篠ノ之家の弟は阿頼耶識使い   作:木の人

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戦いの後の休息

「……変じゃないよね?」

 

 

 鏡の前で何度も自分の服装や髪形が変じゃないかを確認する。なぜこんな事をしているのかというとちゃんとした理由がある。それはもう海よりも深い深~い理由がね……!

 

 

「まさかクロエさんとデートできるなんて思わなかったなぁ」

 

 

 そうなのだ! イチ兄とセシリアさんと僕の3人で行われた通称クラス代表決定戦が終わり、普通の学校生活に戻るかと思われたその時、なんとクロエさんからメールが届いたのだ。その内容は『1日だけ外に出てもいいと束様からお許しをもらえましたのでもしよければ一緒にお買い物をしませんか?』 というデートのお誘いだったから驚いたね。しかも教室にいる時だったから変な声あげてイチ兄達に心配されたけど。勿論返事は即行でオーケーとメール送信、そして日にちも指定だったからちー姉ちゃんにデート日に外出するための書類を提出して準備万端。かれこれ2週間ぐらい会ってないから元気かなぁ? ちなみに夜頃たばねぇから『デートズルいデートズルいくーちゃんにだまされたぁ!』という内容のメールが届いたけど何が騙されたの? クロエさんがたばねぇを騙すようなことするとは思えないんだけどなぁ? 本当に分からなかったから『よく分かんないけど楽しんでくるね』と返信しておいたけど良かったかな? 返事返ってこなかったけど?。

 

 そんなわけで何気に初デートのため――なお箒姉との買い物はノーカン――何を着て行けばいいか分からず四苦八苦状態。時間もそろそろ出ないといけないからどうしよう……いーや、もう箒姉と買い物行った時みたいな恰好で良いよね! だって箒姉は何も言わなかったし!! ちなみに今日は僕の他にイチ兄と箒姉は買い物という名のデートのようです。前から約束してたもんね? 頑張れ箒姉負けるな箒姉! 僕も誘われたけど用事があると言う事で辞退してます。できた弟をもっと褒めてもいいんだよ?

 

 散らかしてた服を片付けてから部屋を出る。何かあったら嫌だからISスーツの黒インナーの上にTシャツ、そしてパーカー、下はチノパン。こんな事ならお洒落雑誌をもうちょっと見ておけばよかったと今更ながら激しく後悔……とりあえず時間的に急がないと30分前に間に合わないから急ごう。廊下でクラスの子や他クラスの子達とすれ違うとお出かけと聞かれたのでうんと答える。名目上は日用品を買いそろえるための外出だけど本当はデートなんだよね……あんまり広めないけど。そんなこんなで約束の場所に到着。時間は……よしピッタリ30分前! あとは待つだけ!

 

 

「すーはーすーはー……お、落ち着け……大丈夫今までと同じようにすればいいだけ箒姉と買い物の様にすればいいんだ大丈夫大丈夫……!」

 

 

 今知った事だが僕はかなり緊張できるようだ。そりゃそうだよね? 好きかもしれない相手とデートだよ? 緊張しなかったらどこで緊張するのさって話だよ全く。とりあえず落ち着くためにイチ兄と箒姉のデートの様子でも予想してようかな~ダメだ、緊張しすぎてロボット歩きになってる箒姉が浮かぶだけだ。大丈夫かなぁ?

 

 背にしている大きな噴水、その近くにベンチがあるのでそこで座って相手が来るのを待つ。ヤバい無理緊張してきた……落ち着け、落ち着こうか篠ノ之凪……あの時だって冷静に土下座できたじゃないか! 今回はただ会ってデートする、うんあの時の様に土下座は必要ないから大丈夫、きっと大丈夫。

 

 

「お待たせいたしました、凪様」

 

 

 目の前から声がした。僕を呼ぶ声だ。それは2年間一緒に過ごして何度も僕の訓練や勉強を手伝ってくれた優しい声――クロエさんだ。間違えるわけがない……けどあれ? 髪の色違う?

