篠ノ之家の弟は阿頼耶識使い   作:木の人

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寡黙な少女の嫉妬

 人生何が起こるか分からない。

 

 思い返せば全ての始まりは僕が拉致されたことでだろう。たばねぇの居場所を吐けと言われて素直に吐かず、拷問を受けて最終的には阿頼耶識を埋め込まれた。あの時に死んでいれば今のように辛く、悲しい場面に出くわさなかっただろうと本気で思う。あぁ……懐かしいなぁ、初めて耶識を動かしたあの時、クロエさんを意識し始めたあの時、イチ兄と箒姉と再会したあの時、セシリアさんと対決したあの時、クロエさんとデートしたあの時、ラウラさんに婚約を迫られたあの時……うん。思い返すとたくさんの思い出がある。でも……そんなことはもうどうでもよくなる。

 

 だって――

 

 

「縛られてるなっくん、はぁはぁ、かわゆい」

 

 

 ――変態(たばねぇ)に拉致されて椅子に縛られてる時点でもうどうでもよくなるよね?

 

 

「たばねぇ?」

 

「なにかななっくん? あっちゃんと紐は緩めてるからいつでも抜け出せるんだけどもうちょっとだけそのまま! そのまま! できれば写真も撮らせて! 家宝にするから!」

 

「そんなことよりなんで僕攫われてるのさ? しかもたばねぇに。帰してよ~今日は1人でゆっくりする日なんだからなさぁ~?」

 

「――ふっいい、だめぇぇ!」

 

 

 何故フェイント入れようとしたし。現在どのような事になっているかというと僕は椅子に縛られてます。そして目の前にははぁはぁ言っている変態(実の姉)がいます。なんでと言われても僕にも分からない……タッグトーナメントから一週間くらい経った今日、僕は本当なら日用品といつものチョコを買うために外出する予定だった。勿論1人で。セシリアさんもラウラさんも一緒にいきますわ、ついていくぞとか言ってたけどやんわりお断りさせてもらいました。だって……だって……もう疲れたもん。この一週間、多分一年ぐらいの疲れを僕は感じただろうね……だってトイレに入ればラウラさんがいて、ご飯食べようとすると両腕をセシリアさんとラウラさんがぎゅって抱き着いてきて、部屋に戻れば何故かラウラさんが待ち構えていて……やんわり追い出してシャワーを浴びてるとラウラさんが乱入してきて……それもやんわりお断りしながら追い出してベッドで寝て朝起きたら全裸のラウラさんが……あれ? この一週間ラウラさんしか記憶にない? でも凄いよね? ちー姉ちゃんの出席簿アタックを受けてもなお乱入してくるんだから。あのちー姉ちゃんが残機を減らしても復活するラウラさんを見てもう好きにしろと匙を投げたのは驚いた。本当に驚いた。

 

 そんなことが起き続けたから偶には1人でゆっくりとゲーセン行ったりアニメショップ行ったりプラモ見たりカードショップ行ったりカラオケ行ったりとかリフレッシュだぜ! ってしたかったのに上空からにんじんが降ってきて変な触手に体を掴まれて今ここにいます。何でこうなったし。

 

 

「なっくん。お姉ちゃんは怒っています。すんごく怒っています、もう世界滅ぼそうかなって思っちゃって全世界の首都に核ミサイルを発射5秒前までいっちゃったぐらい怒ってるんだよ?」

 

「……なんでさ?」

 

「愚問だよなっくん――あのドイツ娘にプロポーズしたことに決まってんじゃん? もう泣いたね、うわーんうわーんって泣いたね、もうドイツ滅ぼそうかとくーちゃんと結託しちゃったぐらいに泣いちゃったね」

 

「なん、だと……あのクロエさんまで……!?」

 

 

 まさか僕が知る中で一番の常識人、そして安心できる人トップのクロエさんまでもがダークサイドに落ちていたとでもいうのか……! な、なんで!? なに!? 責任取るって言葉って周りをダークサイドに落とす魔法の言葉なの!? そして今知った驚愕の真実……全世界の命運は僕の発言と行動にかかっているのか……! これは責任重大、今すぐ引きこもりたいレベルだよ……!

