篠ノ之家の弟は阿頼耶識使い   作:木の人

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紅椿

「ではこれより臨海学校2日目、IS運用試験を開始する。各自通達された班で集まり指定されたIS装備の性能試験を行え。各班には教員が割り振られている。分からなければ相談するように。専用機持ちは私と共に送られてきた専用装備の試験運用を行う。織斑、篠ノ之弟の2名には送られてきてはいないが専用機組のテストに協力しろ」

 

 

 臨海学校も2日目、昨日の楽しいひと時が嘘のような緊張感がこの場を支配している。今日から明日にかけて朝から晩までISの起動から装備のテストを行うようだ。専用機を持っている人は所属している国や企業から送られてきた専用装備を量子変換、性能テストを行ってデータを収集して今後のIS開発に貢献することが目的。その他の子達は臨海学校様に割り振られた量産機を使って汎用装備の性能テストとISに慣れる訓練を同時に行うみたい。僕とイチ兄は専用装備は送られてきてないから今日明日はセシリアさん達の性能テストの相手をさせられるようだね。でも役に立てるかなぁ? ちなみに箒姉は専用機が無いから他の子と一緒に打鉄を使って試験テストするみたい。だけど残念ながらたばねぇがやってくるだろうから僕達側になるだろうけどねぇ。

 

 というより僕は昨日の夜から朝の出来事でもうクタクタなんだよ……だってイチ兄と卓球して部屋に戻ると箒姉が僕の携帯を手に持っていて何やら開こうとしてたし。危なかったよ! 一応ロック掛けてるけど姉の直感とかで解除されかねないし! たばねぇの妹だからそれぐらいやりかねない。今日の朝は朝で本当に危なかった……イチ兄より早く目が覚めたから汗とか流すためにシャワーを浴びて洗面所で濡れた体を拭いていたら扉が開いてイチ兄とご対面。幸い体を扉側に向けてたのと髪を拭いていた時にご対面したから阿頼耶識は見られなかったけど……これってさ、普通は男の子と女の子で発生するイベントじゃない? なんで男の僕がイチ兄に裸見られないといけないのさ? 気にしてないけど何だか腑に落ちないね。

 

 

「協力って……なにすればいいんだ?」

 

「多分模擬戦の相手とかじゃないかな? イチ兄の白式は拡張領域の関係で専用装備が無いし僕の耶識も似た理由で無し。だから必然的に模擬戦して休憩、また模擬戦だろうね」

 

「うげっ。きっついなそれ……それと朝はホントにごめんな? まさかシャワー浴びてるとは思わなくてよ」

 

「気にしてないよ。そもそも男の裸見て何かなるわけじゃないでしょ?」

 

 

 もしこれでイチ兄が照れたりしたら今日からしばらくは距離を取らざるを得ない。だって身の危険を感じるからね……! ただでさえイチ兄が鈍感すぎて女の子に興味が無いんじゃないか、もしかしたら僕との禁断の恋をしているんじゃないかという噂が流れてるし。それ流した人は誰かな? ちょっと出てきなよ? お話ししたいなぁ。

 

 そんな予想なんて当たるはずもなくイチ兄はそれもそうだなと気にしない事にしたみたい。そうだよ、それでいいんだよ。

 

 

「でもここ広いよな? IS学園のアリーナ以上はあるぞ。そういえば凪は外に出ても大丈夫なのか?」

 

「うん。この辺り一帯はIS学園で貸し切ってるみたいだし生徒会長さんの指示で厳重な警備がされてるから問題ないみたい。そもそも僕の存在は各国の政府は知ってるし気にするのは存在を知らないマスコミとかだけだね」

 

「もしバレたら騒ぎになりそうだよなぁ。だって束さんの弟だし」

 

「だから秘密になってるんだよ。それと此処だけどちー姉ちゃんから聞いたんだけど人工島らしいよ? IS学園の行事で行うにあたって探すよりも作った方が早いと判断したんだってさ」

 

 

