「待て凪……先ほどのインナーはISスーツだろう? お、お前はまさか半分だけの状態で戦っていたのか!?」

 

 

 あぁそう言えば脱ぐの忘れてた。まっいっか、今度から気を付ければいいだけだし……なんか箒姉は驚いてるけど。今度から気を付けるから怒らないでね。

 

 そして補給も終わりイチ兄はアリーナの中へ。モニターからはセシリアさんとイチ兄が対峙しているのが見える。相手は射撃型、イチ兄にとっては不利だけど接近して斬れば勝てる。戦った僕が言うんだし間違いない。ただお互いの手の内が分かってるから結構読み合いになりそうだけど……イチ兄ってあんまり考えないよね? 直感タイプだろうし。

 

 

「……一夏」

 

「大丈夫。負けないって」

 

「し、しかし相手は射撃型だ! 近接型の一夏では不利だろう……!」

 

「射撃型の弱点って接近されれば対応手段が限られること。イチ兄もそれは分かってると思うよ? 現に今も射撃の回避に専念してるようだしね」

 

 

 多分僕が行ったやり方を真似てるんだろうけど同じ手が二度も通じるとは思えない……あぁ~やっぱり。わざとビットの射撃に反応させてから持ってる銃で撃ち抜いてる。戦った僕の予想だけどあのビットを動かしてる間はセシリアさんは動けないんだろうね。だから戻さず地面に落として撃ってる。よほど近づかれたくないんだね? 流石代表候補生だ! 一度のミスを再び起こさない対応力! 凄いね!

 

 

『――織斑さん』

 

『なんだ?』

 

『初心者と侮っていたこと、馬鹿にしていたことを此処に謝罪いたします。あなたや篠ノ之凪さんはお強い男性ですわ。だからこそ負けたくはありません』

 

『俺も色々言い過ぎた。ごめん。負けたくないのは俺も同じだ! この剣に誓ってあんたを倒す!』

 

『わたくしも全身全霊の力を持ってあなたを倒しますわ!』

 

 

 友情! 友情だよ!! やっぱり昔の漫画の様に一度戦えば仲良くなれるんだね!! 感動だ……感動したよ! なんか箒姉は面白くなさそうな顔してるけど大丈夫、今の箒姉ならイチ兄を落とせるから。弟の僕が保証するよ!

 

 射撃の嵐を掻い潜り、多少被弾してるけど突破してイチ兄は剣を振る。その刃がセシリアさんを捕らえたけど腰のアーマー部分から放たれるミサイルでイチ兄も被弾。あれ? とすると……あぁ引き分けか。でも凄いよイチ兄! 起動させて間もないのに代表候補生を相手に引き分けだもん! これなら僕もすぐ追い抜かれるかな? ぐぬぬ……僕は2年かけてこれなのにイチ兄はわずか数日、これがイケメン補正というものか!

 

 

「お疲れイチ兄」

 

「おう。畜生勝てなかった……なんか凪の時よりエネルギーの減り方が早くて焦ったぜ……」

 

「多分僕と戦った時は地面に足を付けてたからエネルギーの消費を抑えれてたんじゃないかな? 今回は空中戦だったしスラスターを多用してたでしょ? だからだと思うよ?」

 

「それにしては減り方が尋常じゃないんだよな……剣振るたびに減ってくんだぜ? なんでだって思いながら戦ってたぞホントに」

 

「……欠陥品ではないのか?」

 

「うーん、たばねぇはISは完成されてないから欠陥品も何もないって言ってたけど……剣というか刀を振る時に何かでてたりしない?」

 

「ん? そういえば零落白夜(れいらくびゃくや)って文字が出てた気がする……もしかしてこれが原因か?」

 

 

 あれ……その単語は何処かで……あっISの勉強をしてた時、たばねぇが一回だけ教えてくれた奴だ。たしかちー姉ちゃんが現役の頃の専用機が持ってた単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)だっけ? ん? なんでそれをイチ兄のISが持ってるの? 同じ単一仕様能力って発現しないはずじゃないの? まっいいか、たばねぇだし。でもそれならあの減り用は納得だね。