 

 

「……どうかしましたか?」

 

「あっえっとさ……髪、染めたの?」

 

 

 あの綺麗な銀髪は僕や箒姉と同じ黒髪になっていた。髪型も流れるようなストレートだったけど三つ編みにして一本に纏めてる……黒でも似合うね? なんだか新鮮だ。あと他にも人がいるからなのか目を閉じてるし手には杖……あっもしかして目が見えない振りでもしてるの?

 

 

「ご心配は無用です。私のIS『黒鍵』の能力を応用しているだけで染めたわけではないですよ。黒はお好きでは無かったですか?」

 

「ううん、すっごく似合ってるよ。ただ前まで銀髪だったから黒に変わっててびっくりしただけだよ? その髪型も似合ってるし服もクロエさんだって感じで僕は好きだよ」

 

「ありがとうございます。しかし凪様、約束の時間まで20分もありますけど何時から待っていたんですか?」

 

「10分くらい前から此処に居たよ? 遅刻したら嫌だし早めに来て待ってた方が安心だしね。そういうクロエさんも約束の時間までまだあるのにもう来ちゃったの?」

 

「凪様とので、デートに遅れるわけにはいきませんから。ふふっそれでは少し早いですけどお買い物、お付き合いしてくれますか?」

 

 

 勿論と返答して一緒に街中へと向かう。でもいきなり髪型とか髪の色を変えてどうしたのと気になってたので聞いてみると「凪様は非公式ながらも二人目の男性操縦者、私も束様と行動を共にする者、何かあっては困りますので変装してみました」というお言葉を貰いちょっとだけ感動してしまったのと同時にしまったとも思った。変装の事すっかり忘れてた……どうしよう?

 

 

「凪様」

 

「なに? あ、ありがとう……メガネ?」

 

「あまり凝り過ぎるのもかえって目立ちますのでこちらをどうぞ。度は入っていませんので大丈夫かとは思いますが……どうでしょうか?」

 

「問題ないみたい。ありがとう」

 

 

 貰ったのは市販されているようなもので強いて特徴を言うなら下部分にフレームがあるって所。かけてみると度は入ってないから目も痛くない、でも大丈夫かな? 似合ってる?

 

 

「どう?」

 

「はい。よくお似合いですよ。それと凪様……少し、いえお願いがあるのですがよろしいですか?」

 

「うん。これでしょ」

 

 

 クロエさんの杖を持っていない手がある方に移動して手を握る。手が小さいし柔らかい……僕汗かいてないかな? 大丈夫かな? き、きききっと大丈夫! なんで分かったのですかと聞かれたから杖持ってるし目を閉じてるから目が見えないふりでもしてるのかなぁと言ったら当たりですと笑顔で言われた。やった当たった! フフフ……伊達にたばねぇと箒姉の弟をしてはいませんよ!

 

 

「そういえば今日は何を買うの?」

 

「それはお楽しみです。それでは凪様、行きましょう」

 

 

 む~教えてくれないのか。でも良いよ、クロエさんの買い物だし荷物持ちだろうとなんだろうとやってやるし何処へだって一緒に行くよ! そう、思っていたんだけどなぁ……手を繋いでデパートの中に入ってある場所に着いた瞬間、無性に帰りたくなった。というか今すぐここから出ていきたくなった……やめろー! 離せー! 帰らせてぇ!!

 

 

「着きました。今日は此処に用事がありましたので凪様をお誘いしたんです」

 

「――カエッテイイデスカ?」

 

「ダメです」

 

 

 うわ~凄く可愛い笑顔を向けてくるよ~でもその笑顔が怖いよぉぉ……というかなんで此処なの!? なんで僕を誘ったの!? なんでなのクロエさん!!

