篠ノ之家の弟は阿頼耶識使い   作:木の人

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IS学園の生徒会長

「うぅ……何故出席簿はあのように硬いんだ……」

 

「上の空だった箒姉も悪いと思うけど?」

 

「し、仕方ないだろう……! いきなり一夏の傍にまた別の女が現れたんだ……落ち着けるわけがないだろう!」

 

 

 お昼ご飯の蕎麦を啜りながら箒姉の相談に乗っている。理由は単純明快かつシンプルだ、イチ兄の知り合い、それも惚れているであろう女の子が出現したから。ちなみにまたというのはこの前デートという名の買い物をした時に寄った食堂でこれまた同じくイチ兄に惚れている女の子がいたらしい。なぜ分かったか? 本能的に察したそうです。女の子って怖いね? 視線を横に逸らすと少し離れた席でイチ兄と転校生の子が仲良く一緒にお昼ご飯を食べているのが見える。仲良さそうだね、箒姉はご立腹だけど。

 

 

「だ、大体……何故一緒の席で食べようと言わないんだ……言ってくれればこのように悩むこともないというのに……!」

 

「あの子がイチ兄を引っ張って行っちゃったからでしょ? 言えばよかったじゃん、紹介してとかさ」

 

「せっかくの再会を邪魔するのは……ダメだと思ってだな、お前との再会の時も一歩引いて見てくれてから……そ、それに空気の読めない女と思われるのも、い、嫌だ……だから言えなかったんだよぉ……」

 

「泣かないでねめんどくさいから」

 

「実の姉を面倒とかいうなぁ……」

 

「じゃあ僕が食べ終わったら一緒に行こう? 僕が間に入れば大丈夫でしょ?」

 

「……うん」

 

 

 普段分かりやすいけどこういうときだけめんどくさい、流石たばねぇの妹だね。うん? そう考えるとたばねぇの弟の僕もめんどくさいことに……この件は考えなかったことにしよう。うん蕎麦が美味しい、ほら箒姉? 早くうどん食べないと伸びるよ? ヤキモチ焼いているのは十分すぎるほど分かるからとりあえず食べようよ。ちなみに今日のお昼ご飯は僕が蕎麦、箒姉がきつねうどん、セシリアさんがパスタという麺類づくしであります。美味しいけどね。

 

 

「箒さん、恋とは忍耐力ですわ……わたくしは応援しております――ですのでお義姉さまと」

 

「呼ばせるとでも思っているのか? 凪は渡さんぞ」

 

「ぐぬぬ……!」

 

 

 何やら隣で食べてるセシリアさんと箒姉が睨み合いを始めた。何故だろうか、この二人の背後に勇猛な武士と気品があるお嬢様が見える……あれ? こういうのって龍と虎とかそんなんじゃないの? まぁいいけど、でもセシリアさんの言う通りだよ、恋は忍耐力がないとダメ。うんうん、いい言葉だね。でもなんで渡す渡さないの話になってるの? というよりなんで睨み合ってるの? う~ん、蕎麦美味しい。

 

 蕎麦を食べ終えて箒姉とセシリアさんが食べ終えるのを待つ。こうしてみると箒姉は箸の使い方上手だなぁ、セシリアさんも食べ方に上品って感じがしてる。僕の視線に気が付いたのか二人はどうした的な感じで聞いてきたから箸使いが上手、食べ方が上品だなって思ったというと箒姉は当たり前だろうと自慢げになりセシリアさんはこれでもオルコット家の当主ですからとこれまた自慢げに。どや顔流行ってるの?

 

 

「イチ兄、今大丈夫?」

 

 

 そんなわけで箒姉のために仲良く雑談中の二人の元へ。流石イチ兄、気にせずおぉ良いぞと言ってくれた。流石すぎる。

 

 

「あっ仲良くお話し中にごめんね? 転校してきたって聞いたから挨拶したかったんだ? えっと、鳳さん? 鈴音さん?」

 

「鈴でいいわよ。鳳とか呼びにくいでしょ? へぇ~あんたが噂の二人目の男性操縦者なんだ。半信半疑だったけどホントだったのね」

 

「うん。僕は篠ノ之凪、一応非公式扱いの男性操縦者です。これからよろしく」

 

