篠ノ之家の弟は阿頼耶識使い   作:木の人

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黒と黒

「申し訳ありません凪さん、今日のわたくしはいささか変でしたわ」

 

「気にしてないよ? それを言うなら僕も変? だったみたいだしね。お相子だよ」

 

「ふふっ凪さんはお優しいですのね。知っていましたけどもその優しさは凪さんの良い所ですわ」

 

 

 時刻は昼、制服の上を取り戻した僕は少し遅めのお昼ご飯を食べるためにセシリアさんと一緒に食堂に向かっていた。何故セシリアさんもかというと専用機の設定等をしていて食べてないみたいだったからそれなら一緒にと誘ってみました。実はこの前にイチ兄から屋上で皆と昼飯食べないかって誘われてたけど箒姉の邪魔はできないので「ごめんね? もう約束しちゃってるんだ」と嘘をついて断った。だってイチ兄を誘うために早起きしてお弁当作ってたみたいだし弟としては姉を応援したいでしょ? たとえ周りに誰かがいようとね。

 

 セシリアさんは先ほどまでの態度がおかしかったと謝ってきたけど僕も同じだからお相子ってことで仲直り。しかし怖かったね……あんまりダークサイドに落ちる人は見たことなかったけどああなんだね? きっと屋上ではイチ兄を巡って熾烈な争いが起きているに違いない……! シャルルさん、ご愁傷さまです。いるよねきっと? イチ兄の事だし誘ってるでしょ。

 

 

「セシリアさんは何食べるの?」

 

「今日はラーメンというものを食してみたいと思っていますわ。先日凪さんが食べているのを見て気になっていましたの」

 

「へぇ~なら僕もそれにしよっと。あっカロリーを気にしてるなら醤油がお勧めだよ?」

 

「そうなんですの? ではそちらにしてみます。凪さんはどの味をお食べに?」

 

「う~ん、今の気分は味噌かな」

 

 

 既に糖分は補給済みなのでここで甘い物と頼む必要はない。そもそもラーメンに甘い物は合わないしね……一回だけ一緒に食べて酷い目に合ったからもうやらない。品物を受け取って空いている席に座って一緒にいただきますと言ってから食べる。うん、味わい深いスープだ……麺も太くて良い感じ、お代わりほしい……しまった白米も頼めばよかった! 麺を食べ終わって残ったスープにインしたい……!

 

 目の前のセシリアさんは慣れないはずの箸を器用に使って食べている。うん、上品だね。お嬢様って感じがする……それに箸の持ち方上手だなぁ、きっと日本で過ごすから頑張って覚えたんだね! やっぱり凄いなぁ!

 

 

「どうかなさいましたか?」

 

「うん? 箸の持ち方上手だなぁって」

 

「と、当然ですわ! わたくしはオルコット家の当主ですもの――凪さんと日本食を共に食べるために頑張りましたものこれぐらいは」

 

「僕が何?」

 

「何でもありませんわ!」

 

 

 僕の勝手な想像だけど外国の人って箸とか使い慣れない印象だけどセシリアさんみたいに頑張れば簡単だよね。周りを見ても別のクラスの子で外国の子とか日本食を食べるために箸を使って悪戦苦闘してるみたいだし。でもそれを見捨てないでちゃんと教えている子ばかりだから良い人たちだよ。これが友情だよ、本当に友情は大事。

 

 

「凪さん」

 

「なに~?」

 

「お一つお聞きしたかったのですが……凪さんはぎ、銀髪の方が好みなのですか? 今日一日、視線はあの方に向いていましたし……も、もしかしてひ、ひひひ一目!」

 

「特に好きな髪の色とかはないよ? ラウラさんの銀髪綺麗だなぁとか思ってるけどセシリアさんの金髪も綺麗だよ? ただ見てたのは知り合いに似てたからさ、もうびっくりしたよ。ホントは一緒にお昼食べたかったけど此処にいないみたいだしちょっと残念かなぁ。話したいこととかあったのに……あれ? どうしたの?」

 

「な、何でもありませんわ……凪さんの意識があの方に向いている。つまり最大のライバルは箒さんではなくあのラウラという人、くぅ……スタイルでは勝っていますのに何故ですの……ま、まさか凪さんは小さい方が……それはもうどうしようもありませんわぁ……!」