 

 

「多分そうだと思うよ? たしかそれって自分のシールドエネルギーを消費して使うらしいから使えば使うほどドンドン減ってくみたい……でも強いよ? 当たれば優位に立てるし。詳しいことはちー姉ちゃんに聞いてみると良いよ」

 

「そっか。でも疲れた~箒? 今日は先にシャワーを浴びてもいいか?」

 

「構わない。い、一夏……その、だな……か、かっこ、よく頑張ったな!」

 

「そりゃあ頑張るだろ? 千冬姉と同じ武器を持って戦ってるんだしカッコ悪い所を見せたら千冬姉に悪いしな。あと箒や凪にもな」

 

 

 むむっ最初に箒姉の名前が出なかったのはちょっと不満だけどちー姉ちゃんには勝てないから我慢しよう。さて僕も早めにシャワーを浴びて耶識を整備しないとね……どこでやろう? そんな事を思っているとちー姉ちゃんと山田先生がこっちにやってきた――痛い。なんで叩くの? 織斑先生と言え? まさか離れていても心を読むことができるなんてちー姉ちゃん……恐ろしい子! あだっ。

 

 

「痛いよちー、織斑先生?」

 

「おかしなことを考えているからだ。織斑、お前に渡すものがある」

 

「俺に?」

 

「はい。現在織斑君のISは待機状態になっていますが任意で呼び出すことができるようになってます。ですが規則がありますのでこちらを読んでおいてくださいね」

 

 

 山田先生からIS起動に関するルールブック(電話帳)を手渡されたイチ兄は静かに膝から崩れ落ちた。う、うわ~厚いし紙ペラペラだし本当に電話帳だよ……が、頑張ってイチ兄!

 

 

「これにて解散、ゆっくり休め。だが篠ノ之弟、お前はこっちだ」

 

「え? あっは~い。それじゃあイチ兄、箒姉、あとでね~」

 

 

 何やらついて来いと言う雰因気だったからお供の様についていく。うん? へぇ~こんな所あるんだ? およエレベーター? まさか地下……秘密基地!? なにそれ!? IS学園に秘密基地あるの!? なんて凄い所なんだ……! 目標の階に到着したのか織斑先生が降りたので僕もそれに続く。目の前にはあまり広いともいえず狭いともいえない、何て言うか一人暮らし用の部屋程度の大きさかな? おぉ~なんか整備に使う道具とか置いてある!

 

 

「前に言っていたお前のISを整備するための部屋だ。此処は私とごく一部の者しか知らん。一般生徒はまず間違いなく入ってこないだろう」

 

「そうなんだ――ごく一部? それってどんな人達?」

 

「この学園の理事長と生徒会だ。安心しろ、監視カメラも盗聴器も付いていない。私もこれで確かめた」

 

「なにそれ?」

 

「現役時代に束から貰った探知機だ。もし監視カメラや盗聴器があればこれが震えることで知らせてくれるようだ……まさかまだ役に立つとは思わなかったがな」

 

 

 なんかたばねぇ凄いもの作ってるなぁ~聞けば定期的にアップデートされてるみたいで範囲は1km……広すぎじゃない? どうやら範囲は縮めることもできるらしい、流石たばねぇ。でもそっか……たばねぇが作ったものなら多分大丈夫だね。でも生徒会の人かぁ……うーん。

 

 

「ちー姉ちゃん? その生徒会の人って信用できるの?」

 

「恐らくお前の事情を知っても悪用はしないだろう。あれでも一応裏組織を相手にすることを生業としている家の者だ。感だが近いうちにお前に接触してくるだろうな」

 

「……」

 

「そんな顔をするな。そもそもお前に手を出せばどうなると思う? あれ()の事だ、世界を滅ぼす程度の事は簡単にやるだろう。信用するしないはあった時にでも決めると言い」

 

「はーい」

 

「よろしい。ではこれがここに入るカードキーだ、無くすなよ?」

 

 

 ちー、織斑先生からカードキーを受けとる。とりあえず挨拶されたらたばねぇに連絡して相談に乗ってもらおうっと。僕一人の問題じゃないしね……さて! 考えるのはやめて耶識の整備でもしよっと。上の制服を脱いで展開、変な負荷がかかってる所が無いか確認すると脳裏にまたあの女の子が浮かんだ。その手にはナイフとハンマー、僕の体は動かない。まずはナイフで肩を刺されてぐりぐり、続いてハンマーで両足の指を潰される。あぁ……そこが負荷掛かってるんだ……それじゃあその部分を手当してみるね……?

