篠ノ之家の弟は阿頼耶識使い   作:木の人

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白い騎士から見る殺人機

「弾の奴遅いな……今日は用事無いって言ってたんだけどなぁ。凪すまん! もう少し待ってくれ!」

 

「別にいいよ? 僕って待つ事はあんまり苦に思わないしそれに弾さんだっけ? にもきっと家出る前に用事できて遅くなってるだけだよ」

 

 

 俺と凪はIS学園から出て街に来ていた。理由は前に男だけで遊ぼうという約束をして丁度俺たちの用事が無い日が重なったからこうして男3人で街に出かけるというわけだ。それになんでか知らないけど何日か前に凪が箒に説教されて疲れてるみたいだったし息抜きも必要だろと勝手に判断したわけだが……断られなくてよかったよ。それにしても箒と凪が喧嘩とか珍しい事もあるもんだな? 今まで仲良い所しか見てこなかった分、逆に新鮮かもしれない。

 

 待ち合わせの時間をちょっと過ぎているに加えて夏の暑さを象徴する日差しを浴びていると汗が出てくる。夏服だから涼しいとはいえ汗を出しながら遊ぶのはなんか嫌だしな。誘った手前、こうして待たされる事に罪悪感が出てきたので凪に謝ったけど本人はそれほど気にしてないらしい……それどころか弾の心配すらし始めたことに驚きだ。こういう所が凪らしいんだよな、相手の事情を考えるとかさ――これが鈴なら遅いから飯奢らせるを強行して弾の財布に大打撃を与えているだろう。そう考えると凪は天使なんだろう……男が天使ってのもおかしいけどな。でも聖書とかに出てくる天使って性別ないらしいし案外合ってるかもしれん。

 

 

「流石に天使とか言い過ぎだと思うんだけど?」

 

 

 なんで分かったんだ? 箒や鈴、シャルロットからも思った事を即指摘されたりするわけだがそんなに分かりやすいのか? うーむ流石俺の幼馴染、俺の考えはお見通しときてる。まぁ天使ってのは言い過ぎかもしれないが凪って子供っぽい所があるというか変な所で女らしいというか……ISに乗ってる時は除くけど。

 

 今も近くの自販機で買ったらしい飲み物を口に含んでいるけど俺は普通に男に見える。でも首を傾げたり笑ったりしてるとちょっとだけ女っぽい。例えるなら男装してた時のシャルだな、あんな感じなんだよ。箒と双子、確か二卵性だったか? そのせいなのか女らしい仕草が偶に出てくるから困る。臨海学校でいきなり手を繋がれた時もちょっとだけ焦った、いや男に焦るってどうなんだとか思うけど……凪本人は無意識らしいが箒の弟なだけあって結構似てる所もあるし余計にそう思ってしまう。

 

 

「うん? 僕の顔に何かついてる?」

 

「いや、やっぱり箒の弟なんだなぁって思ってさ。目元とか似てるし顔もどことなく箒っぽいし」

 

「僕男の娘じゃないんだけどぉ……?」

 

「いや男だろ?」

 

「そうじゃなくて……あーもういい。そりゃ箒姉とは二卵性の双子だもん。一般的な姉弟並みには似た所ぐらいあるって。イチ兄だってちー姉ちゃんと似た所あるじゃん? そんなもんだよ」

 

「そうかぁ? 他の奴から千冬姉に似てるとか言われたことないんだがなぁ~まぁそんなもんか」

 

「そんなもんだよ。それにたばねぇと箒姉という美人姉妹の遺伝子持ちなんだからちょっと女の子寄りになってもしょーがない。ホントは可愛いとか言われたくないけど……カッコいいとか言われたいけど……!」

 

 

 若干ジト目になりながら凪は缶を飲み干した。確かにクラスの子達から可愛いを連呼されたら嫌だよな……聞いた話だと子供っぽさと偶に仕草で出す女らしさが可愛いらしい。そこは箒も同意してるしラウラもセシリアも同意してる……むしろ否定してる人っているのか? 俺は見たことは無い。というより凪? カッコいいとか言われたいならそんな風に子供っぽい反応はやめた方が良いぞ? 余計に言われると俺は思うんだが……何でため息ついた!

