篠ノ之家の弟は阿頼耶識使い   作:木の人

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お嬢様と軍人との危険な一日

「……凪さんに射撃が当たる気がしませんわ」

 

 

 時刻は夕暮れ時、普段通りに授業を受けてもはや日課となっている皆との訓練を終えた僕達は食堂でご飯を食べている。先ほどの発言は隣に座っているセシリアさんから聞こえてきて何故か意気消沈とした声色だった。何故落ち込んでいるのかというと原因は僕にあるらしい……う~む、ごめんなさいだけど全然分からない。確か今日は珍しく僕とセシリアさんで実戦形式の訓練、つまり模擬戦だったけどそんなに落ち込むようなことがあったかなぁ? もしかして僕が勝っちゃったから? それかぁ……それしか身に覚えがないよ。

 

 

「ビットで背後を撃っても変な避け方をされ、正面から撃っても変な避け方をされ、四方から撃っても変な避け方をされ……セシリアに同情するわね」

 

「しかも肩から出てくる機関銃だったか? あれでビット攻撃されて射線も逸らされてたよな?」

 

「二次移行してからますます凪の動きって凄くなってるよね? 僕でも当てれるか分からないよ」

 

「そう? 至って普通に動いてるだけなんだけど?」

 

「ふつうじゃないんですわぁ……」

 

 

 がっくしと言わんばかりに落ち込んでしまったセシリアさん。そんなに凄かったかな? 今日も普通に地面を走って周囲を飛んでるビットを肩の機関銃で牽制、背後や腕、太ももと狙ってくるレーザーを身体を斜めにしたり身をかがめてその場で回転、そのまま違う所に滑り込んだりしただけなんだけどなぁ。というより二次移行して追加された新装備『肩部格納式機関銃』が便利過ぎてヤバい、ホントヤバい。だって動きながら相手に照準を合わせて射撃、軽く意識を逸らさせる事や接近してくる相手の顔に撃って動揺させて回避しやすくなったりとか結構、いやかなり便利過ぎて困るんだ。展開から射撃までのタイムラグも殆ど無い、全方位に対応してるに加えて両手が塞がっていても使えるという素晴らしすぎる武装です。欠点と言えばちょっと射程が短いことだけどそれを気にしないぐらい便利、凄く便利。

 

 

「流石は嫁だ。圧倒的な近接攻撃、不利なはずの遠距離攻撃を被弾もなく躱し接近する技術、嫁に勝てる相手はこの学園にはいないな」

 

「ちー姉ちゃんには負けると思うんだけど?」

 

「……教官は外している。あの人には挑むという気すらできない人だ」

 

 

 セシリアさんとは反対側に座っているラウラさんはバツが悪そうな表情になる。そりゃそうだよ……ちー姉ちゃんに勝負だ! って言ったら開始一秒も経たずに出席簿アタックフルコンボを喰らって終わりだね。耶識が二次移行しているとしてもちー姉ちゃんには勝てないだろう。絶対に無理。だって水鉄砲で戦車に挑むくらいの無茶だよ。でもこれはとりあえず置いておくとして落ち込んでいるセシリアさんを如何にかして元気付けなければならない……だって女の子が落ち込んだまま放っておくってのも嫌だし。何かあるかなぁ~あっそういえばもうそろそろ臨海学校だっけ? 確か3日間かけて行うけど初日は自由時間、そして場所は海。となれば当然泳ぐよね? 僕は水着は着ないし泳がない予定だけど。よし! 多分準備とかあるだろうし荷物持ちするという事で許してもらおう! けしてデートでは、いいやデートに誘おう。一般的に男と女の人が一緒に出歩くのはそれだし。

 

 

「あ、あのセシリアさん? もうすぐ臨海学校でしょ? もし準備とかまだだったら買い物手伝うよ? 出来ることと言ったら荷物持ち程度だけど」

 

「っ!? い、今なんと言いました……買い物を、手伝う、つ、つまりそれはわたくしと一緒に買い物をしてくださるという事ですね! そうですわね!!」

 

