「シャルル・デュノアです。僕と同じ境遇の方がいると聞いてフランスから来ました。まだ日本には不慣れですがよろしくお願いします」
壇上で金髪の男の子がクラスの皆に向けて挨拶をした。人柄が良さそうな雰囲気に長い金髪、体は華奢な印象があってお、女? いや男? という感じで悩む人が多そうだけどクラスの子達は男子と認識したのかきゃ~と叫びが響き渡る。でもどうでもいい、3人目の男性操縦者? 知らないよそんなの勝手にしてろって感じ……もう男の人でも女の人でもどっちでもいいよ。いや本当はダメなんだろうけど僕の意識、視線はシャルルって人の隣にいる子に釘付けで目が離せなかった。
最初見た時はクロエさんが転校してきたのかと本気で思ったぐらい似てた。姿形がじゃなくて雰囲気がもうそっくりだったから驚いたね……あんまり人を間違えることはしないと思ってた僕でもさっきは本気で間違えそうになった上、クロエさん!? って叫びそうになった。ホント叫ばなかったのを誰か誉めてほしいぐらいだ。そして前にいる箒姉がちらちら横目で見てくるのはなんでだろうか? 前向きなよ? 叩かれるよ? 叩かれてもあとで僕に文句は言わないでね。というより今の僕は箒姉がちー姉ちゃんに出席簿アタックされるされないは心底どうでもいい。だってあの子が気になるし。でも本当に似てるなぁ~姉妹って言われたらそうだねって言える自信がある。じぃっと見て思ったことはなんか軍人さんみたいって感じ。だって制服もそれに近い感じに改造してるし黒い眼帯をしてるし映画とかで見る軍人ってイメージがピッタリな子だ。髪も銀髪で綺麗だし手入れとかちゃんとしてるんだろうなぁ……うん? なんで僕は初対面の子をこんなに観察しているんだろう? ヤバいなぁ……僕ってもしかして銀髪好き? い、いやそんなことないはず! うん! あっじぃっと見てたのが気づかれたみたい。視線を僕に向けて何の用だ的な事を言ってるっぽい……とりあえず頭を下げておこう。見ていてごめんなさい。
「3人目! 3人目よ!?」
「守ってあげたい系の男子! 守ってもらいたい系男子の織斑君にかわいい弟系男子の篠ノ之君! きゃ~!」
「分かる分かる! このクラスでよかったぁ!」
どうやらクラスのこの認識ではイチ兄は守ってもらいたい、僕は弟のようにかわいい、そしてシャルルさんは守ってあげたい男子という認識らしい……えぇ~? そこは僕も守ってもらいたい系に入れてくれないかな? そして箒姉、なんで頷いているの? セシリアさんもなんで弟系男子、良い響きですわと納得してるの? あれこれって僕がおかしいの? おかしくないよねイチ兄!? あっなんか違う事考えてるっぽい。具体的にはダジャレとかそんな感じのを。
「あーお前ら、静かにしろ。まだ終わってはいないぞ」
ちー姉ちゃん……そんなめんどくさそうな声で言わなくっても……なんだろう? 今のちー姉ちゃんからはたばねぇに絡まれてるときぐらいにめんどくさいって感じが出てる。山田先生もはっと頭をぶんぶん横に振って先生の威厳を見せようと頑張った、頑張ったけどちー姉ちゃんには及ばなかった。が、頑張って山田先生……! そして自己紹介はシャルルさんから隣の銀髪の女の子へ移る。さぁ! どんな自己紹介をするんだ!
「……」
はいだんまりです! もう挨拶? 知らんなと言いたげな顔だ……あ、あのさ……ちょっとだけでもいいから挨拶しようよ? そんなんだと友達できないよ?
「ラウラ、挨拶ぐらいはしろ」
「はい、教官」
「その名で呼ぶな……全く、見ない間に融通の効かん奴に育ったか……ここでは織斑先生だ。次に教官と言ったらコイツで殴る」
なんという恐怖政治だろうか。ちー姉ちゃん最強装備である出席簿を見せて脅す、脅す? いや違うよね? でも普通の先生だったら多分言わないだろう。ちー姉ちゃんだからこそ言える発言だ……あと、ラウラ? さんでいいのか分からないけどちー姉ちゃんは有言実行、言ったことは必ず行うから早く自己紹介を! というより僕は下の名前が気になっているからできれば教えてください! クロニクルなのか別の名前なのかだけでもいいから!!
