「さて箒姉、少しお話ししようか? ちなみに拒否権はないよ」
休日の朝、場所は僕とちー姉ちゃんの部屋、僕の目の前には静かに正座をする箒姉がいる。意識して普段より声のトーンを落とす事で怒ってますよと装ったのが効いているのか俯いてしまっているけどそんなことは気にしない。だって今は緊急事態で今すぐ僕は事情を聞かなければいけないからだ。そう、緊急事態なんだからしょうがないね。
「箒姉? 確か何日か前にイチ兄との同棲が終わったんだよね?」
「そ、そうだ……」
「確か部屋が変わる前日辺りから箒姉は言ったよね? デートに誘って告白するって……僕の記憶では来月の学年別個人トーナメントで優勝したら臆病な自分でも勇気を出して告白できるとか言ってたよね? 違った?」
「……はい、言いました」
「それで結果はどうだったの? 恥ずかしがらずに言ってね、時間ないし」
「……ち、ちゃん、と言いました……一夏に、来月の学年別個人トーナメントで、ゆ、優勝したら私の用事に、つ、付き合ってくれと……!」
「偉いね、ちゃんと言えたんだ。流石僕のお姉ちゃんだ。ねぇ箒姉? なんでそれがさ――トーナメントで優勝したら僕かイチ兄のどちらかと付き合えるって話が広まってるのかな?」
そう、全てはこの理由を問いただすため心を鬼にして箒姉に怒っているのだ。僕がこの噂を聞いたのは昨日、生徒会長さんに用事があって電話をしたら『そういえば来月のトーナメントで優勝した子と付き合うんだって? もうやるわねこの~』といきなり言われて頭の中が真っ白、そして何故そうなってるのと疑問しか出なかったね。聞けばイチ兄か僕のどちらかと付き合えるという噂は既に全クラスに広まっているみたいで本気にしている女の子が大多数……もはや後戻りはできない状況である。しかも本人に確認しないという徹底ぶり……確認ぐらいしようよ! 何度も言うけどどうしてこうなったと悩みに悩んだ結果、そういえば箒姉がトーナメントで優勝したらデートしてくれ的な事をイチ兄に言う事を思い出して現在の状態になっています。
プルプル震えている箒姉がちょっとかわいいけど心を鬼にしています。なんで? クロエさんに誤解されたら嫌だからに決まってるでしょ。まだ好きかどうかも曖昧だけどなんか誤解されるとか嫌じゃん。もしそれで関係が悪化とかなったら僕は泣くね、思いっきり泣くね。普通に考えたらIS学園にいないから噂を聞かないかもしれないけどクロエさんの近くにたばねぇがいる時点で噂を耳にする可能性がかなり高まってるんだよ……! だって盗聴ぐらいならたばねぇなら余裕だと思うしね!
「し、知らない!? というよりなんだその噂は!? わ、私ではないぞ!?」
「ふぅ~ん。じゃあさ、どこでその事言ったの?」
「い、一夏の部屋の前だ! ま、まさか……き、聞かれていたのか……!」
「だろうね。そして私の用事という単語が無くなって付き合ってという言葉だけが独り歩き……はぁ、どうしてくれるのさ? これで僕の好きかもしれない人が誤解して関係悪化とかしたらもう手助けしないからね」
「す、すまん凪……ん? い、いいいい今なんといった!? 好きかもしれない人だと!? だ、誰だそれは!? 私の知っている者か!! それともセシリアか!? だ、ダメだ! お前に恋人はまだ早いぞ!! 確かにお前は家事ができて人当たりも良いし異性から好かれる要素があるのは分かっている! だがダメだ! 変な女に騙されては危ないからな! だから付き合うにしても私に一目会わせてくれればそれを見極めてだな――」
「うん?」
「――本当にごめんなさい」
渾身の土下座、凄く綺麗な土下座だね。なんだろう……偶にはこんな風に困らせるのも悪くない気がしてきた……いいや、もうやめようこんなの。なんか心が痛い。
「よし、じゃあこれでこの話題は終わり。箒姉はただ自分の思いを言っただけだしもう良いよ? ごめんね? 変な事で怒っちゃってさ」
「い、いや私も、部屋の中で話せば、よかったんだ……す、すまない。だ、だが先ほどの話はまだ終わってはいないぞ! だ、誰なんだ!? お前が好きな相手とは一体誰なんだ!?」
「ほら早く行かないと遊ぶ時間無くなるよ? せっかく久しぶりに一緒に出掛けるんだしさ」