「こっちこそ。中国代表候補生、鳳鈴音、さっきも言ったけど鈴でいいわ。上からあんたに接触しろってうるさかったけどそっちからやってきてくれて助かるわ。これでもう何もやらなくていいし」

 

「あはは……お、お疲れさま? まぁいいや、はい」

 

 

 いつものように手を伸ばして握手の構え。鈴さんもちょっと驚いたっぽいけどちゃんと受けてくれた……やっぱり挨拶は自己紹介から握手、これでどうにかなるんだよ。さぁ箒姉、お膳立ては親し間にも入ったから色々と聞いてよ? はぁ……もう意気地なし。分かったから聞くから聞けばいいんでしょ? だから見えない角度で抓らないででよもう。

 

 

「ところでイチ兄から中学まで一緒だったって聞いたけどもしかして恋人同士だったとか?」

 

「なぁっ!? い、一夏とこ、恋人なんて……」

 

「違うぞ? ただの幼馴染だ。言っただろ? 二人が居なくなった後に転校してきたって。そっからの付き合いってだけだ」

 

「……ちょっとくらい焦りなさいよバカ」

 

「ん? なんか言ったか?」

 

「何でもない! でも、へぇ、アンタが一夏と一緒にいたっていう幼馴染?」

 

「あぁ。篠ノ之箒だ。これからもよろしく頼む」

 

「えぇ。こちらこそ――違う意味でもよろしく」

 

 

 握手してるけど僕には見える! 勇猛な武士と猫が戦っている姿が――あれこれただじゃれ合ってるだけじゃない? 気のせいかな? 最近色々とあって疲れてるのかなぁ……今日は早めに寝よっと。

 

 

「ちなみに箒と凪がファースト幼馴染、鈴がセカンド幼馴染だ」

 

「なんでドヤ顔で言ってるの?」

 

「いや幼馴染で被るかなって思って分けてみただけなんだが?」

 

「……そうなんだ。というより僕と箒姉はワンセットなんだね?」

 

「だって姉弟だろ? 出会ったのも一緒だし」

 

「ふぁ、ファーストか。それはつまり一番だな、うんうん、良いぞ一夏」

 

 

 自分の世界に入ってるところ悪いけど気づいて箒姉。僕とセットでファーストだからね? もう単純なんだから我が姉は……この部分をもう少し恋愛に向けれたらどれだけ楽か。無理だけど、絶対に無理だけど、賭けてもいいぐらい無理だと思うけど。だって今でさえメールで『一夏と話す話題はどんなのがいい!?』『着替えは外に出てもらったほうがいいか!?』『夜食に何か作ったほうがいいだろうか!?』等々頻繁に届くし。もうさぁ、同棲して緊張してるのはわかるけど少しは姉らしく……出会った時の姉らしさが嘘のように消えてるから頑張ってよ。

 

 

「篠ノ之……あぁ、アンタたち姉弟なんだ。双子なんて珍しいわね? そっちが姉でアンタが弟でしょ」

 

「大正解、よく分かったね?」

 

「普通にそっちの方が姉っぽいしアンタどう見ても兄に見えないもの」

 

 

 

 膝から崩れ落ちそうになった、いや本当に……むしろ崩れ落ちなかっただけすごいと誰か誉めて……え? なに? 僕って兄らしさがないの? そっかぁないんだぁ……ぐすん。泣いてない、泣いてないよ……!

 

 

「当然だ。私は姉だからな」

 

「――弟に朝髪型整えさせたり恋愛相談してくる癖によく、い、痛いって分かった黙るから!」

 

「やっぱり仲良いよな、箒と凪って」

 

「こ、コホン。遅くなりましたがわたくしもご挨拶いたしますわ。イギリス代表候補生、セシリア・オルコットです。よろしくお願いしますわ鈴さん」

 

「へぇ。アンタ代表候補なんだ。まぁ良いわ、仲良くしましょ」

 

 