 

 

「イチ兄に指摘されるとかもう帰って引きこもりたい」

 

「酷くないかそれ……」

 

「だって普段鈍感なイチ兄に指摘されるとか相手に振られるの分かってても告白して玉砕するようなもんだもん」

 

 

 その例えはよく分からんが凪的には指摘されたくなかった部分なんだろう。そもそも振られると分かってるなら告白するなよってツッコミは無しでいいか? 無しだなよし分かった。

 

 

「というより俺は鈍感じゃないぞ? って何だよその呆れ顔と長い溜息は?」

 

「いやだってイチ兄鈍感じゃん。この前も箒姉からの誘いを皆と一緒にって僕達を呼んだし」

 

 

 それのどこが鈍感なんだ? あの時は確か箒が「あ、ISの事で分からないことがある! だから一緒に勉強しよう!」って言ってきたから勉強するなら皆とやった方が効率良いし呼んだことが間違ってるとは思えない。鈴もシャルもよく呼んでくれたとか言ってきたしきっと代表候補生でも分からない場所があったんだろう。それを勉強できる場を提供した俺と箒に感謝してほしいぐらいだ。

 

 その事を凪に言ってみると「知ってた。というよりあのポンコツ姉に2人きりという単語を出せるわけない」と変なことを言い出した……実の姉をポンコツ呼ばわりできる凪って案外大物だよな。もし俺が千冬姉に同じこと言ったら即アイアンクローだろう。きっと痛い。そして死ぬ。あれを受けて生きてる束さんってやっぱりどこかおかしいって……

 

 

「たばねぇは遺伝子レベルでバグってるから」

 

「だから心読むなよ……確かのその通りかもしれないけどさぁ」

 

「だから天災なんだよ。それよりもイチ兄何か飲む? ジュースぐらいなら奢るよ?」

 

「別に良いって。それぐらいなら自分で出すからさ」

 

「でも昨日の訓練でやり過ぎた……? ぽいからそのお詫びなんだけどダメ?」

 

「あぁ~……あれは酷かった、そして痛かったぞ」

 

 

 昨日の訓練で何が起きたかというと事の始まりは俺と凪が模擬戦をした事だ。お互いが二次移行をしたIS同士という事で何回か戦ってたんだが今までは凪の調子が悪い……というかクロエって子絡みで寝不足だったせいか動きが非常に悪く俺が勝っていた。だけど昨日は「リベンジさせてもらうよイチ兄」と今までよりも動きが良くて結果的に言うと俺は負けた……いや言い訳をさせてほしい。近づいて斬ろうとすれば肩の機関銃で視界を潰され、剣を持っている腕を掴んで空いている腕に付いているバンカーを腹に打ち込みながら放り投げられたり凪が近づいてきたかと思えばいきなり目の前で消えて背中斬られたりしたら負けるだろう……箒達から聞いたんだが俺が目の前で消えたと思った事はしゃがんで後ろに滑り込んでたらしい。あの速度でそんな事が出来る凪はやはりおかしいと思う。

 

 だが問題はそこじゃない……その後だ。背中を斬られて追撃から逃れようと距離を取った……そこまでは良い、距離を保って白式が二次移行した事で生まれた新装備「雪羅」から荷電粒子砲を撃とうとしたら――凪が飛び蹴りしてきてた。しかも足をドリルのようにしながら。いきなりそんなものが見えたらはぁ? となって足が止まるだろう? 俺命名ジャンピングドリルキックの威力は決して忘れない。そしてあの恐怖も忘れない。

 

 

「だって鈴さんが飛び蹴りしてたのを見て思いついたんだもん」

 

「だもんじゃなくてだな……あれやられる方を考えてくれよ……? 目の前からドリルが迫ってくるんだぞ? 怖いぞ」

 

「でも特撮でも似たような事してるじゃん。それと一緒だよ」

 

「特撮とISを一緒にするのもどうかと思うんだが……」

 

 

 どうも凪は束さんに似た思考を持ってるらしい。普通ならドリルが飛んで向かってくる状況は焦るだろう……IS戦闘中の凪はなんか人が変わったように荒っぽいというか乱暴というか相手を仕留める事を第一に考えてる気がする。攻撃箇所も装甲が無い生身部分や首辺りを狙うし武装が鉈にハンマーにドリルとかだから怖い。そういえば鈴が言ってたな……戦闘中の凪は絶対IS殺す野郎だわとかなんとか。うーむ、単一仕様能力も独り言話しまくるし使い終わった後は充血に鼻血……いつかきっと倒れるんじゃないか? 幼馴染として目の前で倒られたら困るぞ。