 

 

「もうくーちゃんもお怒りだよ、ぷんぷん怒ってお姉ちゃんにフライパン叩きつけるぐらい怒ってるよ」

 

「……何時もの事じゃない?」

 

「痛さが違うんだよ!? もう細胞レベルでバグってるお姉ちゃんが気絶してあれ? なにしてたんだっけ? って思うのはちーちゃんのアイアンクロー以外でなかったんだから!」

 

「ちー姉ちゃん凄いね? それよりもそろそろ立っていい?」

 

「うんいいよ~もう堪能したし写真もいっぱい取ったし……ぐふふ、これであと千年は戦える!」

 

「束様。準備が整いました」

 

「ありがと~じゃっなっくん。IS貸して?」

 

 

 奥の扉からクロエさんが現れるのと同時にたばねぇはシャキッとした態度になって手を僕に差し出した。耶識を渡してほしいの? 良いけどあんまり乱暴にしちゃだめだよ? 待機状態の耶識を渡すとたばねぇはスキップしながら奥の部屋に走って行った……はぁ、やっと解放される。というよりこれ、ただ単に耶識の調子を見たかっただけなのかな? それならもうちょっとマシな登場してよもぉ。縛られている状態から難なく抜け出して背中を伸ばす、ふぅ~疲れた。

 

 

「クロエさん、お久しぶり……? なんだかメールで連絡取りあってたから久しぶりって感覚じゃないね?」

 

「はい。そうですね」

 

 

 ……うん? 何か様子がおかしい気がするよ? なんていうか笑顔なんだけど怖い、足が震えて動けないぐらいに怖い。な、なんだっていうんだ……! 今のクロエさんの服装は白を基調としたドレスみたいな感じ、まるでお嬢様のように気品があって可愛い。でも手には首輪にリード、しかもちゃんと首輪に繋がっている物を持っていますね……一応聞きますけどもそれはなんですか? あっはい、首輪ですよねすみません……こわいよぉ!

 

 目の前のクロエさんは満点な笑顔で僕の首に持っていた首輪を付ける。あ、あれぇ……僕動物? 動物なの?

 

 

「さぁ凪様。束様が凪様の専用機が二次移行をしたと聞いて異常がないか調べています。早く行きましょう」

 

「あ、あの、クロエ、さん?」

 

「なんでしょう?」

 

「どうして首輪をつけられてるんでしょうか……あとその紐は……?」

 

「調教です」

 

「えっ」

 

「調教です。他の女の人にプロポーズする節操無しな凪様を躾けようかと……何か問題でもありましたでしょうか?」

 

「モンダイナイデスナニモナイデス」

 

 

 ダメ、これダメな奴……お、怒ってるね完全に……! 笑顔は可愛いのにその手に持ってる紐というかリードがアンバランスすぎるんですけど!? でも……何故かされても良いって思えるのは何故だろうか。ふむぅ、ギャップ萌えって奴だね。よく分かんないけど多分それって事にしておこう。

 

 そんなわけでクロエさんにリードで引っ張られながらたばねぇがいる部屋まで歩きました。僕が歩くのが遅いとクロエさんが感じたら痛くない程度に早くしなさい的な視線とリードを引っ張る動作で訴えてきました……なぜこんなに怒っているのだろうか。まさか嫉妬? いやいやいや……だって付き合ってないしそもそもクロエさんは僕のこと好きなの? 好きだから嫉妬してるの? 無いなぁ、うん。きっと教え子の僕とたばねぇが引き起こす行動にストレスが溜まっちゃったんだろうね。うぅ……ごめんなさいぃ……!