「ま、待て凪!? ちゃんと姉である私に説明をしろぉぉぉ!」
後ろでなんか取り乱してる我が姉を放っておいて部屋を出る。でも色々考えたんだけどなんでイチ兄との同棲生活が終わったんだろう? 確か箒姉の話では山田先生が来てお引越しですと言ってきたみたいだけど誰か代わりにイチ兄と暮らすのかな? 普通に考えたら僕の方なんだろうけど残念な事に阿頼耶識関係で事情を知らないイチ兄と一緒の部屋なのは無理だし第一、僕の方には何も話は来てないから多分関係なし。つまり可能性としてはイチ兄が一人暮らし生活を始めるのか新しい同居人との同棲生活のどちらか……いっか。イチ兄の事だし別の女の人でも何もないでしょ。
それから一緒に学園を出て一緒に歩いているけど隣で「良いか凪、女というのは魔物だ。言葉巧みにお前を誘惑してくるだろう。お前は可愛いからな」とか「だからちゃんと会わせるのだぞ? 私が見極めてお前に相応しいかどうか確かめてやろう」というセリフをドヤ顔で話し続ける姉を殆ど無視して街中へと向かう。目的地は色々、僕は日用品とチョコが足りなくなったから買い足しだけど箒姉は服を見たくなったらしい。本当はイチ兄を誘えればよかったんだけど残念な事にイチ兄は既にどこかに出かけてしまったようだ……それで目的が一致する僕とのデート、違う、買い物となりました。
「とりあえずデパートでいい? あそこなら色々あるし」
「あぁ。そうだお前の服を選んでやろう。うんそうしよう、何心配するな。これでも女だ、人並みの女子力というものは持っている」
確かに箒姉は服選びのセンスあるよね。今も白を中心として清楚系で揃えてるし。僕? とりあえずダサくない感じで適当ですが何か? それにしてもデパート……下着売り場……うっ、頭が……!
ちなみに女子力だけど箒姉よりイチ兄の方が高いと思ってるのは内緒。
そんなわけでデパートの中へ。向かう先は安い、種類が多い、若者に人気がある服屋。今更だけど階層一つ丸ごと使ってるから凄いよね。今日は休日だからかな? 恋人連れや家族連れが多い気がする……はぁ、休日に弟と一緒に服を買いに来ている我が姉を見ていると涙が出るね……そのウキウキっぷりをイチ兄に見せればいいのにさぁ。
「凪、これとこれ、どっちが好きだ?」
「う~ん……どっちも白だけど僕は黒が落ち着くんだけど?」
「むっそうか……確かにお前が持っている服は黒やグレーが多かったな。それではこれはどうだ? それにこれを合わせてだな」
物凄く楽しそうだけど選んでるのが弟の服って……いや、これって周りから見たら服も選べないダメな弟的な感じで見られるのではないだろうか? そ、それはなんか嫌だなぁ……どちらかというと自分の恋愛もまともにできないダメな姉を支える弟的なポジションが良いね。というかあれこれ悩んでるみたいだけどさ? 自分の服でも買ったら? 僕は着れれば別に何でもいいんだし。う~ん、しょうがないなぁ……さっきまで怒って困らせたしそのお詫びで箒姉の服でも選びましょうか。此処って男物も多いけどそれ以上に女物も多いからね。
さぁ~て今だけ我が姉を放っておいてこっちはこっちで選びましょうそうしましょう。箒姉のイメージは白、赤とかそんな感じだかからそれを取り入れた感じにしよう。それにそろそろ夏が近づいてきてるから涼しい系を選ぼうかな? 箒姉ってスタイル良いしサイズは多分この辺りだと思うから……足も綺麗だしスカートは絶対に必要だよね、色は紺か黒……紺でいこう。そして上は白のブラウス、ここはノースリーブタイプの方が良いかな? 夏が近づいてきてるしそっちにしようっと。でもそれだとまだ肌寒いから羽織るものも一緒に……あっ注目されてるのはカーディガンなんだ? それって冬のイメージだけど春でもいけるんだね。じゃあそれにして色は……赤が似合いそう。これで行こう。うわ……選んでみて思ったけどこれでいいのかな? いいや、箒姉から女子力無いとか言われてもそもそも男だし。
そんなわけで選んだ服を持って箒姉の元に戻りました。あのさ……まだ選んでたの? 弟の服に時間かけ過ぎじゃないかな? 彼氏の服を選ぶんだったら時間をかけても良いと思うけど弟のだよ?
