「あぁ~極楽だよぉ~もう僕働かないぃ~もうゴロゴロしてるぅ」
クーラーが効いている僕の部屋、またの名を寮長室にてゴロゴロと自堕落に過ごしていた。普通ならば既に最初の授業が始まっている時間だけどなんと今は夏休み! IS学園は一般の高校よりもちょっと遅めに入るから寮の中にいるのは帰省しない生徒だけ……ちなみに僕は実家帰りの日程までまだ日があるため訓練以外はこの部屋で過ごすつもり。その名を引きこもりという。仕方がないよねだって暑いし廊下とか教室じゃ薄着になるのは厳しいから部屋の中で引きこもっても誰も文句は言わないし言わせない。夏休み開始から3日くらい経ったけどもうこの生活で良いよ……朝起きてご飯作って本を読んでネット見てお昼ご飯作ってネット見てISの訓練して晩御飯作ってネット見てシャワー浴びて寝る……素晴らしい一日じゃないか。もう疲れ果てた僕の心を癒してくれるのはこの部屋でゴロゴロすることだよ。
「こんな生活を捨てろだなんて箒姉も無茶なこと言うよねぇ~無理無理、僕がどれだけイチ兄絡みで協力してると思ってるのさ。このぐらいは許してよねぇ~アイスうまうま」
我がポンコツな方の姉はこんな生活は許さん! と言って朝練とかに付き合わせようとするけど丁重にお断りしています。だってこんな癒し空間を捨ててまで汗かきたくないしぃ~朝練って言ってもイチ兄と箒姉とラウラさんと鈴さんとシャルロットさん……あれ殆ど変わんないや。でもセシリアさんいないし! お家の仕事とかあるから夏休み入ってすぐ帰国しちゃったからいつものメンバーが揃わない。よって却下、ゴロゴロします。そもそもお昼にちゃんと訓練してるしご飯もちゃんと作って栄養考えてるんだからその辺にいる引きこもりとは違うんですよ。全くあのポンコツ姉は僕の事よりもイチ兄を落とす事、仲が進展する方法を考えればいいのに全く。
アイスを食べ終えると残った棒には「当たり」と書いてあった。なんという幸運! 今日の僕はついてるね! ふむぅ……だったら何しようかな? そろそろ冷蔵庫の中身が無くなりそうだから買い足しておこうかな? ちー姉ちゃんが飲むお酒で占領されてた冷蔵庫の半分は今や僕のお昼と晩御飯と夜食の材料で埋まっています。もぎ取りました。それが無くなってしまうとあの暑い廊下を歩いて食堂まで行かないといけない……それは無理だね。この快適さを味わってしまったらそんな事出来るわけがない。よって買い出しに行きましょうそうしましょう。お一人様1つまでの食品とかあるから誰か生贄を連れていきたいけど――箒姉一択だね。偶には僕に付き合ってくれても罰は当たらないよ。というわけで着替えて部屋の扉を開けると銀髪の女の子が立っていた……あれラウラさん?
「あれ? ノックすればよかったのに?」
「い、いや! 今着いたところだったのだ……ど、どこか出かけるのか……?」
「うん。冷蔵庫の中身が無くなったから買い出し行こうかなって。ラウラさんは僕に用事?」
「そうだ。私の嫁ならば一緒に買い物をするぞ!」
「……何で?」
「シャルロットから言われたのだ。夫婦で出かける事こそ円満な仲の秘訣だとな! ちょうど私も夏服とやらを見てみたい……どうだろうか?」
なん……だと。あのラウラさんが服に興味を持っている……? これは行くしかないじゃないか!
