「それでなんで喧嘩になったのさ?」
イチ兄から相談を受けた翌日、時刻は放課後。僕とイチ兄は食堂のテーブルで向かい合うように座っていた。箒姉とセシリアさんにはちょっと二人だけで話させてと言って席を外してもらっている。でもホントなんで喧嘩するかなぁ? しかも何処で食べるかなんてどうでもよさそうな……いや結構重要だけどそれぐらいで喧嘩することはないと思うんだけどなぁ。
「いや凪の言った通りに謝って怒らせたからどっか飯でも奢るって言ったら機嫌直ったんだよ。そしてどうせなら五反田、あぁ俺の中学の友達で鈴とも付き合いあるやつなんだけどそいつの家が食堂だからそこ行こうぜって言ったらまた怒ったんだよ……もうわけ分かんねぇ」
「ちなみにそこって箒姉と一緒に行ったところ?」
「おう」
それは怒るね。何が悲しくてデートで知り合いの所に行かないといけないのかな……聞けば鈴さんはどうせなら遊園地行きましょうよって言ってるみたいだけどイチ兄が飯屋じゃないだろと言って喧嘩、はぁ……どうでもいい。
「それで結局どうするの?」
「ほらクラス対抗戦があるだろ? そこで戦って勝った方が行く場所を決めれるってことになった。そんなわけで鈴はしばらく俺達と一緒に訓練しないってよ。全力で勝ちを狙うらしい……なんで遊園地なんだよ。あそこは遊ぶ所だろ? しかも二人で行くぐらいならみんなで行った方が楽しくないか? 二人だったら五反田の所は安いし久しぶりに友達に会えるしでいいと思ったんだが変な奴だよな。そう思わないか凪?」
「知らない」
「なんで呆れてるんだ?」
「誰だって僕と同じ顔になるよ……イチ兄は当然対抗戦は勝ちを狙うんでしょ?」
「当たり前だろ? 負けたくないし」
これは鈴さんを応援するべきかイチ兄を応援するべきか……箒姉を思うならイチ兄なんだろうけど鈴さんの思いを考えるなら鈴さんを、あぁもう!! 鈍感すぎるよ全く!! 少しは年頃の男らしく鋭くならなきゃダメだよ! う~ん、鈴さんにはごめんなさいだけどイチ兄には勝ってもらおう。僕は箒姉の味方だしね。そうと分かれば対抗戦まで全力で特訓だ!
そこから対抗戦の日まで僕、箒姉、セシリアさんの3人でイチ兄を鍛え上げた。と言っても剣は箒姉、射撃はセシリアさんが担当だけどね。僕? 今回ばかりは怖いのを我慢してイチ兄と模擬線したよ。怖かったよ、何回斬られたか分かんないよ……でもそのおかげで僕の動きに付いてこれるようになったっぽいから多分大丈夫。箒姉達もなんで付いていけるんだ的な事言ってたし。それに優勝すれば甘いもの食べ放題……じゅるり。しょうがないよね甘いものは僕にとっての生命線だし箒姉の味方だし甘いもの大事だし今回ぐらいは心を鬼にして甘いもののために頑張ったよ。
「織斑先生、なんで僕は此処にいるんでしょうか?」
時は流れて試合当日、僕は何故かちー姉ちゃんに呼び出されていた。この場には山田先生とちー姉ちゃんと僕、此処って生徒が入ってもいいのと思ったけどちー姉ちゃんが呼んだんだし僕は何も悪くない。というよりなんで箒姉達も一緒に呼ばないんだろう?