 

 

「ほうほう。う~む、やっぱり阿頼耶識の影響かなぁ? 構造自体は大したことないのにこの反応値にスペック、そして単一仕様能力の異常さ……これだからISは面白いんだよねぇ~あっやっときたぁ~待ってたよなっくん、くーちゃん。およ? いいなぁ~お姉ちゃんもリード引っ張りたいぃ!」

 

「ダメです。これは私のペットですから」

 

「……もう人ですらないんだね……あっはい、ワン」

 

「くーちゃん……恐ろしい子! 束さんもビックリだよ、くーちゃんがこんなに嫉妬深いなんて――あぁやめて~うさみみ取らないでぇ~!」

 

 

 目の前には耶識がドンっと置かれていてその周囲を細いレーザーみたいな奴を点灯させているアームが忙しなく動いている。視界の端でたばねぇが頭につけてるうさみみを取ろうとしてるクロエさんが見えるけどもういいや。もう見なかったことにしよう。そうしないと僕の心が落ち着かない。だって僕はクロエさんの下着姿だけでドキドキするような小心者だよ? それが……普段と違って笑顔でリードを引っ張ってくるのを見てら落ち着かないでしょ。しかもそれが好きかもしれない相手ならなおさら……どМではない、Мではない。きっと違う。

 

 

「それよりさ? たばねぇ何してるの?」

 

「うん? なっくんの専用機が二次移行したって聞いたから調べてるぅ~もう驚くことばかりだね。だってお姉ちゃんが付けたはずのリミッターが一段階外れちゃってるもん。なっくん? 二次移行してからISを起動した?」

 

「したよ? だって放課後は皆と訓練してるし」

 

「どんな感じだった? 今までよりも反応しやすくなったり動きやすくなかった?」

 

「そう言われてみれば……楽になったかも。それに皆からもなんか速くなったなとか言われたし……うん? たばねぇが付けたリミッターって外せたっけ?」

 

「出来ないよそんなの。一応大天才を自称してIS作ったお姉ちゃんが付けたリミッターだよ? ただのISが外せるわけないって~もう腹立つなぁ。おかげで阿頼耶識の情報伝達速度が速まっちゃうしなっくんの腕がおかしくなるし……もう分解しようかな」

 

「……え? な、なんで知ってるの……?」

 

「お姉ちゃんを甘く見ないでよ? なっくんを捕まえた後、健康状態を確かめるためにスキャニングして痛覚と触覚が無くなってる事ぐらいお見通しさぁ! ねぇなっくん、今からでも遅くないよ? 普通のISにしない? このままだと腕以外の場所に異常でるよ? いくらお姉ちゃんがキチガイでもなっくんと箒ちゃんが悲しむのだけはイヤだよ」

 

 

 あっ自覚はしてるんだ……でもたばねぇ、それだけは……それだけは受け入れるわけにはいかないよ。

 

 

「無理かな。だって自分の体が変になる程度で耶識を見捨てたら僕が僕でいられない。何度も阿頼耶識で繋がって……一つになったから分かるんだ。この子は寂しいんだって。助けてくれる人もいない、手を差し伸べてくれる人もいない。たった一人ぼっち……そんなの感じちゃったら無理だよ。幸いISを起動してるときは触感も痛みも感じるから良いじゃん? 誰が何と言おうと僕の身に何が起きようと耶識は離さない、手放さない。それに腕以外が変になると決まったわけじゃないしさ。だから、僕の専用機は耶識だけ。ごめんねたばねぇ?」

 

「……そっか。うん、なっくんが決めてるんならお姉ちゃんは何も言わないよ。でもね? 本当にダメだって思ったら文句言われても引き離すから。よしこの話題お~わり、そういえばなっくんと箒ちゃんの誕生日ってもうすぐだよね? というわけでお姉ちゃんからのプレゼントがあります! わーパチパチ!」

 

 

 あぁ~そういえばもうそろそろだっけ? 箒姉と双子だから誕生日一緒で覚えやすかったけど色んな事があり過ぎて忘れる所だったよ。というよりさ……普通プレゼントってその日まで隠すものじゃない? いっか、たばねぇだし。それよりなにくれるのかなぁ~? 色んな意味で怖いよ……ガクブルだよ。

 

 そんなわけでたばねぇが空高々に指パッチンすると近くの床に穴が開いて一つの物体が現れた。それは赤、それも紅のような色をしている装甲が光を反射している。埃一つなく新品同然のIS……いや新品なのは確実だけどね。これで中古とかだったら驚きだよ。

 

 

