篠ノ之家の弟は阿頼耶識使い   作:木の人

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少年達の密談

「――ヤバい、無理、無理」

 

 

 臨海学校から数日経ち、もうすぐ夏休みが訪れるIS学園、耶識専用整備室で僕は悶えていた。今日は無事二次移行したイチ兄と模擬戦をしたけどここ数日間色々とおかしくなっているので集中できず負けてしまった……そんなことはどうでもいい。問題はまだ全然全く解決していないんだから。

 

 

「寝ても覚めてもクロエさん、しかもキスしてる場面が出てくるとかもう死にたい……」

 

 

 そう。臨海学校でクロエさんとキス、しかも舌絡ませという大人のキスをしてしまい男の本能に負けてその場で押し倒し箒姉が来なければ一線を越えていたという事実に僕の頭と記憶はおかしくなってしまった。目を閉じるとクロエさんの顔が思い浮かんで唾液の味とか舌の味とか殆ど変態のような事を思い出してしまう……そのせいで寝不足、ちー姉ちゃんの出席簿アタック、訓練に集中できないという悪循環……はぁ。どうにかならないかな……!

 

 クロエさん押し倒し事件と名付けたこの事件後、箒姉は箒姉でポンコツ化が進んでいくしラウラさんを見るだけでキスの場面が思い浮かんで恥ずかしくなるしイチ兄は……あんまり変わらなかったね。ただ身近に恋愛系の事件を起こした人が出来たからなのかちょっとだけ興味持ってるみたいだけど。いい加減誰かに、というより箒姉で良いから告白しなよ。そうすれば全て解決するんだからさ。そんな事を考えている暇なんてないんだ……今はどうやってこれを治すかどうか! それなんだよ! もうここ数日の僕はかなり変だという事は自覚してる。部屋で一人でいる時なんかほぼ無意識で自分の唇触っちゃうしクロエさんに会いたくなるし……あぁそうそうあの常識人のクロエさんなんだけどあの事件以降たばねぇと居てストレス溜まってるのか、またはからかっているのか分からないけど自撮り写真を送ってくるようになりました。そのせいでまた忘れたくても忘れられなくなって……僕は忘れないし消す予定ないけど安心家族計画のあれ(コンドーム)を咥えた写真が送られてきた時はビックリしたね。もう殺しに来てるようなもんだもん。

 

 

「耶識ぃ……僕はどうすればいいと思う?」

 

 

 問いかけても返事は無い。当たり前だろうけど答えてほしかった……鯉、じゃない恋なんだろう。きっとそうなんだろうけどまだ自信がない、たとえ舌絡ませキスをされたとしても自信が無い。ヘタレと言われようと自信が無いものは仕方がないんだよ……だって恋人ができた事なんでないし童貞だし。だから分からないと言ったら分からない。そうだよ……きっとクロエさんは人殺しをした僕を癒そうとしてくれたに違いない、そうだよそう考えればいいんだ。写真もきっと疲れが溜まっているかからかってるだけ、うんうんそれで行こう。会いたくなるのはキスを覚えてしまった童貞だから。よっしゃこれで解決でしょ。そして整備完了! さてどんな感じかなぁ?

 

 耶識を起動すると脳裏に検査服を着た女の子が浮かび上がって病愛で何度も殴られた。中華包丁に似た刀で殴られたら普通死ぬけど脳内イメージだし大丈夫大丈夫……というより機嫌悪い? だから殴らないでよもぉ。どうしたのさ耶識? 何故首絞めるし。

 

 耶識からの謎の攻撃を受けたけど整備自体は終わったので自分の部屋へと戻る。今日まで色々と変だったけど明日からは違うよ? もう克服したからね……いやぁ経験ないって恐ろしいね。でもよく考えてみたら僕みたいに変な機械を体に埋め込まれた男にあの常識人かつ可憐なクロエさんが恋するわけないし、もっとお似合いの人がいるだろう。それはそれでちょっとイライラするけど誰もが認める事実だから仕方がない……はぁ。

 

 

「あっ凪。部屋に戻るのか?」

 

 

 部屋に戻る途中でイチ兄と出会った。どうやら訓練が終わったから晩御飯まで部屋でゴロゴロするつもりらしい。僕も同じだというとだったら俺の部屋で時間潰そうぜと誘われたので快く了承、偶にはイチ兄と一緒にゴロゴロするのも悪くないしね。ちなみにイチ兄はシャルロットさんとの同棲生活が終わり現在は1人部屋だそうです。好きな事し放題! 何とも羨ましい!

