篠ノ之家の弟は阿頼耶識使い   作:木の人

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新たな幼馴染

「はぁ……もう頭イテェ……覚えること多すぎるだろ……」

 

「ISの勉強、専用機使用の規則、クラス代表としての仕事内容、うん。多いね」

 

「だったら変わってくれよぉ……!」

 

 

 4月も下旬、箒姉とイチ兄、ちー姉ちゃんとの再会からセシリアさんとイチ兄と僕の3人で行われたクラス代表決定戦、そしてクロエさんとのデート、思い返せばまだ一カ月も経っていないのに多くの出来事があった気がする。でもまだ始まったばかりで今日もISの授業のためにイチ兄と一緒に男子更衣室に向かっている。

 

 隣で猫背みたいな体勢で歩くイチ兄だけど覚えることが多すぎて頭がパンクしそうになってるらしい。本当にごめんね? クラス代表決定戦での戦績は僕が2勝0敗0引き分け、イチ兄とセシリアさんが0勝1敗1引き分け。つまりここだけ見れば1年1組のクラス代表は僕なのだが残念なことにちー姉ちゃんストップが入ってしまった上、セシリアさんもあのような態度では代表は務まりませんと辞退したことで残ったイチ兄がクラス代表になりました。勿論俺も辞退と反論するイチ兄だったけどちー姉ちゃんの圧力と出席簿アタックの前に沈み、引き受けざるを得なくなった……本当にごめんね?

 

 

「変わりたいけどちー姉ちゃんストップだもんしょうがないじゃん」

 

「おかしいだろ……だって2勝した凪が代表じゃないなんてさ? あんなに強いのにもったいねぇって……」

 

「ちー姉ちゃんが言うには他クラスの生徒にトラウマを植え付けることを避けるためだ、ということらしいからしょーがないよ。そのお詫びに色々手伝ってるから許してよ?」

 

「いやそれはありがたいんだけどさ……そう言えばここ最近体調でも悪いのか? なんか千冬姉の出席簿で叩かれてること多いんだが? 疲れてるんなら言えよ? 無理して俺の訓練や勉強に付き合ってくれなくてもいいんだからな?」

 

「えぇ~と、うん。疲れては無いんだけどそれはもっと別な、ね。全然問題ないから大丈夫だよ」

 

 

 それこそ仕方がないじゃん……クロエさんとデートしてから数日経ったけどあの映像(クロエさんの下着姿)が未だに脳裏に焼き付いてるんだから。それほど衝撃的だったんだろうねあの光景は……僕のおバカな脳でも強く覚えてくれるぐらいのものだったに違いない。そろそろ忘れたくないけど忘れないとドンドンおバカになりそうだから忘れよう。いやだけど忘れよう。

 

 

「ほら! 早く行かないとチー姉ちゃんの授業に遅れちゃうよ! 走るよイチ兄!」

 

「うぉいっけね! 遅刻なんてしたら出席簿で叩かれる! 急ぐぞ!」

 

 

 もう叩かれたくないからイチ兄と一緒に走って男子更衣室へ、僕は中に着てるから制服を脱げばいいだけなんだけどイチ兄はどうやら着替えないといけない様子ーーごめんね。僕はもう叩かれたくはないんだ……お先に行かせてもらうよ!

 

 なんだろう、後ろから置いてくなぁって声が聞こえたけと気のせい! 気のせいったら気のせい!! 走ったおかげかどうやら間に合ったようだ……もちろんイチ兄も。と言ってもギリギリだったけどね? あとなんかひどいぞって言われたけど仕方ないじゃん。ちー姉ちゃんの出席簿アタックは痛いんだもん。

 

 

「よし。これよりISの基本的な飛行操縦の実演を行ってもらう。織斑、オルコット、篠ノ之弟、ISを展開しろ」

 

 

 どうやら今日から本格的なIS授業に入るようだね。それにしても……気まずいなぁ。だって周りがスク水っぽい恰好なんだよ? その中に男である僕たちが紛れ込んでるなんて一種の罰ゲームだね。ちなみに気まずいだけで恥ずかしいとかじゃないよ? クロエさんの下着姿に比べたらこれぐらい……何回引っ張るんだ僕は! いい加減忘れようよ!