 

 

「肩と足、か……」

 

「展開するだけで分かるのか?」

 

「何となくだけど教えてくれるからね。そう言えばこの部品って使ってもいいの?」

 

「あぁ――あなたを愛している兎さんからのプレゼントだそうだ。全く束め……いくら弟が大事だからと言ってこんなものを送ってくるな……中身がまだ第一世代の部品だからとはいえお前からだと分かれば混乱が起きると言うのに。あとであの馬鹿に言っておけ」

 

「は、はーい。よっと……それじゃ消耗部分と調整をやってみよう」

 

 

 と言っても難しい事は出来ないから交換して一回接続、負荷が掛かってたらちょっと直してまた接続、自分の感覚だけを頼りに耶識の手当てを行う。僕がもっと上手に扱えて手当の仕方も慣れてたらキミも安心なんだろうけどまだこれぐらいしかできないんだ? ごめんね。かれこれ十回程度接続したり外して調整したりを繰り返してどうにか整備は終わった。なんて言うか刺されたナイフを抜かれて引きつった笑みで首絞められるイメージが浮かんだから多分大丈夫だって事なんだろう……知らない人が聞くとえ? って言われかねないけどかれこれ2年間一緒だし何となく分かる。本当に何となくだけど。

 

 そして待っててくれたちー姉ちゃんと一緒に部屋を出る。どうやらちー姉ちゃんはまだ仕事が残っているみたいで頑張ってと言ったらあぁとそっけない感じで返事された……やっぱり忙しい中待っててくれてたんだ? なんだか悪いことしたかなぁ? あとで何かお詫びに手料理でも作ってあげよっと。具体的にはお酒に合いそうな奴。

 

 

「……篠ノ之、凪さん」

 

「ん? あっセシリアさ――はっ! 試合の時ごめんなさい! 痛い所とかない!?」

 

「え、えぇ。も、問題ないですわ……あのような戦いは初めてですのでまだ戸惑いと恐怖が残っておりますが凪さんが謝る事ではありませんわ……むしろ謝らなくてはならないのはわたくしの方、お時間を頂いても、よろしいでしょうか……?」

 

 

 断る理由もないので寮まで一緒に歩いてみんなが仲良く話す場所らしき所で話をすることにした。あっ近くに自販機がある……う~ん、セシリアさん何が好きなんだろう? 紅茶? 意外にコーヒー? な、悩むな……いいやお茶だ! 万能さ第一位のお茶で行こう! それポチッとな。そして僕は炭酸にしよっと。

 

 

「はいどうぞ。何が好きなのか分からなかったからお茶にしてみました」

 

「ありがとうございます……」

 

 

 これってちー姉ちゃんとのやり取りそのものだね? なるほど……あの時のちー姉ちゃんはこんな気持ちだったのか! それよりも謝るって何をだろう? 泣かせちゃった僕は分かるんだけどセシリアさんが僕に謝らなきゃいけない事ってあったっけ?

 

 

「……凪さん」

 

「なに?」

 

「この度は誠に申し訳ありませんでした……貴方のことを上辺だけで理解したつもりでいたことを後悔しておりますわ……本当に申し訳ありませんでした」

 

「……あ、あの~何で謝るの?」

 

「ですから貴方と織斑さんをわたくしより下に見てしまい、日本の事も馬鹿にしてしまった事です……本当は怒っていらしたのでしょう? 出なければあのように怒りに満ちた戦いはできませんわ」

 

「あの~……ご、誤解してる気がするから言うけどね? あれ、普通に戦ってただけなんだけど?」

 

「……で、では怒っていないと言うのですか!」

 

「うん」

 

 