 

 

「最近なんか調子悪そうだけど夏バテか? ダメだぞゆっくり休まないと。麦茶で良いよな?」

 

「あぁ~それだったらよかったんだよね……うん、それでいいよぉ~」

 

「はいよ。でも夏バテじゃないとすると……あ、あぁ……もしかして……」

 

「想像通りですはい……どうも寝ても覚めてもあの場面が思い浮かんでうわぁぁ状態でさぁ。イチ兄も経験した方が良いよ」

 

「何でだよ……でも、さ。俺と箒があそこに行かなかったら……あれ、だったんだよな」

 

「間違いなく一線超えてました。途中までは耐えてたんだけど理性が負けて気づけば……あんな状態でした。でも意外だね? イチ兄がこれに興味持つなんて?」

 

「いや俺だって男だぞ? そういうのには興味持つに決まってるだろ……凪みたいに相手がいないけどさぁ」

 

 

 そのセリフを箒姉達に言ったら殴られるから言わない方が良いよ? そして僕も相手がいないからね? その所をお間違えの無いように……殆ど現実逃避とか言わない。絶対に言わない。

 

 

「イチ兄だってカッコいいからモテるでしょ? 気になる人とかいないの?」

 

「いるわけないだろ……箒とか鈴は幼馴染だしシャルロットだって友達だしセシリアもラウラもそうだからな。凪はやっぱりクロエって子が好きなんだろ?」

 

「好きかどうかは……確かに自然と目で追っちゃうのは事実だけど僕もよく分かんないんだよねぇ~経験ないし。クロエさんは見た目ラウラさんと同じだけど年上だからキスとかはきっとからかってるか任務頑張ったご褒美か何かだと思うし。絶対にそうだから、良いね?」

 

「お、おぅ。でも束さんが他人と一緒に行動してるなんてなぁ。初めて見た時はラウラかと思ったぐらいに似てるし……あれ? ラウラは姉って言ってたけど姉妹なんだよな?」

 

「らしいよ。ちょっと訳ありっぽいけどね。もう僕のことは良いからイチ兄だよ! 本当にいないの? 目で追っちゃうとか一緒にいて安心するとか!」

 

「うん? う~ん、あぁ! 箒だな」

 

 

 キタコレ! 今までの頑張りが実を結んだよ箒姉! よしよし意識せずとも箒姉を見てしまうという事は気になっているという事! つまり好きと――

 

 

「誕生日プレゼントでリボンあげたんだけどちゃんと使ってくれてるしさ。髪を下ろしてる姿を見たけどやっぱりポニーテールが似合うからあげてよかったよ……どうしたんだ?」

 

「……何でもない。イチ兄、とりあえず刺されようか」

 

「いきなり物騒だな!? というよりホントにいないんだって! いたとしても凪だしな」

 

 

 なんだよ期待させてリボン付けてるの嬉しい程度ですか……そして何故僕なんだよイチ兄……はぁ? ここ最近おかしかったから心配してた? ありがとうイチ兄! 心配してくれるのは嬉しいけどそれは他の人の前では絶対に言わないでね。だって箒姉達に色々言われるからさ!!

 

 

「そういえば話が変わるけどもうすぐ夏休みだけど凪はどうするんだ?」

 

「僕? 一応実家というか神社に顔出ししようと思ってるよ。ただ箒姉はあんまり乗り気じゃないと思うけど……そういうイチ兄はどうするの?」

 

「俺か? 家に帰ってゆっくりするつもりだぞ。ここでの生活も悪くないんだけど今まで住んでた家の方が落ち着けるしな」

 

 

 よし何とか家に帰る日を聞き出すことに成功……あとで箒姉に教えてあげないとね! IS学園の寮じゃ主に鈴さんたちの邪魔が入るけどイチ兄の家ならば何も問題は無い! 2人きり、幼馴染、夏の夜、ベッドイン、完璧だね! きっと鈴さんとシャルロットさんの事だからイチ兄の家に遊びにと称して同じことを考えると思う、それをどうやって阻止するか……無理だ。2人は代表候補生なんだから国からなにか言われない限り阻止するのは無理だ。むむむ……! 臨海学校では僕の押し倒し事件のせいで箒姉の逆レは失敗に終わったから如何にかして挽回したかったけど何も思いつかないし無理だねという答えしか浮かんでこない。

 

 話は変わるけど転校するまで住んでいた神社は叔母の雪子さんが管理してくれてるみたい。その人は昔から優しくて何故か分からないけど悪い事をしたらすぐに謝らないといけなくなる雰囲気の持ち主。会うのはかなり久しぶりだけど元気な顔ぐらいは見せないとね……あと確か夏祭りの準備があるだろうから手伝いたいし。

