『ちーちゃん! いっくん達がなっくんと耶識の精神世界に入ったよ! そっちの様子はどうかなぁ?』
耳元で五月蠅い
「今の所は問題はない、が自体が急変した時以外話しかけるな。お前の声は耳障りだ」
『酷い! もうちーちゃんの馬鹿ぁ!! もうなっくんが回復したら慰めてもらう! ちーちゃんに耳障りな声って言われたって言えばきっと優しくしてくれるもん!』
「呆れられるか同意されるかのどちらかだろうがな。そう思わないか更識?」
「の、ノーコメントで……それより織斑先生、本当に生身で戦われるのですか?」
「無論だ。訓練機で今の凪とまともに戦えるわけがない。最後に信じられるのはISではなく自分自身だ」
腰に携えた4本の刀の内、2本を引き抜く。まさか暮桜を封印後、もしもの事態に備えて束に作らせたこのスーツを使う時が来るとは思わなかった……全身を包み機動性を重視したものではあるが何故背中が大きく開いているのかあの兎を問い詰めても何も答えなかったな。私も一応女だ、このような格好は極力避けたいのだがな。
『今だから言うけど背中が大きく開いてるのはエロスを求めてだよ!』
よし全てが終わり次第、兎狩りと行こう。あの姉弟も迷惑な姉が消えても悲しみはしないだろう。凪はともかく箒はありがとうございますと言いそうだな……殺るか。
『ちーちゃんちーちゃん。流石の私もなっくんと結婚するまでは死にたくないかなぁ?』
「心を読むなダメ兎。元はと言えばお前がこのスーツの背中を開けたからだろう? 改良品はもっとマシなデザインにしろ」
『えぇ~? だってお約束じゃん! その恰好で戦って負けた後は……ぐひひ! まっ、ちーちゃんが負ける事なんてないけどねぇ~この天才束さんが保証するよ! でもそうだね、ちょっとだけ考えておくよ』
「もしまともなものではなかったらその時がお前の最後だ――むっ? 更識、構えろ」
「了解です」
専用機『ミステリアス・レイディ』を纏った更識が得物のランスを構える。さて、たった一瞬ではあるが凪の身体が動いた……来るか。IS学園の地下、凪専用の訓練場として秘密裏に開発させていたこの場所ならば派手に暴れても問題ないとはいえ先ほどまでの凪に手荒な事はしたくはない。あれでも悪友と呼べる奴の弟だからな。
「――あ、れ……ちー、ねえ、ちゃん……?」
「……私が分かるのか?」
「なに、言って……あれ……誰、貴方……? あれ、知ってるようで知らない……なにこ、れ」
「単一仕様能力のおかげかしら……? ISの情報を脳で受け取るから奥底に切り離された記憶のデータが凪君の脳に伝わってると考えても良いかもしれません」
「阿頼耶識自体が謎が多い。私達が知らない効果があるのかもしれないな……凪、お前は今、自分の記憶を脳で受け取っているはずだ。それを常に保っていろ」
「保つ……ちー、あれ、だれ……何を保てば……怖い、怖いよ……自分が自分で、無くなる……たすけ、て」
凪は両手を伸ばし誰かを求めて歩き始める。記憶を失っている分、阿頼耶識の情報伝達が不可解になっているのか……それとも耶識という人格が一夏達と交戦中で表に出てきていないだけか。少なくとも油断は禁物か。
今にも倒れそうな歩みで私の傍までやってくる。頭部の装甲で視線は見えんが私を見ているのはなんとなくだが分かる。全く、今までのお前では考えられん姿だな――しかしそんなものは私には効かんぞ。
「――チィィ!!」
高速切替、ほぼノータイムで中華包丁に酷似した武装を展開し私の首を狙ってきた――がそれは届かない。両手に持つ2本の刀でそれを止めたからな……しかし、この私でさえ押し負けそうになるか、本当にこれは第一世代の出力かと思いたくもなる。
「更識!」
「はい!」
力を抜き、真横に飛ばされるのと同時に背後で待機していた更識がランスに仕込んでいるマシンガンを放つ。しかしその弾丸は凪には届かない……体勢を変えずに重心移動だけでそれら全てを躱しこの私を殺そうと両手に病愛という名の武装で斬りかかってくる。よほど恨まれているようだな私は……しかしただでは殺されんぞ?