 よく分かんないけどセシリアさんは僕とイチ兄を弱いとか言った事に罪悪感が出てたのかな? 確かに日本の事とか悪く言ってた気がするけどただ熱がこもっちゃっただけだと思うし実際に僕弱いし。だって2年かけても阿頼耶識頼りなんだよ? 努力して専用機を貰う事が出来たセシリアさんと比べると天と地の性あるね。だから何も謝る事なんてないんだよね~

 

 

「だって僕って箒姉に剣道で勝ったことないしさっきだってISで戦うのが初めてのイチ兄にも負けそうになったんだよ? セシリアさんの言う通り弱いんだよね。怒りに満ちた戦いって言ったけどあれ……ただ必死だっただけです……そ、それよりも本当にごめんなさい! 泣いちゃうぐらい怖かったんだよね!? も、もし納得できないならお、おあいこってことで……ダメ?」

 

「――ふふっすみません。えぇ、ではどちらも悪いと言う事でよろしいですか?」

 

「出来ればお願いします……あっでも出来たらなんだけど後でクラスの子達にも謝ってほしいかな? ほら、外国の子とかもいるけどそれでも日本の子も多いからさ。今の様に誠心誠意謝ればきっと許してくれると思うし仲良くできると思うんだ?」

 

「えぇ、それは当然ですわ。オルコット家の当主として恥じぬためにも精一杯謝罪いたします。全く……本当にお優しいのですね? あのような発言をしていた相手に怒らず逆に謝るなんて……」

 

「そう? 普通じゃない? 多分イチ兄もそうすると思うし誰だって自分が悪いと思ったら謝るよ。あっ遅くなったけどイチ兄との試合お疲れさま! やっぱり凄いね! ビット兵器をあんなに操れるなんて憧れるよ!」

 

 

 今までビットを動かしてたのはクロエさんしか見たことなかったから余計に凄いって思える。クロエさんに凄いって言っても束様のプログラムのお蔭ですよって謙遜するんだもん……指示出せるだけでも凄いと思うのにね? あとビット兵器って男の憧れの一つなんだよ! カッコよくない? 自由に動くものを操る姿って?

 

 

「っ、そ、そうでしょう! なにせ本国でも私を超すビット使いは居ないのですから! ビット適正Aは伊達ではありませんの!」

 

「おぉ……やっぱり凄いねってそうだ! 忘れてた! はい」

 

「……こ、これは……?」

 

「握手しよう。仲直り? なのか分かんないけど友達の記念に。ダメかな?」

 

「――いえ。謹んでお受けいたします。改めて自己紹介をさせていただきますわ。わたくしはセシリア・オルコット、イギリスの代表候補生をしております」

 

「僕は篠ノ之凪です。これからもよろしく」

 

 

 僕とセシリアさんは握手をして仲直り……なのかは分からないけどした。でもなんか顔赤いけどなんでだろうね? 慣れてないのかな? それとも照れてるだけ? 周りに男の人が居なかったのかな? まっいっか。

 

 そして話すことを終えた僕達はまた明日と分かれる。いや~最初はいきなり謝られるから何事かと思ったけど勘違いさせてただけで良かったぁ。そもそも弱いことは事実なんだから気にしなくてもいいのに? 剣道じゃ箒姉に勝ったことないしイチ兄にも勝つこともあるけど負けたことの方が多い。唯一勝ってるのは意地っ張りな所だね! これは譲れないしたばねぇにも勝ってると思う……うぅ、なんか涙が出てくるよ。とりあえずはやめにシャワーを浴びてや~すもっと。

 

 部屋に入ってドアを閉め鍵をかける。一応誰もいないことを確認してから服を脱いでシャワーを浴びる。うぅ~気持ちいね! やっぱり運動後のシャワーは格別! あんまり長湯することもないし頭と体を洗ってから出る。身体も拭いてさぁ~何しよう? 取りあえずチョコ食べよ……およ? 電話だ……たばねぇ!