「じゃじゃじゃ~ん! これが箒ちゃん専用のIS『紅椿』だよ! 現行するISの全てをぶっちぎりで追い抜いて作成された超ハイスペックな第四.五世代! 特徴としてお姉ちゃん自信作の展開装甲を全身に搭載、なっくんの稼働データの一部を流用して阿頼耶識無しでも生身に近い動きを再現可能! 重さも限界ギリギリまで軽量化されてエネルギー効率と機動性を高めてみました! でもそのせいで打たれ弱くなっちゃうと思ったでしょ~? そこを補うのが展開装甲なのさ! どんな場面でも装備換装を行わず攻撃、防御を操縦者の意志一つで自由自在! ふはははは! おかげでもう眠いよぉ~」

 

「……つまりどう言う事?」

 

「え? う~んとねぇ、なっくんの動きにも余裕で追い付いて普通に勝てるレベル? いっくんのように強い思い込みは必要ないし操縦者、つっても箒ちゃんだけどね。箒ちゃんの動きをダイレクトに再現してくれるからそこら辺にいる奴らなんかけちょんけちょんにできるんだよね~」

 

 

 つまり阿頼耶識が無いけど阿頼耶識と同じ動きができるIS、という事でいいのかな? しかも第四.五世代って言ってなかった? 確かやっと第三世代まで開発出来たって言ってたような……はぁ、やりすぎだよたばねぇ。これ下手したらいろんなところから苦情来るよ? まぁ苦情飛ばした奴は殺すけど。そしてたばねぇは箒ちゃんには内緒ね? 驚かせようと思ってるからと口に人差し指を持って行ってしぃ~とかわいらしくやる。実の姉ながら動作の一つ一つが可愛い、四捨五入して30になるのに。

 

 

「しかも奥の手で……おぉっとこれは秘密だよ? そしてお待ちかねなっくんのプレゼントはこれ!! あっちなみにまだできてないからね? 紅椿の制作に時間使いすぎちゃったテヘペロ」

 

「いや良いけど……なにこれ? 黒燕?」

 

「凪様の専用機、耶識・病の専用装備です。正式名は長距離航空用パッケージ『黒燕』。束様が原点に戻りISの完成を目標とした第一世代らしい設計思想で開発される予定です。特徴としては量子変換を必要とせずISそのものに取り付けインストール時間の大幅な短縮を図ります。そしてこれは凪様自身のためでもあります」

 

「僕のため?」

 

「だってこんなのインストールしたらなっくんの脳に結構負担掛かるでしょ? それは嫌だからお姉ちゃんは考えました……アニメ見て昔の資料持ち出してなっくんと箒ちゃん観察して色んな事を考えました。そして思いついたのがこれさ! IS自身とドッキングさせちゃえば早くね? ってことを思いついちゃったんだよぉ~まぁ欠点としては分離させると再接続がくそ面倒ってことだね。今日なっくんを連れてきたのは耶識の最新データがほしかったからなんだぁ~てへっ」

 

 

 どうやら耶識専用のパッケージは阿頼耶識でほぼ強引に制御させるらしい。だからちょっとだけ脳に負担がかかるとたばねぇは言ってたけど別にそれぐらいなら良いよね。そもそも耶識がこれ受け入れるとも思えないしこうなるのは確実……しかしISに直接ドッキング、なんだかロボットアニメみたいでカッコいい。やっぱり量子変換も良いけどこんな風にドッキングも悪くないよね! しかも危なくなったら分離とか一度やってみたかった……!

 

 

「はいデータ取りしゅうりょ~ついでだしオーバーホールしちゃうね。だからもう少し耶識は貸してね~?」

 

「あっお願い。それじゃあしょうがない、終わるまでゴロゴロしてるよ」

 

 

 というわけで手持無沙汰になった……え? なんでしょうかクロエさん……くいくいってリードを引っ張って僕をどこに連れて行こうというんだい? 今の僕は喜んでどこでもついていくよ? 怒っている女の子には逆らわない方が良い、イチ兄と一緒に悟ったことだからね。クロエさんに連れられてやってきたのは僕の部屋、正確に前まで居た秘密基地じゃないから違うんだろうけど家具とかが僕の住んでた時の物だらけ、あと何故かクロエさんの私物らしきものが置いてあるけど……そういえばクロエさんが今使ってるんだっけ? それじゃあ今はクロエさんの部屋か。

 

 

「……凪様」

 

「な、なんでしょう……?」

 

「も、申し訳ございません……凪様に、このような事を……」

 

 

 僕の首に付けられた首輪を外しながらクロエさんは謝ってくる。おぉ、なんだか知らないけど許されたみたいだ。よかったよかった……でもなんで怒ってたんだろう?