 僕達がいる場所は周囲を崖で覆われている島。外からは自然にできた岩肌で覆われた孤島、全体的な大きさはアリーナ以上の大きさがあるので一年生全員がこうして並んでいてもまた余裕がある。でも流石にISを起動して動き回ると狭く感じると思うけどね……だから基本中では専用機を持たない子達が使用して専用機持ちは地下のトンネルから海上に出てテストを行う。これは各国も了承済みでどれだけ派手にやっても怒られない、問題にならないんだってさ。流石に国際問題になりかねないことは除くけど。

 

 

「そこの男子。まだ話は終わってはいない、私語は慎め。休憩時間は自由にしていいがIS装備は片づけてから入るようにしろ。では各班に分かれろ」

 

 

 絶対神ちー姉ちゃんの一言で皆がそれぞれの持ち場に向かい始める。さて僕は何をしようかな? 空中戦ってあんまり得意じゃないから対して役に立ちそうにないんだよねぇ。元々耶識が得意としているのは近接戦だし。苦手分野をそのままにしておくのは危険なんだけどどうしてもスラスターの数が足りないから仕方がない。

 

 

「一夏! アンタ暇でしょ? 私の相手しなさいよ」

 

「い、一夏! 僕の方も手伝ってくれると嬉しいかなぁ……なんて」

 

「凪さん。良ければわたくしの専用装備のテストにご協力いただけないかしら?」

 

「分かっているとは思うがお前は私の嫁だ。良いから私の所に来い」

 

 

 はいお誘いが来ました。予想通りイチ兄には鈴さんとシャルロットさんかぁ……箒姉がいないからチャンスとでも思ったんだろうけど残念無念また来世。いつ来るか分からないけどたばねぇが来たら箒姉も専用機持ちになるからイチ兄の傍にいても何も問題ないようになるんだ。でも今思ったけど箒姉に専用機、しかもたばねぇ作成のものを貰ったら色んな人から反感きそうだけど――その時はそいつら殺せばいいし。黙らせれば何も問題ないよね?

 

 

「全くお前らは……あぁ篠ノ之姉。お前はこっちだ」

 

「……で、ですが私は専用機を持ってはいないので一夏達と一緒には……」

 

「その点だが……あの馬鹿が用意した。よって今日からお前は――」

 

「なぁぁぁぁくぅぅぅぅんっ!!!!!!」

 

 

 幻聴が聞こえた。おかしいなぁ……確かに来るかもって思ったけどこんなに早くとは予想できなかったよ。声と何かが走ってくる音の方を向くと両手を広げて僕目掛けて突進してくるたばねぇが見えた。ゆ、揺れてる……! もう上下左右にばいんばいんと揺れてるよ! 先に言わせてほしいけどこれ見ちゃう奴だから。男なら誰だって見ちゃうから。

 

 もはや諦めの境地でたばねぇのハグを受け入れる。う~ん柔らかいなぁ、というよりサイズ上がった? なんだかそんな気がする。シスコンの直感的にそんな感じがするよ。あとたばねぇ? 抱き着くのは良いけど頬すりすりと首舐めないで。あと耳も甘噛みしない。うぅ……耳に息吹きかけないでよ弱いんだからさ。

 

 

「あぁこれだよぉこれこれ! なっくんの感触! なっくんの匂い! はぁはぁ……やっぱりなっくんがいないとお姉ちゃんはダメなんだよぉ~お持ち帰りする、絶対にお持ち帰りぃ~はぁはぁ」

 

「た、束さん……あの、凪が死んだような目になってますけど?」

 

「なんと!? それはいけない! しょうがないなぁ~じゃっちゅーしようか?」

 

「なんでそうなるのさ? あと離してくれない? 胸当たってるよ?」

 

「揉んでも良いよ?」

 

「実の姉のなんて揉みたくないし。あと僕って大きいより小さい方が良いから――嘘、オオキイホウガイイデス」

 

「だよね~」

 

 

 死ぬかと思った……冗談でも言ってはいけない事ってあるんだね! たばねぇの目が一瞬だけ捕食者の目になったよ……喰われるかと思った、僕童貞なのに。初めては好きな人と夢見てる男の子なのに喰われるところだった。あとそろそろ離してほしいんだけど? 箒姉が臨戦態勢、セシリアさん達は唖然、ちー姉ちゃんは指の調子を整えているからさ。あとイチ兄助けて? 何で目を逸らしたぁ!!