 

 

『もっしも~し? なっくん!? 一人で大丈夫 ? お姉ちゃんが居なくて寂しい? もぉしょうがないなぁ~♪ なっくんのためなら今すぐ学園に乗りこんじゃうぞ~♪』

 

「一人でも大丈夫だよ? だって箒姉やイチ兄、ちー姉ちゃんがいるしね。それよりもたばねぇ! イチ兄の専用機だけど凄すぎだよ! 動きが読まれて負けそうになった!!」

 

『およ? 阿頼耶識有のなっくんに善戦するなんていっくんやるね~やっぱり基本構造を弄ったのは間違ってなかったね。つっても倉持技研の連中じゃ何百年経っても再現不可能で解析不能だろうけど。ふふんなっくん! 実は白式はちーちゃんの専用機、暮桜の単一仕様能力をいっくんのために再現しちゃうほど主人思いなISなのだよ! あとなっくんの動きに付いていけた理由は純粋にISは自分の体だって強く思いこんじゃったからだと思うんだ。阿頼耶識ほどじゃないけどISコアと相性が良ければ有りえる話だもん』

 

「へぇ~ということはイチ兄はISコアの子に好かれてるの?」

 

『多分ね~もう運命感じちゃったんじゃないかな? だって白式のコアって白騎士、一番最初のISのコアだもん。あっこれ秘密ね? お姉ちゃんもいっくんの専用機として恥ずかしくないように基本構造弄って他の奴より動きやすくしたけど力の源はいっくんだよ! あと数年すればちーちゃん超えるね! さっすが!』

 

 

 なるほど……つまり流石イチ兄! ってことだね。思い込みって凄いなぁ……阿頼耶識いらないじゃん。

 

 

『あ~今、阿頼耶識いらないじゃんって思ったでしょ~? 残念ながら違うんだよなっくん! どれだけ強く思い込んで動きを良くしたって情報を整理するのはISなんだ。でもなっくんはそれを自分の脳で行うでしょ? 言っちゃえばそれはもう信号の多い一般道と高速道路の差くらいはあるね。ところでなっくん? ちゃんとお姉ちゃんからの愛情がこもった物は届いてた!?』

 

「うん。あっでもちー姉ちゃんが怒ってたよ?」

 

『もうちーちゃんったら恥ずかしがり屋さんなんだからぁ! おっと! 名頃惜しいけど電話切るね~用事があったらいつでもお姉ちゃんに、そうお姉ちゃんに! ぜぇぇったいにお姉ちゃんに連絡してね! くーちゃんにはぜ――』

 

 

 あっ切れた。なんかフライパンで叩かれたような音がしたんだけど気のせい? う~ん、大丈夫でしょ。たばねぇだし。でも心配だからクロエさんにメールで『たばねェに何かあった?』はい送信……って早いなぁ? なになに? 『御心配には及びません。かれこれ2日は徹夜で食事もとっていないので休ませました。凪様、もしご用事がありましたら私までご連絡していただけると嬉しいです』おぉ! ありがとうクロエさん! 感謝の気持ちをメールに乗せてはい送信! よし終わり!!

 

 そしてその日はなにやら上機嫌で帰ってきたちー姉ちゃんと一緒に謎の祝杯をする事になった……なんで? 別に良いんだけど僕にお酒進めないでよ? 先生でしょ? えっ? もう先生の時間は終わり? だから問題ない? いやダメでしょ。僕の必死の攻防の成果で如何にか炭酸飲料で妥協してくれた――もうこのおっさ、あだぁ!?

 

 今日は試合とかで疲れたけど頭を叩かれたことを除けば結構楽しかったのは内緒ね。明日からも頑張ろう!




昔の感を少し取り戻した結果、阿頼耶識に追いつきそうな動きをする一夏でした。と言って、白式が天才の兎の手により原作よりも動かしくやすくなっているお蔭ですが。
原作でも初戦闘、初期設定でセシリアのビットを破壊するというトンデモ技をしてますし大丈夫でしょうきっと。

鉈「ふっ、どうやら俺が相棒のようだな」
ハンマー「適度の出番と勝利に貢献出来ればそれで良い」
斧「……今日は飲もう、いくらでも付き合ってやる」
刀「ありがとう……ありがとう……!」

不意に浮かんだネタです。
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