篠ノ之家の弟は阿頼耶識使い   作:木の人

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無慈悲な断罪

「全員席に着いたな。これより現状を説明する」

 

 

 旅館の中にある大広間、その一番奥で僕達専用機持ち全員とちー姉ちゃん、一部の教員の方が集まっている。理由は単純明快、とてもシンプル。現在僕達が臨海学校で訪れている位置に近い場所を軍用ISが通過するみたいでどうやら僕達にそれを止めろっていう命令が届いたらしい。うん、これ僕達がやるような事じゃないよね? 普通なら国家代表とかもっとIS操縦に慣れてる人がするものじゃないかなぁ? ちー姉ちゃんの説明では今から約2時間ほど前にハワイ沖で試験稼働中だったアメリカ、イスラエル共同開発していた軍用第三世代型IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』が制御下を離れて暴走、操縦者ごと監視空域を離脱。そして監視衛星による追跡の結果、僕達の居場所から約2キロ離れた地点を今から約50分後に通過するそうだ。僕は殆ど呆れ、イチ兄と箒姉は驚き、セシリアさん達代表候補生の皆は険しい表情でちー姉ちゃんの話を聞いていた……皆凄いなぁと思うけど何度も言わせてね? なんで僕達にやらせるのかな? なに? 失敗したのはお前たちのせいだって言いたいの? 別に言っても良いけど命は無いと思いなよ。

 

 

「――篠ノ之弟、何か言いたそうだな?」

 

「うん? ただこれって僕達がやる必要あるかなぁってさ。だって高校一年生の学生に軍用ISが暴走したから対処しろっておかしくない? どう考えても責任を押し付けようって魂胆丸見えでなんかなぁ、って感じです。一大事なのは分かってるけどね」

 

「そ、そうだぜ! 国家代表の人とかは動かないのかよ?!」

 

「動こうにも時間が足りん。この機会を逃せば銀の福音は行方不明、それはつまり操縦者も同じという事だ。篠ノ之弟の言い分も理解できるが我慢しろ。今回の作戦が失敗したとしてもお前たちには一切責任は無い。だから安心しろ。さて時間が惜しい、質問がある奴は挙手しろ」

 

「はい。目標ISの詳細なスペックを拝見したいですわ」

 

「良いだろう。ただし他言はするなよ? 情報が漏れた際はお前たちに監視の目が付く。覚悟して見ろ」

 

 

 うわぁ……昔も監視の目が合ってようやく解放されたのにまたつくかもしれないの? まっ話さなきゃいいだけだしそれほど難しくはないか。

 

 空中ディスプレイに目標となる銀の福音のスペックが公開される。ふむぅ、近接ではなく射撃型で広域殲滅を目的とした設計ねぇ。というより軍用って……いや自衛のためなら問題ないから黙ってるけどさ。作るんじゃないよこんなの。さて次は……速度は問答無用で耶識を超えてるね、黒燕有でようやく対等、またはそれよりちょっと低い感じになるのかな? このデータを元にするなら射撃攻撃と機動力に特化させたISって考えても良いね。そしてイチ兄と箒姉……少しはこのデータを見て何がどうなってるのかぐらい考えれるようになろうよ。こんなの初めてだと思うけど考えるな、感じるんだ。それで何とかなる。

 

 

「わたくしのISと同じ射撃型、しかもオールレンジ攻撃を可能としていますわね……」

 

「それどころか私の甲龍より攻撃力あるわよ。それでも最悪なのにこの機動性……」

 

「連発で受けると一気にエネルギーが削られるね。でも被弾無しで接近も難しいかな。戦闘時は攻撃、防御で役割を決めないと……」

 

「格闘性能がどれほどのものかこれでは分からん。流石に嫁並みとは思えんが近接能力を確認したい所だ……しかし偵察は無理だな。この速度で常時移動しているのなら追うのが精一杯だろう」

 

「……なんかすげぇ」

 

「そ、そうだな……これが代表候補生……!」

 

 

 イチ兄と箒姉が皆の真剣さに驚いている。だろうね……普段あんなに楽しくわいわいとやってたのに一気に変わってるんだからさ。さてどうしようか……恐らくチャンスは一回、それを逃すと次は何時になるか分からない。だから一回目で落としきれる攻撃をしないといけないんだけど――はぁ、あんまりお勧めしたくないなぁ。だって危険だしイチ兄が死にかねない。