「何処に行っていたのだ? それよりこれを着てみろ? きっと似合う、うん? 何を持っている?」
「朝に変な事で怒って困らせたからお詫びに選んでみた。ダサかったらごめんね?」
「そ、そうか……私の服を選んでくれたか。そうかそうか……よし、ならば買おう」
「いやまず着てから決めてよ……サイズ多分このぐらいだよね?」
「……凪、なぜお前は私のサイズを知っている? し、しかも……誤差が、殆ど無いのだが……!」
「2年前とはいえ箒姉の服とか洗濯してたし実の姉のサイズぐらい見ただけでなんとなく分かるよ?」
「そうか。凪――後でお説教だ」
なんでさ……他の女の子なら問題だけど姉弟なんだから良いじゃん。悪用するわけでもないし欲情するわけでもないんだから。ちなみにたばねぇのサイズも把握済み……あんまり声には出せないけど凄かった、うん。ちなみにちー姉ちゃんも凄かった。やっぱり大人の女性はスタイル良いんだね。結局僕の服はまた今度ということになり箒姉だけ服を買いました……選んだのは僕だけど即決しなくてもいいのにね。
「買ってから言うのもあれだけどホントに良かったの?」
「構わん。せっかくお前が選んでくれたものを買わないわけにはいかないだろう? 姉として当然だ」
「違うと思うんだけどなぁ……次何処に行くの?」
「そうだな……コホン、私は上の階に行っているから凪はどこか別の場所で時間を潰しているといい。決して上がってくるんじゃないぞ?」
言われなくても行かないよ。だって下着売り場に突撃とかもうコリゴリ。というわけで別行動になったから僕は日用品を買いに百均へ向かうことにした。だって安いし物多いし。必要なものを買い終えてさぁ次は本命のチョコを買いましょう! ふふ~ん、なににしようかな~業務用でいいか。毎日食べるし……はぁ、絶対身体に悪そうだ。将来病気になったらどうしよう……でもやめられない止まらない。
「またお前は……買い過ぎだぞ?」
「あっお帰り~買い物終わったの?」
「当たり前だ。昔は甘いものはあまり食べなかったのにどういう心境の変化だ? 何度も言うが食べ過ぎはよくないぞ」
「分かってるけど止まらないの~それじゃ買ってくるから待ってて」
レジまで行って会計を済ませて箒姉の所に戻る。時計を見ると昼頃だったからどこかでお昼ご飯でも食べようということになり近くのファーストフード店で済ませることにした。なんだか箒姉がハンバーガー食べてるのって新鮮な感じがするね……普段和食だから余計にだ。ちなみに僕は照り焼きバーガー、箒姉はチーズバーガーだった。カロリー計算大丈夫? あっ動くからいいのね……そっか。でも多分たばねぇ方式で胸に――痛いよ?