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
「……」
「篠ノ之弟、何か言いたそうだな?」
「へ? あっいや、その、えーと、あーと、えーえー、あー……色々と気になってた部分が少し解消されただけです。あと自己紹介はそれだけかなぁとか思ったり……」
「必要ない。それに貴様……先ほどから私に何の用だ? 言いたいことがあるなら今ここで言え。聞いてやる」
「えーと、あのその……し、知り合いに似てるなって思っただけです本当にごめんなさい」
嘘は言ってない。嘘は言ってないよ僕は……だって本当に似てるんだもん。声も印象も全く違うけど何かが似てる……その何かがわからない。そして背後から禍々しい視線を浴びているのは何故だろう……だ、誰だ? はっ! セシリアさんだと!? 僕何か変な事言った!? なんでそんな目で僕を見てるの!? 何故かは知らないけど怒らせたっぽいから後で謝っておこう……うん、そうしよう。
「凪、なんか変だぞ? 大丈夫か?」
「何でもないよイチ兄、ホントに何でもないから」
「イチ兄……イチカ、一夏、織斑一夏っ! 貴様か!」
ラウラさんは壇上からイチ兄に近づいて――ビンタした。それはもう綺麗な音だった……イチ兄には悪いけど初対面、だよね? 知り合い? どっちでもいいけどビンタされるってなにしたのさ? まさかまたイケメンが持つ力のせいなの? 怒らせたまま別れちゃったんだったら謝りなよイチ兄? というよりこれってまさか僕のせい? い、いや違うと思う違うよねきっと違う。でも謝っておこう。
イチ兄のなにすんだという言葉を無視して後ろの空いている席に座った。なんだか凄いかもしれない……うん、ここでまた一つ違うところが発見かな。性格が真逆すぎる。でもクロエさんがラウラさんのようになるのも見てみたい気がする……ビンタされたくないけど。
「全く貴様らは……これにてSHRを終了する。各人、すぐに着替えて第二グラウンドに集合しろ。遅刻は許さん。それから今日は二組との合同授業だの予定だ。それから織斑、デュノアの面倒を見ろ。今日の篠ノ之弟は何をしでかすか分からん。良いな」
「は、はい! えっと俺は織斑一夏、んであっちが篠ノ之凪。今日からよろしくな」
「うん。僕はシャルル・デュノア、同じ男同士仲良くしてほしいな」
SHRが終わっても僕の視線はラウラさんに向いていた。もうダメかもしれない……あいたっ!? 何するの箒姉? 叩かなくても良いじゃん。
「早く着替えねば遅れるぞ。一夏、凪を頼む」
「おう。ほら行くぞ? 早く行かないとマジで遅刻しちまう」
「あ、うん……あ、えと、篠ノ之凪です。よろしくね」
「こちらこそ。それじゃ行こうか」
イチ兄、シャルルさん、僕という並びで教室を出る。あぁもう! 色々考えるのは後だ! とりあえず出席簿アタックを受けたくないから急ごう! ねぇねぇイチ兄? 急ぐのは分かるけど手を繋ぐ必要ある? そしてシャルルさんは何故顔が赤いの? はぁ……前途多難だね。僕は空気が読めると自負してるから風邪かなって思っておくよ。でも正直ちー姉ちゃんから注意しろと言われなければ騙されてたかもしれないね……うん、きっと騙されてた。でもなんだろう……事情あるのかな? なんとなくこの人から悪い人って感じないんだよね……もしかして僕って騙されやすい性格なのかな?
3人で一緒に急いでいると目の前に無数の女の子が立ち塞がった。しかも後ろも……なんて事だ……一瞬で囲まれた! いや待って!? なんで囲まれてるの!?
「あぁ~織斑君とデュノア君が手を繋いでる~!」
「これは禁断の愛の予感……待って! 今まで織斑君×篠ノ之君が鉄板だったのに! まさかの伏兵! 織斑君×デュノア君!」
「待ちなさい! ここはデュノア君×篠ノ之君よ! 今何かを感じたわ!!」
「いーやここは普段大人しい篠ノ之君が織斑君を奪い返す場面よ! さぁ! さぁ!!」
聞こえない何も聞いてない僕は何も知らない。さぁって言われてもやらないよ? そもそもなんで僕が受けなわけ? 攻めでもいいじゃん。僕は受けるより攻める方が好きだし……いや誰に言ってるんだよこれ? いーや、とりあえずお話しして通してもらおう。遅刻しそうだしね。
「凪……すまん!」
「え、きゃっ、えぇぇぇぇ!?」
イチ兄がシャルルさんをお姫様抱っこして窓から飛び降りた。なんだろう子の女の子の叫び声的なもの……僕は空気を読める男の子、故に聞かなかったことにします。さて……どうしよう? な、なんか近づいてきてるよこの人達……!?