目の前にいるラウラさんをよく見ると新しい服を着ている事に気がついた。鈴さんが着ているような肩を出している夏らしい服装、下はスカート、太ももが健全な色で眩しいね。折角のラウラさんからのお誘いだしデートしましょうか。そしてこれはクロエさんの耳に入らないようにしなければ……違うよ? タイトル無本文無メールが怖いとかそんな事じゃない! 決して違う! そもそも付き合っていないんだから怖がる必要なし! でも秘密にしなければ……! きっと浮気する人の心情ってこんな感じなんだろうなぁ――僕は浮気してないけど。
「良いよ。それじゃデートしよっか」
「で!? デート……あぁ! そうだデートだ。流石私の嫁だな……う、嬉しいぞ」
「顔赤いけど大丈夫? 体調悪いなら違う日でも――」
「顔が赤いのはお前が私を喜ばせたからだ! 故に体調は万全だ! ではそうだな……デートとは待ち合わせをするのだろう? うむ、ではそうしよう」
「別にいいよ。だったら待ち合わせ場所は駅前の噴水の所で良い? あそこって待ち合わせの場所に最適らしいからさ」
「構わん。ふふ……では先に行っていてくれ。私は後から向かう」
女の子は準備があるから仕方がないよね。先に行っているとラウラさんに伝えて廊下を歩いていると箒姉と鈴さんに出会った……げぇ、ここで邪魔者になりかねない人来ちゃったよ。まっ単純だし適当に嘘言っておこう。実の姉に対する態度じゃないけどせっかくラウラさんから誘われたんだし楽しまないとね。
「むっ、凪か。どこか出かけるのか?」
「うん。引きこもるための買い出し。冷蔵庫の中身がもうお酒しかなくてさぁ」
「……千冬さんのね。というかアンタって千冬さんに夜食作ってんでしょ? 料理できんの?」
「人並み以上にはできるよ。今度晩御飯作って食べてみる?」
「それはいいな、うんうん。久しぶりに凪の手料理が食べたいぞ……なんだ鈴? その目は何を言いたそうにしている?」
「べっつにぃ~? まぁ良いけど。それじゃその時を楽しみにしてるわ」
「絶対に美味しいと言わせてやるんだ! というわけで買い物行ってくるからまたねぇ~」
「凪、ちょうど私も街に買い物があるんだ……此処は姉弟水入らず――お、おい! 何故逃げるんだ! な、なぎぃ!!」
ダッシュで
少し早歩きで待ち合わせ場所に到着。そういえば此処って前にクロエさんとデートした時に待ち合わせした場所だなぁ。懐かしい……前もあそこのベンチに座って待ってるとクロエさんがやってきたんだよね。今回のお相手はラウラさんだけど座って待ってよう。うん……夏だね、日差しがちょっと強いや。阿頼耶識のせいで上に一枚羽織らないとダメだから汗出ちゃうかも……少し飲み物を買っておこう。日射病で倒れたら元も子もないしね。
「――だぁ~れだ」
ベンチで座る僕の視界を誰かが掌で奪った……冷汗が止まらない、夏だというのに周りの空気が冷え切っているようにも感じる……あれ? あれぇ……なんで此処にあの方が、僕の先生が、ここ最近まで夢に出続けたあの人がいるんでしょうか……?
今日ほど相手の名前を言いたくない日は無いだろう。しかし言わなければならない――その人の名前を!
「く、クロエ……さん?」
「当たりです」
視界を奪っていた掌が離れていき僕は後ろを向いた。いましたよ銀の髪の美少女が……前と同じように杖を持って僕に微笑みかけてくれる優しい女の子――であるはずなのにその笑みが怖い。上が白、下が黒というワンピース姿が似合いすぎて可愛い、でも笑みが怖い。そういえば今日は黒髪にしていないんだね、ううん銀髪好きだから気にしないけど。でも笑みが怖い。今の僕の表情はいったいどんな感じなんだろう……浮気がバレた夫さんのようにビビってるのかな? 誰でもいいから鏡を! 鏡を!! いやそんなことよりなんで此処にクロエさんが居るの!? まさかラウラさんが僕を誘った理由はクロエさんとデートさせるため!? 何という姉思いの子なんだろう……そっかぁ、今日はラウラさんじゃなくてクロエさんとデートなんだぁ――んなわけないよヤバいヤバい!! 臨海学校での一件があるから物凄く気まずいし……恥ずかしい! そしてコワイィ!!
「あ、あれ? なんで此処にいるの……?」
「女の勘です」
「へ?」
「凪様がお出掛けすると恋する女の子の直感が教えてくれましたので来ちゃいました。ご迷惑だったでしょうか……?」
女の子の直感すげぇ、何故ピンポイントで分かったし。まさかたばねぇか!? またたばねぇか!! あんのキチガイ姉!! なんていう爆弾を放り投げてきたんだよぉぉぉ!!! いや待て! 待つんだ篠ノ之凪! ラウラさんがまだ現れないとするともしかしたら本当にラウラさんがクロエさんのために一芝居を打ったかもしれない。それならそれでいい! 何も問題は無いのだから!!