 

 僕の考えと皆の考えが一致したのか全員がイチ兄を見る。見られている本人はえっ? って顔してるけど……仕方がないしむしろ本人から提案されてたらこっちがビックリだ。

 

 

「な、なんだ? 俺の顔に何かついてるか?」

 

「バカ。この作戦は一回しかできないって分かってる? つまりアンタの零落白夜で落とすしかないの!」

 

「はぁ!?」

 

「一夏、それしか方法が無いんだよ……あとの問題はどうやって一夏を銀の福音まで運ぶかだね。距離があるしなるべく一夏にはエネルギー満タンを維持していてもらわないと……」

 

「目標に追いつける速度を持つISとなると……嫁、あのパッケージの速度は?」

 

「多分これよりちょっと遅い程度かな。あと黒燕は移動エネルギーが別だからそのまま僕も戦闘可能だけど……厳しいかな。ホントは嫌だけど運ぶとしたら箒姉の方が適任かも。あんまりお勧めしたくないし実の姉を大怪我する可能性の場所に送りたくないけど。というか箒姉には此処にいてほしいけど」

 

「わ、私か!? い、いや……確かに紅椿の速度なら、大丈夫だと思う……」

 

「待ってくれ!? 俺なのか? いくら零落白夜でも当たらなかったら意味無いしそもそも高速で移動する相手を切った経験もないんだぞ!?」

 

 

 確かにイチ兄はISに乗ってまだ日が浅い。高速移動する物体に剣を当てろなんてちー姉ちゃんレベルじゃないと厳しいのは確実。しかも使えば使うほど自分が危険になっていくんだから普通の精神を持ってる人ならまずやらない。でもそれが此処にいる皆で行うならまだ可能性はあると思う……問題はどうやって全員で作戦を行うかだね……僕頭良くないから頭良い人カモン!!

 

 

「大丈夫だよいっくん! 皆でやれば怖くないって!!」

 

 

 はい現れました凄く頭のいい人。ISを作った正真正銘の天才でキチガイ、かなりのコミュ障でブラコン属性を持つその人物はぁ! 篠ノ之束! 僕のお姉ちゃんだぁぁ!! はぁ……何でいるのさ? しかも天井に穴を作って登場しないでよ……っ!? たばねぇが上から降りてきたせいでスカートがちょっと舞い上がってけどそんな事はどうでもいい……何故? 何故クロエさんまで居るの? あぁ降りられないなら何故天井に行ったし。立ち上がって穴の真下まで向かい、両手を広げる。さぁ! 降りてくるんだクロエさん! いくらでも支えてあげよう! はいキャッチ!! 迷いなく飛んだね……なんて勇気だ!

 

 

「す、すいません凪様……お、重くなかったですか……?」

 

「ううん。むしろ軽くてびっくりだよ? ちゃんとご飯食べてる? あと怖いならたばねぇの真似しなくてもいいのに?」

 

「そ、その……束様が一緒に行こうと仰られたので……あとご飯はちゃんと食べています」

 

「なら良いけど。というより何故たばねぇが此処にいるの? てっきり用が終わって帰ったのかと思ったんだけど」

 

「甘い、甘いよなっくん! その考えはチョコレートパフェよりも甘い! とまぁ~不安ないっくんを安心させてあげるね! そう! 皆でやれば怖くない!!」

 

「……はい? と、いうよりそっちの人って……ラウラ? いや似てるけど……ラウラの姉妹とかか?」

 

「そ、そんなはずは……ま、さか……姉! 姉なのか……!」

 

「はい。私はラウラ・ボーデヴィッヒの姉にあたる存在です。クロエ・クロニクルと申します。以後お見知りおきを」

 

 

 綺麗なお辞儀をするクロエさんと対照的に驚愕の表情をしているイチ兄達。なんだか面白いね……そして何故だろう? 箒姉の視線が怖い。まるで恋敵を見つけた時のように鋭く刃のような視線をしているよ……多分だけどこいつが凪と変なプレイをした女とか考えてるのかなぁ。してないのに。もう早とちりし過ぎなんだから我が姉は。

 

 

「ちなみにくーちゃんは束さんの娘だよぉ? つまりなっくんの娘でも――やぁぁ!? うさみみはだめぇ!」

 

「凪様の娘になった記憶はありません。束様の"義妹"になった記憶ならありますけども」

 