「ふんっお前は私の部下だろう? それに束から連絡があった。亡国機業を思われる組織に動きがあったらしい」
「……つまり対抗戦中に何かが起きる可能性があるってことだね」
「あぁ。対抗戦が終わり消耗しているところを襲う算段なのだろう。IS学園のセキュリティは万全とはいえ万が一の可能性がある。お前にはすぐ動けるように準備していてもらいたい」
「分かりました」
「織斑先生? 篠ノ之君と何を話されているんですか?」
「気にしなくても良い。山田君は自分の仕事に集中していてくれ」
なんていう優しい口調なんだろうか。普段のちー姉ちゃんからは想像もできない事だ……ふ~む、しかし亡国機業、かどうか分からないけど似たような人達が動き始めたんだ……でも何で今日なの? 確かに対抗戦があるけどそれだけで学園に侵入してくるっていうのはちょっとリスクが高すぎるような気がする。一応クロエさんに確認を取ってみようっと。
壁に寄りかかりながら二人に見えないように静かにとあるコマンドを起動させる。すると目の前にクロエさんの顔がアップで映し出された。
『凪様、
『うん。亡国機業と思われる組織に動きがあったって聞いたから気になったんだ。そっちは大丈夫?』
『はい。数日前に束様と私の居場所を突き止めたのか襲撃されてしまいましたが怪我もなく逃げることができました。その際に凪様の訓練で使用していた人形ビットをいくつか鹵獲されてしまいましたが技術的には第三世代相当とのことですので束様は気にされてはいないようです』
『そっか。怪我がなくてよかったよ』
『束様も相手の動きを調べておりますが恐らく今日、IS学園に侵入する可能性があります。亡国機業と判断できるか分かりませんが近しい組織なのはたしかです。今年は専用気持ちの新入生が多く操縦者も国家代表と上級生より劣りますので強奪は容易に行えると判断したのでしょう』
確かに僕、イチ兄、セシリアさん、鈴さん、あと噂では4組の子が持ってるらしいからこれで計5人。どうやらこの数は例年に比べても多いようで僕とイチ兄が原因でこうなってるみたい。せっかくイチ兄が頑張って訓練してきたのにそれを邪魔されるのはちょっと嫌かな。
『凪様、束様が仰るには侵入ルートはIS学園の地下からではないかと。そこは外から繋がっていて一度入れば後は進むだけとなっておりますので。侵入方法も恐らくは業者を装うのと思います』
『分かった。こっちは僕の方で何とかするよ。クロエさんも気を付けてね?』
『凪様もご無理はなさらないように』
個人間秘匿通信を切って一旦情報を整理する。もうすぐイチ兄と鈴さんの試合が始まる、襲撃してくる前提だけど侵入ルートは地下、たばねぇが言ってたんだし間違いないと思う。そして侵入方法は業者か何かを装って……うん、生徒会長さんに聞いてみよう。
そっと部屋を出て携帯で生徒会長さんに連絡。何かあった時用に教えてもらってたけどまさか本当に役に立つとはね……整備も手伝ってくれてるしもうありがたい事だらけだよ。
『は~い凪君? どうしたのかな? お姉さんの声が聞きたくなっちゃった?』
「ちょっと聞きたいことがあって……今日って業者の人が出入りすることとかありますか?」
『えーとちょっと待ってねぇ~あった、そうね。今日は対抗戦だからIS整備に使う部材が届くことになってるわ。時間はクラス対抗戦が始まってからだから今からだと大体30分後ね――何かあったの?』
「たばねぇから連絡があってどうやら亡国機業らしき組織が襲撃してくるかもしれないそうです」
『――分かった。念のため警備を強化しておくように手配しておくわ。織斑先生にはもう伝えてるわよね? 私も運営で手が離せないから少し遅れるけど気を付けて。貴方が阿頼耶識使いでもまだ15歳の子供なんだから。危険だと判断したらすぐに離脱して』
「勿論。でもなるべく早く、そして誰にも気づかれずに終わらせます」