 

 

「――姉さん」

 

「あっ箒ちゃん! ねぇねぇなっくんだよ! 箒ちゃんもだっこす――ぐへぇ?!」

 

「凪から離れてください。殺しますよ?」

 

「殺す気で突き放ったぁ!! ねぇちーちゃん! 箒ちゃんが反抗期に入っ――あだだだだだだだ?!!?! 食い込む食い込んでるで、でるぅ!? 出ちゃいけないのが出ちゃうぅ!?」

 

「いい加減弟離れしろバカ兎。昨日仕留めたと思ったがやはり生き返ったか……篠ノ之姉弟、姉の一人を失っても良いな?」

 

「構いません」

 

「箒姉!?」

 

「じょ、冗談だよねちーちゃん? も、もしかして昨日ちーちゃんの裸盗撮したのまだおこ、お、おほぉぉぉ!? ぎ、ぎぃぃやぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 ミチミチと何かが潰れていく音が聞こえるよ。これが人が潰れる音なんだね……あと箒姉、即答しなくても良いんじゃない? うん? 何このウェットティッシュ? ばい菌が付いたから拭けって? うん分かった。顔を拭きながらちー姉ちゃんとたばねぇを見ているけど凄いね? 片手で持ち上げてるよ。あったばねぇが死んだ。でも2秒ぐらいしたら何事もなく蘇ったよ……流石細胞レベルでバグってるお姉ちゃん。

 

 蘇った後、涙目で慰めてぇとすり寄ってきたから頭を撫でてみる。うさ耳がぴょこぴょこと動いてる、かわいい。

 

 

「もう箒ちゃん? なっくんの事が大好きなのは分かるけど独占はダメなんだよ?」

 

「変態から弟を守って何か問題でも?」

 

「ないね! 私もなっくんに近づく奴は問答無用で国ごとぶっ殺すし」

 

「では今ここで貴方を殺しても問題ないですね?」

 

「落ち着こうよ箒姉……はぁ。それでたばねぇ? 一応聞くけどなんで来たの?」

 

「ふふん! それはぁ~これを箒ちゃんにプレゼントするためさぁ!!!」

 

 

 たばねぇが空高く腕を上げて指を鳴らすと2つの物体が数秒後に振ってきた。一つはひし形の奇妙な物体、もう一つは人が入れそうなデカい四角形の箱のようなもの。ということは僕のも出来たんだ……あっ皆が唖然としたまんまだ。そういえば自己紹介させてなかったね? でも普通に言ってもちゃんとしてくれるかなぁ?

 

 

「……束、挨拶ぐらいしろ。生徒が困惑している」

 

「えぇ~なんで私が凡人以下の奴らに挨拶しないといけないのさぁ? しらねーし覚えるきねーし勝手にどっか行ってろよ」

 

「……はぁ。凪」

 

「お姉ちゃんがちゃんと自己紹介する姿見たいなぁ~?」

 

「私が天才の篠ノ之束だよぉ~いえーい。皆よろしくねぇ~」

 

「うわ、態度一気に変わったぞ」

 

「姉さんだからな」

 

「それで納得できる俺達って……」

 

 

 だってたばねぇだもん。そんな事より現在行方不明中の篠ノ之束博士が此処にいるという状況を理解したのか皆が驚いた声を上げた。うん知ってた。あとうざいからねぇねぇちゃんとできた誉めて褒めてとか言わないで。はいはいよくできましたねぇ~これでいい? うんよかった。

 

 

「し、篠ノ之束って……あの?」

 

「箒さんと凪さんのお姉さんで……ISを生み出した天才……」

 