 

 俺の特撮とISを一緒にしない方がという発言に凪は深い溜息をついて特撮の素晴らしさを語りだした。IS戦闘以外なら子供っぽいんだけどなぁ。

 

 

「イチ兄聞いてる?」

 

「あぁ聞いてる聞いてる。おっ来たみたいだな……あれ蘭?」

 

 

 俺たちの所に向かって歩いてくる人物が2人。片方は俺の友達の五反田弾、もう片方は妹の五反田蘭だった……あれ? なんで蘭もいるんだ? 確か電話じゃ「俺1人で行くから待ってろ」的な事を言ってた気がするんだが……どうなってんだ?

 

 

「悪い一夏……途中でコイツにお前と遊ぶことバレてなぁ……」

 

「お、お久しぶりです一夏さん!! ち、丁度予定が空いていた所にお兄から誘われてしまいまして――あれ?」

 

「今日は一夏だけじゃねぇってあれほど……ええと悪い! お前が一夏の幼馴染……だろ? ほんっとすまん!!」

 

「別に気にしてないよ? イチ兄と一緒だったしそこまで待ったわけじゃないからね。それに急に用事が入る事ぐらいあると思うし謝らなくても良いよ?」

 

「――おい一夏、お前の幼馴染は心広すぎだろ」

 

「凪だしな」

 

「それどういう意味……? まっいいか。初めまして、イチ兄の幼馴染の篠ノ之凪です。今日はよろしくお願いします」

 

 

 凪は弾と蘭の2人に手を差し出して握手の構えをした。そういえばこれって昔から凪の癖だよな? 俺も握手したことあるし。2人も最初は戸惑ってたけど意味を理解したのか握手して挨拶を始めた。

 

 

「俺は五反田弾だ。一夏の中学からの悪友みたいなもんだな。こっちは妹の――」

 

「ご、五反田蘭です! 遅れてすいませんでした……あ、あと篠ノ之って……」

 

「うん。多分前にイチ兄と一緒にご飯食べに行ったであろう胸デカくてポニテの武士っぽいポン、女の子の弟です」

 

「……そんな紹介の仕方で良いのか?」

 

「だって胸デカいのは事実じゃん。それにポンコツって言わなかっただけまだマシだと思うよ」

 

「あぁ、あれはデカかった――いだだだだ!?」

 

「お、オホン! そ、それより今日ってどこに行くんですか? お兄からそのあたりは何も聞かされていないんですけど?」

 

「いやゲーセン行ったりカラオケ行ったりまぁ適当にって感じかな。弾、お前もそれでいいよな?」

 

「俺は遊べればどこでも良いぜ。なんつうか邪魔者1人増えちまったがそろそろ行くか」

 

 

 というわけで本来の予定とは違い蘭も交えて4人で遊びに行くことになった。凪も増えた事自体はあまり気にしていなかったようだけどジトーと擬音交じりな視線で蘭を見てる……何で見てるんだろうな? あっ何だか知らないが納得した様子で視線逸らした。幼馴染だけど凪の行動の意味がよく分からないぜ。

 

 

「キミのお姉さんはIS学園に通ってるんだよな? うちの妹も来年通うとか言い出してるんだが授業が難しいとか聞いてたりする?」

 

「凪で良いよ。う~んとりあえず専門用語が大量に出てくるらしいからそれが分からないと厳しいみたい。僕は普通の高校に通ってるからその辺りは理解できないけどねぇ。でもきっと蘭さんが入学できたらイチ兄が教えてくれるだろうし安心しても良いと思うよ」

 

「は、はい! 一夏さんにも入学したらご指導をお願いしています! そ、それと私の方が年下なのでさん付けをしなくても……」

 

「僕ってあんまり呼び捨てで人を呼べないんだよね。イチ兄とちー姉ちゃんとキチガイ姉とポンコツ姉を除いてはいつもさん付けだから気にしないでほしいな。それに1つ年下ってあんまり変わんないから先輩面するのも変だしね」

 

「鈴なら迷わず敬えって言うけどな。それと流れる様に2人をそんな風に言ったけど怒られないか?」

 

「鈴さんだからいいんじゃない? 呼び方に関してだけどこれでいーの。だって事実だし」

 