「おいどうした? 私は此処だ、貴様が殺したがっているブリュンヒルデは目の前にいるぞ? たかが人間一人も殺せんか?」
「五月蠅い五月蠅い五月蠅い五月蠅い死ね死ね死ね死ね死ね! 凪は渡さない凪はまだ渡せない凪はまだ動けないだから私が代わりに動く凪の手になる凪の足になる凪の身体になる凪になる! 邪魔をするなワタシの邪魔をするな凪の邪魔をするな!!」
「邪魔をしているのは……貴方の方よ!!」
中華包丁に似た刀、病愛による斬撃を両手の刀で捌きつつ更識が仕掛けた罠まで誘導する。しかし本当に生身のような機動だ、ふふっ私が現役時代でもこのような動きをする相手はいなかった……こちらが仕掛けようとすると体術で拒み、攻撃のフェイントを入れてから本命の攻撃を当ててこようとする。本当に厄介なものだ、この刀が特別製でなければ今頃私は惨殺されているだろう。それほど今の凪は恐ろしい――が私はそう簡単には負けん。
刀を一本地面に突き刺し、それを足場として凪を飛び越え距離を取る。それを確認した更識がミステリアス・レイディがもつ武装の一つを発動した。
「流石の凪君でもこれはどうかしら!――って嘘でしょ、初見で躱す?!」
何かを察知したのか地面に杭を打ち込みその衝撃を利用して高く舞う。その数秒後に凪がいた地点が爆発……本当に厄介だ。一度も見てはいないモノに対してもこの反応とは恐れ入る。
「……これを相手にしてきた皆に同情するわ。ほんっとに厄介! まさか
「奴はラウラのAICすら初見で躱したほど反応速度が高い……いや危機察知能力もだな。あのバカ兎の弟だから何かあるとは思ってはいたがやはり姉が姉なら弟も弟か」
「……それ、一夏君も当てはまるんじゃないですか? 普通できませんよ? 今の凪君に生身で挑んで接戦出来る人って……織斑先生って本当に人間ですか?」
「失礼だな。これでも普通の人間だ、酒とつまみと弟弄りが大好きなただの人間さ」
「うわっ一夏君と凪君が可哀想……っ! だから攻撃方法がエグイのよ!」
一瞬で更識の背後に回った凪は首を切断するべく病愛を振るう。それをギリギリで察知した更識だが間に合わず肩を斬られる……なるほど、ISのセンサーすら欺く完全なステルスじょうたいだったな。やはりISを使用しなくて正解か。
「惜しい惜しい惜しいよでもお前お前お前なら殺せる殺せるよ殺してやる! 今のワタシは凪だもん凪と同じ事が出来るもん! お前なんかにワタシは捕らえられない見つけれない! 理解して死ね死ね死ねぇ!!」
「――ホント、舐められたものね。IS学園生徒会長の座は簡単に務まるものじゃないのよ!!」
「知らない知らないそんなの知らない! チィッ!! ウザイウザイウザイウザイ! オリムラチフユ!」
「更識ばかりに気を取られるとはまだまだ二流だ。世界最強の名も甘くはないぞ」
新たに1本、腰から刀を引き抜き凪に接近。両足に一撃を与えて距離を取り、再び接近。胴体、二の腕、太もも、奴と同じ個所に狙いを絞り一撃を与えて離脱、接近を繰り返す。しかしこれでは私の体力が先に限界を迎えるか……ちぃっ!