「この人が……あ、あのっ! 先日は本当にありが――」

 

「はぁ? 何いきなり話しかけてきてんの? つかてめぇ誰だよ? 勝手に割り込んでんじゃねぇよバーカ。はい続けるねぇ~? じゃんじゃじゃーん! 箒ちゃんへの誕生日プレゼント!! これが箒ちゃん専用機の『紅椿』だよ!!」

 

「えっと、シャル? あんまり気にするなよ……あれが束さんだからさ」

 

「うん。多分殆ど忘れてると思うしラッキーだった程度で良いと思う。たばねぇって僕と箒姉とイチ兄とちー姉ちゃんと……もう一人ぐらいにしか素を出さないし」

 

「そ、そうなの……?」

 

「あと一人いるのかよ……」

 

 

 シャルロットさんのお礼を拒絶口調で遮断したけどある意味これでいいのかもしれない。もしこれでいいよいいよ~とか言い出したらシャルロットさんがたばねぇと繋がりがあると勘違いされかねないし。というより箒姉の驚きっぷりは凄いんですけど……そりゃそうだよね。いきなりはい専用機って渡されても困っちゃうもん。ひし形の物体が消えて中から出てきたのは前に見たのと全く変わらない紅の鎧。太陽の光に反射して一層輝いているね!

 

 

「……姉さん。私は、専用機が欲しいとは言った覚えがないですけど?」

 

「そうだね。でも必要じゃないかなぁ? だって箒ちゃん、このままだといっくんとなっくんの戦いを見てるだけ、守ってもらうだけだよ? だからお姉ちゃんは考えました……一緒に戦える力があればいいじゃん! そんなわけで開発しちゃいました~うれしい? 迷惑? もしかしてどっちも?」

 

「……迷惑、と言いたいです。ほん、とうに貰っても良いんですか……?」

 

「うん。箒ちゃん専用のISだもん貰ってくれなきゃ嫌だぁ。この翼で、この剣でいっくんとなっくんを守ってあげて」

 

「――分かりました。その、ありがとうございます」

 

「およ? う~ん、ちょっと固いけどいっか。はいじゃ~初期化と最適化をやっちゃおっか? あっなっくん?」

 

「なに~?」

 

「そのコンテナの中にくーちゃんいるから指示に従ってね? なっくん専用装備の説明を……説明を……むき~ホントならお姉ちゃんがするはずだったのぃぃ!! くーちゃんの反抗期がぁぁ――向かうの早いよなっくん! カムバック!! お姉ちゃんが説明するからぁぁぁ」

 

 

 ごめんたばねぇ? クロエさんが居るって聞いた段階でもう走ってたから何言ってるのか聞こえないや。そんなわけで全速力で箱、というよりコンテナに近づくと普通の扉があったので開いて中に入って外から見られない様にすぐに閉める! ガチャリと鍵もかけるよ! だってクロエさんを他の人に見られるわけにはいかないからね。ふぅと息を整えているとおかえりなさいと笑顔で出迎えてくれるクロエさん、うん今日もいい笑顔だね……でもメール事件のせいで体に震えがぁ……! 僕の姿を見て何やら恥ずかしそうにその時はごめんなさいと謝ってきました。許します。全力で許します。

 

 

「そ、それでは凪様の専用装備のご説明をしたいと思いますが……よろしいですか?」

 

「うん。お願いします」

 

「ではまずこちらをご覧ください」

 

 

 僕の目の前には黒い物体が複数存在していた。横に伸びている真四角なコンテナのような装甲に逆三角形状に配置された3つの大型ブースター。なんだか刃物のような三角形状の大型ブースター。他は各部位に取り付ける増設スラスターかな? 結構いっぱいあるね。でも武器が射撃かぁ……自信ないんだよね。

 

 