 

 

 小さな声で何かを呟いてるみたいだけどどうしたんだろう? まっいっか、きっと色々あるんだろう、うん。でも何度見渡してもラウラさんいないなぁ。居たら一緒に食べようとか言いたかったのに……何でと言われたら純粋に興味あるしね。こ、これが鯉、じゃない恋? ない、ないない。

 

 スープを飲みながら思考はラウラさんから屋上にいる箒姉達がどうしているかに移る。ちゃんとやってるかなぁ? 緊張してなきゃいいけど……はぁ、我が姉はイレギュラーに弱いしねぇ。

 

 

「凪さん? お考え事ですか……もしやまたあのラウラという方の事を……!」

 

「違う違う。今屋上でどんな事が起きてるのかなぁって思ってさ」

 

「あぁ……きっと一夏さんが鈴さんとシャルルさんを誘って箒さんを怒らせているのでは?」

 

「うん。僕もそう思う。はぁ……箒姉も箒姉だけどイチ兄もイチ兄だよ、さっさと付き合えばいいのに」

 

「全くですわ。そうすれば私も凪さんと……いえ、女の幸せは何よりも大切です。わたくしも応援していますわ」

 

 

 なんて良い人なんだ……! 他人の幸せを応援できる人ってあんまりいないのに……! そうだよ、鈴さんの登場でイチ兄争奪戦が開始されてるけど現状優位に立ってるのは箒姉なんだ、きっと、多分、そうであってほしい。弟としても早くお義兄さん、お義兄ちゃん、なんかそんな感じで言いたいんだよ。でも2人が結婚したらちー姉ちゃんがお義姉ちゃんかぁ……ありだね! たばねぇと違ってお風呂に突撃してこないし僕を抱き枕にしないしちゅーしようとしないしちゃんとご飯食べて寝てるし……早く結婚しないかなぁあの2人? ていうかたばねぇもいい加減恋人作って結婚しなよ。もう24、あれ? 25だっけ? どっちにしろ四捨五入で30じゃん。このまま独身まっしぐらだったら弟として恥ずかしいんだから……でもなぁ、たばねぇに彼氏なんてできるとは思えない。あの不思議の国のなんたらって服装、うさみみ、子供っぽい、無理だよねぇ。胸大きいし頭いいけどそれ以外ダメダメだから無理。うーん、誰か貰ってくれないかな? 最悪イチ兄でもいいよ、箒姉がダメだったらたばねぇにしなよ。僕は許すから。あれ? そういえばちー姉ちゃんも同級生だからそのぐらいの年齢だっけ? でも彼氏いなさそうだなぁ~部屋にいる時の姿がおっさんだもん。ビール飲んで柿ピー食べてゴロゴロしてるもん。なんなんだこの大人組……しっかりしてよ。2人とも四捨五入の30、三十路に近づいてるんだからさ。

 

 そしてなんでだろう……なんか寒気がする……み、見られてる? こう、獲物を見つけて捕食する時みたいな視線を感じるんだけど……き、気のせい!!

 

 セシリアさんからどうかなさいました? と聞かれて何でもないと答える。怖い、なんか怖い!? 誰かが見てる……あれ? ちー姉ちゃん? 何で入り口に――ぎ、ぎ、ぎゃぁぁぁぁぁ~~~~~!? 何で口が覚えておけなの!? まさか心読んだの!? そ、そんな馬鹿な……ありえそう。い、いやぁ怖いなぁ……あれメール? 誰だろう……たばねぇ? 凄く嫌な予感がするんだけど?

 

 

『お姉ちゃんの彼氏はなっくん。それ以外ありえない』

 

 

 いやーおねえちゃんたちはすごいなーあこがれちゃうなー。もう怖くて体震えっぱなしだよ……クロエさん、助けて……!

 

 

「な、凪さん? どうなさいました?」

 

「い、いやぁ……大人って凄いなって思って……あははははは」

 

「は、はぁ……?」

 

 

 お昼休みも終わりそうだったので一緒に教室に向かっていると屋上から降りてきたイチ兄達と合流。想像通り鈴さんとシャルルさんが一緒か、分かってた。イチ兄が約束ってセシリアと昼飯だったのかって聞いてきたからうんと答える。嘘だけど断った手前合わせないとね……所で箒姉? ちゃんとお弁当渡せた? ふむ……渡せてちゃんと美味しいって言ってもらえた。よかったね? 次も今日のように積極性を見せるんだよ?