電話を切って部屋の中へ。ちー姉ちゃんも察してくれたのか構わん、行けと視線で伝えてきた……カッコいいなぁ。それじゃ遠慮なくやらせてもらうよ……イチ兄も箒姉もセシリアさんも鈴さんも、学園の皆に危害を加えるつもりなら容赦なく
クロエさんから侵入ルートの地図データを送って貰い、途中まで耶識を整備するための部屋に向かうルートを進んで普段進まない道に変更、たどり着いたのは車はおろかISですら通れそうな一本道。ここなら派手に暴れても他の人達に気づかれることもなさそうだね。それにしてもよくこんな場所があるって分かったよね? 流石たばねぇ。
「……開始まであと10分、絶対に邪魔はさせない」
たばねぇとクロエさんと一緒に過ごしてた時だって襲撃してた人達を追い返してたじゃないか。緊張することはない、落ち着け、ただ防衛するだけ。今回は一人じゃない……生徒会長さんも遅れてきてくれるみたいだから万が一時間が掛かっても大丈夫。心を落ち着かせてISを展開して少し待っていると前の方からある集団がやってきた。車に乗っているわけでもない、荷物を持っているわけでもない、顔を隠して重火器を背負ってるなんて明らかに業者じゃない。数は約8人ぐらいか……意外に多いな。
僕が立っていることに隊長と思われる人物が驚きの声を上げた。
「っ! 何故此処に篠ノ之束の守護者がいる!?」
「情報になかったはずだ!? まさか読まれていたとでもいうのか!」
たばねぇの守護者……あぁ、なんども護ってたからそんな風に言われてたような気がする。どうでもいいけど。耶識も調子良いみたいで身体が軽い、動かしやすい、整備の人が上手だったからかな? いいや、何人死のうと関係ない。だからここから先には行かせない。
スラスターからエネルギーを放出し、敵に接近。たどり着く前に斧を呼び出して到着と同時に振り下ろす。少し遅めに振ったから散開されて躱される――予定通りだけど。体をかがめて足払い、近くにいる生身の女兵士一人を蹴り飛ばして壁にぶつけ、斧を反転、斧頭の部分でもう一人の胴体を叩いて戦闘不能に。無事だった人たちは重火器で僕を狙うけど一発も当たってあげるほど優しくはない、回転しながら体を捻り、瞬間加速で女兵士に近づいて体を掴んで地面にたたきつける。これで3人……あと5人か。
「やはりおかしな挙動……! そうか! 噂の阿頼耶識!! まさか篠ノ之束の守護者がそれを使っているとはな!」
噂ってことはお前たちも知ってるんだ……だったら尚更生かして返すわけにはいかないね。どこで知ったのか聞かなきゃいけないし……でも殺したら聞けないか。じゃあ隊長らしい人だけ生かしておけばいいね。大丈夫、ちゃんと他は殺すから。安心して――耶識。
再びスラスターを吹かせてその勢いのまま残った兵士を駆逐する。背後に回って殴る、斧頭で殴る、勢いよく蹴って壁にぶつける、途中で斧を戻してハンマーを展開、二人ぐらいまとめて薙ぎ払ったりもした。あとはリーダー格だけか。案外早く終わりそうだね。
「くぅ……! よくも私の仲間を!! 人の心がないのか!!」
うるさいなぁ。文句を言われる筋合いはないんだけど? 皆を襲おうとしてたのは誰さ? 君たちじゃん。だったら逆に殺されても文句言えないよね? 頭が凄くクリアだ、耶識の感情が流れ込んでくる、僕の感情が耶識に伝わって理解してくれる。身体も軽い、動ける、殺せる!
「だんまりか……! 死ねぇ!! 死ねぇ! 死ねぇ!!」
ただひたすら死ねと連呼しながら重火器を乱射してくる。じゃあ代わりに死ねよ。横に躱してハンマーを振りかぶり、叩きつけようとする――と横から別の機体がやってきた。そいつは僕のハンマーを薙刀で受け止めリーダー格の人を護ろうとしている……見た印象は打鉄、でも手が加えられてるから訓練機じゃない。でもなんか挙動変じゃないかな?