「なんつうか可愛い見た目で毒舌だな……というより鈴のこと知ってんのか」

 

「箒姉とイチ兄経由で挨拶済みです。イチ兄絡みで苦労してると察したんで頑張ってと言いました」

 

「なんて良い奴なんだお前……!」

 

 

 ちなみに前半は嘘だけどな。多分凪は代表候補生並みにISの事を理解している……でも言えないから普通の高校に通っていると嘘をつくしかない。なんせ俺と違って凪は政府関係者とIS学園関係者以外には公表されてないからな。最初はなんでなんだとか思ったけど束さんの弟だからという理由で全て察した。ISを作った人の弟が動かしたなんて知られたら何が起きるかなんて分かんないもんな。それはそうと凪さんや……打ち解けるの早すぎませんか? 弾と蘭に初めて会った時の箒なんて自分から話さない状態が続いたっていうのに……おい箒、弟に社交性で負けてるからもうちょっと頑張れ。

 

 というわけで俺達4人はゲーセンまでやってきた。何をやろうかと考えてたら弾がこの前負けたからリベンジだとエアホッケーの前に立った。しかも2対2で勝負とか言いやがる……良いだろう! どこまで強くなったか確かめてやろうじゃないか! チーム分けは俺と蘭、弾と凪だ……いや此処は普通幼馴染チームと五反田兄妹チームじゃないのか? いや凪が良いなら良いんだけどさ。

 

 

「凪さんや、良いのかいこんなチーム分けで?」

 

「うん。だってイチ兄と組んだ方が蘭さん嬉しそうだし――あと箒姉がいない場で人の恋路を邪魔するの面倒」

 

「良い奴だなぁお前って……あとお姉さん大事にしろよ」

 

 

 なんか知らないが弾と友情が出来つつあるらしい。だが勝負の世界は非情なんだぜ……蘭、勝つぞ! 隣に立った蘭を見ると顔がちょっと赤い気がする。もしかして風邪か? だったらあんまり激しく動いたら悪化するんじゃ……凪から指摘が飛んできた。どうやら俺が思った事とは違うらしい……なるほどさっきまで暑い日差しの中を歩いてたもんな。そのせいか。

 

 そして凪……弾とチームを組んだことを後悔すると良い! そいつは自殺点を生み出す魔物なん……だと……! 俺が壁に当てて反射させたバックを凪が止めて弾が打つ。それは見事に俺たちのゴールに突き刺さって1ポイント取られてしまった……しまった! その手があったか!

 

 

「弾さんが自殺点を取りまくると思っているだろうけど……僕が止めればいいよね?」

 

「そしてそれを俺が打つ! これこそお前に勝つための秘策だ!!」

 

「お、お兄が輝いてる……こんな事で輝いてどうするの……」

 

「蘭……勝つぞ」

 

「は、はい! 勝ちましょう一夏さん!!――お兄」

 

「――すまん、俺は此処までのようだ」

 

「知ってた」

 

 

 だから凪……お前打ち解けるの早すぎるだろう……何で弾の心情まで理解してるんだ?

 

 最初に1ポイント以降、俺と蘭のチームの独壇場になった。と言っても殆ど弾が自殺点をしまくったせいなんだけどな。これで俺の連勝記録はさらに伸びることになった……悪いな弾、また腕を磨いて挑んでくるんだな。対決も終わって次は何をしようかと思っていると凪が静かな口調でちょっと離れると言った。どうやら壁際に設置されているとある台に興味を移したらしい。確かあれって1回百円でカードが出てくる奴じゃなかったか? 何であれに……はぁ、負けられない戦いが此処にできた? よく分かんないけど頑張れ。そして弾、なぜお前も付いていく? いや良いけどさ。

 

 

「蘭? 2人になっちゃったけど何かやりたいゲームあるか?」

 

「え、えええと……あ、あれです!!」

 

 

 隣にいる蘭が指をさしたのはプリクラだった。いや確かにゲーセンの定番だけど……まぁ蘭が良いならいいか。

 

 

 

 

 

 

「なんか悪いな。うちの妹に一夏を譲っちまって」

 

「言ったでしょ? 箒姉がいない所で人の恋路を邪魔するの面倒なだけだよ……ちっコモン、もう一回……コモン、ええいエク○ーズを寄越すんだ……!」

 