「むっ、くーちゃん! なっくんは渡さないよ!」

 

「私の妹が言っておりました。好きな相手がいるのならば寝取れば良いと。私は寝取る必要はありませんけど……ふっ」

 

「初めてくーちゃんを殴りたくなったよ……! この子デキる!!」

 

 

 聞こえない、僕は何も聞こえない。寝取りとか妹とか何も聞いてないし理解しようとも思わない。さて時間が惜しいし話を進めようか……セシリアさんとラウラさんの視線が物凄い事になってるけど僕は知らない。全てはこの作戦が終わったら考える。僕、この作戦が終わったら告白するんだ。よし死亡フラグたてたから多分大丈夫! なんなら今から終わるまで死亡フラグたて続けようかな……立て続けるとひっくり返って生存フラグになるっていうし。

 

 呆れた表情のちー姉ちゃんがたばねぇをアイアンクローして黙らせて空気を元に戻す。そして流石たばねぇ、復活速いね。

 

 

「もう痛いなぁちーちゃん。わかったよぉ~ちゃんとやるからさ。いっくんは初めての空気にちょっと緊張してるんだよね? 仕方ないよそれって。だって零落白夜は使えば使うほど自分の命を縮める行為だし相手は暴走状態、大怪我をしてもおかしくない状況だもん。だからいっくんだけじゃなくて此処にいる全員でやれば問題ないよ!」

 

「……はぁ? 確かにちょっと怖いとは思ってますけど皆でって……?」

 

「それじゃ~説明するね。はい、まずこの作戦はいっくんにかかっていると思うけどそれは間違い。確かに初手の行動はいっくんが鍵になるけど次の手からは別になるんだよ。まず目標地点まで箒ちゃんがいっくんを乗せて運ぶ。これ大事ね? そんでなっくんが黒燕を装備して代表候補生全員を運ぶ。あとは数の暴力でしゅうりょ~ねっ? 簡単でしょ?」

 

「全員って……それやると速度でないけど?」

 

「だから先行していっくんと箒ちゃんが足止めを行うのさ。黒燕の速度で4人を乗せながらだと……うぅ~ん5分かな? なっくんが鼻血と血涙出しても良いなら紅椿と同じ速度にできるけど……やらないよね? やらないよね!!」

 

 

 それってやれっていうフリ……あっはい。やりません……だからクロエさん? ほっぺ抓らないで。地味に痛いんだよそれ?

 

 

「つうわけで不本意だけどパッケージある奴は私が見てやっからさっさと準備しろ。いらねぇなら別にいいけどさぁ~うん? 何この空気?」

 

「いやだって……束さんが他の人の面倒を見るなんて……珍しいなと」

 

「今日で世界は滅亡か」

 

「……一夏、今まで厳しくしてすまなかった。世界最後の今日ぐらいは優しい姉でいようと思う……ダメか?」

 

「えっ? なにこれ? なんでちーちゃんがお姉ちゃんモードにジョブチェンジしてるの? な、なっくん!? 皆がおかしいよぉ!?」

 

「たばねぇ。世界最後の今日ぐらいは正直に言うよ……パフェ食べたい」

 

「そこは愛してるじゃないのぉぉ!? ねぇねぇくーちゃん? そんなに束さんが手伝うよって言ったのがおかしい?」

 

「はい。今日が世界最後の日と認識してしまうぐらい変です」

 

 

 セシリアさん達は一体どうしたんだろうと困惑してるけどたばねぇを知る人にとっては一大事も一大事、緊急事態だよ! あのたばねぇが! あのコミュ障でキチガイで自分と身内とイチ兄とちー姉ちゃん以外は滅んでも良いと本気で思ってるあのたばねぇが拒絶口調とはいえ手伝おうとした事にビックリだよ。もうあのちー姉ちゃんが織斑先生モードから解除されて素に戻ってるぐらいビックリだね。

 

 流石に僕達の反応が予想外だったのかたばねぇが、あのたばねぇがガチ泣きしたので茶番に似たやり取りを止めて本題に入ることにした。泣いてるたばねぇ可愛い。そんなわけで作戦はさっきたばねぇが言った内容で行われることになった。先行してイチ兄と箒姉が銀の福音を足止め、この時は回避に徹して離脱しない様に抑えることが最低条件。そして後続として僕がセシリアさん達全員を運んで袋叩き。黒燕の推進力なら全員を運ぶことは可能なんだってさぁ……絶対重いよね? 言わないけど重いよね。頑張るけども……あぁそうだ。聞きたいことあったんだった。