 

 とりあえずISを展開しないことには話が進まないのでハイ展開。軽く体を動かしてもどこの違和感がないから変な負荷はかかってないっぽいね。そしてセシリアさんも展開早いなぁ、イチ兄も慣れてきたのか訓練の時よりも早くなってる。さすがイチ兄!

 

 

「よし、飛べ!」

 

 

 ちー姉ちゃんの言葉とともに足に力を入れてジャンプ。あれ? セシリアさんもイチ兄も飛ぶの遅くない? なんで驚いてるの?

 

 

「さすがですわね。織斑先生の言葉とほぼ同時に瞬間加速なんて」

 

「うん? あぁ、無意識に使っちゃってたのか。ごめんね? びっくりさせた?」

 

「いえ。凪さんはいずれ日本の代表候補生に推薦されると思いますわ。これほどの操縦技術を持っていますもの」

 

「あぁ~うん、来たら考えるよ」

 

「二人とも速いよなぁ~どんなイメージしてるんだよ?」

 

 

 セシリアさんに遅れてイチ兄が僕の隣にやってくる。どんなイメージって泳いでる感じだけど? それにしても耶識……機嫌よさそうだね。なんだかいつもよりも動けそうな感じがするよ。並んで飛んでいると下からちー、織斑先生がイチ兄遅い、スペックでは僕たちの中ではトップだという感じのご指摘があった。うん、確かにそうだよね? だってたばねぇ制作でしょ? そりゃあ性能は破格なものだよ。

 

 

「普通に海を泳いでいる感じだよ?」

 

「うん? 泳いで空は飛べないだろ?」

 

「普通に考えるんじゃなくてイメージ。僕は空を泳いでいる、漂っている、潜って浮いて、世界を感じている。頭で考えるよりも感覚でやったほうが楽だしね」

 

「へぇ~イメージか、イメージ……後でちょっと考えてみるか」

 

「それがよろしいですわ。もしよければ凪さんとご一緒にお手伝いいたしますわよ?」

 

「あぁ。助かるよ」

 

 

 うんうん。友情友情。あのクラス代表決定戦からイチ兄もセシリアさんも仲直りしたしつい熱くなって日本を侮辱してしまったこともクラスのみんなの前で謝ってからこんな風に普通に話せるようになった。それどころかなんと僕とイチ兄、箒姉と一緒に訓練に参加してくれてる! 代表候補生という努力の結果が身についているセシリアさんから教わることは結構ある、ただちょっと理論というか分かりづらい感じで説明されるのはちょっと、って感じだけど。言った通り僕は知識よりも感覚派、そりぁ知識も必要だけどそれをもとに実践できるかって言われたらノーだからね。

 

 

「よし。その場で待機。順番に急降下から完全停止をやれ。目標は地表から10cmだ」

 

「それでは凪さん、一夏さん、お先に失礼いたしますわ」

 

 

 一番手はセシリアさん。優雅に降りて行って言われた高さで完全停止……おぉ!

 

 

「完全停止ってどうやるんだ……今まで進んで引いてはやってたけど止まるはやってこなかったぞ……」

 

「う~ん、滑り台で降りる感覚でいいんじゃない? それじゃ僕も行くね」

 

「あ、あぁ! ってはやっ!?」

 

 

 浮いていた体を沈め、地面へ潜る。大丈夫……まだ、まだ、もう少し、分かる、見える、声が聞こえる……ここだ! よっと! ふぅ……成功。やっぱり気分はバンジージャンプだね! 高いところから落ちて紐が伸びきったところで止まる。イメージ通りだ。

 

 そして最後のイチ兄は僕たちのように急降下して体を引いて止まろうとする……あぁ~止まれたけどつま先が地面を抉っちゃった。でも今の感じだから慣れればできそうだね?