「う、うん。なんだか落ち込ませちゃったみたいだしお詫びに……もし準備が終わってたら違う事考えるけど?」

 

「いえ是非お手伝いしてほしいですわ! せっかくの臨海学校ですもの張りきらないとですわ!」

 

「おぉ。それじゃあ何時に――あひょいひゃいよ(あの痛いよ)?」

 

 

 何故かほっぺを引っ張られた。何故だ……そして痛い。地味に痛い。

 

 

 

「私の目の前で浮気か。良い根性だ……無論私もついていくぞ。言っておくが拒否権はない」

 

「ラウラさん……! わたくしの邪魔をするというのですか……!」

 

「ふっ、私はただ夫婦として当たり前の事をしているにすぎん」

 

 

 何故だろうか……セシリアさんとラウラさんの背後に何かが映っている気がする。お嬢様と拳銃を持った軍人? これセシリアさんの負けだよね? そして箒姉はいったいどうしたというのさ? 何故プルプル震えてるわけ? これは爆発3秒前かな? どうでもいいけど。

 

 

「何で買い物行くだけであんな感じになってるんだ?」

 

「アンタは気にしない方が良いわよ。絶対に理解できないから」

 

「うむ……しかし、今すぐ、今すぐあの2人を凪から引き離したい衝動に……!」

 

「あはは……箒は相変わらずだね」

 

「ブラコン過ぎるでしょ。ねぇ一夏、アンタは買い物とか無いわけ?」

 

「いやあるぞ? 次の休みに箒と買い物する予定だしな」

 

「――へぇ」

 

「――ふーん、そうなんだぁ」

 

「な、なんだその目は!? し、仕方がないだろう! 凪に荷物持ちを頼むわけにはいかないのだから!」

 

 

 始まりました第何回か分かんないけどイチ兄争奪戦! 司会は僕こと篠ノ之凪、実況は僕こと篠ノ之凪でお送りいたします! ではまず説明させていただきますと一昨日辺りに箒姉が臨海学校の準備がしたいからとイチ兄を誘ったことから始まりました! ちなみにその時のセリフは「い、一夏……その、だな。りん! 海学校の準備をしたいのだが物が多いのだ……で、きれば一緒に買い物に行かない、か……?」です! そのセリフにイチ兄は何時もの鈍感力を発揮し「おぉ良いぞ。箒には世話になりっぱなしだしな」と返され箒姉嬉しさのあまり大ダメージ。ちなみにこれ僕の目の前で行われました。爆発すればいいのに。そんなわけで何事もなければ2人のデートだったんだけどイチ兄……何故言ったし。鈴さんとシャルロットさんの背後に猫と般若が見える……最近の女の子って背後に何かを出現させれるんだね。僕ビックリ。

 

 僕の所ではセシリアさんとラウラさん、イチ兄の所では箒姉と鈴さんとシャルロットさんが互いを牽制しております。こ、こわいよぉ……そしてなんでイチ兄は何事もないかのようにお茶飲んでるのぉ……逆に凄いよ!

 

 

「そうだ。凪とセシリアと……ラウラもか? 買い物あるなら一緒に行かないか?」

 

 

 はぁ、もうガッカリだよ。なぜそう思ったし……多分みんなの心は一つになったね。きっと今なら分かり合える気がする。

 

 

「折角だけど僕達は僕達で買い物するよ。ほら、女の子ってあまり男の人に見せれない感じの奴とかあるでしょ? だからイチ兄は箒姉と買い物してきなよ――きっと僕達と居ると疲れるよ」

 

「――凪、頑張れよ」

 

「うん……頑張る」

 

 

 分かってくれた! きっと何かが間違ってるかもしれないけど分かってくれた! 箒姉がイチ兄を買い物という名のデートに誘ったのに台無しにするわけないじゃん。というわけで次の休日、セシリアさんとラウラさんとデートすることになりました。僕はこれといって準備するものないし完全に荷物持ちポジションとなろう。そして箒姉……きっと、いや絶対に邪魔が入ると思うけど頑張るんだ。弟として離れた所から応援しているよ!