 

 そう、今僕の目の前にあるのは恐らく……いや全世界の男の人が入りたくない近づきたくない見たくないの三拍子を持っていると思われる場所――女性物の下着売り場、通称ランジェリーショップ。確かに僕はたばねぇや箒姉の下着を見ても何も思わないよ! でもさ! 違うよね!? これどう考えても僕場違いじゃん!! まさか怒ってた!? あの僕命名、お風呂場突撃事件(クロエさんの裸を見た時)の事を怒ってたのか!? それは仕方ないね僕が悪いしどう考えても自分のせいじゃないかぁぁぁ!

 

 

「お恥ずかしいのですが……新しい下着を買いたくなりましたので凪様の意見をお聞きしたいんです」

 

「たばねぇじゃだ――ごめん。たばねぇじゃ無理だよね……うん、勉強とかでお世話になってるからもう覚悟は決めたよ。僕で良いなら喜んで似合うの選ぶよ」

 

「はい、お願いします。やりました」

 

「え?」

 

「何でもありません。それでは入りましょう」

 

 

 あぁなんだろう……何故足が重いんだ? 人は普段歩く事だけはやめない生き物のはずなのになぜか今は足を止めて立ち止まりたくなる。クロエさんに手を引かれショップの中へ……うぅ、女の人が一杯だよ……そりゃそうだよ……だってここ女の人専用だもん……でも一人二人は彼氏さんと思われる人もいるからまだ助かる。今の僕達の心境は同じだと信じたい。あとIS学園の生徒に会わないことを願いたいよ。

 

 あっ世の男の人達に僕から一つアドバイスだ。決してお前ブラつけるのか? とか絶対に思っちゃいけないよ? じゃないと今の僕の様に横腹つんつんされるよ? いやそこまで思ってないけどちょ、ちょっとだけクロエさんのスタイルを見ただけなんだ! だからつんつんしないで?!

 

 

「……私も女の子です」

 

「うん知ってます……ごめんなさい」

 

「次に同じことをしたら……そうですね、こちょこちょします」

 

「やめろーくすぐりはやめろー」

 

 

 という何気ない場面を送りつつさぁ本題だ……選べと? この僕にクロエさんが似合いそうなやつを見つけろと? ふぅ――では篠ノ之家唯一のしっかり者である僕の本気を見るが良い!

 

 

「……」

 

 

 無理逃げたい帰らせて絶対無理というよりなんで恋人いない僕が女の子の下着選ばないといけないのというよりそもそも箒姉の下着すら選んだことないのに……うぅ、背中から感じるワクワクドキドキな視線が痛い……というよりなんでちょっと恥ずかしがっているんですかぁ!? だったら選ばせないで!? あぁもう! 考えるのも恥ずかしがるのは後でやる! 具体的には寝る時にぐあぁぁぁな感じでゴロゴロしてやる! まずクロエさんは銀髪、スタイルは……こ、子供……というより上から下までのサイズ知らないんだけど……? いいや聞こっと。

 

 

「クロエさん?」

 

「はい? なんでしょう?」

 

「スリーサイズ教えて?」

 

「……は、はい……う、上から――」

 

 

 よし第一関門突破、次は似合う色選択だ。銀色に似合うのって個人的に黒、白、あと水色? 箒姉なら迷わず白って答えるんだけどなぁ。うーん、あんまり派手なのも似合わない、かといって地味すぎるのもダメ、その中間を探せばいいね。とりあえず3つぐらい選んで最終的にはクロエさんに決めてもらう。そ、それぐらいはお願いします……!