 

 そんなわけで時間は進んで放課後。ちー姉ちゃんからの威圧的な視線を浴びつつ如何にか一日が終わったよ……怖かったよ!! 今日もいつものように訓練――の予定だったけどちょっとした出来事のせいでそれは出来なさそう。

 

 

「教官から指導された貴様の実力、試させてもらう」

 

 

 腕を組んで僕の目の前に立っているラウラさんに強引にアリーナまで連れてこられたからね。もう腕を組んでISを展開、威風堂々としているからカッコいいって思える。でも凄いなぁ……えっと『シュヴァルツェア・レーゲン』、ドイツ製第三世代、特殊武装有……武装は肩に大きな大砲みたいなものがあるからあれが主武装かな? 色も黒で僕の専用機とお揃いだ。うん、なんかいいねこういうの。

 

 

「あ、あのぉ~? 誘ってくれたのは嬉しいんだけどイチ兄や箒姉達と訓練の約束が……」

 

「知らん。私は貴様の実力を見せろと言っている。光栄に思え」

 

 

 断らせる気はゼロですね……あぁもう、しょうがないね。なんか無理やりだけどやってやろうじゃん! だってそういうのは結構好きだしね! だってカッコいいじゃん!

 

 

「機体名『耶識』……第一世代だと? そんな骨董品であの動きをしていたのか?」

 

「骨董品って酷くないかな? ISだって生きてるんだよ?」

 

「ふんっそんなはずはない。これはただの武器だ――展開したという事は承諾したと認識しても良いんだな」

 

「だって断らせてくれないんでしょ?」

 

「当たり前だ」

 

「ですよねぇ~はぁ、似てるのにこういう所は似てないんだもなぁ」

 

「誰の事を言っているかは知らないが既に始まっているぞ!!」

 

 

 右肩部分に浮遊している大砲から砲弾が僕目掛けて放たれる。それを体を斜めにして躱し鉈を展開、即座に前へ出た――っ! なんか嫌な予感! ラウラさんから身体一つ分離れた距離で身をかがめながら回転、懐に抉りこむようにカーブしながら接近して鉈で腹を抉る。

 

 

「くっ……AICを見切っただと!?」

 

「やっぱり何かしようとしてたんだ。でも無駄だよ」

 

 

 手を突き出してまた何かやろうとした動作と同時にラウラさんの背後に回って左腕の二の腕を切り裂く――けど刃が体に触れたのと同時に同じ方向に引かれたからダメージは少ないな……今のタイミングは結構良かったと思うのに凄いな。でもなんだ……さっきから手を突き出して何をしようとしてる? 阿頼耶識を通じて耶識が何かを語りかけてくる、危険だって言っている……あれに捕まったら終わりって事か。

 

 地面を蹴って距離を取る。相手は逃がさないと肩の部分から紐、いやワイヤーか。それを出して僕を捕らえようとしてくるけど身をかがめたり鉈で一瞬弾いて空いた空間に走ったりして逃げる。大砲、ワイヤー、となれば最後は接近系……きた、やっぱり腕に仕込んでたか。

 

 

「流石教官に指導された男! なかなかやる!」

 

「それはどうも」

 

 

 腕から生えるように出現したレーザー剣みたいなもので僕に斬りかかってくるので鉈で応戦。二刀による乱舞を鉈、体捌きで防いでるけどこのままだと拙い……一旦距離を取って最初からやり直す。後ろに飛ぶとラウラさんはスラスターを吹かせて一気に近づいてきて右腕を振りかぶる、ここしかない! 一太刀目を防いでその反動を利用し逆時計回りに回転しながらラウラさんの足を抉る、予想通り痛みで一瞬だけ動きが止まったから追撃で鉈を持つ手を変え、順手から逆手にしてから脇の下から腕を切断するように刃を沈める……ちぃ、後ろに下がられて掠っただけか。そして砲身が僕に向いたのと同時にハンマーを呼び出して放たれた砲弾を地面に叩きつけて砂煙を起こす。あっぶないなぁ……! 接近するために身を低くしながら瞬間加速、ハンマーを戻して相手の首を掴もうと身を乗り出すとラウラさんの表情が笑った――あっぶな!?