「長距離航空用パッケージ『黒燕』。凪様の目の前にあるのがこの追加装備となります。こちらは空中戦が苦手な耶識の欠点を補うための装備で近接戦闘主体から中遠距離戦闘に適した状態に変化します。装備はバックパック上面に取り付けられた滑空砲、こちらは切り離して手持ちも可能です。そしてもう一つが両腕にロングレンジライフルを装備してもらいますが量子変換を行いますので近接武器に持ち替えることも可能です。滑空砲とライフルで運用する弾丸ですが基本は徹甲弾を用います。各弾丸も併せて量子変換しますのでその時の状況に応じて変更してください。」

 

「へぇ~武器だけならなんとか入りそうだね。耶識を呼べばいい?」

 

「はい。起動後、あちらで待機をお願いします」

 

 

 クロエさんの指示通りに耶識を展開して指定された場所で待機するとそれぞれの追加装甲、装備が僕の体に取り付けられる……ぐぅ、っ、あぁ……! ドッキングするたびに脳に情報がやってきてちょっとだけ辛いかな……でも大丈夫だよ? そのまま続けて良いからさ。そういえば外では箒姉が紅椿を着てるんだよね……見たいなぁ。そんなことを思っていると空中にディスプレイが現れて外の様子が見えるようになった。ありがとうクロエさん!

 

 どうやら紅椿の説明は終わって起動テストをやってるみたいだね。上空ではISを纏った箒姉の姿があった……あれISスーツが白になってる? 似合うね! たばねぇが何だかミサイルとか色々撃ちまくってるけど箒姉はそれを二振りの刀で全て撃ち落としていく。見た限りだと弾丸を打ち出すものと斬撃を飛ばすものかな? でも凄いね……動きがまるで機械操作の動きじゃない。完全に生身の動きだ……僕のようにミサイルを高跳びのバーに見立てて背面跳びをした後に斬撃を飛ばして破壊とか当たる直前で一気に地面に落ちて回避とかやってるし。これは皆驚くね……!

 

 

「あれが束様が開発した紅椿です。束様からは箒様と模擬戦をしてほしいと言っておられましたがよろしいですか?」

 

「うん。どこまでやれるか分からないけど頑張ってみる」

 

「分かりました。量子変換終了、ドッキング完了。耶識・病、黒燕装備は何時でも出撃可能です。高速戦闘となりますので今までと感じ方が違うかと思いますのでご注意を」

 

「分かった! でもどう行けば――あぁ、天井が開くのね。それじゃ行ってくるよ!」

 

「いってらっしゃいませ」

 

 

 今の僕の姿は背中に四角形のコンテナっぽい装甲、それに逆三角形状の3つの大型ブースター、脛部分には刃物のように鋭い大型ブースターが取り付いていて腰、太ももには増設スラスター。完全に高機動用になりました。なんていうか圧巻だね!

 

 空に向けてジャンプすると今まで以上の速さで上空へと飛翔した……けどGがヤバいかも……! よし慣れた! 両手にライフルを展開して箒姉の所まで飛ぶ。凄いなこれ……今まで以上に走れる、泳げる。エネルギーの消費には気を付けないと……あぁ、バックパックに別であるんだ。そこから使用していくのね。さすがたばねぇ。

 

 

「凪か」

 

「うん。紅椿の調子はどう?」

 

「良好だ。私自身で戦える……! 今度はお前のテストというわけか」

 

「そうみたい。だから付き合ってくれない?」

 

「構わない。行くぞ凪!!」

 

 

 僕がライフルを撃つのと同時に箒姉が下に回避。ちぃ、動作を見てから回避とか僕の十八番なのに……!

 

 体勢を整えた箒姉は刀を振るい雨のような弾丸を飛ばしてくる。弾と弾の隙間は通れそうにないから上だね。背中のブースターからエネルギーを放出、螺旋を描くように放たれる弾を躱してライフルと滑空砲を撃つ。やっぱり厳しいなぁ……速すぎる、こっちの弾丸が届く前に斜線からいなくなるし阿頼耶識の感覚で場所を先読みして撃ってもまた同じ。自慢じゃないけど射撃の腕自体は悪くないと思うんだけど箒姉が速すぎる……!