 

 そんなわけでやってきましたデート当日。今回はクロエさんの時のように待ち合わせとかはなく3人一緒に街に向かう予定。何時ものようにISスーツを着たかったけど黒インナーな上、夏の暑さが出始めてる中で長袖はね……というわけで久しぶりに丸いあれを端子に付けて半袖の紺のポロシャツ、リネンシャツ、ジーパンという格好で行く羽目に……ま、まぁ鏡見てもあんまり目立たなかったし……大丈夫。きっと大丈夫。

 

 

「はぁ……対策考えないとなぁ」

 

「お、お待たせしてしまって申し訳ありません……す、少し準備に手間取ってしまって……」

 

「ううん。気にしなくていいよ? あっセシリアさん、その服似合ってるね。なんだか夏って感じ」

 

「ありがとうございます。きょ、今日はよろしくお願いしますわ……くっ貴方さえいなければ凪さんと二人きりだったというのに……!」

 

「嫁の浮気現場を監視するだけだ。それに夫婦で買い物も悪くないだろうと思ってな」

 

 

 セシリアさんは白系のドレスっぽい服装だけどラウラさんは……IS学園の制服。なんと言う事でしょう、流石の僕でもその格好のまま買い物には行けないよ……もしかしたらという事もあるのでラウラさんに他に服は無いのと聞いてみたら軍服と体操服、ジャージならある、他は無いと断言されました。さてどうしようかな? いや本当にどうしよう……IS学園の制服で買い物してたら目立つのは確実。そうなればあれ? 隣にいる男は何者だ? って事になりかねない。そうだ! 他の人から服を借りればいい! 僕の知り合いでラウラさんと同じ体型の人は……申し訳ないけど鈴さんだね。よし電話――できない。ここで使うわけにはいかない……だって待ち受け画面がクロエさんの自撮り写真だもん。さぁどうしよう……はぁ、しょうがない。

 

 

「セシリアさん……ちょっとだけ待っててもらっても良い? いやちょっとどころじゃないかも……」

 

「構いませんわ……流石のわたくしもこれは予想外ですもの……」

 

「どうしたというんだ? この格好に問題でもあるか?」

 

「ラウラさん……凪さんは非公式の男性操縦者、一夏さんとは違い公表されていません。それなのにその姿のラウラさんと一緒にいる所を見られでもしたら……あとは分かりますわね?」

 

「っ!? す、すまない!? ち、違うんだ! そ、そんなつもりはない! ど、どうすればいい……? このままでは嫁とので、デートが……」

 

「えっと。怒ってないから落ち着いて? とりあえず僕の服を貸すから部屋行くよ」

 

 

 困惑しているラウラさんの手を引いて部屋まで歩く。貸すと決めたもののサイズ的には結構厳しいよね? 僕の身長は165cm、ラウラさんは多分クロエさんとほぼ同じ。結構差があるから上はともかく下が問題だね。不格好だけど裾を捲れば何とかなりそう? でもそんなに服持ってないんだよねぇ。

 

 

「すまない……少し、不用心だった……お、怒っているか……?」

 

「全然。その程度で怒ってたらたばねぇと箒姉の弟は出来ないよ。う~ん、やっぱりないなぁ……とりあえず上はポロシャツで良いとして……しょうがない裾上げしよっと。ちょっとこれ履いてもらっても良い?」

 

「わ、分かった」

 

 

 衣装棚から紺のポロシャツとジーンズ、あとベルトを取り出してラウラさんに手渡す。そうだよ何故気づかなかったんだ……裾上げればいいじゃん。腰回りはベルトでどうとでもなるし、流石僕……あっ外に出てますんで着替え終わったら言ってね? 一目散に部屋の外に出て待つ事数分、終わったとの声が聞こえたので中に戻ると渡した服に着替えているラウラさんがいました。あぁやっぱり長いか……えっとこれぐらいかな。どれだけ上げればいいか分かったので今度は脱いでもらう。勿論僕はまた外で待つ、目の前で脱がれたら僕の心が大変なことになるからね。