 

 

「っ、今のも躱すか……」

 

 

 嫌な予感がしたから背後に飛ぶと先ほどまでいた地点にワイヤーが突き刺さっている。あのまま首を掴もうとしてたら捕まってたね……ちぃ、今までの相手ならさっきので杭を打ち込んで終わりだったけどそれを狙う暇がない。両腕から生えてるレーザー剣での乱舞は鉈で捌くには一苦労……合間にダメージを与えて怯ませても決定打にはならずリカバリーの行動をされて振り出し、最初とさっき、手を突き出して何を狙っている……特殊武装かな。耶識も僕の感もあれを喰らったらヤバいってのは感じてるからどうにかしないとな……どうすれば殺せる?

 

 

「あれって……凪? それに……」

 

「ボーデヴィッヒさん……? 何であの2人が戦ってるの?」

 

 

 イチ兄達か……僕を探しに来たのかな? でもごめん、そんな暇はない。こいつ殺さないとそっちに行けないみたいだから早めに終わらせる――フェイント仕掛けてみるか。

 

 

「織斑一夏か……いや、いまはこいつだ。私をここまで苦戦させる相手は久しぶりだ。中々出来る、私の部隊に入れてやりたいほどにな」

 

「どうでもいいよそんなこと……ラウラさんも凄いね、まさか攻撃が掠るなんて思わなかったし。努力の天才っていうのは本当だったんだ。憧れるよ」

 

「当たり前だ。でなければ隊長は務まらん!」

 

 

 さっきの攻防で装甲のいくつかに刃が掠って焦げている。痛みはないけどやっぱり体が焦げるのは嫌だね。そしてラウラさんはワイヤーを飛ばし僕を捕らえようと動かしてくるけどそれをマシンガンで弾いて軌道変更、瞬時に瞬間加速を行って接近。鉈を持つ手を順手にして振りかぶるとレーザー剣で防ごうとした――今だ! 刃が当たる直前で止めて瞬時に足払い、その勢いのまま回転して真上にハンマーを放り投げながら足の爪を閉じてドリルにしながら回し蹴り。倒れる方向からの蹴りだ……かなりのダメージに違いない、け、ど? なにこれ……動かない……?

 

 

「よう、やく捕まえたぞ!」

 

「……これが狙ってた奴?」

 

「そう、停止結界だ――なにぃ!?」

 

 

 近くにハンマーが落ちる。その音でラウラさんは一瞬だけ意識を逸らしたからなのかは分からないけど動かなかった体が動くようになった……だったらやることは一つ。蹴りの体勢から戻り、右腕のバンカーを外して手首を回転、ドリルのようにしながら殴る。場所は心臓……そこにこんなのを受ければ痛みで動きが止まる……だから最後はこれで終わりだ! 左手で頭を掴み、杭を打ち込もうとすると何故かラウラさんの体が地面に引っ張られて杭の射線からちょっとだけズレてしまった……なるほど、地面にワイヤーを撃って自分を逆に引っ張ったんだ……ああぁ、負けか。また止まった。

 

 

「今ので決めるつもりだったのに……」

 

「ふっ、危なかったが私の勝ちだ。異論はないな」

 

「うん。動かないしね――でも殺し合いたいなら続けても良いよ?」

 

「魅力的な提案だが今回はやめておこう。これ以上は機体が持たん」

 

 

 本当は殺したいけど相手がやる気がないんじゃ仕方がない。あと体が動かないし。押しても引いてもうんともすんとも言わない、完全停止状態……だから停止結界なのね。卑怯じゃないかなこれ?

 

 

「貴様、名は何だったか?」

 

「へ? 篠ノ之凪だよ」

 

「そうか。覚えておく。その殺意、嫌いではないぞ」

 

 

 それを言い残して去っていくけど殺意って何? ねぇ殺意って何? 僕はそんなおっかないものは発してないと思うんだけどなぁ。でも負けか……今までが阿頼耶識頼りだったせいか悔しいね。純粋に技量で負けた……流石ちー姉ちゃんの教え子さん? 弟子さん? どっちでもいいや。負けは負け、ふぅ……まだ頑張らないとなぁ。

 

 

「凪! 無事か!」

 

「箒姉? な、なんで焦ってるの?」

 