 ふむぅ、なんでセシリアさんと鈴さんが握手しても背後に何も出ないんだろう? 疲れたのかな? そこから一緒のテーブルで話し始めてイチ兄がクラス代表になったことの話題になった。ちなみに鈴さんは転入早々クラス代表変わってと言って実力行使をして勝ち取ったらしい。なんという……まさかイチ兄と話題を合わせるためにやったとでもいうのか……鈴さん、できる! でも残念ながらそんな思惑を知らないイチ兄はなし崩しでなと言い本当なら凪が代表だった的な事を言い始めた。だから仕方がないじゃん、ストップかかったんだもん。これでもちょっとだけ不満なんだよ? トラウマって何? 僕はトラウマにさせるようなことしてないもん。ただ全力で倒そう(殺そう)としてるだけだもん。

 

 

「2組でも聞いたけどそんなに強いの? そんな風に見えないんだけど? そもそも強いんだったらなんで代表になってないわけ?」

 

「凪さんはわたくしと一夏さんをほぼ被弾なしで倒した実力者ですわ。ただそのやり方がえげつない、コホン。必死だったため勘違いされてしまい織斑先生からストップと言われてしまっただけですの」

 

「鉈、ドリル、杭だもんなぁ~あれ戦った俺だから言うけど怖いぞ? 何事もないようにやってるけど少し控えたほうがいいって」

 

「えぇ~……? あれぐらい普通じゃない?」

 

「凪。姉として言おう――お前の普通は普通ではない」

 

 

 嘘でしょ……だ、だってたばねぇやクロエさんは何も言ってこなかったよ!? そ、そうか! 皆は非日常を味わってなかったからだそうに違いないうんそうだよきっとそう……だから僕は普通! 普通ったら普通!!

 

 

「そ、そういえば鈴さんって代表候補生なんだよね? それってイチ兄と離れてからなったの?」

 

 

 話題を変えよう。このままだと僕のライフがゼロになりかねない。というより気になってたしね、中学2年生の時に転校していって今日IS学園に転校。つまりほぼ1年ぐらいで代表候補生になってる計算。そんなに簡単になれるのかな? きっとこの人も努力したんだろうなぁ、主にイチ兄に会うために。

 

 

「まぁね。IS適正受けたら結構高くてスカウトされたのが切っ掛け。まぁ体動かすのは得意だったし訓練もなんてことなかったけどね」

 

「相変わらずだな。羨ましいよ……俺なんて頑張っても成果でないんだぞ? 箒や凪にセシリアが手伝ってくれてるってのによぉ……」

 

「教え方悪いんじゃない? だ、だったら私が教えてあげよっか?」

 

「ん? 俺はいいけど箒達は? てかお前2組なのに大丈夫か?」

 

「問題ないわよ。ねっ? ねっ?」

 

「我慢だ、我慢、私が役に立っていないのは事実……怒るのは筋違い、だがぁ……い、良いと、思うぞ。一夏が慣れるためにも、上級者がいたほうが良いだろう、良いだろう……!」

 

 

 うわ~耐えてる、必死に耐えてるよ我が姉は……きっと心の中では断りたい、でも断ったら一夏が不審に思う、そうなれば私が一夏に好意を抱いていることがばれてしまう、それはまだ早い、まだ駄目だ……嫌だがここは受け入れよう、でもいやだとかそんな感じなんじゃないかな? ものすっごく手に取るように分かるんだけど? でも鈴さんもまさか受け入れられるとは思わずちょっと困惑してるっぽい。いやそうだよね!? 恋敵が許容したらそりゃあ驚くよね!? ちなみにセシリアさんもオーケーの返事、僕もあまり気にしないから同じ感じで返答。そんなわけで今日の放課後はこのメンバーでの訓練となりました。やったね……はぁ、後で箒姉の相談に乗らないといけないね。あと対策も考えておこう。なんのって? イチ兄を落とすための対策に決まってるじゃん。

 

 

 そして時間は進んで放課後、今回はアリーナの使用許可が下りたのでそこで訓練を行うことに。もはや何時もの事となった訓練機姿の箒姉にはもうツッコミ入れない、どうせたばねぇの妹だから優先しろとか政府からIS学園に言ってきたんでしょ? というよりそれ以外考えらんないし。

 

 

「それじゃお邪魔するけど何時もどんな事してんのよ?」

 

「うん? 箒と近接戦闘とかセシリアから射撃の回避の仕方とかだぞ? そういえば凪とはなんかやったことないな?」

 

「だって刀怖いからあんまり戦いたくない」

 

「いやなんだよその理由……?」

 

 

 何ってこれが全てを物語ってるんだけど? イチ兄が持ってる雪片を見るだけで怖いんだよ! なんか斬られて怪我しそうで! だから僕は知識系だけで他は箒姉、偶にセシリアさんに任せます!