 

 

「別に気にしてないよ? でもなんで、そのさ、なんで怒ってたの?」

 

「――妹、に嫉妬していました」

 

「あれ? クロエさんって妹さんいたの?」

 

「正確には違いますけど……ラウラ・ボーデヴィッヒ、彼女は私の妹にあたる存在です」

 

 

 なんと言う事でしょう。驚きの事実だよ……そっか、だから雰囲気が似てたんだ。姉妹かなぁと思ってら本当に姉妹だったんだね……うん? 妹にあたる存在? という事は厳密には違うのかな? 確かクロエさんとラウラさんは誰かに作られた命って……あっそう言う事か。

 

 

「私は彼女になれなかった存在……ですので私ではなく彼女に凪様が惹かれてしまった事に……嫉妬、してしまいました」

 

「う~んと、僕まだラウラさんと付き合ってないんだけど?」

 

「でもプロポーズしましたよね?」

 

「……あ、あれはこ、言葉のあやというか……夢の中でつい責任取るって言ったのを誤解されたといいますか……と、とにかく! まだ何もない! 何もないから!」

 

「本当ですか?」

 

「はい!」

 

「それならまだ、まだ大丈夫ですね――最悪既成事実を」

 

「へ?」

 

「なんでもありません」

 

 

 何が大丈夫なのだろうか分からないけどクロエさんは何かを納得した様子。そして最後の辺りちょっと聞き逃しちゃったけど何を言ったんだろうか……いっか、気にし過ぎたらあれだし。でもどうしようかなぁ……ラウラさん誤解しちゃってるし……う~ん、本当にどうしよう。そう言えばラウラさんはクロエさんにとって妹にあたるって言ってたけどラウラさんは知っているのかな?

 

 

「ねぇクロエさん、ラウラさんはクロエさんの事を知ってるの?」

 

「覚えていないでしょう。そもそも私は彼女になれなかった存在の一人ですから……どうかなさいましたか?」

 

「いやさ、やめないそういうの? なれなかったとかなんか自分の事を物か何かだって思ってるみたいだし」

 

「ですが事実ですよ?」

 

「そーれーでーも。クロエさんがそう言っちゃうと僕なんてどうするのさ? たばねぇと箒姉になれなかった存在じゃん。クロエさんはクロエさん、ラウラさんはラウラさん、ただの姉妹でいいと思うよ? だってどっちも生きてるんだし」

 

「凪様……ふふっやはり優しいですね。えぇ、そう思う事にします」

 

「そうしなよ。うん、やっぱりクロエさんは笑ってる方が良いよ。もう怖かったんだからぁ~あれ僕何かしたっけ? 怒らせるようなこと言ったっけ? ってビクビク状態だったんだよ?」

 

「す、すみません……嫉妬の感情に勝てなかったんです……凪様、束様から聞いたのですが定期的に写真を送られているらしいですね? しかもその……あれ、を」

 

「送らないように止めてほしいんだけど?」

 

「無理ですね」

 

「そっかぁ……」

 

 

 クロエさんが無理ならもう誰も止められないね。いっそのこと捨てようかなこの携帯……ダメだ、捨てたらたばねぇの怨念で戻ってきそう。実の姉から定期的に送られてる自撮り写真をどうしようか考えているとクロエさんが何かを決意した表情で携帯を貸してくれませんかと言ってきたので良いよと手渡した。なにをするんだろう……え? 後ろを向けばいいの? 良いけどなんで? アッハイ。クロエさんに背中を向けていると何やらカシャリというシャッター音が聞こえた……な、何を撮っているんだろう? もういいの? うん分かった~でも何撮った――ぇ?