 

 

「たばねぇ?」

 

「何かな? 愛の告白なら喜んで受けます!」

 

「もしかしてISの暴走が起きること分かってた?」

 

「うん」

 

「そっかぁ。ならいいや。クロエさん、黒燕の準備手伝ってくれる?」

 

「はい。喜んでお受けいたします」

 

「待て待て待て!? 束さん知ってたんなら止めても良いでしょ!?」

 

「えぇ~? ヤダよめんどくさい。というより箒ちゃんとなっくんの新IS、新装備のお披露目に使えるかなぁと思ってあえて見過ごしました。ごめんねっ♪」

 

「え、えぇ……てか凪……お前知ってたのか?」

 

「たばねぇの表情が起こっちゃったかぁみたいな感じだったから薄々ね。伊達にキチガイの弟はしてないよ」

 

「姉さんが専用機を寄越すなんて何かあるとは思っていたが……あとで殴ります」

 

 

 イチ兄はなんだか納得してなさそうだけど仕方がないよ。だってたばねぇだもん。そしてクロエさんが何やら僕の耳元に口を近づけてきたので何か言いたいことがあるのかと思いちょっとしゃがむ。ほうほう……亡国機業の仕業ね。どうやら奴らはISを強制的に解除させて捕獲させる剥離剤(リムーバー)という装置の他にISそのものを強制的に暴走させる暴起剤(ランナー)と呼ばれる装置を完成させて各国でも試してたみたい。そのせいで開発中のISが強奪されたり予想外の暴走とかが起きて大変だとクロエさんから教えられた。つまり今回も亡国機業絡みかぁ。めんどくさいなぁもう。

 

 まぁこの2つの弱点として一度使用したら耐性がついて二度と使えないらしいからまだ安心。いや安心じゃないけど……そ、そして関係ないけどクロエさんの息が耳に……くすぐったいなぁ。

 

 

「……凪さんとあんなに親しそうに……!!」

 

「なるほど……確かに私と見間違えてもおかしくはない……が、嫁は渡さん……! 例え姉といえども!」

 

「――くすっ」

 

 

 なにやらセシリアさんとラウラさんの背後にお嬢様と軍人が出現しだしたんだけど? あとクロエさん? なぜあなたも背後から兎を出しているんですか? そして何故戦うし……なん、だと……! 瞬殺!? この兎、強い!

 

 

「箒……なんだか分からないうちに決まったけど良かったのか?」

 

「あぁ。私たちでやらなければ巻き込まれた人が危険だ。一夏……私は専用機で戦うのは初心者だ、お前を運ぶのは出来るが足止めは役に立たないかもしれない……その時は、すまない」

 

「良いって。俺もISにまだ完全になれてないからお互い様だろ? 幼馴染なんだし遠慮は無しだ。俺も覚悟決めた! 何かあっても箒を護る!」

 

「一夏……ふっ、ならば私はお前を護る。お互いがお互いの背中を護るんだ。行くぞ一夏!」

 

「おう!」

 

「――友情ねぇ」

 

「――いいなぁ」

 

 

 あちらはあちらで驚異のヒロイン力を出す箒姉とそれに気が付かないイチ兄が熱いやり取りをしている。よく言ったよ箒姉! そしてそれを見て嫉妬心を出している鈴さんとシャルロットさん……ど、ドンマイ? さて僕も準備しないとねぇ。セシリアさん達のISをたばねぇが高速タイピングで量子変換と機体調整を4人同時に行っているという凄まじい状態になってるけど何時もの事だし気にしない。イチ兄と箒姉はエネルギーを満タンにして高速機動の説明を皆から受けてる。さて僕はという耶識を展開して黒燕とドッキング中です。流石にあの部屋でやるには狭すぎるから全員外の砂浜でやってるけども。

 

 

「――クロエと言ったか」

 

 

 説明が終わって暇になったのか箒姉がやってきた。というより全員がやってきた……なにこれ怖い。

 

 

「はい。なんでしょうか箒様?」

 

「う、うむ。そのだな……お、お前は凪とはどういう関係だ……?」

 

「恋人です」

 

「えぇー!?」

 

「なんでアンタが驚いてんのよ……」

 