 

 

「そ、それでどうするのだ……?」

 

「裾上げるんだよ? よし次は被服室行こうか」

 

 

 休日だけど被服室、食堂、その他諸々の施設は部活動とかでも使用できるように開放されてるから多分大丈夫。そんなわけでちょっと急いでジーンズを持って向かい目的の教室に入る。中には部活動している人たちがいたけどちょっと使っても良いかなと頼んだらどうぞどうぞと道を譲るが如くミシンの場所まで案内されました……なんという団結力! 凄いね! それじゃあセシリアさんが待ってるしちゃっちゃと終わらせましょうそうしましょう。ミシンを使うなんて久しぶりだけど腕鈍ってないかな? あっ大丈夫っぽい。

 

 

「篠ノ之君上手~」

 

「これが男子の実力……!」

 

 

 たぶんそこまで感動するようなことじゃないと思うんだけど……よし完成。ちゃんとありがとうございましたとお礼を言って再び僕の部屋まで戻って履いてもらう。うん、問題ないね。ちょっと不格好だけどしょうがない。これはしょうがない。

 

 

「うん。制服よりはまだマシかな」

 

「本当にすまない……こ、この礼は必ず!」

 

「良いよ別に。だって僕がしたことって服貸しただけだし……もしあれならあげるよ? それ?」

 

「なん……だと」

 

 

 あっ固まっちゃった。ふむぅ、流石にこれ以上はセシリアさんに悪いし早く戻ろう。なんで固まったか分からないけど何時もの事でしょきっと。そんなわけで2人で待ち合わせ場所という名の先ほどの場所まで戻る。時間はちょっと掛かっちゃったけどセシリアさんは怒ってなかったからよかったよかった……ふぅ。

 

 というわけで当初の予定通り臨海学校の準備のため買い物出発です。勿論荷物持ちは僕……なんだけどどうして2人は僕の両腕にしがみ付いてるんですかねぇ? 感覚がもうないから助かってるけど……セシリアさん、多分当たってる、あれが当たってる。

 

 

「凪さん。まずはラウラさんの服を買う所から始めましょう」

 

「うん。そうしようか」

 

「……うぅ、な、何故私は服を買っていない……シャルロットからの忠告を聞いておけば……!」

 

「浅はかですわ。女の勝負は服から始まります。この勝負……もらいましたわ」

 

「ま、負けんぞ! 嫁は渡さん!」

 

「あの~僕を挟んで喧嘩は――アッハイ、ナンデモナイデス」

 

「そ、それよりもラウラさん? ちょっとくっつき過ぎではありません? 凪さんが歩きにくいと思いますから離れた方が良いのでは?」

 

「夫婦だから何も問題はない。流石は私の嫁だ、このように服を貸してくれるという優しさもある。まるで嫁に包まれているかのようだ……どうだ、羨ましいだろう」

 

「ぐぬぬ……こ、コホン。しかしそれは一時的な事、えぇ一時的ですわ! そんな羨ましい、いえ凪さんが困るようなことをするのはどうかと思いますわね?」

 

「むっ……た、確かにそうだな……で、では嫁よ! 服を選んでくれ! 先ほど私の服を買うと言っただろう!?」

 

「そのような事に凪さんのお手を煩わせるわけにはいきませんわ。わたくしが、わたくしが選んで差し上げましょう」

 

「きさまぁ……!」

 

「おほほほほほ……!」

 

 

 帰っていいかな? 今の僕の心情的にイチ兄と箒姉のデートぶち壊してでも一緒に行くべきだったと激しく後悔してるんだけど……両サイドではセシリアさんとラウラさんが何やら敵対状態、視線でバトル中、背後に出現しているお嬢様と軍人も対決中、もうどうしたらいいのかな? 痛みも触れてる感触も無いけどなんだか痛くなってきた……痛くないのに痛いって何かおかしいけども……はぁ。なんだか周りの視線も痛い、理由は分かるよ。お嬢様のように気品があって美人なセシリアさんとマスコットのように可愛いラウラさんに挟まれてるんだから……帰りたい、箒姉助けて、僕死んじゃう、視線に殺されちゃう。でも来たら来たでめんどくさいからいいや。