「……あ、あの、そろそろ行かないと僕も授業遅れちゃうんだけど……?」
「お話ししましょう!」
「大丈夫お姉ちゃんたちがゆっくりねっとり……ね! ねっ!」
「はぁはぁ……はぁはぁ」
ダメだこの人たち何とかしないと……じゃなくて本当にどうしよう? このままじゃ出席簿アタックを受けることに……イチ兄の裏切り者!! せめて僕も連れて行ってよ! お姫様抱っこされる覚悟ぐらいできてるって! あぁもう!! 本当に時間がないからなりふり構ってられない!! 制服の上を脱いで適当な所に放り目の前の子達の気を逸らした後、窓まで走って一気に飛ぶ。身体が重力で落ちる前に耶識を展開して空を泳ぐ……このまま直でグラウンドに行ってやる! もう知らない! そして誰か後で制服返しに来て!!
到着まで約数分ってところかな。う~ん、耶識どうしたの? なんか機嫌悪い? 手当てはちゃんとできてると思うけどもしかしてまだ痛いところあった? もうすぐ着くから後で見てあげるね……それじゃ着地っと。
上空から一気に落ちて地面ギリギリで急停止。なんか集まってる人は何事って感じで驚いてる……ごめんなさい。でも急がないといけなかったから許してください! というわけでIS解除~あれ? イチ兄達まだ来てないのか? 僕を置いてった癖に遅いよもぉ。
「ほう。私の目の前で規則違反とはいい度胸だな篠ノ之弟」
死の宣告、あぁ僕は此処で死ぬのか……でもせめて死ぬ前に告白だけさせてください……! ギギギって音が聞こえそうな感じで後ろを向くとそこにいたのは絶対神ちー姉ちゃん。そして覚悟する前に出席簿アタックを受けて僕は撃沈……い、いだい……!
「さて、言い訳を聞こうか?」
「……更衣室に向かってたら他のクラスの人達に囲まれてイチ兄にも見捨てられて何故か身の危険も感じたので耶識を呼んでここまで飛んできました。ごめんなさい」
「はぁ……あの馬鹿どもめ。あとで職員室に来るように。それから制服の上はどうした?」
「その人たちの気を逸らすために投げつけました――へぶぅ!?」
「今日のお前は一段とおかしくなっているな。調子が悪いなら休め、ただし職員室には必ず来い。逃げたら――分かっているな?」
「大丈夫です! 何も問題ないです! 体調も万全です織斑先生!!」
なら良いと言ってくれたからどうやら許されたようだ……命は、大事! 大事じゃないけど大事! 皆に騒がせてごめんねって謝りつつ箒姉の所へ。何故だろう……近くにいるセシリアさんが怖い、なんか怖い、身の危険を感じるくらい怖い。
「凪さん、今日は一段と変ですわよ? それほどあの方が気になっているのかしら?」
「へ? あ、いや~し、知り合いに似てたから……あはは」
「そうですの。では一度お会いしてみたいですわ。凪さんが変になるぐらい似ていらっしゃるのでしょう? お顔を見てみたいですわ。きっと先ほどの方と同じ方なのでしょうね? いけませんわ凪さん、あのように初対面の男をビンタする野蛮な方に関わってはいけません。関わるならそう、わたくしのように優雅で上品なお嬢様タイプであるべきです。ですから凪さん? お話ししましょう? 大丈夫です、わたくしはビンタ等傷つける行為は決して行いません。ですので好みの女性像をわたくしに教えていただきませんこと? 凪さん?」
怖い!? なにこれ怖い!? 今のセシリアさんからは負のオーラしか感じないよ!? ほ、箒姉……ちょ、ちょっとだけたす――ぎゃ~!! こっちもかぁぁぁぁ!! なんで僕でダークサイド突入してんのさ!? ブラコンなのか!? そうだよねその気があるよね! なにが「何処で知り合った? 私と一緒に過ごしてた頃には銀髪の女などいなかった、いつ知り合った? 姉に教えて見ろ。大丈夫だ凪、お姉ちゃんは怒っていない」だよ! 言えるわけないじゃん! だってたばねぇと一緒にいるんだし!! そもそもなんで知りたがってるの!? もうみんなおかしいよ!! あと怖いよ!?