 

 

「これが凪が見ていた世界……確かに動ける、分かる、これが私の動きだ!!」

 

 

 箒姉の背中から2つのビットが放たれる。セシリアさんのと違って紅椿のはソードビットって感じかな? 撃ち落そうとするけどこれも動きが速く届く前に躱される……だったら接近して砕くだけ。両手のライフルを戻して包丁刀『病愛』を呼び出す。迫りくるソードビットの動きを静かに感じ、刃が当たる瞬間に力を抜いて海に落ちる様に躱して病愛を叩き込んだ――けどその刃は装甲の一部を掠るだけで破壊にはならずもう一個のソードビットでお腹を切られてしまった。反応が速い……! ビット操作はセシリアさん以上か!

 

 

「凄いね……手も足も出ないんだけど……」

 

「私も驚いている。凪にここまで善戦できるなんて……まだ諦めたわけではないのだろう?」

 

「当然――ちゃんと殺してあげる」

 

 

 瞬時加速、一気に箒姉に接近すると両手の刀を構えて迎え撃つ構えに入るのが見えた……まだ、まだ、今! 加速を一気にゼロにして一瞬だけ箒姉の手前で止まり滑空砲をぶっ放す――けど当たらない。でもそれは予想済みで背後を取られるのも分かっていた。分かっていたからこの行動ができる。

 

 

「なにっくぅ……!」

 

 

 大型ブースターごとバックパックを切り離して箒姉にぶつける。四角い装甲が切り離されて出てきたのは2つの小型ブースター。これこそ黒燕の奥の手、高機動近接戦闘形態。太もものスラスターからエネルギーを放出して後ろに下がりながら片手には滑空砲を握りしめ、もう片方の手で持っている病愛で箒姉の腹をさっきのお返しとばかりに抉る。痛みが発生して動きが止まったのを確認して心臓に滑空砲の砲身をぶつけてそのまま発射、後ろに吹き飛んだ。でもこれで紅椿の速度についていくことが不可能になったな……削れたとはい、え……っ!?

 

 2つのソードビットが僕の腕を切り裂いた。嘘でしょ……砲弾喰らいながら操作したの!? 最悪な事に即体勢を立て直して僕に急接近、二刀流による突き、斬り、切り払いを混ぜ合わせた攻撃を受けてエネルギー切れ……うわぁ~これ無理。勝てる気がしない。

 

 

「今のは焦ったぞ……まさか装備を外すとは思わなかった」

 

「だって紅椿の速さには黒燕でも追いきれないもん。背後取ってもらわないとこっちが接近できないんだって」

 

「そ、そうなのか……? そうか、これがお前がいつも言っていた普通に動いているという感覚か……なるほど、確かにこれはそう思いたくなる。私も普通に動いていただけだからな」

 

 

 流石第四.五世代、ぶっちぎりの性能だね! ヤバい……これ箒姉に勝てる人いるのかな? ちー姉ちゃんなら勝てそうだけどそれ以外だといないんじゃない? だって僕でも無理、これは断言できる。僕は阿頼耶識があるけど箒姉にはそれがない、その差でどうにか……できそうにないんだけど? うわぁ……鍛えないとなぁ。

 

 箒姉に支えられて地上に降りると予想通り皆の表情が唖然としていた。ですよね! 僕も同じ立場だったらそうなるよ!!

 

 

「おかえり~どうだった箒ちゃん? すんごく動くでしょ?」

 

「えぇ。今まで打鉄で動かしたような感覚ではなかったです……まるで生身の私が動いているように感じ、ました」

 

「そりゃそうでしょ~だってなっくんの稼働データの一部を入れてるんだもん! そこが第四.五世代なのさ! なっくんは残念だったね? でもどうだったかなぁ?」

 

「普段より空を飛べるけどやっぱり射撃は慣れないね……あっごめん、作ってくれた装備海に落としちゃった」

 