「冗談です。今は凪様のご友人の一人です。えぇ、今は。」

 

「今は……つまりやはりこの方は……!」

 

「姉よ! 生きていたことに私はうれしく思う……しかし! 嫁は渡さない! 寝取って見せる!」

 

「出来るのならやってみてください。私はあなたになれなかった存在ですがこれは負けるつもりはございません。凪様、黒燕とドッキングが終了しました。お身体に何か違和感はありますか?」

 

「特にないかな。というよりもう慣れたし」

 

 

 ドッキング時に流れ込んでくる情報量の多さには最初は驚いたけど2回目となると慣れてしまったらしい。ほとんど何もなくてあれ? って思っちゃったよ。そして3人は視線で戦い、背後で武士とお嬢様と軍人と兎が戦い、僕とイチ兄と鈴さんとシャルロットさんは置いてけぼりになった。僕知らない。兎強い、あとクロエさん何で携帯見せてるのもしかしてそれ僕の自撮り写真じゃないのかな……!! というより阿頼耶識があるから――あっこれかぁ。ならいいや。だってタオル首からかけて隠してるやつだし。ふぅビックリしたぁ。

 

 

「まけ、ましたわ……!」

 

「ぐぅ……写真とは、卑怯な……!」

 

「凪……凪……お前は何故そんな写真を……!」

 

「欲しいとお伝えしましたら送ってくださいました。凪様にも私の写真はお渡ししていますのでお揃いです」

 

 

 全員の視線が僕に向いた。知らない見ないでこっち見ないで携帯見せろって言わないで怖い怖いいやぁ?!

 

 箒姉連合と言っても良い数の暴力を前に僕は屈した。というより携帯盗られた……ふっ、ロックしてるからそう簡単には――あれぇ~? 何で一発で? はぁ? なんとなくで開けれるわけないでしょ? 姉力とかふざけたこと言ってると叩くよこのポンコツ姉。そして待ち受け画面を見たイチ兄を除く皆の視線が一気に変わる……知らない、知らないし。だって変えれないんだもんしょうがないじゃん。何回か色々使ったけど決して悪い事はしてないよ。してないったらしてない。

 

 

「なぁ? なんで俺に見えない様にしてるんだよ?」

 

「アンタはダメ!! 絶対に見るな!! てかなんてもん待ち受けにしてんのよ!?」

 

「そうだよ!! は、破廉恥だよ!!」

 

「こ、これはわたくしも送って対抗を……し、しかし……!」

 

「ふむ。嫁のために送るしかないな――首を洗って待っていろ」

 

「おい。変更できんが何故だ?」

 

「私のだけ見てほしいのでロックしていますが何か問題でも?」

 

「大ありだ!!!」

 

 

 あのさぁ……もうすぐ作戦だってのにこんなんで良いの? あと言い訳させてもらうと本当に変更できなかったからしかたがなく……仕方がないんだよ、だって変更できないんだから携帯使う時に見ちゃうのは仕方がない。通話もネットもしないのにただ待ち受け画面を見てしまうのも仕方がない。だって男だもん。だから僕は悪くない。だから抓らないでほしいなぁ……

 

 そして結局、箒姉の説得という名の圧力により待ち受け画面は普通のものに変わりました。ただし画像は削除できないのでそのままフォルダの中に残ってます……よしこれで普通に携帯使えるね! ありがとう箒姉! だからたばねぇを殺しに行こうとか思わないでぇ!! 箒姉を抑えているとたばねぇが叫びだした。あぁ、ちー姉ちゃんのアイアンクロー喰らってるし……しかもミチミチと音がしてるよ。流石ちー姉ちゃん。アッハイマジメニナリマス!!

 

 

「ではこれより作戦を開始する。お前達――無事に帰ってこい」

 

「「「「「「「はい!!」」」」」」」」

 

 

 箒姉の背中にイチ兄が乗る。僕はというと右手に鈴さん、左手にラウラさんを抱えてバックパックにセシリアさんとシャルロットさんがしがみ付くという形で運ぶことになる。なぜこの2人を抱えたかというと小柄だからです。そして一緒に飛ぶけど流石紅椿、同じタイミングで出たのに追い付けそうにないや……というより重い、4人と4つのISを抱えて飛んでるから仕方がないけど重い。あと黒燕凄い。

 

 

「うわはっや。流石第四世代って所ね……」

 