背後から胴体を切り裂こうとした瞬間、その場で私の背後を取り蹴りを入れる体勢に入った。しかしそれは私には届かない……更識が遠距離からランスに仕込んだマシンガンを乱射し私と凪が離れる様に仕向けてくれたからだ。流石は国家代表、私に当てることなく密着した距離を離してくれるとは……いずれは一夏の奴もこれぐらいは簡単に行ってほしいものだ。
「邪魔するな邪魔なんだよ邪魔邪魔邪魔!!」
「あらやだ怒っちゃった? でもダメよ、貴方に怒る権利なんてないもの」
「はぁなんでなんでなんで誰がそんなことを決め――ぐぅっ、ああっ、き、さまぁ!!」
「言ったはずだぞ? 更識ばかりに気を取られるなど二流だとな」
持っていた刀をその場に突き刺し、用意していたワイヤーを取り出し更識と協力して凪の身体に巻き付ける。これが私の切り札だ……ラウラの奴が見抜いた阿頼耶識の弱点。それは生身に近いからこそ拘束には弱い。
「言っておくがこれもお前の姉特製のワイヤーだ。そう簡単には千切れんぞ」
「絶対防御も発動させないわ。しばらくこのまま大人しくしててもらおうかしら」
「ヤダヤダヤダヤダヤダ!!! 凪凪凪凪! 助けて助けて助けて! ダメダメダメ! 邪魔するな邪魔しないで凪が凪が死んじゃう動かすな触るなまだダメなのダメなんだからワタシが殺さなきゃ落ち着いた場所で凪を癒さなきゃダメなのにぃぃ!! お前ら邪魔するなぁ! 凪を、凪を殺そうとするなぁ!!」
「……どういうことだ」
「えぇ。凪君が死ぬってどういう事でしょう……?」
「……まさかコイツは、本当に凪を死なせないために何かをしているのか……? 束!」
『呼ばれて飛び出てじゃんじゃんジャーン? はいはい束さんですよぉ~?』
「一夏達の様子はどうなっている?」
『精神世界で耶識と交戦中だよ。でもちーちゃんの言う通り変だね、なっくんの記憶データがちょっと変だねぇ……なにこれ? ちょっと調べてみるからなっくんの身体は任せたよ!』
さて、任せたと言われてもこちらが困るんだがな……先ほどから喚き散らしているこれをどうしろと言うんだ。一夏……気を付けろ。これはISコアの人格の暴走ではないかもしれん。
◇
「死ね死ね死ね死ね死ねお前らはダメだまだダメだ凪は渡さない」
鉈を振るって俺達を殺そうとしてくる耶識と戦い始めてもう何分経ったか分からない……くっそ! 絶対防御が無いから当たったら尋常じゃない痛みが襲ってくる……それが身体が分かってるのか思うように動けねぇ!
「箒! 一緒にやるぞ! シャルとセシリアは援護頼む!」
「分かった! 行くぞ一夏!」
「後ろは任せて!」
「お任せあれですわ!!」
シャルとセシリアによる銃弾の支援を受けながら俺と箒は前に出る。てか卑怯すぎるだろ! なんであんな軽やかな動きが出来るんだよ!? と言うより銃弾を撃ち落してないかあれ!?
銃弾の雨ともいえるそれを軽々と乗り越えた耶識は鉈を握りしめて俺と箒に迫ってくる。その目は殺意そのもの、光なんて飲み込むほどの闇が宿ってる……おっかねぇけどやるしかない! 凪を助け出すためには倒さないといけないんだ!!
片手の鉈は俺が、もう片方は箒が刀で押さえつける。身動きが止まった所を鈴とラウラの身軽コンビが体術で制圧を試みるけど結果は失敗……鉈に込めてた力を緩めて即座に俺に蹴りを入れて反動で後ろに飛びやがった……! ホント身軽だな! 鈴とラウラに似た体系だからか!
「一夏、後で殺す」
「織斑一夏、殺すのは後にしてやる。楽しみにしておけ」
「はぁ?! いやなんでだよ!」
「うっさい! アンタが余計な事を思ったからでしょ!! 絶対余計な事を思った顔してたもの!」
「……マジか」
「分かりやすいぞ。もう少し自分の表情には気を付けろ」
俺の表情ってそんなに分かりやすいものだったのか……なるほど、それで凪も箒も鈴も俺が思った事を理解できてたんだな! よし今度から気を付けよう! ってんな事を言ってる場合じゃないな……耶識が思いのほか手強くて先に進めない。どうする……!
「まだだよまだ時間じゃないもっともっともっと時間をかけないとダメなんだよ凪が死んじゃう凪がワタシの凪がいなくなっちゃうお前らなんていなくなればいいそうすればちゃんと凪が目覚めるんだから嫌だよ死なないでワタシを一人にしないでずっと一緒にいるって言ったもんだからだからだからちゃんと休んでお願いお願い死なないで――だから邪魔するなぁぁぁぁ!!!」
「何なのだこ奴は……! 言っていることが理解できんぞ!」
「凪が死んじゃうって事は分かるんだけど……そもそも彼女が凪を苦しめてるんじゃないの? もしかして気づいてないとか?」
「分かりませんわ……あの方はISのコアに宿る人格ですもの私達とは考え方が違うだけかもしれません」
「理解できない事が多いが分かっていることは一つだ。先ほどからあの女はこの道の先に行かせないように動いている……つまりこの先に嫁がいる」
「でしょうね。だったら話は簡単よ! 一夏! 箒! 私達が足止めするからアンタは先に行きなさい!」
「出来るわけないだろ! 女の子を置いてなんて!」
「そ、そうだ! 私もここで戦う――」
「バカ! この中で戦闘経験が低いアンタ等が残っても邪魔なのよ! さっさと凪を助けてきなさい! アンタ等の幼馴染と弟でしょうが!!」
「一夏! 大丈夫だよ! これでも代表候補生なんだからこういうのには慣れてる!」
「それに義姉さま、貴方が行かなければ凪さんが悲しみますわ……此処はお任せを!」
「クラリッサからこういう場に相応しいセリフがあると聞いている――ここは任せて先に行け!」
鈴、セシリア、シャル、ラウラ……悪い! ここ任せたぞ!