 

 2人に挟まれながらやってきましたよ服屋にね。目的その1、ラウラさんの服を買うミッションスタートです。と言ってもセシリアさんが強引にラウラさんの首根っこを掴んで「凪さんはあちらでお休みになっていてください」と笑顔で言われてしまったからお言葉に甘えようと思う。そもそも僕ってセンスないしね。はぁ、疲れたぁ……でもクロエさんの下着選びに比べたらまだマシな方かな。

 

 

「コーラ美味しい。ラウラさんの服はどんな奴を選ぶんだろうか……なんだかゴスロリとか似合いそうだけどねぇ」

 

 

 80円、紙コップ一杯という休憩には持ってこいの大きさのコーラを飲みながら普段使わないであろう思考を働かせる。というより暇です。暇なんです。きっと荷物持ちをされるお父さんお兄ちゃんは常日頃こんな気持ちなんだろうね。とりあえずラウラさんに似合う服か……銀髪だし言っちゃったけどゴスロリ? ふむぅ、考えたはいいけど僕が選ぶわけじゃないしいっか。椅子に座りながら店内を見てるけどセシリアさんとラウラさんは目立つね。美人だし可愛いし、髪も金髪に銀髪だし。なんだか言い合いしてるけど僕は何も聞こえない聞こえない。

 

 

「――暇だなぁ」

 

 

 この一言に尽きる。本当に何もやることが無い……手持無沙汰というのはまさにこの事だ。携帯開いてネットを見たいけど待ち受け画像が以下略。変えたいのに何故か変えられない……どうすればいいんだろうか。

 

 

「お待たせいたしましたわ……全く、黙って言う通りにしてくださればもう少し早く……」

 

「ふんっ嫁ならばともかく、貴様になぞ……と、ところでどうだろうか? ごすろりというものらしいのだがお前は好きなのだろう?」

 

「へ?」

 

「先ほど凪さんが呟いたと言って聞かないので……確かに似合ってはいますがなんだか納得できませんわ」

 

「あ、聞こえてた? 好きかって聞かれたらう~んだけどラウラさんって銀髪だしなんだかそれが似合いそうだなって思っただけだけどやっぱり似合うね。可愛いよ」

 

「――か、わ」

 

 

 また固まった。おかしいな……至って普通に感想を言っただけなのに。だって銀の髪に似合う黒いゴスロリ服だよ? 似合わないっていう方が変じゃん。そして何故セシリアさんは怒ってるんだい? 嫉妬、また嫉妬なのか……ここ最近嫉妬で怒られること多いなぁ。多分勘違いだろうけど。うん絶対に違う。断言できるね、だって嫉妬されるほどモテないし、イチ兄のようにカッコよくないし。セシリアさんにどうしたのと聞いても何でもありませんわとぷいっとされた。かわいい。

 

 そして当初の目的である臨海学校の準備、必要なものを買い揃えるミッションに入りました。ちなみにラウラさんは今の服の他に何着か買ったようだね。選んだのはセシリアさんと店員さん、もう着せ替え人形にさせられたと大層ご立腹です。買った服はIS学園に配達でさっきまで着てた服も一緒に送ったみたい。当たり前だよね? いくら僕でもこの状態で荷物持ちをしろと言われたら無理と言える、かなり言える。

 

 

「そう言えば誘っておいてあれだけど何買うの?」

 

「愚問ですわね凪さん……水着、ですわ」

 

「ですよねー……あれ?」

 

「むっ、どうした?」

 

「今あっちの方に鈴さんとシャルロットさんが居たような……」

 

「気のせいですわ」

 

「気のせいだ」

 

「そ、そっかぁ」

 

 