「ぐぅ、っ、なんだこの機体は……未完成だと、仕方ない! 引け! 引くんだ!」
「はい!」
リーダー格の人は来た道を戻るように逃げてくけど行かせないよ? P90を呼び出して視界に入れずに数発発射、倒れた音と泣き叫ぶ音がしたから当たっただろう。ちらっと見てみると足が吹き飛んでる様子だった、よし狙い通り……あとはこいつだけか。
「こ、の!! ええい!! このポンコツめ!? 放置されていると思ったら完成すらしていない失敗作か!!」
はぁ? 何その言い方? ISだって生きてるのに失敗作? お前なんかにそれを決める権利はないんだ……くっ、あ、ぁ、コロスコロシテコロシツクスイカシテカエサナイシッパイサクダナンテイワセナイ。ワタシの気持ちも知らナイ奴はキエチャエバイインダ!!
ハンマーを一度離し即座に斧を呼ぶ。横から殴るように刃を叩きつけ吹き飛ばした後、ハンマーを握りしめ頭部を殴り地面へ倒す。シッパイサクジャナイシッパイサクジャナイナンデナンデナンデナノ誰にも決めさせない誰にも言わせないワタシはワタシで頑張ってるのに何でソウイウノ! 死んじゃえ死んじゃえ!
寝ている身体を起こすように頭を握って首にバンカー射出、そのまま再び押し倒して斧で何度も叩き切る。何度も何度も何度も殴っていると乗ってる人は助けてと泣き叫び始めた。はぁ? お前が失敗作なんだから黙って死ねよ。いいから死ね、いい加減死ね、失敗作と言われる子の気持ちも分からないヤツは生きてる価値なんてない。その子の気持ちを考えたことあるの? 自分じゃ何もできなくてただ見てるだけ、泣きそうな主を助けることもできない事に悲しんでいるその子の……あれ? なんで分かるんだろう……耶識が教えてくれてるから? あれでも耶識はワタシ……あれ?
度重なる攻撃に限界が来たのかIS強制解除され操縦してた人は外に放り出される。そのまま逃げようとしてるけど恐怖で動けないのかワタシを見て何度も来るなって泣いてる。知らないよ、怖いなら黙って殺されろ。
「た、たすけ、て……たすけぇ、て……」
握りしめた斧を振り上げ、一気に降ろす――けどそれが相手に当たることはなかった。途中で止められた……何に? これ水? なんで……ダレの仕業だ。背後に誰かが迫るのを感じて振り向くとそこにいたのは生徒会長、しかも体にはISを纏っている。上は装甲があまりなく、下の装甲はスカートのように広がっている。手には槍、しかも水が纏わりついている……コイツの仕業かぁ!! く、ぁ、な、何が起きて……?
「ストップよ。これ以上はさせないわ――あらテキスト? そう、終わり。他の経路で侵入した連中も全員捕らえたわ。もっともそこの人には逃げられちゃったけど……ってそのISは簪ちゃんの……ちょ~っとムカつくけどこの惨状じゃ怒る気にもなれないわね。ハイ選んで? 素直に捕まるか殺されるか、どっちを選ぶ?」
「捕まる! 捕まるから助けて!?」
「利口ね。お疲れさま、もう下がっていいわよ」
終わり? そっか終わりか……あぁ……頭がボーとする、何やってたんだっけ……途中から意識があやふやなんだけど……あれ生徒会長? それってISだよね? もしかして専用機?
この後、足を吹き飛ばされた人とリーダー格の人は素直に捕まったので襲撃を防ぐことができた。ふぅ。疲れたぁ~途中から何が何だか分かんなくなったけどイチ兄達が無事ならいっか。何時も通りの事しただけだし。誰もいないことを確認した生徒会長は呆れた表情で僕に話しかけてくる。なんで呆れてるんだろう?