「それ千円単位でやらねぇと欲しい奴出てこないんだよなぁ。しっかしお前も苦労してんだな……大変だろうあれ(一夏)の相手は?」

 

「毎回箒姉から相談されるけど苦戦してるみたい。この間は一緒に勉強しようと言ったら何故か仲の良い子を誘って勉強会をすることになったとか言ってた」

 

「そりゃまた平常運転な事で。どれ俺も少し回して見っか――狙うは融○シ○クロの2枚!!」

 

 

 イチ兄と蘭さんと離れて弾さんと一緒に1枚百円のカード販売機という名のアーケードゲームの前で一緒に硬貨を入れて多々買いの道を進んでいる。なんで欲しい奴が出てこないんだよぉ……! ペンデ○ラムとかシン○ロとか○合とかどうでもいいから僕のメインであるエ○シーズを早く出すんだ……! はやくしろぉ!

 

 と冗談は置いといて蘭さんも大変そうね。だってイチ兄って鈍感だし思考が変な方向に飛んでいくからアプローチをしても無意味になっちゃうもん。きっと鈴さんもこんな思いをしていたに違いない……近くに箒姉がいるなら何が何でも箒姉の手助けをするつもりだけど今日はめんどくさいし近くにいないしやる意味ないから放っておく。決してこの前の修羅場もどきを監視され意味わからない説教をされた恨みとかじゃない。断じてない。

 

 

「よっしゃぁ! これで元は取った! てかこういうの好きなのか?」

 

「うん。ロボット特撮アニメは好きな部類だよ。双子の姉はあんまり好きじゃないけど年上の方の姉は多分好きかも。きっと言えば決闘盤(デュエルディスク)ぐらい作ってアクションデュエルの口上をノリノリで言ってくれるかもね」

 

「お前のお姉さんってどこの社長……うん? 篠ノ之……篠ノ之……あぁ、そういうことか」

 

「そういうこと。だからキチガイ姉って言ったんだよ」

 

「こりゃ蘭の奴、鈴よりも難易度がたけぇな。弟としてはやっぱお姉さんと一夏がくっつくことを望んでんだろ?」

 

「まぁね。昔からイチ兄に恋してる姉を見たら応援したくもなるよ。だってシスコンだし――あっきた」

 

「そりゃまた姉思いな弟君だこって――なんだと……それは封入率が限りなく低いと言われている……!!」

 

 

 勝ったな。これがあれば攻撃力5000だおらぁが出来る。流石ライトニングさん素晴らしいです……買った方が安い? 真の決闘者なら目の前の貯金箱()で当てるべきだよ。そういえばイチ兄と蘭さんは今何してるんだろう……? ちょっと探してみようかな。変な人に絡まれててもイチ兄がいるし大丈夫でしょ。

 

 弾さんと一緒に2人を探してみるとどうやらプリクラで写真を撮ってたみたい。かなり嬉しそうな表情をしてるから2人きりにした甲斐があるね。箒姉もこれぐらい積極的になれば……無理だね。無理無理。あんなポンコツにそんな度胸があるはずがない。はぁ……箒姉もうちょっと頑張ろうよ。

 

 

 

 

 

 

「結局2人とも最後までカードの台にいたよな……そんなに面白いのか?」

 

 

 蘭と一緒にプリクラで写真を取った後、凪と弾と合流して色々遊んでたんだが帰る間際に2人ともカードが出てくる台で仲良く遊んで……いやカードを受け取ってた。そのせいか凪がやり遂げたぜと言いたそうな表情をしているに対して弾は神はいないと言いたそうなほど落ち込み状態だ。なんでも弾が回すと普通なものしか出なくて凪が回すとレアなものが大量に出てきたらしい……俺はそっち方面は詳しくないけど異常な事だったんだろう。周りにいた大人達も嘘だろとか言ってたし。

 

 

「イチ兄もやる? ルール覚えるのが一苦労だけど楽しいよ……うふふふ、今日の僕はきっと今までの不運を帳消しにするぐらい幸運だったね……!」

 

「ちくしょぉ~俺の小遣いがぁ……!」

 

「お兄は自業自得でしょ」

 

 