 

 そうと決まればあとはサイズに合ったものを選ぶのみ。あっこれ可愛い、リボンついてるしこの系統で行こうか……よし終了! あとはクロエさん次第!! これでダサいと言われたら僕は泣いて此処から逃げる。

 

 

「とりあえず3つほど選んだんだけど……どうかな?」

 

「は、はい……で、では……試着、してみます」

 

「あっうん」

 

 

 選んだものを渡してクロエさんと一緒に試着室前まで向かう。何て言うかこの待ってる時間って異様に長く感じるよね? う~ん、選んで気に入ってくれたらプレゼントしようかな? 一応お金降ろしてきたし。そもそもたばねぇ……僕まだ学生だよ? なんで数千万単位でお小遣いあげるねっていうわけ? まぁ株で増やしたらしいし僕的にもお金は必要だからありがたいから文句は言わないけどさ。

 

 

「ちょっとそこの男」

 

「はい?」

 

 

 話しかけてきたのはOLのような年上の女性。手には買うつもりであろう下着が複数……あっそういうことね。なんか周りも察してくれたのかかわいそ~とか小声で言ってるのが聞こえてくる。どうしようかな……ここでなんでって言うと後が面倒だしなによりクロエさんと楽しいデートが台無しになりかねない。しょうがないなぁ、次の言葉次第だけどさらば諭吉さんを覚悟してよう。

 

 

「これ買ってきなさい」

 

 

 あぁはい。ですよね~分かってました。だっていま女尊男卑だもん、女性が偉いと思われてる時代だもん、ニュースとかでも偶に話題になってるよね? こういうの……はぁ。

 

 

「わかりました。これだけで良いですか?」

 

「あら? 別なのも買ってくれるわけ?」

 

「サイズ分からないんので教えてくれれば。あと僕基準で良いならですけど」

 

「嫌よ何でアンタみたいな男に教えないといけないのよ。良いから買ってきなさい」

 

 

 あんまり反論するとメンドクサイ事になりかねないから言われるままレジへ。あっなんか女性の人だけど本当にいいんですかって視線で聞いてきてる……えぇ、お願いします。そう答えるとインカムみたいなもので何か話しはじめて数秒後、会計し始めるけど何か値段が下がってる……?

 

 

「あの」

 

「……こちらからのサービスです」

 

 

 なんということでしょう。まさか端数分とはいえ値引きしてくれるとは……同じ女性でもこんな風に優しい人もいるんだね。小さくありがとうございますとお礼を言ってお会計、下着が入った袋を持って先ほどの女性の所に戻って手渡し。そして満足したのかそのまま帰っていった……はぁ、終わったぁ。疲れた~……おっとそうだ! クロエさん! クロエさんが着替えてるんだった! 頭を切り替えないとね。

 

 カーテンの置くからクロエさんの声がする。うん? 近くにいるけど? 手を入れて? はーい!?

 

 

「ちょ、え?」

 

 

 手を入れると引っ張られて頭と少しだけ体が中に入ってしまった。そして目の前には黒い下着を着たクロエさん……お、おぅ……ヤバい直視できないと言うよりなんで服着てないんですか……!

 

 

「どうでしょうか?」

 

「……い、良いと思う、よ? やっぱり銀に黒って映えるね、あっいや今は黒髪だけど……」

 

「ではこれに決めました……も、もう大丈夫です」

 

「あっはい」

 

 

 ふぅ。心臓ってここまで高い音で鳴るんだね? 初めて知ったよ……さぁ~て今日は寝れるかなぁ? 無理だね。絶対に思い出して寝れないパターンだ。箒姉と同居生活してた時みたいにね。あの時も寝れなかったなぁ……最初の頃は良かったんだけど年齢が上がるたびに厳しくなってた。だって一つの部屋に布団を2つ敷いて並んで寝てたんだよ? しかも小学6年生の時でもだよ? 隣から箒姉の寝息とかきこえてきたらそりゃぁ寝れないでしょ。多分僕がシスコンなだけだと思うけど。

 

 

「それではお会計をしてきますね」

 

「あっそれだったらプレゼントで僕買うよ」

 

「……ですが、先ほど――」

 

「あれはあれ、これはこれ。というより僕がプレゼントしたいだけ……なんだけど、ダメ?」

 

「……ふふっでは、お言葉に甘えます。ですが先ほどの件は後でお説教です」

 

 

 再び手を握って一緒にレジに。先ほどとは違う事を察してくれたのか何も言わずにプレゼント用の包装をしてくれた……な、なんて凄い人なんだ! 僕もこんな風に空気を読めるようになりたいなぁ。