 

 

「そうだ、もし暇なら一緒に遊ばないか? 偶には男同士で遊ぶのも悪くないと思うんだが?」

 

「う~んそうだねぇ。それって僕だけ?」

 

「いや弾……あぁ俺の友達なんだけどそいつも暇だったら3人でゲーセンとかカラオケとかまぁ色々とな。ダメか?」

 

「ううん。多分大丈夫だと思うから日にち決まったら教えてね」

 

 

 イチ兄の顔は世界中にバレてるけど一目見てあっアイツだとかにならないだろう。そもそも男友達といて不審に思う人なんかいないだろうしね。僕も偶には箒姉とかクロエさんとかセシリアさんとかラウラさん以外と遊びに行きたいなぁとか思ってたような思わなかったようなという微妙な感じだから断る理由もないしさ。

 

 話しをしている内に晩御飯の時間になったからイチ兄と食堂に向かうために部屋を出る。途中でいつもの皆と合流して一緒のテーブルで食事、うんいつも通りだ――隣に箒姉が居なければね。今まではイチ兄の隣をキープしていたのにもかかわらず臨海学校終了と同時に僕の隣をキープし始めましたよこの姉は。バカだと思う。

 

 

「……なんか近くない?」

 

「気のせいだ」

 

「こういうのはイチ兄にしなよ」

 

「……で、出来ると思うか?」

 

「無理。というより臨海学校が終わってから変だよ? 何? そんなに衝撃的だったのあの場面?」

 

「と、当然だろう……! お、弟が不埒な事をしようとしている現場を見た姉の気持ちは今の私のように驚きと戸惑いに満ち溢れている! そしてそれを矯正しようと思って何が悪いというのだ!」

 

「だからあれは男の本能に負けたと何回言えばわかるのさ……いい加減ポンコツを治したら?」

 

「実の姉をポンコツというな! だ、大体お、お前は……あのような事はまだ、まだ早いんだからな!」

 

「――逆レしようとしたくせに」

 

「な、なななそ、それは……!?」

 

 

 いい加減この話題は終了にしたいんだけどねぇ。そして何故セシリアさんとラウラさんがチラチラと僕を見るの? あぁそうか、女の子だもん恋愛事には興味津々だもん当たり前か。そういえば此処最近、ラウラさんを避けてたような気がするから謝らないとね……だってラウラさんは悪くないもん。僕が勝手に思い出して恥ずかしいと感じて逃げてただけだしさ。

 

 

「お前は私の嫁なのだから姉の誘惑に乗るな……そ、それと最近避けられているように感じるのだがわ、私が何かしただろうか……?」

 

「違う違う。その事は……ごめんねラウラさん。ほらクロエさんとそっくりだから見たら恥ずかしくなっちゃってね。もう大丈夫だから今まで通り仲良くお願いします」

 

「そ、そうか……ならば良いんだ」

 

「というより何? 臨海学校でアンタなんかしたの? 箒からラウラに似たえぇとクロエだっけ? そいつと密会してたとかは聞いたんだけど? そして箒のポンコツ化が止まらないのもそのせい?」

 

「多分ね。もういい加減にしてほしいけど……あぁそうだ、夏休みに僕は神社に顔出すけど箒姉は?」

 

「わ、私は……少し、考えさせてほしい」

 

「りょーかい」

 

 

 案の定渋ってるねぇ~仕方がないけど。だってあの家はイチ兄との思い出の場であると同時に分かれてしまった場でもある。一家が離れ離れになって雪子さんに管理を任せているからちょっとした罪悪感を感じてるんでしょうこの姉は。でもせっかくの長期休みなんだから顔ぐらい出せばいいのに……そして夏祭りで巫女さんやればいいのに。巫女良いよね! あの白と赤のバランス! 清楚! 僕は巫女服好きだから着てくれないかなぁ?