そう、そうだったらいいなぁと思ったんだけど現実は非常だった。
「――何をしている」
うわぁ、寒い。凄く寒いね今日っていったいどうしたんだろうなぁ~寒すぎてもう帰りたくなったよ。もうクーラー効き過ぎじゃないこの公園? えっ違う? 嫌だなぁ~だったらこの寒さは何なんだよ全く……待て待て待て!? 待って!! 振り向きたくないんだけど!? でもここで無視したら僕の命は此処で潰えそう……僕の命なんて心底どうでもいいけどこんなところで失いたくない! よって振り向く! 振り向くぞぉ!!
再びギギギと擬音を出しながら後ろを向くと先ほどの恰好をしたラウラさんが人を殺しそうな視線で僕とクロエさんを見ていました。ここで現在の状況を整理しましょう。まず僕はラウラさんとデートをするためにここに来ました、待っているとクロエさんが女の子パワーで現れました、遅れてやってきたラウラさんがそれを目撃しました。はい詰みました。これどう考えても周りからは美人姉妹2人に手を出して浮気現場を目撃されたド外道にしか見えないよね……あはははは、死にたい。
「え、いや、何と言いますか――」
「凪様。今日は私とデートをしてくれるんですよね? 楽しみにしていたんですから早く行きましょう」
「ほう……お前は私とで、デートの約束をしておいて……他の女……しかも姉ともデートするつもりだったのか……!」
「待って話し合おう! 話し合い大切! 違うから!? なんか知らないけど偶然クロエさんが来ちゃったんだって!?」
「偶然ではありませんよ? 凪様が昨日ちゃんと私に言ってくれました――そうですよね?」
クロエさんはするりと僕の片腕に抱き着きながら笑みを浮かべてくる。なんという可愛さなんだろうか。きっとクロエさんは天使だね……でも笑みが怖い。両腕の感覚なんてもはや無くなってるから分からないけどきっと抓ってるよね? はいと言ってくださいと言わせるために抓ってるよね!? いぃぃやぁぁぁ!?
「あ、姉よ!! 嫁に触れるな!? わ、渡さないぞ!! これは私の嫁なんだ!!」
「まだ婚約してませんよね? では私の旦那さんと言っても問題は無いはずです」
「ダメだ! 姉が生きていたことは素直にうれしい! でも嫁だけは渡さないぞ!!」
ラウラさんが負けじと空いている腕に抱き着いてきました。うん、銀髪姉妹、どちらも可愛い女の子にサンドイッチにされる気分というのはこんな感じなのか……凄く帰りたいです今すぐ逃げたいです選択肢『逃げる』を選びたいです。しかし回り込まれてます……それと気のせいかな……? 2人の背後で兎と軍人が戦闘を繰り広げてるんだけど? あっ軍人が瞬殺された。強いなぁこの兎、かわいい見た目なのにオラオラしてるよ。そして勝ち誇ってるよこの兎……しかし軍人も負けてない! 倒れても立ち上がってる! 勝て! 勝つんだ軍人!! あっまた負けた。
普通の男なら喜ぶべきこの状況、しかし僕は今すぐ帰りたいと思うしかない。だって両隣で視線……片方は目を閉じてるけど威嚇しっぱなしなんだもん。そうかこれが修羅場という物か……何で恋人無しの童貞の僕がこんな修羅場もどきを経験しないといけないんだろうねぇ。
「ラウラ。私もあなたに会えて嬉しいです。しかしそれはそれ、これはこれです……凪様は私とデートするのですから今すぐ離れてもらえますか?」
「出来ない! これは夫婦として仲睦まじく過ごすために必要なんです! いくら姉と言えども譲るつもりはない!」
「うふふ。私も譲るつもりはないですよ? ラウラ、貴方になれなかった私でも凪様だけは渡せません。妹ならば姉の恋路は邪魔しないのが礼儀ですよ?」
「あ、姉ならば私の恋路を応援するのが礼儀! よ、嫁も何か言ってくれ!? こ、このままでは私たちのデートが無くなってしまう!?」
「凪様、ラウラにも言ってください。それに……もし、デートをしてくれるならこの間の続きも……できますよ……?」
「続き!? 続きとは何だ!! まさか密会してた時に何かしていたわけではないだろうな!?」
「甘い一時を送っただけです。羨ましいですか?」
帰りたい。なんで僕此処にいるんだろう……そうだ引きこもりになろう。そうすれば世界は平和で僕も平和だよ。うんうんそれがいい……それじゃ僕はこの辺で失礼するから今日は2人仲良く――無理でした。腕を離してくれません。それどころかどっちの味方なんだという視線を感じます。クロエさんは目を閉じているけど笑みで訴えかけています。ラウラさんはテンパっている表情で訴えかけてきています。可愛い……なんだかラウラさんが子犬みたいだ……ハイスイマセンナニモオモッテマセン!!