前門の姉、後門のお嬢様という構図から助け出してくれるようにイチ兄とシャルルさんが登場。僕たちの様子を見て何やってんだ? という一言で箒姉はダークサイドから脱出、セシリアさんもまた同じ。なんてことだ……流石イチ兄!
「てか凪? 早くないか?」
「だって空飛んできたからね……あとで職員室に行かないといけないけど……」
「そ、そっか……体調悪いなら休めよ? なんか変だぞ?」
「あはは……大丈夫だから心配しないで」
時間になったから授業開始。ちー姉ちゃんは戦闘の実演、つまり模擬戦を始めるようにセシリアさんと鈴さんを指名した。2人はなんで私がとか見世物ではありませんのになど乗り気では無い様子だったけどちー姉ちゃんが何かを耳元で言った瞬間態度一変、なんとも分かりやすい。きっとイチ兄にいい所を見せられるとか何とかって言ったんだろうね……でもそれだったらなんでセシリアさんもやるき出してるの? 僕の感ではイチ兄に好意を抱いている感じはなかったのに……まさか僕? まっさかぁ~ないない。あるわけないよそんな事。
「箒姉? 鈴さんは分かるんだけどセシリアさんがやる気出た理由分かる?」
「知らん。凪は気にしなくていい事だ」
「そ、そっか……うん? 何か音しない?」
たとえるなら何かの落下音、そして誰かの声……どこからだろう……上? 頭を上に向けると誰かが一気に落ちてきているのが見える。あれこれイチ兄の所辺りに落ちるんじゃない? 完全停止できるのかな……無理そう、なんか焦ってるし。
「イチ兄! 白式展開して!」
「は? ってうお?!」
耶識を展開して周りにいた箒姉とクラスの子を抱きかかえて離脱。イチ兄の周りにいた子も気づいて退避したみたいだから問題なさそう――イチ兄を除いて。上からの落下物は予想通りイチ兄に落ちたけど幸い白式の展開が間に合ったみたいで良かったぁ……うん? 山田先生? なんで落ちてきたのってあぁ~もうどうなってるの? なんで上から落ちて当たったのにイチ兄が押し倒してるような状態になるわけ? 謎だ……あっとりあえず抱えた子と箒姉を下ろそう。怪我はない? と聞いてみたら大丈夫って元気な声で返事をしてくれた。よかったぁ! うん? なんか視線が2つ……? あぁ、シャルルさんとラウラさんか。そりゃ見るよね。専用機だし。
「……い、いち、いちかぁ……! おま、えという奴は……! い、いや此処は……いちかぁ……!」
戦ってる、自分の心と戦ってるよ我が姉は! 今すぐ怒りたい、でも怒ったら嫌われる、でも怒りたいって感じなんだろう……あっ良心が勝ったっぽい。イチ兄の近くに行って怪我はないかとか言ってるし。なんという母性あふれるセリフなのだろうか……あっでもちょっと怒ってるのか抓ってる、かわいい。
視界の端で鈴さんが怒りに耐えきれず持っていた武器を連結させてブーメランのように投げる動作をしているのが見えたので投擲と同時に鉈を呼び出して跳んで射線上に割り込み、投擲され回っている武器の柄を鉈で叩いて上空に飛ばす。体が勝手に動いたけど動かなかったら箒姉に当たってたかもしれないのか……よく動いてくれた僕の体! でもこれで何とか箒姉は大丈夫……後はキャッチして終了。ふぅ~危なかったぁ~箒姉に当たったら一大事だもんね。あとはこれを持ちながら降り、ぐっ……コロス、凪の物を奪うやつはコロス。
「――落ち着け馬鹿者!」
誰もいない所に甲龍の武器を放り投げるのと同時に瞬間加速、甲龍の背後を取り、反応される前に鉈の刃を頸動脈に当てて殺そうとするとオリムラチフユから静止の声が聞こえる。ちっ……あ、あれ……なんで僕、此処にいるんだろ? さっきまで空にいなかったっけ?
「……あ、あっぶないじゃない!? 何的確に頸動脈狙いにきてんのよアンタは!」
「ご、ごめん……つい」
「ついで狙うなぁ! あぁもう怖かったぁ……というよりどんな反射神経してるわけ? 投げた瞬間に弾かれるとかびっくりしたわよ」
「なんか知らないけど身体が勝手に動いただけだよ。例えるならシスコン
「少しは姉離れしなさいよ……でも、ごめん。箒も近くにいたんだったわね」
「後でちゃんと二人にも謝ったほうが良いよ? 多分気にしてないと思うけど」
耶識を解除するとちー姉ちゃんから出席簿アタックの攻撃、僕は瀕死になった……いだぁい……!