 

 クロエさんから返してもらった携帯を見て僕は固まった、思考すらできない状態だった、むしろこれで普通にできたらその人は勇者だと思う。

 

 

「あの、その、これ」

 

「待ち受け画面に設定しました……あまり、貧相なものなので……すいません」

 

「いやそうじゃなくてなんで、あの、さぁ……何故?」

 

「先約済みですと遠回しに牽制です」

 

 

 誰に!? って叫びたかったけど今の僕の視線は携帯の待ち受け画面をロックオン状態。だってさ――なにこれ!? 自撮り、それは分かる、でもなぜこれ!? 待ち受け画面に設定されている画像はクロエさんのその……胸。正確には下着有りだけど上から胸元を撮影したような角度の写真。しかも僕が選んだ下着だねこれ……これさ、普通に教室で携帯開けないよね? しかも設定変更できないんだけどどういうことなの……?

 

 どうしてと聞いても何も答えてくれませんでした。そして何故恥ずかしそうにしているのだろうか……可愛いけどだったらやらないでよぉ!

 

 

「あのクロエさん……せめて、せめて待ち受けだけは普通なのを――」

 

「嫌です。でも、あまり人に見せないでいただけると……ありがたいです」

 

 

 なんていい笑顔、そして恥ずかしがってる、かわいい。でもダメかぁ~……なんと言う事でしょう、これがクロエさん嫉妬モードなんだね。何に嫉妬してるか分からないけど。よしもう気にしないことにしよう。思い返しても僕って携帯あんまり使わないし。部屋で使えばいいだけだしね……でも開くたびにこれって……箒姉にばれたら即死だね。間違いなく斬首されるね。速報、IS学園で殺人事件発生ってニュースが流れるよきっと。

 

 お互いどうしたらいいのか分からない気恥ずかしい空気の中、たばねぇから連絡が入る。よしもう向かおう、この空気の中僕は何をどうしたらいいのか全く思いつかないから一時撤退だ! クロエさんと一緒にさっきの部屋まで戻ると新品同然に輝いている耶識と終わったぜって表情のたばねぇが待っていた。なんだか凄く綺麗になってる気がする。耶識が。

 

 

「ふふん! どうどう? 綺麗になったでしょ~? 部品全部そうとっかえして機動性、エネルギー効率その他諸々再調整したよ! リミッターは流石に再設定できなかったけど……ムカつくなぁ。この束さんの介入を拒むなんてどうなってるんだい全く。まぁいいや、はいなっくん」

 

 

 待機状態になった耶識を首につける。なんかよく分からないけど色々凄くなったって考えればいいよね?

 

 

「それじゃなっくんとか悲しいけど……本当に悲しいけど、もうずっと居てほしいけどお別れなんだよ……! ちゃんと元の場所に戻してあげるね? このロケットで」

 

「うんお願い。それじゃクロエさん……あ、あまり見ないように使うから、うん」

 

「は、はい……今になって恥ずかしくなりましたので、そうしてください――でも待ち受けだけは変えないでくださいね」

 

「ですよねー」

 

 

 なにやら実の姉、変態属性、もうすぐ30才がなにかうるさいけどいいや。もう2年ぐらい月日が経ったと思うぐらい疲れたしもう帰ろう。あっチョコだけは買って帰らなきゃ。にんじんロケットに乗って元の場所に戻った後、当初の目的を果たして無事IS学園に帰還……なんかロケットに乗る前に臨海学校の時に会おうねとか言ってたような気がするけどきっと気のせい、きっと気のせい、気のせいって事にしよう。

 

 

「おかえり……ってなんか疲れてないか?」

 

「ただいまイチ兄……疲れてるに決まってるよ、色んなことあったし。夜まで寝てるね~おやすみなさい」

 

「お、おう。なんかよく分かんないけどゆっくり休めよ?」

 

 

 今の僕にはイチ兄すら癒しに感じるよ。

 

 箒姉専用機、耶識専用パッケージ、クロエさんの自撮り写真、色んな事があったけどもうどうでもいい。寝る、寝ちゃうよもう、でも部屋に戻って寝る前にちょっとだけ写真見てから寝よう。うん。

 

 自分の部屋の扉を開けると仁王立ちで待ち構えていたラウラさんを見て僕は膝から崩れ落ちた。なぜ居るし。




全世界の命運は篠ノ之姉弟にかかっています。
耶識専用パッケージの元ネタはあれです。
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