2人からの訴えの視線、それに答えるべく僕は口を開く。これが僕の答えだ!!
「――そ、そろそろ街、行かない?」
最後の最後でヘタレました。でも僕は悪くない。
◇
「――なぎぃ」
私、篠ノ之箒の視線の先には女2人に挟まれている愛する弟の姿がある。廊下ですれ違った時に一緒に買い物に行こうと誘ってみれば逃げるという弟として失格の反応をされたわけだがそこは姉の直感で全てを察した――何かを隠していると! そうと分かれば凪を追跡する以外に道は無い。ひっそりと気づかれない様に後をつけた結果が……目の前の光景だ。
「うわ修羅場って初めて見た。あんな感じになるのね」
「あの2人ぃ……! 凪の腕に抱き着きおってぇ……!! 早く離れろぉぉ……!!!」
「もうやだこのポンコツ。というより弟のデートを監視するってバカじゃないの?」
「何を言う!! 凪の将来のため未来のため! 悪い女に引っかからないかちゃんと見守るのが姉というもなんだ! 凪はまだ女に慣れていないからな! 騙されるかもしれないし傷つくかもしれない! 大事な弟だからこそ私がちゃんと見守って手助けしなければいけないんだ! この姉心が分かるだろう! 鈴!!」
「いや全然分かんないし」
ふっやはりこれは姉である者しか分からない事だったか。そもそもそんな貧相な胸では分かるはずがない。この弟を思う姉として正しい姿は分かる人には分かるんだ! しかしクロエとやらは危険だ……あいつは凪を狙っている! 捕食者のように食べようとしている! 姉さんの傍にいるから伝染したか!! ラウラはまだ警戒しなくても良いが一番の危険人物は間違いなくクロエだ! あれと凪を2人きりにはさせん!! いざという時は紅椿を展開してでも救出しなければ!!
「あのさ箒? 殴っていい? アンタ今絶対喧嘩売ること思ったでしょ?」
「そんなわけがないだろう。なっ!? 動き出しただと……! 行くぞ鈴!! 急がねば見失ってしまう!!」
「……はぁ。絶対アイツに高いの奢らせてやるんだから」
姉として弟の貞操の危機を護るべく3人を尾行する。これは間違った事ではない、弟を思う姉として、大事な家族として必要な事なんだ。だから私は間違ってはいない!
◇
「……ぐぅぅ!!」
「……くすっ」
両隣に銀髪美人姉妹という豪華さで僕達は街を歩いている。すれ違う人もこの異様な光景に驚いているのか嫉妬しているのか分からないけど僕達を見てくる……仕方がないよね、だって可愛い姉妹だよ? それに挟まれてる僕を見て爆発しろと言ってもなにも文句は言えない。僕だって同じこと言うし。でもこれだけは言わせてほしいんだけど――助けてください!!
周りの空気が絶対零度で寒いんです辛いんです帰りたいんです。きっと今の僕の表情は死んだ魚のような目をしているに違いない。そもそもこの状況でうほぉ! とか喜べるわけがない。もしそんな事が出来る人がいるならきっと勇者だよ。世界救えるよきっと。
「……あの、さぁ。もう少し仲良く、しない? 姉妹なんでしょ?」
「凪様。ちゃんと仲良くしていますよ?」
「よ、嫁! 騙されるな! 姉は私からお前を奪おうとしているんだ! 言い返してくれ! 追い払ってくれ!!」
「ごめんラウラさん……無理」
「何故だ!?」
「愛の差です」
「そ、そんなわけあるか!! 嫁の心は私だけのものなんだぞ!!」
「残念ですが凪様の心はラウラではなく私に向いているはずです……その、あの写真……ちゃんと使ってくれましたかでしょうか……? あのようなものを咥えての自撮りは、恥ずかしかったんですよ……?」
ここではい使いましたとハッキリ言える人は世界にどれだけいるのだろう。もし言える人が居たらきっと大馬鹿野郎だと思う……そしてラウラさん? そのいったい何の写真だと言いたそうな視線を止めてください死んでしまいます。普通でもない安心家族計画のあれをクロエさんが咥えている写真でおかしい事しかないから安心してほしい。そして腕の感覚が無いはずなのに痛いような気がする……感覚ないはずなのになぜだろう? きっと女の子の恐怖のせいだね! さっすが僕の身体だ! 正直者だね!!