 確かに2人が居たような気がしたんだけど気のせいかぁ、うんセシリアさんとラウラさんが言うんだしきっとそうだろう。しかし水着かぁ……選んだ方が良いのかな? でも流石にそれはねぇ、嫌でしょ。そんなこと言ってる間に着いちゃったよ水着売り場、やっぱり夏が近いから女の人が多いね。でも何故だろう……視線を感じるんだ、色んな人からの視線がさ……だよねぇ、だって両腕に2人がくっついてるもん。

 

 

「な、凪さん……もしよければわ、わたくしの水着を――」

 

「セシリア。先ほどの礼だ、私が選んでやろう」

 

「ふっ、貴方が水着を選べるほど女子力があるとは思えませんわ。凪さんの方が上ですわね」

 

「じょしりょくというのは分からんがとにかく選んでやろう。嫁、しばらく待っていろ」

 

「ですからわたくしは凪さん、にぃ! な、なんて力ですのぉぉ!」

 

 

 というわけでセシリアさんはラウラさんに引っ張られて行っちゃいました。う~ん、どうしよう? ただ立ってるとなんだかクロエさんとのデートの時のように絡まれそう……あっそうだ、記念に何かプレゼントでも買っておこうと。あんまり高いと引かれるから小物程度で良いよね。さてまずセシリアさんだけど何がいいかな……イギリスって紅茶のイメージがあるからティーカップ? でも買えるのって安物だし迷惑じゃないかな? 帽子? でもできれば簡単に使える奴の方が良いと思うし……いいや、気持ち程度だし引かれても良いからティーカップにしよう。さて問題は次の人、ラウラさんだ。何が良いのかな……クロエさんだったら包丁とかブレスレットとか普通に思い浮かべれるけど何も思い浮かばない……ぐぬぬ、なにか、なにか――はっ! そういえばラウラさんって軍人だったから時間は気にするよね? だったら時計で良いんじゃないかな? うんそうしよう。

 

 プライベート・チャネルでセシリアさんとラウラさんにちょっと離れるねと伝えてから買い物へ。予算的にかなり余裕あるけど数万とかの物は買う気になれない、だっていきなりそんな高いものを貰ってを困ると思うし。

 

 

「うわ思い立ったのは良いけど高いなぁ……さよなら諭吉、キミの事は忘れないよ」

 

 

 イギリスメーカーのもので白であまり派手じゃない柄のティーカップを購入、まさかここまで高いとは……あっすいませんけどプレゼント用に梱包お願いしま~す。よし会計終わり! さぁ次は時計だ! 色はどうしようかな……あんまり派手なものはダメ、やっぱり黒か。専用機も黒だしバンドも革製なら仕事とかで使っても違和感ないよね? 軍人の仕事内容分からないけど。文字盤があまり大きくなくて女の子が使っても違和感がないやつと……ちょっと高いけどいいか。さらば諭吉! キミの事は多分忘れない!! すいませんけどプレゼント用の梱包をお願いします。よし完了! さすがにもう2人とも買い物終わってるでしょ? それじゃ戻ろっと。

 

 

「あれ? 山田先生? それに鈴さんにシャルロットさん? ついでに箒姉もなんでいるの?」

 

 

 水着売り場に戻ると山田先生と鈴さん、シャルロットさん、そしてイチ兄とデート中の箒姉が一緒に買い物していた。どうやら山田先生はちー姉ちゃんと臨海学校で着る水着を買いに来たらしいけどイチ兄と箒姉と出会って姉弟水入らずの場にしようと箒姉を説得、ついでにストーカーをしていた鈴さんとシャルロットさんを巻き込んだそうだ。なんという……ドンマイ箒姉、いや気にしてないだろうけど。

 

 

「てかアンタ、セシリアとラウラと買い物してたんじゃないの?」

 

「してたけどちょっとだけ別行動かな? なんだか怒らせたり落ち込ませちゃったみたいだからお詫びにプレゼント選んでた」

 

「……はぁ、その甲斐性を一夏ももう少し持ってれば……」

 

「うんうん……はぁ」

 