「変な視線をするからだ」
「いやごめんって……でも箒姉もこういう所で食べる事もあるんだね?」
「偶には良いと思ってな。それに一度入ってみたかったんだ……その、私のイメージというのか? それがあってだな……」
「あぁ~箒姉って完全に和のイメージだからね。でも良いんじゃない? 今の箒姉なら友達と来ても何も変じゃないからさ」
「そ、そうか……うん、ありがとう……と、ところでだな。お前はどのような女が好みなんだ?」
「いきなりどうしたのさ?」
「姉として弟の好みを把握するのも大事だろう? 朝の話、まだ諦めたわけではないからな?」
何が悲しくて実の姉に好きなタイプを言わねばならないのか……でも考えてみたら僕ってどんな人が好きなんだろうか? う~ん、身長は高くても低くてもどっちでも、年は同い年かちょっと上、頼りがいがある人か落ち着ける雰囲気の人……クロエさん? あぁもう駄目だね、そっちにすぐ発想が飛ぶんだから。このことは考えないことにしよう。うんそれが良い。そもそも姉としてって知る範囲広すぎない? 普段カッコいいのにこのダメ姉は……なんて答えようかな? 適当に答えて納得してもらおう。
「嘘を言ってもすぐ分かるからな」
なんて事だ……この姉は嘘発見器能力でも持っているのだろうか? 普段はイチ兄絡みでテンパってるのになんで今そんなに鋭いの? 僕分かんなくなってきたよ箒姉……?
「……頼りがいがある人、落ち着ける雰囲気の人、これでいい?」
「なるほど。そうか、そういうのが好みなのか――セシリアの線はなくなったな」
「何納得してるの? あとなんか言った?」
「何でもないぞ。この後はどうしようか? 凪はどこか行きたい場所とかはないのか?」
「う~ん、特にないんだよね。じゃあさ、カラオケ行かない? 昨日とかクラスの女の子達がカラオケ行きた~いとか言っててちょっと歌いたい気分なんだ」
「か、カラオケか……う、歌には自信がないのだが大丈夫だろうか……?」
「僕と二人だけだし大丈夫だよ。それにイチ兄と一緒にカラオケ行く時の練習にでもしたら?」
「そう、だな! うん、そうしよう!」
そんなわけで残った時間は箒姉とカラオケ祭りでした。僕は普通に特撮系からロボット系、あとドラマの主題歌を適当に歌い、箒姉も戸惑いながら流行りの曲とか歌った……けど上手すぎない? ホントに初めて? いや良いんだけどさ。でも楽しそうで良かった。昔に色々なければ今のように普通の女の子として生活できたんだろうけどそれも無理だったからね。こんなのでも息抜き代わりになれば僕はそれでいいや。姉の幸せが僕の幸せだしね。
終わりの時間になったのでカラオケ店から出てそのまま学園に戻る道中、隣ではこういうのも良いものだなと楽しそうに笑っている箒姉がいた。そして思ったことはやっぱり僕ってシスコンだねって事。この笑顔のためなら何でもできそうだって思うし。守りたいこの笑顔……この笑顔を奪うヤツは誰であろうと許さないし容赦はしない。
「凪、お前に一つ忠告しておくことがある」
時間は進んで現在は夜の11時、仕事から帰ってきたちー姉ちゃんが真剣な表情で僕を見ている。恰好はだらしないけどなんだろう? 忠告? なにかあるのかな?
「明日、私のクラスに転校生が2人やってくるがどちらも問題児でな。片方は私がドイツにいた時に指導した奴で力を攻撃力だと勘違いしているような奴だ。しかし悪いやつじゃないぞ? あいつは努力の天才でな、部隊最弱から部隊最強の座まで上り詰めた奴だ。不愛想だが仲良くしてやれ」
「へぇ~凄いんだね。もう一人は?」
「――別の意味で問題だが、そいつは男だ」
うん? 今ちー姉ちゃんは何て言ったんだろう? なんか男って単語が聞こえたような気がする……気のせいだよね? だって僕は阿頼耶識、イチ兄はたばねぇの仕業、これしかないのにまさか3人目の男性操縦者が現れたとでもいうの? うっそだ~そんなわけないよ……でも存在する可能性もあったんだよね。でもそれが何の問題なんだろう? まさか僕と同じ阿頼耶識使いってわけじゃないよね?