 

 

「こ、コホン。凪さんはご実家に帰られるのですか?」

 

「そのつもり。あとはイチ兄と遊ぶくらいしか今の所は予定ないしさぁ」

 

「わたくしも大変遺憾ながら当主としてイギリスに帰らねばなりませんの……ですので帰国次第、凪さんのご実家にお邪魔したいと思いますので何時頃戻られるのでしょうか……?」

 

「嫁の家族に挨拶する絶好の機会だ。当然私も行くぞ――これ以上姉に後れを取ってなるものか……!」

 

「家族って言っても叔母さんだけどね。えっと一応予定してるのが――」

 

 

 予定日を伝えると2人ともメモして必ず伺いますわ、必ず向かうと自身の予定に組み込んだ様子。そんなに面白い所でもないんだけどねぇ? でも遊びに来てくれるなら歓迎するよ。あとで雪子さんに伝えておかなきゃ……何箒姉? 肩痛いんだけど? はぁ? 何もしないに決まってんじゃんバカなの? 流石の僕でも2人を押し倒したりはしないしする気もないよ。あの時は雰囲気で理性が飛んで本能に従っただけだし。だから僕は悪くないしクロエさんだって同意してたし男なら仕方がないんだ。ねぇイチ兄! 何故首を傾げたぁ!?

 

 

「これ以上遅れを取ってはいけませんわ……!」

 

「嫁を寝取るべく作戦プランを考えねば……!」

 

「凪、不埒な行いは許さん。絶対に許さんぞ……! お前はまだそういうのは早いんだからな……!」

 

「しないってば」

 

 

 そんなこんなで晩御飯を食べ終えて部屋でゴロゴロとしているとちー姉ちゃんが仕事から帰ってきた。今日もお疲れさまです……そして色々とすいませんでした! もう大丈夫ですはい! 今日までかなり上の空だったから心配させたかもしれないからちー姉ちゃんに謝ると気にするなという男らしいお言葉が返ってきた。なんてカッコいい。ただしシャワー詫び終わった後はおっさんだけど。

 

 

「くぅ、夏の暑さにはやはりこれだな。お前も飲むか?」

 

「まだ未成年です」

 

「臨海学校で淫行をしようとした奴が言うか。どうだった? 男になる一歩手前まで言った感想は?」

 

「いや何故感想を言わなければ……ハイワカリマシタ。といってもあんまりおもしろくないですよ? 多分誰だってあの雰囲気になったら理性保てないでしょうし。ちー姉ちゃんだって男の人とそういう――あるわけないですよね痛い!? いだだだだだだ!?」

 

「ほう。何故ないと断言出来た? もしかしたら一夏に黙って男が出来ているかもしれんぞ?」

 

「だってたばねぇと一緒にいて彼氏できるわけないじゃん!? それにちー姉ちゃんって男より女の子にモテるだろうし!? だから痛い痛い!?」

 

 

 酒を飲みながら片手でアイアンクローとかどんな握力してるんだろう……これを毎回受けてるたばねぇってやっぱりおかしい。流石細胞レベルでバグってるお姉ちゃん……そして何故若干落ち込み気味なんだろうか。もしかして図星突かれた? いやいやだってあんな態度してたら男より女の子が寄ってくるでしょう? 僕達からしたら怖いし。カッコいいけど近づきたくないし。普通の人だったら遠くから見て終わりだよきっと……多分学生時代はモテてたんだろうけどたばねぇと一緒にいただろうから敬遠されてたに違いない。我が姉は疫病神か何かだったんだろう。

 

 

「……これでもな自分の容姿は良いと思うんだ……だがあの馬鹿のせいで周りからは可哀想にという視線だけが……もう一夏が居ればいい……あれは料理ができる……あぁそれでいいじゃないか……」

 

 

 何と言う事だろうか。酔いが回っているからなのか知らないけどイチ兄恋人出来ない可能性大だよ。ちー姉ちゃんみたいなスペックを持ってる姉が認めないとイチ兄の恋人は大変だろうねぇ。というよりこの人もポンコツ化進んでない? 気のせい? いや確かにイチ兄は家事能力高いだろうけどそんなたばねぇみたいなこと言わなくてもいいのに……何故僕に同意を求めるの? 僕は箒姉一択、イチ兄と付き合うのは箒姉だと豪語してるんだから同意しませんよ?

 

 

「そもそもお前はどうなんだ……? 束の近くにいたクロエ等やらが好みか?」

 

「何故イチ兄と同じ事聞くし。目で追っちゃう程度には気になってるけど好きかどうかは分かんないですよ……そもそも体に阿頼耶識なんて埋め込んでる男をクロエさんみたいな女の子が僕を好きになるわけないですし」

 

「だがキスしてただろう」

 

「きっと誕生日プレゼントと任務頑張ったねでご褒美だったんですよ」

 

「……お前はもう少し自分の価値をしれ」

 

「自分の価値なんて無価値だって事は今も昔も悟ってますけど?」

 

「――はぁ」

 

「何故ため息ぃ!?」

 

 