 

 あんまり話を長引かせて訓練の時間を減らすのは嫌だからこの辺りでいったん終わって訓練を始める事にした。鈴さんもどうやら専用機を持っていたようで展開してイチ兄とセシリアさんと一緒に近接&射撃回避訓練を始めたけどあれが鈴さんの専用IS、えっと名前は甲龍(シェンロン)、第三世代型なんだ。見た目も赤みが掛かった黒っぽいやつで鈴さんのイメージ色に合ってる気がする。でも何だろうあの両肩の近くに浮遊してる丸いスラスター? なんかしてきそう……というより良いの箒姉? イチ兄と訓練しなくても?

 

 

「凪、私は昔お前に教わったことを実践する時が来た。押してダメなら引いてみろ、つまり此処で私も参加するのではなく一度引き、一夏を惑わせる。そうと決めた途端、今までのモヤモヤが一気に無くなったのだ! 流石私の弟だ! うん、私は良い弟を持った」

 

「あっなるほどね。箒姉が良いなら良いけど……意味ないと思うなぁ、言った僕が言うのもあれだけど」

 

「――言うな。私も心の片隅で思っているんだ……でも、やらないよりはいいだろぉ……!」

 

「あっごめん聞こえてた? あと落ち込まないでよもう。ほら、早く訓練しよ? 何をすればいい?」

 

「……そ、そうだな。今日はお前に刀の使い方を教えようと思う。偶には弟の役に立ちたいからな! 刀を持っているだろう? さぁ早く出すんだ」

 

 

 箒姉の言われた通り拡張領域から刀を呼び出す。う~ん、使い方って言っても引いて斬るでしょ? それぐらいは分かるんだけど戦闘中に行えるほど器用じゃないの……あれ? これ狙撃の時のように阿頼耶識の感覚頼りで何とかなるんじゃない? 今まで気が付かなかったけど?

 

 

「良いか? 刀を振る時はこうブーンとしてスパァとするんだ!」

 

「いや知ってるし。引いて斬るのが苦手なんだけどどうにかなんない?」

 

「そういう時はスパーンとやってズサァとだな」

 

「下手に力入れないで刃を添えて腕で引く? ホント?」

 

 

 とりあえずやってみようかな。相手は箒姉がしてくれるみたいだし遠慮なくやろっと……ふぅ、隙だらけ。打鉄は防御メインだから装甲を狙っても大したダメージはない。だから狙うのは間接、肌が露出している部分を的確に斬らないとダメか……よし。

 

 刀を握り、真っ直ぐ箒姉に向かって走る。流石箒姉……迎え撃つ気満々だね。じゃ遠慮なくやるよ。剣道のように両手で握った刀を僕に向けて振り下ろす動作と同時に横に飛んで一回転、そのまま刃を右腕、二の腕部分を叩いて斬る。ちぃ、だけど今の感覚からちょっと補正を掛ける……地面を蹴って背後に飛び、切り払った腕を引いて貫くように突きを放つ。流石に読まれてたのか刀で防がれたけど目的はこれじゃない。流れを止めず、三日月を描くように腕を回し、接近と同時に箒姉の腹に刃を当てて魚を捌くように引いて斬る。あぁ、こんな感じなんだ。その場で止まって横に回転、それと同時に二の腕を狙って一閃。とりあえず関節と肌が露出してるところを狙ってるけど使いづらい……というより刃が長いから距離感が掴めない。

 

 

「やはり速いな……今までも見ていたが実際に打ち合ってみると当たる気がしない。それよりもだ、少しは使い方は分かったか?」

 

「なんとなくね~でも合わない。これ長すぎるから距離感が掴みにくい」

 

「刀とはそういうものだ。そういう時はシュッときてドカーンとしたら分かると思うぞ」

 

「重心移動とか体の使い方とか大事なのは分かるけどそれとこれは違うの。やっぱり僕は鉈とか刃が短い方が良いかな。そこから掴み技に派生できるしこれよりも追撃しやすい」

 