「凪のパッケージも凄いけどね。僕達を抱えてこの速度なんて普通じゃないよ?」

 

「もう少し小柄ならば抱えてもらえましたのに……!」

 

「姉に負けないためにもこういう所で稼がねばな!」

 

「だからって暴れないでね。これでも全力で飛んでるんだから落ちたりしたら回収できないよ」

 

「わ、分かっている!」

 

 

 既にイチ兄と箒姉は銀の福音の近くまで接近しているだろう。目的地周辺はIS学園の教員が訓練機を使って空域と海域を封鎖しているから普通の人は入っては来れない。勿論たばねぇも索敵に参加したからまず間違いない。問題は普通じゃない連中だけど……うん? たばねぇからプライベート・チャネル? なんだろ――あぁ、分かったよ。あと少しだから皆には自力で向かってもらう。流石にこの人数を抱えたまま回避とかできないし。

 

 

「どうかしたの?」

 

「五月蠅い連中が来たみたい」

 

「っ!? ハイパーセンサーに反応だと……! バカな! 封鎖されているはずだ!」

 

 

 目の前から異形の物体が3体向かってくる。この反応……たばねぇの人形ビットに似てるな。でも姿が大きさも全然違う。そもそも全身装甲じゃないし。

 

 その場で停止してやってきた連中を見つめる。胴体、いや人間でいう上半身の部分は何やら四角いキューブの形……3体とも違いはあるけど大体似たり寄ったりの両腕と両足、でも腕太いのに足細すぎないかな? というよりこいつら――ISなのかな? 反応が全然違うんだけど。

 

 

『――見つけたぞ、ようやく見つけたぞ!!』

 

『――篠ノ之束の守護者!! ようやく見つけたぞ!!』

 

『――貴様にやられた屈辱は忘れもしない! 決してぇ!!』

 

「誰?」

 

 

 女の声だ。でも聞き覚えが無い……屈辱って何さ? あぁ、もしかしてたばねぇと逃げてた時に撃退してた人達? しらないよそんなの。勝手にやってきて負けて逆恨みとかもう最悪じゃん。しょうがないなぁ……僕に用があるなら他は関係ないよね?

 

 

「ごめん。予定が狂ったけど皆先に行って。こいつらは僕に用事があるみたいだからさ」

 

「で、ですが……」

 

「良いわ。こいつの実力は分かってるし3人相手でも大丈夫。でももし負けたらぶっ飛ばすからね」

 

「……無茶はしないで」

 

「わ、私は残るぞ! 嫁を置いては――」

 

「良いから行け。僕よりもイチ兄達をお願い」

 

「っ、分かった……だが死ぬな! 良いな!」

 

 

 4人が僕から離れていく。ふぅん、そっちには興味なし……か。なら好都合だね、だって僕も早く行かなきゃいけないしキミ達に付き合ってる時間もない。だから死ね。

 

 滑空砲を放つと3体がそれぞれバラバラに回避する。今の……いや、まさかね。左手にライフルを呼び出して散った内の1体を狙って急接近、拳を叩き込む――けど体をくの字に曲げてひらりと躱され逆に蹴りを喰らう。あぁそう言う事……そうなんだ。ライフルを3体にそれぞれ撃つと予想通りの反応で回避、とうとう出てきたか。やんなるね……! たばねぇ、映像と音声をカットよろしく……うんありがとう。これで遠慮なく殺せる。

 

 

「――阿頼耶識か」

 

『あぁそうだ! 貴様に勝つため! スコール様のために!』

 

『この身がビット兵器になろうとも!! 私たちはぁ!! 貴様を殺すぅ!!』

 

『スコール様ぁ! 見ていてください! 必ず篠ノ之束の守護者を殺して見せます! 必ずぅ!!』

 

 

 四角いキューブの前面が開き中の物体が見える。そこには女の胴体、両腕も腰から下も無い、ダルマ状態の女。よく見えないけど背中に配線があるからあれが阿頼耶識……僕のよりデカい。うっざいなぁ……逆恨みでそんな姿になってまで僕を殺しに来た? しらないよそんなの。というより今こいつら言ったよね……ビット兵器って。つまりこいつらISに乗ってない……操ってるやつが別にいる。ちぃ、この近くにはいないか……人工知能付きのビット兵器とか聞いたことないよ。

 