 ちー姉ちゃんが自分の価値を知れって言うから無価値だって答えただけなのになぜため息をつかれないといけないのだろうか。何もおかしい事は言ってないと思うんだけどなぁ~だってたばねぇの弟ってだけで僕自身は特徴らしい特徴無いし。ついでに言うなら凄い所もない。箒姉のようにISの操縦上手くないしたばねぇのように天才でもない普通のバカ。だから無価値で合ってるとおもんだけどねぇ。

 

 

「お前も箒に似て顔は悪くないのだから女なんて選び放題だろう? そうだな……ラウラなんてどうだ? あれはクロエとやらに似ているだろう? 融通は効かんが一途な女だ、それに責任を取ると言ったんだろう?」

 

「似ているのは確かですけど……そもそも似てるだけじゃないですか。クロエさんはクロエさん、ラウラさんはラウラさんですから同じく考えられないですよ。確かにラウラさんには嫁とか言われてますけど全ての原因は夢の中で責任取るって言った事を間違えてるだけなので……いや嫌いじゃないですよ?」

 

「ならばセシリアはどうだ? あれはお嬢様だったはずだ……見た目も悪くない上、付き合えば貴族の仲間入りだぞ?」

 

「お金目的で付き合うのは人としてどうかと……いやセシリアさんは優しいですし綺麗なのは認めますけど僕なんかとは釣り合いませんって」

 

「面白くない奴だな」

 

「悪かったですね!」

 

 

 もうヤダこの酔っ払い……あぁそうだ、あの事をまだ言ってなかったから酔い覚ましに報告しておこう。僕も頭の片隅で気になってたことだし。

 

 

「ちー姉ちゃん」

 

「なんだ?」

 

「臨海学校で僕以外の阿頼耶識使いに会いました」

 

「……やはりか。女か?」

 

「うん。織斑マドカって名乗ってたよ……見た目もちー姉ちゃんにそっくりだったけどまさかイチ兄の隠された妹さん?」

 

「――違うに決まっているだろう。あいつの家族は私だけだ」

 

 

 何だか訳ありっぽいからあんまり聞かないでおこう。他にはないかと聞かれたので生体ビット兵器の事とそれを殺した事を隠さず話した……いや今まで黙ってたというか言うタイミングが無かったから今日まで言えてなかったんだけどね。流石に人殺しは予想外だったのか今まで飲んでたビールの手が止まって僕を見つめてきた……その視線は怒っているというよりも哀れみというかさせてしまったという悔いのような感じだった。特に僕は気にしてないけどねぇ……あんな体で生きるぐらいなら殺された方が良いに決まってるし。

 

 頭に手が触れる感触がある。ちー姉ちゃんが優しく頭を撫でてくれているからだ……酔っ払いからお姉ちゃんにジョブチェンジしたよ……凄いね!

 

 

「僕は何も気にしてないですから心配しなくても良いですよ?」

 

「……馬鹿者。教師として教え子が人殺しの道に進んでしまった事を悔やんでいるだけだ」

 

「遅かれ早かれこうなってましたよ。それに僕はもう止まれないですし止まることもできないのでイチ兄と箒姉に危害を加える人は迷わず殺します」

 

「……その必要はない。私と束がいるんだからな」

 

「知ってます。だからどうしてもって時だけですよ? そこまで殺人鬼になるつもりは多分ないですし」

 

「それが普通だ。全く……何故それをもっと早く言わないんだ……おかげで酔いがさめてしまったぞ」

 

「酔い覚ましには丁度よかったじゃないですか」

 

「別な意味でな……ほらもう寝ろ。明日も上の空だったら説教だ」

 

「えぇ~……」

 

 

 確かに時間を見るとそろそろ寝ないと明日に響きそうだ。歯を磨いてベッドにダイブしておやすみぃ~と言ってから眠りについた。そういえばもうすぐ夏休みだけどちー姉ちゃんは何か予定でもあるんだろうか……? 働きすぎもあれだし時間があるならイチ兄と一緒に買い物ぐらい行ってリフレッシュした方が良いかもね。よし明日辺りにイチ兄に提案してみよう!

 

 今日こそ……今日こそちゃんと寝るという強い意志で意識を失う。今回こそは大丈夫だと思っていたけどクロエさんとキスして行為をしている夢を見てしまい目が覚めた途端に恥ずかしくなった……あぁ、これまだ駄目な奴だ。もうしばらくかかるねきっと。

 

 その日もちーねえちゃんの出席簿が火を噴いた。痛い……!




現在ヒロインレースぶっちぎりの1位はクロエです。
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