 全くだ。1枚百円に数千円つぎ込んだら小遣いが無くなるに決まってる……凪も同じことがいえるんだけど束さんが暇つぶしと言って株で増やした資金が小遣いとして渡されてるみたいであの程度は問題ないらしい。そもそも束さん……研究資金の出所はそれですか……! というより凪と弾が持ってるカードって確か数馬の奴もやってたな。今度機会があれば会わせてやるか。きっと凪の事だからすぐ打ち解けるに違いない。

 

 

「それより蘭さん? 良いのこんな所でお昼食べても?」

 

「はい! 私も偶に利用してますし全然気にしてませんよ……それよりも周りの人が何だか私たちを見てるのは気のせいでしょうか……?」

 

 

 それは俺も気になってた。今いる所はジャンクフード専門店で俺達4人は向かい合うようにテーブルを囲んでいる。席順は俺、蘭、凪、弾の順。どこも変な所は無いと思うんだが……あぁもしかして俺のせいか? 確かテレビでISを動かせる男で顔写真が世界中にばらまかれたからな。

 

 

「きっとイチ兄と弾さんというイケメン2人がいるからじゃない?」

 

「一夏さんは分かりますけどお兄はイケメンじゃないですから違いますね」

 

「……一夏、妹が兄を敬ってないんだが?」

 

「いつもの事じゃないか?」

 

「否定できねぇ……」

 

「弾さんも苦労してるんだねぇ。よしそれではこれをあげましょう」

 

「今日初めて会ったがお前は本当に良い奴だよなぁ……!」

 

 

 なんかよく分かんないが男の友情が生まれてるみたいでよかったよかった。さてこの後どうするかな……時間的にカラオケで終わりか。でもやっぱ男同士は気楽でいいな、箒達と居ると気を使ったりとかする場面もあるし。男同士だったらその辺りは殆ど気にしないと言っても良い……というよりあの日、部屋を間違えなければこうして普通の生活を送ってたんだよな……人生何があるか分かんないもんだ。

 

 昼飯も食べ終えて近くのカラオケで残った時間を楽しく過ごした。そして時刻は夕方、弾と蘭と別れて凪と一緒にIS学園に戻る途中だ。チラッと凪の顔を見たけど笑っていた……よかった、リフレッシュできたようだな。いなくなってから言うのもあれだが弾に感謝ものだ。

 

 

「今日はありがとうイチ兄、楽しかったよ」

 

「そりゃよかった。弾の奴と結構仲良くなったみたいだけど良い奴だろ? なんか知らないが馬が合うんだよ」

 

「なんとなく分かる気がする。それより蘭さんがIS学園に入学かぁ~色々大変そうだねぇ」

 

「だな。でも蘭って弾と違って頭良いんだぞ?有名私立女子高に通ってるぐらいだしISの事も勉強したら俺より詳しくなるんじゃないか」

 

「さぁ~どうだろうねぇ~ちゃんと面倒見ないとダメだよイチ兄」

 

「それ凪もだろ? きっとビックリするぜ? 入学したら俺以外に男がいるんだからさ」

 

「違いないね」

 

 

 あともう少しでIS学園の入り口に着く。まだ夏休みとはいえ訓練とかで気がつけばすぐ終わるだろう……はぁ、俺は凪や箒、鈴達のように頭良くないから覚えることがまだあり過ぎてついていけるか心配になってくる。流石に何度も頼りっぱなしはあれだもんな……頑張らねぇと。

 

 

「――イチ兄」

 

 

 俺より先に歩いた凪はくるりと振り返った。夕日のせいかまたは箒の弟だからか分かんないけど一瞬だけ女っぽい感じに見えた……これ言ったら怒られるだろうなぁ。

 

 

「今日は本当にありがとう。最高の一日だったよ」

 

 

 心の底からの笑顔と感謝を言われて俺は頬をかいた。なんていうか真っ直ぐ感謝されるのって慣れてないというか変な感じだな……ホント、俺以外にISを動かせる男が凪でよかったよ。たとえIS戦闘中は人が変わったように乱暴になったとしても普段の凪は今目の前にいる凪なんだ。束さんの弟って事で箒と一緒に苦労する場面も出てくるかもしれないが誰が何と言おうと俺は助ける。昔のようにな。

 

 

「あぁ。また次も一緒に遊ぼうぜ」

 

 

 だって幼馴染である前に友達だもんな。




夏休み偏という事で軽いネタが含まれております。
凪は弾を見て「あっ苦労してそう」と察したようです。
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