「戦闘ではいいが今は授業中だ。反撃はほどほどにしろ」
「すいませんでした……」
「篠ノ之君、反応が早いですね。撃ち落とす暇もなかったです」
どうやら僕が割り込まなくても山田先生が射撃で弾く予定だったらしい。倒れた状態での射撃、狙撃? どっちだろう……いいや、とりあえず凄いことができるんだと思っておけばいい。ちー姉ちゃんからどうやら山田先生は昔、日本の代表候補生だったと聞かされてみんな驚いていた。そりゃそうだよ……普段はいじられキャラ? みたいな感じの山田先生が元代表候補生だもん。本人は謙遜してるけど凄い事だと思うよ? そして視線がまた……二人か。一人はシャルルさん、なんていうか見たいけど見たくない的な感じの視線。ラウラさんは……なんて言えばいいんだろう? 感心してる? なんで? いいや後で聞こうっと。
そしてどうやらセシリアさんと鈴さんの相手は山田先生らしい。なんていうか2対1は卑怯じゃない的な事を二人は言うけどちー姉ちゃんからどうせすぐお前たちは負けると言われてカチンときたんだろう。やってやるわと張りきり始めた。なんとも分かりやすい。ちなみに僕は罰として戦わされることはない様だ……でも酷いよね? なんでトラウマ製造機みたいに言われるの? もうおこだよ。
「さて、今から専用機持ち2人と教員による模擬戦を始めるがしっかり見ておくように。それからデュノア、山田先生が使用しているISを説明しろ。勿論見ながらだ」
なんという無茶ぶり。ちー姉ちゃんの圧力に似た統治能力によりみんなは空で戦っている3人を見ている中、シャルルさんはすらすらと機体の説明を始めた。山田先生が使用しているのは『ラファール・リヴァイブ』と呼ばれている第二世代型ISの一つ、スペックは第三世代初期型に近いもので高い安定性と汎用性が特徴、豊富な後付武装により乗り手を選ばずあらゆる状況にも対応できるらしい。あと量産型ISの中でシェア第三位みたい……たばねぇは可もなく不可もない地味な奴って言ってた気がする。そしてそれを作っているのはデュノア社。あれ? デュノアってシャルルさんの下の名前と同じじゃない? あっお家がそれのかな?
しかし山田先生凄いなぁ~? セシリアさんのビット攻撃で鈴さんが巻き込まれる動きで翻弄しつつ射撃。鈴さんの衝撃砲だっけ? 見えない弾丸も簡単に躱してる……あっ手榴弾で二人まとめて巻き込んで戦闘終了。爆発に巻き込まれた二人は地面に落ちてなんか喧嘩し始めた……仲良くしなよ?
「これでIS学園教員の実力は理解できただろう。今のお前らはまだひよっこ、教員の前では手も足も出ないという事を知り、理解したら敬意をもって接しろ。では実習だが専用機持ちは……織斑、篠ノ之弟、オルコット、デュノア、ボーデヴィッヒ、凰か。ではグループに分かれて行え。リーダーは専用機持ちがすること」
「織斑君! 私初めてだから教えてほしいなぁ!!」
「デュノア君! 初めて見た時から決めてました!!」
「篠ノ之君! 手取り足取り教えて!」
あ、あれ……専用機持ちがリーダーって言ったよね? なんか僕とイチ兄とデュノアさんに集中してるような気がするんだけど気のせいかな? あっちー姉ちゃんが呆れながら出席番号順に散れ、さもなくばISを背負ってグラウンド百周させるといった瞬間、みんなの心は一つになった。そうだよね……嫌だよね? 僕も嫌だし。
そんなわけで均等に班が出来上がって実習開始。僕の班の子の中にはさっき抱えた子もいてさっきはカッコよかったよって言ってくれた……よし頑張ろう! ちなみに箒姉は運よくイチ兄の班に入れた様子……よくやった箒姉! 頑張れ箒姉! チャンスだ箒姉! でも他の所を見てもある人を除けば大体おんなじ反応してるね、ラウラさんの所はお通夜みたいに静かだけど。
「えっと、みんなはISを動かしたことある?」
「入試と授業の時だけ~!」
「うんうん!」
「そっか……どっちがいい? 打鉄とリヴァイブがあるみたいだけど? どっちでも良いなら空いてる機体でやるけど?」