「凪、私には何かないのか?」

 

「なんで箒姉に買わないといけないのさ? イチ兄に買ってもらえばいいでしょ」

 

「……それが出来れば苦労しないんだよぉぉ!」

 

 

 話を聞けば箒姉なりにアプローチをかけてもお得意の鈍感力によって無力化、イチ兄は普通通りなのに箒姉だけが緊張で倒れそうになったらしい。どうでもいいね。

 

 

「頑張ってイチ兄を落としなよ? それじゃ僕はセシリアさん達の所行くからね」

 

「ま、待て凪! 行くな! 行ってはいけないぞ!」

 

「なんでさ?」

 

「あの2人は危険だ……お前に何をするか分からない……ここは私と一緒にいるんだ……うんそうだ、それがいい」

 

「――箒さん? 何を言っておられるのかしら?」

 

「――全くだ。義姉上、ここは私に嫁を任せてもらおう」

 

「誰が姉だ! お、お前たち……凪に変な事はしていないだろうな!」

 

「するわけがありませんわ。ラウラさんではないのですから」

 

「嫁とのスキンシップの何が悪いというのですか」

 

 

 あぁもうめんどくさくなってきた……あっイチ兄にちー姉ちゃん? どうやら買い物が終わったみたいで僕達の方に歩いてきた。ちー姉ちゃんは何か袋を持ってるから水着を買ったんだね? どんなのなんだろ?

 

 

「あれ凪? あぁ、セシリア達と水着買いに来たのか」

 

「僕は選んでないけどね。イチ兄とちー姉ちゃんは買い物終わったの?」

 

「あぁ。山田君、そろそろ戻ろう。お前ら、休日ではあるがあまり騒がしくするなよ」

 

「ではみなさん。また学校で会いましょう」

 

 

 そんなわけでちー姉ちゃんと山田先生とはお別れです。さてここからどうしよう……うん? 何だか僕が持ってる袋が気になるのか視線を感じるね。ふふふ……これはですね、発表しましょう!!

 

 

「なんかここで渡すのもあれだけどセシリアさん、ラウラさん。はいプレゼント」

 

「わ、わたくしに……ですか?」

 

「私にもか……」

 

「うん。なんだか落ち込ませちゃったり怒らせちゃったりさせたみたいだしお詫びとデート記念。セシリアさんのはティーカップでラウラさんのは時計だよ。柄とか僕が選んだけど気に入らなかったらごめんね?」

 

「そんなこと絶対にありませんわ! オルコット家の家宝として……大切に、大切にさせていただきます!」

 

「嫁からのぷ、プレゼント……こ、これは中々、嬉しいものだな」

 

「箒、アンタの弟ってちゃんと教育されてるのね」

 

「これは2人共嬉しそうだね。一夏も見習った方が良いよ」

 

「ん? なにがだ?」

 

「……いや、これが一夏だ。これこそ一夏なのだ……はぁ」

 

 

 イチ兄、もう少し鈍感力を直した方が良いよ? いつかきっと刺されて速報! 織斑千冬様の弟、織斑一夏君が何者かに刺されました! 死因は鈍感だったことによる刺殺によるアプローチとの事! というニュースが流れちゃうよ?

 

 この後、どうせなら全員で遊ぼうという事になり荷物とかを学園に送ってから皆でカラオケに行きました。もう凄かったね。イチ兄とのデュエットを巡り箒姉と鈴さんとシャルロットさんの真剣勝負という名のじゃんけんはもう壮絶だった……背後に武士と猫と般若が一斉に戦闘し始めたからね。僕? イチ兄とデュエットしたけど? やっぱり特撮系は燃えるね! その光景を見て5人から変な目で見られたけど……何でさ。仕方ないじゃん、イチ兄から一緒に歌おうぜって言われたんだし。

 

 でもなんだかんだで皆楽しそうでなによりかな? 偶にはこんなのも悪くないよね。




ちなみに凪の携帯に寡黙な少女からタイトル無、文面無というメールが何件も届いた模様。
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