「だ、だったら私もお前の前で同じことをする! それならば勝てる!!」
「変態ですか貴方は」
「な、なんだと!?」
クロエさん? それってお前が言うなって奴じゃ……ハイ! ダマリマス!!
「と、とりあえず落ち着こう。うん、せっかくの休みなんだし楽しもうか! というわけで帰りましょう」
「ダメです」
「ダメに決まっているだろう」
「ですよねぇ~はぁ……うん、知ってた。そういえばラウラさんは服を見たかったんだっけ?」
「う、うむ。前にデートした時に買ったとはいえ私は服はあまり持っていない。それをシャルロットに怒られてな……だから見に行きたいから誘ったのだ!」
「なら前と同じ場所にしよっか。あそこって結構大きめの場所だしさ……クロエさんもラウラさんと一緒に選んでみたら? 姉妹仲よく買い物とか良いと思うよ?」
「そうですね。これも何かの縁ですからお言葉に甘えちゃいます」
「嫁! 騙されるな!! 姉は隙を伺っているぞ!!」
知ってますよそんな事……多分抱き着いている力が強まってるし。殆ど二の腕でしか感触が無いけど分かるんだ……そしてクロエさんの体が柔らかい。僕はこれを押し倒したんだよねぇ……ヤバい意識したら恥ずかし、くぅ!? 今クロエさんが不敵な笑みを浮かべてお互いの指と指を絡めて恋人繋ぎをしてきたよ……なんというもどかしさ! 触感がないだけでこれほど辛いものだとは思わなかった……今だけで良いから戻ってこい僕の腕の感触!! 絶対に無理だろうけども。
それを見たラウラさんも負けじと同じように恋人繋ぎ。うん……今僕を見て爆発しろと言った男は何人いるのだろうか? もし多いなら教えてほしい……脱出する方法はありますか? いえ有りませんという答えは聞きたくないのでそれ以外でお願いします。
「凪様……せっかくですから前のデートのようにし、下着を――」
「却下します」
「……むぅ」
「可愛い顔してもダメです、ノー、ダメ。今の僕の心境的にあの場所に行っちゃうと死んじゃうからお願いします……!」
「……凪様の命が優先ですから仕方ないですね。ですので服で我慢します」
「くぅ……私の服もちゃんと選べ! 嫁ならば当然な事だ!」
「僕ってセンスあんまりないんだけど……それで良いなら別にいいけど?」
「お前以外の男に選んでもらった服など着たくもない! だからちゃんと選んでくれ……頼む」
今日のラウラさん何だか可愛いね。なんだか飼い主に構ってほしい子犬っぽい……対するクロエさんは犬というより猫? 何をすれば餌を貰えるか分かってる感じの頭のいい猫さんだと思う。というより僕を挟んで言いたいことを言えるんだから仲は良いよね? 僕と箒姉みたいに壁とか存在してないしさ。別な部分は壁だけど。ナンデモナイデスナニモオモッテナイデスダカラオシツケルノハヤメテクダサイナニモカンジナインデス。
「……おかしいです。貧乳好きに目覚める様に調教をしているのに効いていない……?」
「やはりセシリアのように……はっ!? まさか義姉上のせいか!? あのボディで嫁を誘惑しているとでも……!」
どうして思った事が分かるんだろう? そして一応否定しておくと僕は胸の大きさはどっちでも良いんだよ。大きかろうが小さかろうが好きな相手ならどっちでも良いんだ。そして箒姉は確かに胸デカいけど誘惑してこないからね? そこまでしてくるのはあのキチガイ姉だけだから。
そんなわけで両腕に美人銀髪姉妹をくっつけた状態で服屋に到着。そして僕は前の時のように此処にいるから選んできたら作戦を決行、無事に失敗に終わりました。何故当たり前のように連れていかれてるんだろう……うーん、分からない、分からないけど恥ずかしい。皆がこっち見てるよぉぉ……こそこそ何か言ってるよぉぉぉ! きっと「あの姉妹と二股かけてたんだわ」とか「いやだわ、だから男って」とか言われてるんだろうなぁ……帰りたいです切実に。あの素晴らしいお部屋へもう一度帰らせてください! 残念ながらその願いは却下されました……よし諦めよう。
「ふぅ……もう諦めよう。それでラウラさんはどんな服を着たいの?」