 

 

「うぇ!? もっと早いタイミングだったか……難しいな?」

 

「でも初めてにしては上手だと思うよ? どんなイメージで降りてきたの?」

 

「いや凪が言ってた滑り台で降りてる感じをイメージしながらやったんだけど難しいな……二人はよくできるよな?」

 

「慣れてるだけだよ。一番はセシリアさんじゃない? 僕は多分2cmぐらいオーバーしてるし」

 

「いえこれぐらいはできませんと代表候補生は務まりませんわ。も、もしよろしければ凪さん? 急降下から完全停止を教えて差し上げますわよ?」

 

「えっほんと? それじゃあ――」

 

「無駄口をしている暇があるのならば一つでも多くのものを身につけろ。それに今は私の授業だ、忘れているわけではないだろうな?」

 

 

 ハイ! 忘れていません織斑先生!! さて次は武装の展開を行ってほしいみたい……何を出そうかなぁ? う~ん、いっか。鉈とマシンガンにしよう。というわけではい呼び出しましたよ~やっぱり鉈のほうは馴染むなぁ。マシンガンはちょっとまだ慣れないけど使ってるうちに馴染んでくるよね? さて隣でセシリアさんがスナイパーライフル、イチ兄が刀……うぅ、あの刀を見るたび体が震えるんだよね。なんでだろ?

 

 

「流石だな代表候補生。篠ノ之弟もまずまずだ。織斑、お前は少し遅れているぞ。早く慣れろ」

 

「はい……」

 

「それとオルコット。お前は隣にいる篠ノ之弟を撃つつもりか?」

 

「はい?」

 

「ち、違いますわ! 凪さんを撃とうだなんて考えてもいません!」

 

 

 あぁ~展開した時、銃口が僕に向いているのか。でも別に撃たれようが何されようがどうでもいいって感じだから僕は気にしてないんだけどなぁ~? なんか僕の横に立っていたのが悪かったのかセシリアさんが怒られちゃったな……次からは立つ場所も考えようっと、あだっ!?

 

 

「下らんことを考えるな。罰として全武装を一斉に展開して見せろ」

 

「えぇ~……はい分かりました。うんと……ほいっと」

 

 

 鉈とマシンガンを一旦戻して拡張領域に閉まっている全ての武装を一気に出す。右手には鉈、左手にはマシンガン、足元にはハンマーと斧と刀。これが全部です織斑先生! タイムも僕的にはまずまずな感じだと思うんですがどうでしょうか! なんか呆れられた気がしたけどとりあえず許されたみたい……よかったぁ!

 

 そして実演は終わって残った時間は僕たち専用気持ちが他の子のIS操縦を見守ることになった。ただ見てるだけだけどいいなぁ~阿頼耶識なしでも動かせるなんて。あぁ待って、降りる前にしゃがんでね? じゃないと次の人が下りれないからさ。言ってみるもんだね、ちゃんと言うことを聞いてくれた……ありがたいね! 大体一周したあたりでチャイムが鳴って授業は終了。みんなで一緒に片づけつつ今日の授業は終わり。さぁ訓練の時間だ!

 

 

「では今日は射撃武器について教えたいと思います。凪さん、こちらをどうぞ」

 

 

 時間は進んで現在は放課後。何時ものように僕とイチ兄、箒姉とセシリアさんが訓練施設に集まっていた。僕たちは専用機、箒姉は訓練機を纏っている……けどなんで連日借りれるんだろう? 確か予約でいっぱいだったはずじゃぁ――ハイダマリマス!

 

 と、とにかくセシリアさんがスナイパーライフルを渡してきたから受け取ろう。結構重いね? それに大きい、見たまんまだけど持ってみるとその大きさに驚くね。ちなみに今日は僕とセシリアさんが射撃訓練、イチ兄と箒姉が近接訓練の予定。この組み合わせを考えた僕を誉めてもいいんだよ? 名称はスターライトmkIII、ということはこの子は三代目かな? スナイパーライフルはたばねぇの所で一回だけ撃ってみただけだし殆ど初心者なんだよね。

 

 

「凪さんが撃てるように使用許諾(アンロック)していますからお好きに撃ってみてください」

 

「ありがとう。それじゃあお言葉に甘えて――っ!」

 

 