「むっ気に入らんがお前が言うなら……だ、だが偶には私に教えさせてくれないか? 少しでも慣れれば何かに役に立つだろう、と思いたい……ダメか?」

 

「誰ももうやらないって言ってないでしょ? それじゃまだ時間あるんだし教えてね」

 

「あぁ!」

 

 

 そこから僕と箒姉は刀を握って軽い模擬戦、終わるとあの場はとほぼ擬音で説明されるけど言いたいことは分かるから僕の考えを言いつつ改善策を一緒に考える。それが終わるとまた模擬戦。離れた所にいるイチ兄達からなんで分かるんだよとかどうして言っていることが理解できますのとかむしろあれ説明してんのという声が聞こえてくるけど……普通に分からない? あれ僕だけ? 確かに独特だけど凄く分かりやすいじゃん。クロエさんには負けるけど僕的にはこんな感じで教えてもらえればすっごく助かる。ただ身振り手振りで表現するのはいいけど揺れてるよ? それをイチ兄の前ですればもうちょっと意識――あっごめん叩かないでよ。

 

 

「姉に向ける視線ではないぞ」

 

「しょうがないじゃん、だって僕も男なんだし」

 

「女はそのような視線に敏感なんだ。私には良いが他の者にはするなよ――あとくれぐれも姉さんの前でもそのような視線はダメだ。喰われる」

 

「分かってるよそのくらい」

 

 

 箒姉と訓練しているとイチ兄達からそろそろ終わろうぜ的な言葉を言われたので今日の訓練はこれで終了、箒姉達は女子更衣室、僕とイチ兄は男子更衣室に向かうけど僕は上に制服着ればいいだけだから軽く汗を拭いて制服を着て終わり。イチ兄にお先にと言って外に出ると鈴さんが外で待っていた。

 

 

「あれ? アンタだけ? 一夏はまだ中にいるの?」

 

「うん。まだ着替えてると思うよ」

 

「そっありがと」

 

 

 なんという行動力。まさか男子更衣室に突貫する女の子をこの目で見るとは思わなかったよ……箒姉、負けないでね! さぁて僕は何時ものように地下に行って耶識を整備してから戻ろっと。ここ最近通る道を進んでエレベーターで地下へ、そしていつもの部屋で耶識を展開、ちょっと違和感があるところを手当てしてまた反応を見てまた手当。う~ん、やっぱり阿頼耶識頼りでも難しいな……スラスター以外の部分は殆ど手を加えれてないし。

 

 

「だ~れだ?」

 

 

 不意に目を誰かに閉ざされる。これは手だね……じゃなくてなんでここに人が!?

 

 

「だ、誰……?」

 

「そう警戒しないでいいわ。あなたの事情を知っている内の一人だから。こういえばいいかしら――阿頼耶識」

 

「っ!?」

 

 

 後ろを向くと立っていたのは水色の髪の女の子。なぜか扇子を持って僕を見てるけど今の僕はそれどころじゃない……なんで阿頼耶識を知ってるの……これを知ってるのはたばねぇとクロエさんとちー姉ちゃんだけなはずなのに……まさか亡国機業……! まさかIS学園に侵入してたなんて思わなかった! 早く殺さないとイチ兄たちが危ない!!

 

 視線を逸らして何もない場所を見る。一回じゃなくて何回も……表情は何かを狙ってます的な顔をしてると思う。一瞬だけ、一瞬だけ気を逸らしてくれるだけでいい……キタ! 顔は動いてないけど視線は僕と同じ所に行った! 今だ!! 後ろに飛んで即座に耶識と接続、鉈とマシンガンを瞬時に呼び出して戦闘態勢へ。でも何だろう……なんでびっくり顔してるの? 襲いに来たくせに戸惑うなんて変な奴。

 

 

「っちょ、ちょっと待って!?」

 

「なに? 亡国機業なんでしょ? イチ兄達に危害は加えさせない」

 

「待った待った違うって!! 織斑先生から聞いてるでしょ!? 生徒会よ生徒会!」

 

「……生徒会? その証拠は?」

 

「織斑先生に確認してもらっていいから! 何も襲いに来たわけじゃないから安心して! ねっ!」

 

 

 そう言ってさっきの僕のように意識を逸らそうって魂胆? でもそういえば此処に初めて来た時にちー姉ちゃんが生徒会の人が接触とか何とか言ってたような……いいや、聞こう。携帯でちー姉ちゃんに電話して事情説明、どうやら本当に生徒会の人のようですぐこっちに来てくれるようだ。ありがとうちー姉ちゃん! 忙しいのにごめんね?