「僕とイチ兄のようにISを動かせる男子ってだけでしょ? 何が問題なの?」
「……そいつの経歴だが発見され即座に代表候補だ。お前はどう思う?」
「どうって……努力したんじゃないの?」
「馬鹿者。一夏がISを動かせると分かり世界中が二人目を探し、それでも見つからなかったというのにここにきて新しい男性操縦者だ。そのような噂も無く突然現れ、しかも既に代表候補になっているとなれば疑ってくれと言っているようなものだろう?。お前も3人目の男性操縦者と同じく突然の現れた存在だが状況が違う……なんせISを生み出したあの馬鹿が自ら認めた事で各国も認めざるを得なくなったからな。今回はあの馬鹿の言葉すら無くそいつが所属する国も本当ですと一点張り、今日まで姿を公の場に晒していない……経歴も本当かどうか怪しい。大方、お前や一夏に近づくためのスパイだろうな。これでも努力したとでもいうつもりか?」
「そう言われると怪しいような……気がしなくもないけど考え過ぎじゃない? 仮にさ、その人が男じゃなくて女の人でした! ってなった場合さ、国自体がそれを認めてるってことになるしわざわざそんな危険なことまでして男で通すって考えられないんだけど?」
「……はぁ。お前も一夏も世界からすれば貴重な人間、そのデータは喉から手が出るほどほしい代物だ。たとえ一人の人生を壊してでも手に入れたいものだ。そのことは自覚しておけ。そして残念だが学園は断ることはできない、注意だけはしておけ。良いな?」
ふむ~もしかしてイチ兄と箒姉の同棲生活が解除されたのってその人が転校してくるから? でもちー姉ちゃんの言いたいことは分かるよ。だってイチ兄でさえ代表候補生じゃないのにいきなり男ですIS動かせますという人を代表候補生にするかって言われたら……微妙なんだよね。だってセシリアさんとか鈴さんとかを見てるとその敷居ってかなり高そうだしね。危険な橋を渡るぐらいなら学園に入学している自分の国の人に頼めばいいだけだし……何より男装、って勝手に決めてるけどまぁいいや。それを隠し通せるかって言われたら無理だよ。僕はちー姉ちゃんという大きすぎる存在があるし生徒会の人達も手伝ってくれてるから良いけどその人は一人でしょ? 無理だね。どこかでボロが出る……いいや、会ってみてから考えようっと。
「お気楽思考め」
「うぅ……ダメ?」
「ふんっお前がそれでいいのならば私からは何も言わん。だがもしもの時は――」
心配性だなぁちー姉ちゃんは。大丈夫だよ……イチ兄と箒姉に危害を加えた時はちゃんと殺すから。
そんなわけでもう遅いし頭使ったから眠くなったので布団にダイブ。睡魔に身を任せて眠りにつき目が覚めるといつも通りの朝、ふわぁぁぁ~おはようちー姉ちゃんってやっぱり早いなぁ。ちゃんと寝てるのかな? 今度リラックス効果がある飲み物でも作ろうかな? とりあえず着替えてイチ兄と箒姉の所に行こうっと。何気に部屋が分かれたから大変なんだよね~主に朝の日課がさ。先に箒姉の部屋に向かって扉をノックするとショートカットの女の子が開けてくれた。この子が今の箒姉のルームメイトの鷹月静寐さん、普段はヘアピンを両側につけてるけど起きたばかりなのかそれはまだの様子。
「おはようございま~す。箒姉は起きてます?」
「起きてるよ~さぁ入って入って」
許可が下りたのでお部屋の中へ。おはよう箒姉、今日もいつものをやりにきましたよっと。
「篠ノ之君って髪弄るの上手だよね」
「そうだろう。自慢の弟だからな」
「箒姉だけだよ。昔からこんな風にやってたし……あっ枝毛。ちゃんと手入れしなよ? 長くて綺麗なんだから大事にしないとさ」
「わ、分かっている……」
ちなみにこの日課だけど最初は鷹月さんに驚かれた。というよりなんで此処に!? って感じだったけど事情を説明したらどうぞどうぞという風に理解してくれました。うんうん、説明は大事だよホントに。何時もの日課が終わり部屋を出てイチ兄の所に向かい、一緒に朝食を食べる。勿論箒姉とセシリアさん、鈴さんも一緒に。もうこのメンバーが当たり前になってきたなぁ~嫌じゃないしいっか。
「そういえば織斑君と篠ノ之君はどこのISスーツ製なの?」
教室に入ると女の子達がISスーツの事で話し合っていた。でもどうしよう……ここでたばねぇ製ですとかいうとなんか大変そうだし……適当に誤魔化そうっと。ごめんね?