 

 そんなわけでお買い物終了。ふぅ……なんだか長い時間居た気がするけど実際は1時間ちょっとか。さてそろそろお昼時間だしどこかでご飯食べようそうしよう。何か食べたいものはあると聞くと私は特に好き嫌いはありませんので凪様のお勧めの所で良いですとのこと。う~ん、試されてるね! 財布事情的にはまだ問題ないけどどうしようか……おぉ! なんか静かで雰因気がよさそうなカフェ発見! あんまり悩んで歩き回るのも悪いし僕の感を信じてあそこにしよう。一緒に中に入って入口に近い席に座る。さぁ~て何食べよっかな?

 

 

「……うん? どうしたの?」

 

 

 何故か席に座ってからクロエさんの様子がおかしい……ま、まさか気に入らなかった!? そう言えば自分の感を信じて動いた結果は悪い事の方が多かったね。忘れてた。

 

 

「凪様、どうして先ほどのおん――女性に文句を言わなかったのですか?」

 

 

 あっなんだそんな事か。てっきり僕の選択ミスってわけじゃなさそうだね。

 

 

「だって文句言って喧嘩とかなったらデートどころじゃなくなったかもしれないし。たばねぇには悪い事をしたかもしれないけどあの場はあれが最善かなって? クロエさんとの楽しいデートを壊してまで文句言う必要ないしね」

 

「ですが……どうしてそこまで凪様は自分よりも他の人を……少しは自分のために怒っても――」

 

「う~ん、自分の価値ぐらいは自分で分かってるつもりだけど考えたことないかも……? 昔箒姉と離れたくないから我儘言ったけど怒ってたわけじゃないし……と、とりあえずさっきのはクロエさん優先で早めに解放されたかっただけだから! うん! でもごめんなさい……」

 

 

 正直、僕はバカにされようが殺されかけようがどうでも良い気がする。いやどうでもよくなったのかもしれない。戦う(ISを殺す)のだって耶識のため、イチ兄のため、箒姉のため、たばねぇのため、クロエさんのためで僕のためじゃない。だから本音を言わせてもらうとどうでもいい、って感じ? ほら、死んだ方が楽なぐらいな拷問を中学一年生の時に受けたんだよ? 誰だってこんな感じになるって。違う?

 

 

「……はぁ。これが凪様の悪い所ですね。正直、自分を蔑ろにしすぎて引きます」

 

「なんで!?」

 

「ですが――先ほどの私はカッコよく見えましたのでもう言いません。次はちゃんと断ってくださいね? 嫉妬しますよ?」

 

「は、はい……ん? 今嫉妬って」

 

「ではお昼ご飯を食べましょう。凪様は何を食べますか?」

 

「ねぇ今嫉妬って」

 

「凪様は何を食べますか?」

 

「……嫉妬って」

 

「凪様」

 

「……パスタで」

 

 

 世の中の真理、男は女の子に勝てない。そして嫉妬という言葉が気になるけど忘れた方がよさそうだから忘れよう。

 

 仲直りっぽいのをして仲良くご飯食べる。もう少し一緒に居たかったけどそろそろ時間みたいなのでたばねぇが迎えに来る地点まで仲良く手を繋いで歩いていく。なんだろうこの複雑な道のりは……でもこうでもしないと危険だから仕方がないのか。そして到着しました裏路地……えぇ? 此処なの? と思ったその時真上からにんじんが振ってきた。野菜のじゃないよ機械だよ? そして出てきましたたばねぇです……あれ? なんか泣いてる?