「そ、そうだな……できれば動きやすいものが良い。動きにくいと戦場では命を落とすからな」
「そっか。ならショートパンツにシャツとか? これなら軽装だし動きやすいと思うけど?」
「ふむ。確かに動きやすそうではあるな」
ラウラさんのイメージ的に可愛い系も良いけどボーイッシュ系も似合うと思う。だから逆に女物よりも男物の方が良いのかなぁ? うーんクロエさんはどう思う? えっ? 知りません? そ、そっかぁ……何で頬を膨らませて怒ってますアピールをしているんですか……ちゃ、ちゃんと選びますよ! 当たり前じゃないですか!!
「クロエさんってやっぱりワンピースが似合うよね」
「そうでしょうか?」
「うん。だって落ち着いたイメージだし今日の服も似合ってるもん」
「ありがとうございます。ふふっ褒められちゃいました」
「くぅぅ……! し、試着だ! それを寄越せ!!」
ラウラさん用に選んでいた服を僕から奪い試着室へ。そこまで気に行ったのかな……うん? クロエさんも試着するの? だったら待ってるね……ハイ始まりました試着室前で我慢大会! 実況は僕こと篠ノ之凪、解説は僕こと篠ノ之凪でお送りいたします。さて皆さんお分かりの通り僕達は凄く目立ってます、特にクロエさんとラウラさんという美人姉妹、しかも銀髪で可愛い女の子に挟まれて入店してきたんだから当たり前だね。視線でどっちを選ぶんだとか何この子可愛い顔して二股とか色んな事を聞いてくるけどスルー! スルーするよ!! もうこうでもしないと生きていけないって悟ったからね!!
待つ事数分、最初に現れたのはラウラさんだ。体型は小柄だけど足が綺麗ですね。健康的な肌で良いと思います……やめようなんか変態っぽいし。似合うかと聞かれて似合わないという選択肢は存在しないから迷わず似合う、可愛いよと言うと顔を真っ赤にして照れたみたい。可愛い。
そして次に現れたのはクロエさん。やっぱりワンピースが良く似合う……可愛い。あれ僕って可愛いしか言ってないような……いっか。事実だし仕方がないよね! それ以外に言えないんだもん。結局この後いくつか試着してお互い気に入ったものを購入。代金? 僕が払いましたが何か? だってデート記念でプレゼントしたいじゃん。男として当然で普通だよ。
「嫁に選んでもらった……これほど嬉しいものとは思わなかった」
「気に入ってくれて何よりだよ。う~ん、時間的にそろそろどこかでご飯食べようか。2人は何か食べたいものはある?」
「私は凪様のお好きな場所で構いませんよ」
「私もだ。食事ができる所ならばどこでも良い」
「それ一番困るんだけど……それじゃあそこにしよっか?」
指をさせないから視線で2人に場所を教えて聞いてみるとはい、構わんという返事が返ってきた。何と言うか僕の両腕は2人に人質にされてるからさっき買った服の袋を持てない。クロエさんは量子変換でどこかに送ってたけどラウラさんは開いている腕にぶら下げてる状態……何だか申し訳ない気がする。こういうのって男が持つものでしょ? 仕方がないですまないよこれは……でも僕が持つと2人が歩きにくいだろうしこうするしかないのが現実……はぁ。
オープンテラスのカフェに入って昼食を取る。やはりというか当たり前というか美人姉妹に挟まれて入ってきた僕はかなり目立ってました……もう慣れたし何も言う事は無い。一応クロエさんは目が見えないという設定なので細心の注意で席に向かい執事のように椅子を引いて座らせました……この行動にラウラさん酷くご立腹、横腹ぎゅぅと抓ってきました。痛いです。
「はいあーんして」
手に持ったサンドイッチをクロエさんの口元まで運ぶ。決しておかしなことはしていない……目が見えない設定だから食べさせてくださいという笑みの圧力に屈したわけじゃない。純粋に僕がしたかったから――噓です笑みの圧力に屈しました。注文したメニューは僕が今日のおすすめと書かれたナポリタンパスタ、ラウラさんも僕と同じものでクロエさんがサンドイッチとコーヒー。隣に座っているクロエさんは小動物のようにぱくりと一口、可愛い。でもラウラさんはご立腹……足蹴らないでぇ!