「俺は確か特注らしいぞ? えっと、ストレートアームモデルってやつを改良したみたいだけど詳しいことは分かんない……そういえば凪はどこのなんだ? なんか背中に変なのついてるし俺と同じ特注品か?」
「うん。でもそんなに変かな? カッコよくない? なんかロボットアニメに登場するパイロットスーツみたいでさ?」
「そうかぁ~?」
むむっ男心を分かってないねイチ兄……カッコよければ全てよしなんだよ。そして何処からともなく山田先生が現れてISスーツの説明を始めてみんなに先生っぽいとか凄いねやまぴーとか色々言われてる。本人は先生としての威厳がとかで嫌みたいだけど仕方がないね。だって親しみやすいもん。
「諸君おはよう。そろそろSHRを始める、席につけ」
我らが織斑先生の登場で教室の空気が一気に変わる。どれだけふざけようともこの人がいる時にはできないよね……僕も無理。部屋での姿を見てる僕ですら無理。多分イチ兄も無理でしょうきっと。
「今日から本格的に実戦形式の授業が開始する。各人気を引き締めるように。ISスーツは各々の物が到着するまで指定の物を使用してもらうが……忘れた場合は下着で受けてもらう。覚悟しておけ」
恐らくみんなの思ったことが一つになっただろう。授業って下着で受けるものだっけ? 僕はその程度だったら見ても何も思わないしどうでもいいけど可哀想だよね? うん。だって恥ずかしいでしょきっと。そんなことを思いながら山田先生から転校生を紹介しますという発言があった。あぁ昨日言ってた新しい男性操縦者とちー姉ちゃんの教え子? 弟子? どっちだろう……いっか。でもどんな人なんだろうなぁ~ワクワク。
扉が開いた。中に入ってきたのは二人、そこまではよかったんだ――片方の女の子を見るまでは。
「っ!?」
「し、篠ノ之君? どうしました?」
体が無意識に動いて立ち上がったんだろうけど今はどうでもいい。あれ、なんでクロエさんが……あれ違う? でも雰囲気は似てる……髪も銀髪、目は片方は普通、もう片方は眼帯で隠されてる、背も大体同じ……どういうこと? もしかして姉妹的な何かなの? というよりクロエさんって姉か妹いたの? 今日初めて知るかもしれない新事実だ。もし違ってたらあれだけど……でも似てる。顔とかじゃなくて雰囲気がそっくりなんだ……ふぅ、落ち着こう。あの人は別人、別人。よし落ち着いた。絶対に落ち着いた。
「し、篠ノ之君?」
「……あっえと、すいません」
謝って着席、でも頭の中は混乱状態……落ち着いたんじゃないのかよ僕の頭は……!
周りから不思議そうな視線を浴びるけど今の僕はそんなことを気にしている状況じゃなかった……僕、これから大丈夫かなぁ~……?
やっとあの子が登場。
でも原作を読んで思いましたが生徒会長と千冬姉は絶対気づいてるだろと思わざるを得ないです。別の男性操縦者ともなれば生徒会長がお家パワーで調べるでしょうし千冬姉も束が絡んでいないという事でまた同じ。
というより存在しない人間の編入書類を受け取るIS学園ってどうなんだ……