 

 

「なっくぅぅん!! ひどいよぉぉぉぉぉ! おねえちゃんよりさきにくーちゃんのえらぶなんてぇぇぇ! うらやましぃぃぃ! うわぁぁぁぁーん」

 

「なんで泣いてるのさ……選ぶ選ばないよりもたばねぇ、外歩けないじゃん」

 

「そこはこどもになるくすりかいはつするからぁぁぁぁ! くーちゃんもママをだますなんてぇぇぇ!」

 

「申し訳ございません。束様は私と凪様のデートだと言う事を知っているのかと思っていましたのでうっかり言うのを忘れてしまいました」

 

「うそだぁぁぁぁ! さいしょにひとりでおかいものだっていったもんぅ! なっくんとやくそくしてからいうなんてずるぃぃ!」

 

「たばねぇ……ばれないようにするんだったら一緒に買い物ぐらいはするよ?」

 

「――言ったねなっくん。言質はとったよ」

 

 

 一瞬にして泣き止んで録音してたと思われるボイスレコーダーを天に向ける。その姿はまるで敵将を打ち取った時の様に凛々しくもカッコよく見える……やってることはもの凄くどうでもいいけど。

 

 

「ふはははは! これであと百年は戦える! 待っててねなっくん! あとでデートのために迎えに行くからね!! そしてあっつぅい一晩を……あれくーちゃん? なんで首を? あぁひっぱらないでぇぇ! まだなっくんとお話ししたいぃ!」

 

「それでは凪様。お買い物に付き合っていただきありがとうございます。もしよければまたデートしてくださいね」

 

「あぁぁ!! くーちゃんなにそ、い、いやぁぁぁ! なっくんなっくん!」

 

 

 そしてにんじんは空高く飛んでいった。ふぅ、帰ろう。もう疲れたからもう帰って寝ていいよね……?

 

 でも最後に一仕事しないといけないからもうちょっと頑張ろう。それはなにかって? ただ和菓子買って夕方まで時間を潰して帰るだけ。でもこれには意味があるんだ――そう大事な意味がね。

 

 

「おぉ、おかえり~あれ? 目悪かったっけ?」

 

「ただのお洒落だよ? ただいまイチ兄? あれ箒姉は?」

 

「ん? なんか疲れたみたいで先に部屋行ってる。なんか体調悪かったのかしらないけどギコギコって擬音が聞こえそうなぐらい歩き方変でさぁ、休ませておけばよかったかな?」

 

 

 あぁ……やっぱりロボット歩きしたんだ。ということは今部屋で膝から崩れ落ちてる状態かな? 何故普通に歩けなかったのだとか緊張してそれどころではなかったとか思いながら……何と分かりやすい姉だろうか。まぁいいや、とりあえず最終兵器でも渡しておこう。

 

 

「あっそうだ。これお土産、箒姉と一緒に食べて~?」

 

「おぉ! 和菓子か! ありがとう。今日はどこ行ってたんだ?」

 

「殆ど散歩だよ。あと一つの試練を乗り越えてきた」

 

「試練?」

 

「イチ兄もいずれ経験すると思うよ。それじゃあ疲れたから今日は休むね~また明日」

 

 

 もはや晩御飯すら食べる気になれず部屋に着いてシャワーを浴びた後、即行で布団にダイブした。ダメな姉に弟からささやかなプレゼントだからちゃんと話のタネぐらいにはしてね。無理っぽいけど。そして寝れるかなぁと思いつつ目を閉じると忘れていたはずなのに脳裏に鮮明に刻まれていたのかしらないけど下着姿のクロエさんが浮かびあがり寝ることはできなかった。いや無理でしょどう考えても。とりあえず授業中に寝落ちだけしないようにしよう。

 

 翌日、僕はちー姉ちゃんの出席簿アタックを10回は喰らう事になった。いたい。




余談その1
とある食堂で女性二人がこれは敵だと直感で察し、睨みあっていたようです。

余談その2 天才の兎はガチ泣きしながら世界中の監視カメラをハッキングしてとあるカップルが映らないように細工してました。途中で泣き止んでパソコンで色々した後、またガチ泣きしてデートの様子を見ていたようです。

余談その3
翌日、とある会社が倒産しとある女子社員が全ての損害を背負う事になったようです。
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