「……私の目の前で姉の世話か……いい度胸だな……!」
「待って待って!? クロエさんは目が見えない……という設定なんだからこれぐらい許して……ねっ!」
「そうですよラウラ。この程度で怒るとはまだまだですね」
「く、くぅ……!」
「もう……はい、あーんして」
「っ!? あ、あーん……う、うむ美味いな……」
「凪様? コーヒーが飲みたいです。ぜひ口移しで――」
「それだけは勘弁してください」
そんなこんなでお昼ご飯を食べ終えた僕達は何をするでもなく街中を歩いた。ペットショップ行ったりとか結構見て歩いたけど悪くはないね……だって怖いとはいえ両隣に可愛い姉妹がくっ付いているんだもん。男なら誰だって喜ぶよきっと。
そしてクロエさんのタイムリミットが来てしまったようで人通りのない場所までやってくると前と同じようににんじん型ロケットが降ってきた――はいたばねぇです。今日も一日お疲れ様です、何をしてたかなんて聞きたくないけどとりあえずお疲れ様です。
「名残惜しいですが今日はここまでです……凪様、ご迷惑をおかけしてすいませんでした」
「ううん。僕も楽しかったし気にしてないよ。たばねぇが面倒事増やして大変だろうけど頑張ってね……何かあったらまたメールで教えてほしいな」
「はい。ラウラ、この後は凪様を譲りますが差し上げるわけではありませんので……そのつもりで」
「姉よ……私の嫁は夫婦なのだ。お邪魔虫は早く帰ってもらおう……!! 此処から先は夫婦の時間だ!」
「――そうですか」
素晴らしい笑みを浮かべたクロエさんは僕の両頬に手を置いて自分の顔に近づけた――はいキスですまたキスです。じゅるとかちゅぱとか卑猥な音を立てながらのキスです……うん、もう慣れたらしいから戸惑いはないね。そして気持ちい……あれ? もしかして僕ってキス好き……? いやいやそんなわけない。そしてなんでキスされているんだろう……そっかぁ、対抗してるのかぁ。何にとかは分かんないけど。
固まるラウラさんをちらりとクロエさんは見て勝ち誇った表情で離れて行った。にんじん型ロケットに乗り込むとそのままどこかへ飛んで行ってしまうけどどうやらたばねねぇは乗っていなかったらしい。別にいいけどね? 五月蠅いのが来なくてありがたいもん。さて――この後どうしようか?
「……嫁」
「ナンデショウ?」
「浮気するダメな嫁には仕置きが必要だと思う。安心しろ……私は尋問と拷問と調教は得意分野だ」
「そっかぁ……イメージ通りだね」
機嫌が悪くなったラウラさんを如何にか宥めて残った時間を有意義に過ごした。一緒にゲーセン行ったり映画見たり結構楽しかったね……その間も腕から離れてくれなかったけど。次もデートしようと半場強制的に約束されたけど断る理由も欲しいけど了承するしかない。だって断ったらお仕置きされかねないし。
もうクタクタの状態でIS学園に戻って部屋に戻ると扉の前で箒姉が普段見たこともない笑顔で待っていた――あぁ、僕の今日の運勢って最悪なんだなぁとやっと察したよ。僕、これが終わったら引きこもるんだ……そう一大決心をして箒姉から弟として失格だと説教されました。もう休みたいです切実に。
でも楽しかったからそれはそれでよかったけどね。
楽しい夏休みの始まりです。
天才の兎は謎の(寡黙な)少女にフライパンで脅され泣きながら手助けしていた模様。
そして凪は今日一日ご苦労様でしたと鈴にご飯を奢ったようです。