 

 

「生徒会だって分かったんだからISは解除してくれない!? 殺意ありまくりな状態で睨まれるとホント怖いのよ!」

 

「ちー姉ちゃんが来たら解除する。たばねぇからも言われてるしね……信頼できる人が傍にいない時は油断するなって」

 

「もう! 情報じゃ素直な子ってなってたのになにこの頑固さ!」

 

 

 当たり前じゃん。阿頼耶識の事を知ってる人をすぐ信用しろって言われたらノーって答えるよ誰だって。

 

 そしてしばらくするとちー姉ちゃんがやってきたので僕はISを解除する。ふぅ、怖かったぁ~僕はそれほど強くないからあんまり驚かさないでほしいなもう。

 

 

「全く、会う時は一度私に話を通すことはできんのかお前は?」

 

「すいませんでした……まさかここまで警戒されるなんて思わず、それよりも自己紹介するわね。私は更識楯無、このIS学園の生徒会長よ。驚かせたことはごめんなさい。でも敵じゃないから安心してね」

 

「……篠ノ之凪です。僕の方もごめんなさい。聞きたいんですけどなんで阿頼耶識を知ってるんですか? ちー姉ちゃんから聞いたの?」

 

「いえ。それ自体はこっちでも裏で存在してたことは調査済みだったのよ。人の脊髄に端子を埋め込んで脳で情報を処理する非人道的なシステム。貴方はその実験の生き残り、合ってる? 聞いていると思うけど私の家は所謂裏組織に対する組織って事で色々とこういうのを聞くことが多いのよ」

 

「へぇ~ところで僕に何の用事ですか?」

 

「ただご挨拶と困ってるようだったから。人知れず自分の手だけでISを整備、凪君も限界があるって感じてるんじゃないかって。だからちょっとお願い事を聞いてくれたらそれを解消してあげれるんだけど……どう?」

 

 

 ふむ……確かに僕一人だけだとかなり難しいし耶識の痛みを完全に取ることもできない。分かってるんだけど……あぁもう! あんまりこんな風に頭使ってあれこれ考えるの苦手なんだよね! いいや! 何かあったらその時はその時対処すればいい! イチ兄と箒姉とたばねぇとクロエさんとちー姉ちゃんに危害を加える的な事を感じたらその時殺せばいいし。できるか分かんないけど相打ちしてでも倒すまでだ! うんこれでいこう!

 

 内容次第だよって言うと生徒会長さんは扇子を開いて不敵に笑った。なんで扇子に簡単よって書いてるの?

 

 

「昨今のIS絡みの事件、その殆どが亡国機業と呼ばれる組織の犯行よ。このIS学園もいつ狙われるか分からないから凪君には対テロリスト対策として最終防衛ラインを担ってほしいの。勿論命令権は織斑先生で生徒会とIS学園からは本当に緊急時以外は命令権無し。ねっ? 簡単でしょ?」

 

「つまりちー姉ちゃん直属の一人部隊?」

 

「そうそう。だってこれ以上の事すると貴方のお姉さん、篠ノ之束博士に何されるか……もう大変なのよ!? 凪君は分からないかもしれないけど背後に篠ノ之博士がいるっていう恐怖!? もう私の一言で世界終わっちゃうんじゃないかって思うと寝れないのよ!?」

 

「あ、えと……本当にたばねぇがご迷惑を……ごめんなさい」

 

 

 苦労を察してしまったので即座に謝る。この人は良い人だね! 多分悪い人ならたばねぇの事考えないし。

 

 

「じゃ、じゃあやります! できるか分かんないけど頑張ります!」

 

「ありがとう。織斑先生もこれでいいです?」

 

「ふんっ拒否権はないのだろう? あのバカの事を考えれば私に凪を任せた方が得策なのは目に見えている。だが一つだけ言っておくが更識、凪のISを整備するのは良いが分かっているんだろうな?」

 