「はぁ……もう凪君、やりすぎ。どっちが襲撃犯か分かんなかったじゃない」
「え? そうですか?」
「そうよ……それに簪ちゃんのISをこんなにしちゃって!? なんでここまでやる?! 普通は強奪されたって分かったら取り戻すために加減するでしょ!? これ見て簪ちゃんがなんていうか……絶対泣くじゃない!!」
「い、いやぁ……この子の事を失敗作って言ったのがちょっとムカッとして……そしたら意識が朦朧として気が付けばこんな感じに……ごめんなさい」
分かんないけど耶識が怒ったのは分かる。怒って泣いて……僕の背中に抱き着いて僕ごと自分のお腹を刀で刺してきて……そこからがあんまり覚えてないんだよね。ただ相手を殺したいと思って憎いと思って……まるで僕が耶識になったかのように色んな感情が巡ってきたような気がする……よく分かんないけど。
ちなみに簪ちゃんさんとは生徒会長さんの妹さんで日本代表候補生、そして4組の代表候補みたい。ただ今回は自分の専用機が完成していないから欠席する予定でさっきまでずっとこの改装にいたみたいだ。今回は休憩のため離れたタイミングと襲撃のタイミングが運よく重なったおかげでその子には怪我一つないとの事。でもISは放置されていると勘違いしたさっきの人が強奪、僕と鉢合わせというか戦うことになったと……ふぅ~危ない危ない、それを盗られたらその子が困っちゃうもんね。阻止できてよかったぁ――破損個所とかはごめんなさいだけどね!!
「……凪君のISのコアが簪ちゃんのISの事を馬鹿にされて怒ったのかしら……でも凪君の意識を……普通に考えるとありえないだけどISと繋がる阿頼耶識ならあり得るかもしれないわね。凪君の方は体の方に何か違和感とかある?」
「特にないです。強いて言えば糖分不足っぽいってだけです。あの……その簪ちゃんさんという人に謝りたいんで時間がある時に会っても良いですか?」
「えぇ、ぜひお願い。私も立ち会って事情説明するけどきっちりと怒られなさい」
「……はい」
生徒会長さんが携帯が鳴る。どうやら
「……襲撃、あったの……?」
「う、うん。でも安心して! もうやっつけたから! そ、それで簪ちゃんのISを……ね、奪った人と戦ったのが彼なんだけど、その、ね!!」
「本当にごめんなさい!」
「……良い。完成してなかったから……だから謝らないで、お礼を言うのはこっちだから……阻止してくれてありがとう」
なんて優しい人なんだ。しかも逆にお礼を言ってくれるなんて……なんて優しい人なんだ! 頭を上げてと言われたから言う通りにして立ち上がる。っ、クラクラするな……疲れてるのかな? 生徒会長さんも簪ちゃんという人も僕の顔色が悪いことに気が付いてすぐ休むようにと言ってきた。そんなに酷いのかな……でも確かに辛いから今日はもう休もう。
ちー姉ちゃんに部屋で休むことをメール、そのまま部屋に戻ってシャワーを浴びることもなく布団にダイブ。体が重いし頭も痛い、息が苦しい……風邪引いたかな……はやめ、になおさな、きゃ……
◇
「そうか。ご苦労だった」
クラス対抗戦も全クラスが終了し、私は生徒会室で更識から
「問題は凪君で恐らくですけど阿頼耶識、いえISコアに意識を飲み込まれていた可能性があります」
「……なに?」
「到着した段階で既に戦闘は終了していましたが相手を確実に殺すという意思を感じました。それも戸惑うこともなくです。凪君から簪ちゃん、いえ私の妹のISを失敗作と呼ばれた瞬間から意識が朦朧としていたようですしISコアが凪君の意識に自分の意識を上書きしたのではないかと考えています」
耳の痛い話だ。まだあいつは15歳、一夏と同い年だ。いかに束と行動をしていたとはいえ人殺しをする度胸はないはずだ……阿頼耶識、束の話ではリミッターを掛けているようだが今回はそれが外れたとでも言うのか? リミッター無しでの凪のIS適正はS、つまり現役時代の私と同等ということになる。今は下がっているようだが全く……あいつはお人よしの部分が目立つから外れた理由はそれが原因か。