 端末で浮遊するターゲットを出現させてそれを狙い撃つ――けど読み間違えたのか背後の壁に当たるだけでターゲットには傷一つない。難しいなぁ……マシンガンだったらバババって撃てるんだけど一発ずつじゃ撃ちにくい。でも今のでなんとなく感覚は掴んだ。次は当てれる。ちなみにだけど使用許諾というのは他の人が持つIS武装を使用できるように許可してくれることを言うんだ。だからなんだそれって顔をしながらこっち見なくてもいいよイチ兄?そしてこの使用許諾だけど僕からセシリアさんに使用許諾出そうとしても耶識が拒否してダメ、でもセシリアさんから僕になら問題ないみたい……もう我儘言っちゃダメだよ? あぅ、刺さないでよもぉ。

 

 

「惜しいですわ。狙撃というのは弾道予測、移動予測、風向きなどあらゆる面に気を使わなければいけません。こ、コホン。ではわたくしがやり方を教えて……はい?」

 

 

 何か横で言ってたけどごめんなさい、聞いてなかった。最初に出したターゲットは今撃ったレーザーで消滅、少し空を飛んでターゲットを複数出現、それぞれ動きながら狙い撃って消滅させていく。うん、阿頼耶識で繋がってるおかげで撃った時の感覚が残ってる……だったらそれを頼ればいい。でも撃ってみてあれだけど僕には合わないね。やっぱり接近して斬りかかって殺さなきゃダメだ。体が納得しない。

 

 

「い、一度撃っただけで覚えたというのですか……こ、これではわたくしのプランが……」

 

「ただいま~はい。ありがとうセシリアさん、貴重な経験だったよ」

 

「え、えぇ! それはよかったです……やはり凪さんは隙がありませんわ」

 

「何が隙がないの?」

 

「なんでもありません!」

 

 

 む~気になるけどこれ以上の詮索は悪いからここでやめておこう。隙が無い……隙が無い……あぁ、攻撃する隙がないってことかな? あったりまえだよ! 隙なんてあったら亡国機業と殺しあえないって! あの2年間は非日常って言っても過言じゃないしね。その分、たばねぇとクロエさんとの生活も楽しかったけど。

 

 そして時間になったから今日の訓練は終わり。いったん部屋に帰ってシャワーを浴びてからご飯を食べるために食堂へ。なんでも今日はクラス代表決定おめでとうパーティーとのこと。1年1組の子が全員出席で楽しむんだって……イチ兄にはごめんなさいだけど僕も楽しもう! さぁ甘いもの食べるぞぉ! パフェパフェパフェ! 今日も耶識を動かしたから糖分補給しないといけないし仕方ないね!

 

 

「では! 織斑君クラス代表おめでとー!!」

 

 

 パンパンパーンとクラッカーが鳴り響く。上のほうにはクラス代表決定おめでとうと書かれた紙が貼ってある。あんなのまで作ってるなんて気合入ってるなぁ~とりあえず甘いものっと。パフェ~! いっただきま~す!

 

 

「……なんか人多くないか?」

 

「気のせいじゃない? もぐもぐ」

 

「またお前は……控えないと虫歯になるぞ」

 

「ちゃんと歯は磨いてるもーん。糖分足りないから許してよ」

 

 

 箒姉に呆れられたけど仕方がないじゃん。さっきもISを起動して糖分足りないんだし。あぁ~甘い~美味しい、でもあんまり食べ過ぎると体型がヤバくなりそうだからほどほどにしたい。でもやめられない。パフェを食べてると他のクラスの子や僕のクラスの子が甘いもの好きなんだねって聞いてきたから食べないと体が動かないって言ったらわかるぅ~と同意してくれた。なるほど、女の子は常時阿頼耶識で脳を酷使しているんだね……冗談だけど。でもやっぱりイメージ的に甘いもの=女の子の感じだから当たり前なのかな? 食べながら色々とお話し、どこのお店のスイーツが美味しいとか好きな食べ物は何とか部屋でのちー姉ちゃんはどんな感じとか。好きなものはなんでも、お店の情報詳しく教えてください、ちー姉ちゃんの私生活を言うと叩かれるから内緒。でもかっこいいよ。

 

 

「どもども~篠ノ之凪君だよね? お話し中ごめんね~ちょっといいかな?」

 

 

 眼鏡をかけて後ろで髪を束ねている年上っぽい女の人が話しかけてくる。そういえば視界の端っこでイチ兄とセシリアさんにインタビュー的なものをしてたような気がする……あれ? 僕もなんだ? 名刺を渡されたから受け取って名前を見ると黛薫子、あっやっぱり先輩なんだ。それも新聞部の副部長さん。