「勿論ですよ。データ収集も何もしない、ただ整備するだけ。整備に必要なデータを取った後は完全消去します。流石に篠ノ之博士を敵にはできないですし阿頼耶識自体、表に出てはいけない代物ですから」

 

「分かっているなら良い。凪? お前もいいか?」

 

「はい。僕もそろそろ限界を感じてたんで……よろしくお願いします」

 

「任せてちょうだい。本当は簪ちゃんにもお願いしたいけどこればっかりはダメね、虚辺りにお願いしようかしら。何かあったら生徒会室まで来てね? どんなことでもお姉さんが相談に乗ってあげるから」

 

 

 どうやらこれでお話は終わったようだ。生徒会長さんは仕事があるのか部屋から帰ろうとしていたので最初の対応をもう一度謝っておく。流石に早とちりし過ぎた感があるしね。でもよかったぁ……許してくれた。うん、やっぱり悪いと思ったら謝る。これが大事だね。

 

 

「ごめんなさい、ちー、織斑先生」

 

「気にするな。お前の事情なら慎重になるのも分かる。更識に頼るのもいいがもうお前は私の部下と言っても良い立場だ。そのことを忘れるなよ?」

 

 

 つまり頼るなら私を頼れですねわかりま――いだい……違うの? ねぇ違うの? ちー姉ちゃん答えてよ~?

 

 止まっていた耶識の整備を終わらせて部屋に戻って皆と一緒に夕食を食べる。そして部屋でゆっくりしようって思ったらイチ兄からメールが届いた……うんなんだろう? 『今大丈夫か?』うん大丈夫だよっと。『いきなりなんだが鈴が怒ってさ、箒に聞いても俺が悪いって言ってきてわけ分かんないんだが話聞いてくれないか?』およ? 鈴さんと喧嘩? 一体何を言ったのさ……うん? 『鈴が部屋に来て箒と部屋を代わってくれって話になってさ。箒もいきなりは無理だって言ってちょっとした言い合いになったんだがその弾みで鈴が昔の約束を覚えているかって言ってきたんだ。ちょっとあやふやだけど昔鈴が転校する前に毎日酢豚を奢ってくれるって言ってたのを思い出してそれを言ったらなんか怒られた』えぇ~……あのさ、メールで聞いただけだけど大体の事は分かったんだけど……きっと奢ったじゃなくて食べてくれるとかそんな感じじゃないの? でもどうしよう……これ伝えてもいいけどイチ兄だし理解しないだろうなぁ……うん。こうしよう。とりあえず電話っと。

 

 

『凪か?』

 

「うん。さっきのメールの事なんだけど今大丈夫?」

 

『あぁ、箒もシャワー浴びてるし大丈夫だ……怒られた理由がわかったのか?』

 

「なんとなくね。でもこれイチ兄が解決しないといけないから僕は手助けしないよ~まずは今すぐ鈴さんに会って謝ろうか」

 

『いやあやふやだったけど俺はちゃんと――』

 

「それでも。良い? イチ兄が思ってる事と鈴さんが思ってる事、人間なんだから食い違いもあると思うんだ。今回はイチ兄が覚えてた事が原因で鈴さんが怒ったんでしょ? だったら間違ってる可能性あるからまず謝る。多分怒ると思うけど今回はイチ兄も少し悪いから受け入れようね」

 

『う~ん、いや言いたいことは分かるんだが……分かった。ちょっと今から行ってくる。またなんかあったら相談に乗ってくれないか?』

 

「お安い御用だよ。でもくれぐれも反論したりしないでね? あれだったら怒らせたお詫びに買い物行こうぜとか言えばいいと思うよ」

 

 

 普通に考えて毎日○○を食べてくれる的な事を言ったのに間違って覚えられてたら怒るよ。でも教えてくれって言っても教えられないだろうから代案として別の選択肢を用意すればいいんじゃない? 他人事だけどきっとこれで大丈夫じゃないかな? 箒姉には悪いけどせっかく再会したんだし仲良くしてほしいじゃん。

 

 そして数十分後、イチ兄からまたメールが来たけど内容が二人で買い物行くことになったけど飯を何処で食べるかで喧嘩になったとの事。もう爆発したらいいんじゃないかなと思った僕は悪くないと思う。




からかう事が得意の生徒会長も天才な兎の恐怖には耐えられない様子。
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