「分かった。この件は私に任せろ」
あいつの事を一番理解できているのはあの
まだ子供でも一応、私の部下だからな。
◇
「おめでとうイチ兄、訓練の成果だね」
時刻は夜、場所は食堂、集まっているのはいつものメンバーと鈴さん。僕の目の前にはありがとよと笑うイチ兄と負けたぁと嘆いている鈴さん、どこか面白くなさそうな箒姉と上品に夕食を食べているセシリアさん。寝てたから試合内容は見れてないんだけどなんとイチ兄は鈴さんに勝ったらしい。最初は鈴さんの専用機の装備に苦戦したみたいだけど後半は慣れてきたのか回避もスムーズになり必殺の零落白夜を使って勝利。もう箒姉から一夏が勝ったぞとはしゃぎながら言ってくるんだもん……あっちなみに襲撃があったことは内緒にしてる。寝てたのはちょっと体調が悪くなったと言って誤魔化しました。箒姉からかなり心配されたけど。
「大体何なのよあの動き~本当に初心者なわけ……?」
「おう。きっと箒達の教え方が上手いんだな」
「そうだろうそうだろう。一夏、なかなか良い動きだったぞ? 慢心せずこれからも一緒に、一緒に訓練をしていこう!」
「あぁ! そうだ鈴! 約束覚えてるよな? 飯、五反田食堂でいいよな?」
「も~いいわよ~はぁ……ゆうえんちぃ」
「そんなに行きたかったのか? じゃあ行くか? ――みんなで」
「「「「はぁ……」」」」
恐らく僕も箒姉もセシリアさんも鈴さんも同じことを考えたのかため息が出た。分かっていないのはイチ兄だけだろうね……なんでそこでみんなって言うの?! そ、こ、は!! 二人で、でしょうがぁぁぁ!!! もうムカムカする! やけ食いする! おぉ! 何この新作デザート!? 美味しそうだから食べよう!! 甘~い!!
ご飯を食べ終えて部屋に戻る。今日は色々あったなぁ……そうだたばねぇに電話しよう! 無事終わったよって!
『もっしも~し! どうしたんだいなっくん? お姉ちゃんの声が聞きたくなったのかなぁ?』
「ううん。今日の襲撃が無事に阻止できたからそれの報告だよ。クロエさんから聞いたけどたばねぇ達も襲撃されてたんでしょ? 大丈夫?」
『問題ナッシングーだよ! でもうれしいなぁ~心配してくれるんだ! でもお姉ちゃんは細胞単位でオーバースペックだから他の奴になんか負けないよブイブイ♪ そうだ!! 臨海学校あったでしょ~? その辺りに箒ちゃんの専用機が完成すると思うから行くね~? ちーちゃんにも言っておいてくれるとありがたいな~?』
「うん。言っておくよ」
『ありがとなっくん! それじゃお姉ちゃんはIS作成に戻るね? 愛してるよなっくん! ばいなら~』
声を聞いたけど大丈夫そうだね。でも箒姉の専用機かぁ……きっと凄いんだろうね。だってここまで時間をかけて作ってるんだもん。どんなのなんだろう~うん! ワクワクする!!
シャワーを浴びてゴロゴロしているとちー姉ちゃんが帰ってきた。倒れた事を心配されたけど問題ないよって答えたらそうかとちょっとだけ安心したような表情になった。むっここでまだ疲れが取れないんだぁ~とか言えば優しいちー姉ちゃんにジョブチェンジしてくれたのかな……失敗し、いたいよぉ……バカなことを考えるなって? ごめんなさい! なんか今日は謝ってばっかりだ……寝よう。
寝ます~と言って布団に潜ると睡魔が襲ってきた。意識が途切れる瞬間、頭を撫でられる感覚があった……落ち着くなぁ……おやすみなさいちー姉ちゃん。
襲撃犯は一般生徒を人質に専用機を強奪する算段でしたが凪の存在を把握していなかった様子。生身の人間相手にIS展開して素手で殴る蹴るハンマーで殴るという戦い方をしていますが主人公です。ちなみに生きてますが何人かは一生ベッドの上です。
束さんが暗躍しないだけでここまで平和になる不思議。