 変な言葉を呟きながら目の前の奴らは剣、銃を構えて散開した。ブースターからエネルギーを放出しまずは銃を持つ機体……いやビットを狙う。今までのようなISの機械的な動きではなく生身に近い動きで翻弄してくるけど残念な事に箒姉でもう慣れてる……だから無意味だよ。2つある内の滑空砲の1つから通常弾を発射、もう一つの滑空砲の砲弾を散弾に変更し1秒遅れて発射。当然最初に撃った通常弾は簡単に躱されるけど散弾の雨は躱す事が出来ず体中に鉛の雨を受け動きが止まる……あぁ、ビットだから絶対防御ないのか。

 

 

『散弾――っぁ!?』

 

 

 瞬時加速、一瞬で相手の目の前まで接近し頭を掴む。そして杭を叩き込みダメージを与えた後、病愛を即座に呼び出して胴体を叩き割る。

 

 

「――次はどっちにしようかな」

 

 

 生暖かい赤い液体を体中に浴びながら残る敵を見つめる。残っているのは近接装備のビット、良いや接近しよう。あんまりエネルギーも弾丸も使いたくないし。ブースターを吹かせて急接近すると二手に分かれて距離を取ろうとする……じゃ撃つね。両手の武器をライフルに変更、射撃して相手を動かせる。その間に滑空砲の砲弾を2つとも散弾に切り替えて上空に発射。阿頼耶識の弱点って理解できてる?

 

 

『こ、広範囲……だがこの程度、なぁ!?』

 

「人間は雨を避けることはできない――今のようにね」

 

 

 鉛の雨で濡れたビットの一つに接近、病愛で腕を斬り落とす。膝のブースターを吹かして一気に後ろに後退して背中から内部を抉る。所詮はビット兵器……絶対防御もなければこんなもの。さぁお待たせ……キミの番だよ? うん? なんで錯乱してるのかな?

 

 

『わ、私たちは選ばれたはず……何故ですスコール様!? 何故共に戦ってくれないのですか!? 貴方のためなら私たちはぁ!!!』

 

「どうでもいい。良いから死ねよ」

 

『死なない! きさまぁぁぁぁ!!!!』

 

 

 剣を構えて突進してきたので地面に落ちて滑空砲を放つ。ちぃ、今の距離でも反応されたか……でもさっきまでと比べると遅い。もしかして本体の方からの支援が切れた? 諦めたのかデータ取りが終わったのか知らないけど可哀想に――見捨てられたことすら気が付かないなんて。

 

 泣き叫びながらビットは剣を持ち斬りかかってくる。視界がスローモーションになる……ゆっくりと、ゆっくりと時間が進んでいく……刃が僕に迫る、殺そうと向かってくる。奴の顔が笑った――うん、終わりだよ。

 

 片手で剣を持つ手を叩いて軌道を逸らし胴体を空いた手で殴る。そしてトドメとして杭を撃ち込んだ……赤い液体が僕の顔に付く、体にも、汚いなぁ……もう。絶命したのか既にビットは動くこともなく重力に引かれる様に海へと落ちて行った……可哀想としか思わない。異常なはずなのに心も頭も冷静で冷酷だ、もう戻れないのも知ってるし理解してる。でもどうでもいい。なぜ殺したと聞かれても僕はこう答えよう。

 

 

「あんな体にされて生きてるぐらいなら殺された方が良い」

 

 

 移動しようとするとクロエさんから連絡が入った。あぁそう……失敗したんだ。皆は……そっか。

 

 人殺しをしたからなのか、それとも別の要因かは分からないけどクロエさんから話されたことを聞いても戸惑いも動揺も取り乱す事すらなかった。戦闘空域に謎のISが乱入、銀の福音と同時に相手にした結果――箒姉を庇ってイチ兄が負傷。何でもイギリスが開発してた機体みたいで生身のような動きだったらしい。はぁ……とうとう利用してきたよ。最悪だね――

 

 ――阿頼耶識使いが亡国機業に生まれたよ。




祝! 亡国機業が阿頼耶識増産体制へ!
登場した敵ですが人型ISと同じ大きさのビットの胴体にダルマ状態で阿頼耶識接続で動かしていました。本体からも操れますが人間が詰め込まれてるので支援なしでも自由に動き回れます。ただしISではないので阿頼耶識の性能が活かしきれない欠点付き。

そしてとある女の子が阿頼耶識使いになりました。なんという無理ゲー。
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