「問題ないよ~既に回収済みさ。黒燕は宇宙で誰かを救助、サポートすることを前提に作ってるから小回りとかはあんまり得意じゃないんだよねぇ。だから近接戦闘用に切り替え可能にしておいたよ! どう凄いでしょ!」

 

「僕としてはそれだけで十分かも。でもありがとうたばねぇ、大好きだよ」

 

「うんうん、お姉ちゃんも大好きぃ! ちなみにこれ第一世代の素材と技術で作ってるから持ち去られても何も得るものないよ。そして置き場所は……なっくん、耶識の待機状態の首輪に穴空いてたよね? ホントはくーちゃんがしたようにリード付けたいけど今回は我慢してこの装備を持ち歩けるようにこうしました!!」

 

 

 耶識を解除すると紐を通す穴の所に鈴が付いていた。思わず僕は猫かとツッコミを入れたら猫のなっくんかわゆいと話を聞いてくれませんでした……いや良いけど。なんでもパッケージは任意で取り付けが可能だけどさっきみたいにドッキングさせるには時間がかかるらしい。ちなみに時間は3分、カップラーメン1個分だね。そして箒姉……肩痛い、離してくれないかなぁ……? あと顔怖いよ?

 

 

「ひ、紐、通す、お、おおお前はいったい何をしているんだ!? そ、その女とどんなぷ、プレイを!?」

 

「落ち着こう箒姉何もない何もなかっただから安心して。あと肩痛い」

 

「十分落ち着いている――姉さん、そのくーちゃんとやらはあのコンテナの中にいるんだな?」

 

「うん。なっくんに会いたいからって一緒に来ちゃった♪ もう恋敵だよ! お姉ちゃんの娘なのにさぁ……なっくんももう少しお姉ちゃんにやさしくしてよぉ?」

 

「してるつもりなんだけど? あと箒姉、その顔で行っちゃダメ、ノー、ステイ」

 

「安心しろ。この顔は生まれつきだ」

 

「箒さん……わたくしもご同行いたします。そんな凪さんとそのような羨ましい行為、いえ危ない行為をする方のお顔を拝見しなければいけませんので」

 

「嫁を寝取るためにはその女を知る必要がある。力を貸そう」

 

 

 なんで3人共やる気、いや殺る気なんだろうねぇ。というよりたばねぇ? 言ってよかったの? はぁ? くーちゃんもIS学園に通わせようかな? ふざけてんなら今すぐ殴るよ? そんなの……そんなの……良いんじゃないかな。少なくとも僕は良いと思うよ? 学園生活が楽しくなると思うし――えぇ、やっぱりやめるって何さぁ? いや良いけど。どっちでも良いけども!

 

 

「お、織斑先生! 大変です!!」

 

 

 カオスになりかけていたこの場に山田先生が舞い降りた。なにやら焦っている様子だけど……えっ? マジですか。

 

 山田先生から聞かされた事は今の僕達に関係があるものだった。それを聞いたちー姉ちゃんは実習を即座に終了させて他の子は旅館で待機、僕達は別室に一カ所に集まるように言ってきた。確かにこれは一大事だね……速めに何とかしないと巻き込まれた人が危ない。

 

 聞かされた内容は軍用ISが暴走し始めたというもの。それには操縦者も乗っておりこのままでは身の危険に繋がりかねないようだ……ちらっと事件を起こしかねないたばねぇを見ると起こっちゃったかぁと言いたそうな表情をしていた。うん? これってもしかしてたばねぇ関係ない? それはそれで嬉しいようなおかしいような……なんなんだろうねこの気持ちはさ。




耶識専用パッケージ『黒燕』
元ネタはシュヴァルベ・グレイズとクタン参型。
近距離と中遠距離の両方を行う事が可能ですが一度切り離すと再度ドッキングしなければいけない上、一人では不可能。

天才な兎の手により鈴の姿で持ち運び可能。ただし普通に呼び出しただけではただのパーツでドッキング必要。凄くめんどくさい仕様になってます。

余談ですが兎の携帯の中には世界最強が水着に着替える時の写真が入ってる模様。
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