「お前が来ないので何かあったのではと探してみればこんなところで模擬戦だと! 何故断らなかった!」

 

「だって断っても話聞いてくれなかったんだもん。でも強かったよ……負けちゃったし。1対1じゃ僕の方が不利だね、あの停止結界って奴に捕まったら終わりだしね。イチ兄も気を付けてね?」

 

「お、おう……まぁ凪が見つかってよかった」

 

「そうだね。でも篠ノ之君ってISの操縦上手だね。動かしてまだ日数は経っていないんでしょ?」

 

「ま、まぁね……ごめん、ちょっと機体の整備したいから今日の訓練休むね! それじゃ!」

 

 

 本当は2年前から動かしてたけど話の流れ的になんか拙い気がしたから逃げよう。目指すは僕専用の整備室! よし誰もいない! いざ手当開始!! まずはスラスターから……ここをこうして、これをこっちに……そして次は焦げた部分を何とかしよう。じゃんじゃじゃ~ん、誰でもできるIS整備~初級編。この本を見ながらやってみようか……えぇと、ふむふむ、こうすれば……よし動かして調子を確認してみよう。う~ん、大丈夫っぽい? でも不安だから別の場所も見ておこうっと。

 

 整備を終わらせてから夕食を食べ、部屋に戻る。シャワーを浴びて何時ものようにゴロゴロしているとちー姉ちゃんが帰ってきたのでおかえり~っていうと私が言ったことを覚えているなといわれた。なんだろう……すごく怖い、こわいですよちーね――ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!

 

 僕は生まれて初めて年上の女性にアイアンクローをされました。そして追撃とばかりに僕の携帯に実の姉(たばねぇ)のエロ画像が大量に送られてきました。もうどうすればいいのか分からないね……そして頭痛いです。

 

 

 

 

 

 

「篠ノ之、凪」

 

 

 先ほどまで対戦していた男の名を呟く。おかしな男だ、私の顔を見て驚愕したかと思えば困惑。第一印象では変な男、弱者だった。しかしその考えは瞬く間に変わった……いや変えられた。教官によるIS授業、奴は上空から落下し地面ギリギリで急停止する登場をした。あの程度ならば慣れている者なら行える動作だが問題はその次だ。中国代表候補の投擲した武器に即座に反応、回転しているはずの柄を鉈というリーチが短い武器で弾く精密動作に加え仕返しとして敵の背後に回り頸動脈を的確に狙い無力化を図る判断力。あの時の奴から感じるのは純粋な力、ファッション感覚でもなく武器として、敵を駆逐する術として利用しているのだろう。

 

 

「……短い期間であの動き、さすがは教官だ。しかし噂は本当だったとはな。確かにあれでは仕方がないか」

 

 

 実力を図る、ただそれだけだったはずが気づけば私が押されていた。知らないはずの停止結界――AICを初見で躱され初撃を喰らわされた。二撃目も背後を取られ露出している腕を斬られる……そこで奴の戦い方を理解した。奴は装甲は狙わない、狙うのは急所と露出している部分のみ。ISではなく操縦者を狙い行動する、理に適った戦法だ。ISの性能が高くとも操縦者を疲弊させれば動きが鈍りこちらが優位に立てるのだからな。

 

 

「問題はあの機動性か。まるで生身の相手と戦っていた気分だ。面白いことをする」

 

 

 あれこそ教員をトラウマにさせたという動きだろう。機械で操作された動きとも違う、生身に酷似した動きをされれば慣れていない相手は戸惑うだろう。そこに先ほどの戦い方だ……徹底的に仕留めようとする強い意志、そして操縦者自身の高い反射神経、侮れない相手だ。あの動きには苦戦させられた……ワイヤーブレードで捕らえようと操作すれば鉈と重火器で防がれ、プラズマ手刀による接近戦も例の生身機動によって対応される。奴を倒すためにはあの動きを如何にかするしかない……よし、装備を要求するか。対策さえできれば私に負けはない。

 

 

「――織斑一夏、今度は貴様の番だ」

 

 

 必ず教官の無念を晴らす。この手で……必ず!




AICの前ではさすがの阿頼耶識有の凪でも無理だったようです。大丈夫、まだ予行練習ですから……!
あと天才の兎の画像は消去不可です。一生残ります。
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