 

 

「今話題の男性操縦者の織斑一夏君と篠ノ之凪君にインタビューしにきました! さっき織斑君の取材は終わったから今度は篠ノ之君の番! 答えてもらってもいい?」

 

「いいですけど僕なんかでいいんですか? イチ兄とかセシリアさんより目立たないですよ?」

 

「またまた~私たち上級生の中でも噂になってるんだから。新入生の中で凄い操縦をする子がいるってね。あっ私は整備科に所属してるから何かあったら言ってね。きっちり整備してあげるから!」

 

「あ、あはは……ありがとうございます」

 

「ではお聞きします! ISを動かしてみた感想をどうぞ!! ちなみに織斑君にはクラス代表になった感想を聞いたよ」

 

 

 なるほどね~整備科ということは他の子のISも見てたりするから僕よりはるかに上の存在というわけだ。お、教えてほしいし見てもらいたいけどその瞬間、阿頼耶識の存在がばれちゃうから自分でやるしかないんだよね……あとで技術的知識的に教えてもらいに行こう。とと質問に答えなきゃ……動かしてみた感想かぁ~なんだろ? あんまりカッコよく言えないけどこれしかないかな。

 

 

「ワクワクする、かな」

 

「ほう? それはなんでかな?」

 

「だってISってカッコいいでしょ? 空も飛べるしロボットみたいだし、女の人しか動かせないけど憧れてたんだ。たばねぇが原因でいろいろあったけどそれだけは変わらなかったし。だからワクワクしてます」

 

「おぉ~良いねぇ。ISを見るだけでも嫌って男の人もいるけど篠ノ之君は別なんだね。おっけ~ありがと~それじゃ専用機持ちの人たちでスリーショットを貰いたいな。並んでもらっていい?」

 

「はーい。イチ兄、セシリアさんも撮ってもらおうよ?」

 

「おう」

 

「かしこまりましたわ――ちなみにその写真は、ツーショットはないのですの?」

 

「愚問だね。それも撮るにきまってるじゃないか!!」

 

 

 女の子たちにおーという声が響く。な、なんで一致団結っぽいことになっているの!? いや別にいいんだけどさ。というわけで最初はイチ兄、セシリアさん、僕の並びで一枚写真を撮る。そのあとは僕とイチ兄、セシリアさんと僕、セシリアさんとイチ兄、なんだか黛さんは大儲けできそうとか呟いてるけどそこまで高く売れないんじゃないかな? あと写真写り大丈夫? 目とかつぶってない?

 

 

「楽しかったぁ~」

 

 

 時刻はすでに夜の11時、クラス代表決定おめでとうパーティーも終わったので部屋に戻って再びシャワーを浴びて現在布団の上でゴロゴロ中。ちー姉ちゃんはさっき仕事が終わったようでシャワーを浴びてます……だからってスーツとかストッキングとかその辺に放り投げないでよもう。皆の憧れ織斑先生が上にワイシャツ、下は下着の状態で着てたものをその場に放り投げてシャワーを浴びに行く姿はあまり見せられるものではない、かもしれない。そしてしばらくするとちー姉ちゃんが浴び終えたのか戻ってくる……はいシャツと下着です、だからなんでパジャマを着ないの? 気にしないし何も思わないからいいけど一応僕男だよ? あっ年下すぎて意識されてないだけか。納得だけど流れるようにお酒って……良いけどさ。

 

 

「ふぅ……やはり風呂上りにこれは格別だ。ここ最近上の空だったが落ち着いたか? 大方束のやつが何かしてきたのだろう?」

 

「そ、そのような違うような……で、でももう大丈夫ですはい!」

 

「ならいい。そうだ、噂になっているが2組に転校生がやってくる。公表されていないとはいえ各国の政府はお前の存在を知っている、接触を目的としたものかもしれん。用心しておけ」

 

「はーい」

 

 

 今初めて知ったけど転校生がくるんだ? どんな人なんだろうか……いい人っぽかったら友達になってもらおうかな。ちー姉ちゃんと一通り世間話をした後、眠くなったからそのままおやすみなさいと言って布団の中へ。大丈夫忘れる忘れられるきっと大丈夫――奇麗だったなぁ、ちがうそうじゃない。寝る! 寝ろ!