どうやら特に機体の拘りはないみたいなので一番近くに合った打鉄を選んで皆の所に戻る。いや~台車って楽だね。押せばいいんだもん……物凄く重かったけどね! 僕の班が選んだのはラファール・リヴァイブ、打鉄も良いけど安定性とかその他諸々の点を考慮してこっちに決めました。
「それじゃ最初の人からやってみよ~起動の仕方は分かる?」
「な、なんとか……」
「そっか。じゃあやってみて分からなかったら聞いて? まず慣れる事が大事だからね」
というわけで始まりました篠ノ之凪のIS勉強会、という名の何か。殆どの子が入試か授業でしか動かしていない人だったから起動の仕方、歩行、解除を順番にやらせている。だって最初から知識とかは無理だし自分の感覚ってバカにできないからね。でも呑み込み速いね? うん、これだったらIS操縦なんてすぐ得意になるよ。
「……篠ノ之弟」
「はい?」
「ボーデヴィッヒの班を手伝ってやれ。それで職員室出向を免除してやる」
「やります!」
「返事だけは一人前だな……では頼む。織斑では火に油を注ぎかねんがお前ならまぁ……問題ないだろう」
正直な所、教えながら横目で見てたぐらいには気になってたんだよね。だってラウラさんは終始無言、班の子達に指示すらしてないから他の子達が困りながら淡々とやってるけど……所々分からなくて困ってる感じがする。幸い僕の班の子達は呑み込みの良い子達だったからあまり僕がいる役目はないししょうがないね、うんしょうがない。何か言われたらちー姉ちゃん命令で通そう、うんそうしよう。
「なんのようだ?」
「織斑先生から手伝えって言われたんだ。運がいいのか僕の所って呑み込みが良い人ばっかりだったから暇だったんだよね~手伝っても良い?」
「……教官の指示なら仕方あるまい。それに良い機会だ、私も貴様に聞きたいことがある」
「なに? あっみんな~? 僕も手伝いに来たから分からない所あったら言ってね? それでなに?」
「先ほどの動きはどこで身に付けた? スラスターから放出するエネルギー量の調節、的確に急所を狙う判断力、投擲された武器を弾く反射神経、素人では不可能な動きだ。答えろ」
「え? 普通に動いただけだけど?」
「嘘をつくな――そうか、教官か。なるほど流石教官だ、やはりあの人の教えは素晴らしい。そう思うだろう?」
「まぁ、ね。確かに凄いなぁ~とは思うけど……そんなにちー、織斑先生の事が好きなの?」
「当たり前だ。私の存在を認めてくれた尊敬できる人だ。だが織斑一夏は許さん……教官の輝かしい栄光を奪った奴だけは……!」
栄光って何さ? そういえばちー姉ちゃんは部隊最弱から部隊最強まで上り詰めたって言ってたね……つまり努力家か。それだったら尊敬しても何もおかしくないけど……そもそもなんでラウラさんの部隊にいたんだろう? さっきの栄光を奪った話が関係してるの? 後で聞いてみよう~というかなんか視線感じるんだけど? ダークサイドに落ちた的な奴……な、なんでかなぁ……?
「何を黙っている」
「ううん。ラウラさんって努力家なんだなぁって。僕は努力しても結果が付いてこないから羨ましいよ、あっ待って待って! 解除するなら座ってから! じゃないと次の人が困るからね! うんありがとー!」
そんなわけで実習終了! 今日の僕の働きを誉めてほしい……二つの班を同時に、そして時間内に終わるように教えたんだよ? ふふふ……クロエさんに教えてもらったおかげでもあるけど最後の方はラウラさんの統率力のおかげでもあるんだよね。もうビックリだよ。皆と一緒に使ったISを片づけて次の授業の準備をしようと思うのと同時に別の事を思い出した……制服の上、投げたんだった……! どうしよう? 下は履いてるからいいけど上はISスーツのまま、つまりこの状態で座学をすることになる……み、見つければいいよね!
結局、探したけど見つからず僕は4時間目の授業が終わるまで上はISスーツ、下は制服というアンバランスな格好で授業を受けることになった。そして紛失した制服の上が戻ってきたのはお昼休みに入ってから……ありがとう! 名前分からない良い人さん!
お嬢様は目のハイライトが消失し薄ら笑いをしていたようです。