 

 目が覚めると外は明るかった。良かった寝れた……頑張れば何でもできるんだね。そのまま起きて顔を洗い歯を磨く。何時ものようにISスーツの上に制服を着てイチ兄と箒姉の部屋へ、そしてここ最近の日課である箒姉の髪形を整えて食堂に向かうことになった。途中でセシリアさんも加わりこれまたいつものように一緒に朝食、周りから雑談で聞こえてくる内容は転校生の事だらけ、やっぱりみんな気になるよねぇ。

 

 

「へぇ。転校生が来るのか」

 

 

 教室でクラスの子から転校生が来るということを聞いたイチ兄は珍しいなって顔をしていた。確かに転校自体はあまりないと思うけど僕と箒姉は日常茶飯事だったからなぁ。あんまり長く一つの土地にいなかったような気がする。でも何処の国の子なんだろう……あっ中国なんだ。

 

 

「中国か……あいつ元気かな?」

 

「あいつ?」

 

「あぁ。箒と凪が転校した後、入れ替わるように中国から転校してきたんだよ。そこから中学2年の頃まで一緒にいたんだけどこれまた親の都合で転校していったんだ。なんだかんだで仲良かったし思い出すな」

 

「……ちなみに男、女?」

 

「女子だ――ってなんで凪が気にしてんだ?」

 

 

 だって後ろから早く聞けって視線で訴えてくる姉がいますんで。もうこんな事ぐらい自分で聞けばいいのに……さりげなく情報収集も恋の駆け引きには必要な技術だよ? 僕はできないけど。大体僕たちが転校していったのは小学4年生、そこから現在まで交友関係に変化がないのはおかしいし普通に女友達がいてもおかしくないと思うよ? アッハイ、後で相談に乗ります乗らせてください、僕は箒姉の味方です。でもその子が来るってわけじゃないんだしそこまで考えなくてもいいのに。

 

 他の子達から話を聞くとどうやら中国の代表候補生らしい。そして転校と同時に2組のクラス代表が入れ替わったようだ……わずか数週間で入れ替わるなんて……なにをしたんだろう? 僕たちが話していると教室の扉をおもいっきり開ける人がいた――クロエさんのように小さくツインテール、リボンかわいい、あと肩を出してる女の子。なんだかイチ兄が驚いてるけどもしかしてさっき言ってた昔一緒だった人? フラグ回収早すぎるでしょ……普通に来ないでしょって思ってたよ。それでは箒姉、後で相談に乗りますね。

 

 

「お前……鈴か?」

 

「そう! 中国代表候補生、凰鈴音(ファン・リンイン)! 今日は宣戦布告に来たってわけよ!」

 

「――ぷっ、お前何カッコつけてるんだ? ものすごく似合わないぞ?」

 

「なぁ! 何それ! せっかく考えてきたのに! てか笑うな!!」

 

「いや笑うだろ……久しぶり、元気そうだな」

 

「そ、そうよ! あ、アンタも元気そうじゃない……きょ、今日はこのくらいにしといてあげる! また後で来るからね一夏! 逃げるんじゃないわよ!!」

 

 

 あっ察し。ふぅ――あの人もかぁぁぁぁぁ!!!!! なになんなの!? イチ兄は幼馴染的な人を惚れさせる能力でもあるの!? 確かにカッコいいし頼りがいあるけどそれはダメでしょ! いやダメじゃないけど! あぁ背中に感じる負の視線……だ、ダークサイドに落ちかけているだと!? ま、負けるな箒姉!! 今までの頑張りを思い出すんだ!! 大丈夫! 今までの行いからイチ兄からは感謝されてるしまだ焦る時じゃない! 大和撫子だよ箒姉! よし何とか持ち直した! 人がダークサイドに落ちかけるところを始めて見たけど焦るね! しかもそれが実の姉ならなおさら焦るよ!

 

 その後、授業中に僕の目の前の席から出席簿アタックの音が鳴り響くことになった。箒姉……持ち直してなかったのか……!




頭では落ち着こうとしても心がそれを拒否していたようでモヤモヤしていた箒でした。
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