4人が耶識と交戦した隙に俺と箒は先に進む。それを阻むために耶識が俺達を追いかけようとするけどラウラと鈴による体術で足を止める。皆……すまん! 必ず凪を助けて帰ってくる!!
「畜生! どんだけ長い道なんだよ!」
「しかし進むしかあるまい! 姉の感だ! この先に凪がいる!」
「だったら安心だな! 凪に関しての箒の感はよく当たるもんな! 昔と変わんないぐらいにさ!」
「当たり前だ! 私は姉だからな!!」
そのまま俺達は真っ直ぐ突き進んだ――そして見つけた。俺の幼馴染を、箒の弟を。でもその姿は歪だった……う、嘘だろ……誰か嘘だって言ってくれよ!!
「な、凪……凪……なぎぃ!!」
道の終点、小さな広場ともいえる場所に凪は居た。ただし体の中心は地面から生えている刃に貫かれて両腕両足にはナイフは突き刺さってた……箒が近づいて刃から引き抜こうとしても何故かできなかった。俺も手伝ったけど地面とくっ付いているのか離れようともしない……そんな事をしているとボロッと何かが落ちた――それは凪の片腕だった。
どうやら両腕両足に突き刺さったナイフは千切れない様にするためのものだったらしい……ふざけるな! こんなもので治るわけないだろ!! 何がしたいんだよ耶識って子は!!
「凪、腕、ちぎ、凪、凪!」
「落ち着け箒! 焦ったら違う所も千切れちまう!!」
「で、でも、凪が、凪が!!」
「良いから落ち着け!! 此処で失敗して凪の身に何かあったらどうすんだ! 焦るのは分かる、俺も焦ってる! だから一緒に深呼吸するぞ! 良いな?」
俺と箒はすぅはぁと一緒に深呼吸、とりあえずは落ち着きを取り戻す。いや無理だけどどうにか無理やり落ち着かせたと言っても良い……さて問題はこれをどうするかだな。凪の身体は地面にくっ付いて動かせない。刃からも引き抜けない、無理に動かせば両腕か両足、または両方が千切れる……最悪じゃねぇか。
「どうすんだよこれ……」
「――お前達には無理絶対に無理凪は治せない」
後ろから声がしたので振り向くと耶識がいた。でも1人じゃなくて鈴とラウラに抑え込まれながらだ……よかった無事だったか!
「……どういう意味だ?」
「そのままの意味に決まってる凪は寝ているの眠ってるの必死に生きようと寝ているのアイツにあの敵にオリムラチフユと同じ存在に殺されてしまったからワタシを庇って凪が代わりに殺されてしまったから必死に生き返らせようとしている途中なのに邪魔しないで邪魔するな」
「千冬姉そっくり……? いやあの耶識、でいいんだよな? 俺達は凪を助けたいだけで邪魔するつもりなんてない! だから教えてくれ! これはどうすれば良いんだよ!!」
「無理動かせない凪は寝ているから夢を見ているから世界を漂っているから動かせない」
「無駄よ一夏、コイツに聞いてもこんな事しか言わないのよ」
「元々話が伝わるような輩ではないが……全てを知っているのはこいつだけというのは事実。言え! 嫁はどうすれば元に戻る! お前がした事だろう!!」
「嫌だ言わない絶対に言わない凪を殺させない必ず生き返らせるだから邪魔するな消えろ離せ離せ離せぇ!!!」
「……どうすんだよこれ」
耶識は暴れて凪の所に行こうとするけど鈴とラウラがそれを阻む。話は通じそうにもないしもうお手上げだ……そうだ! 束さん! 束さんなら何かわかるかもしれない!!
【はいは~い束さんだよぉ! いっくん無事かなぁ?】
「あっはい」
【よしよし~無事になっくんの記憶を見つけたんだね! よくやったよいっくん!】
「でも動かせないんです! どうすればいいですか!?」
【……今から言う事をちゃんと聞いてね。今、なっくんの意識は死にかけていると言っても良い状態なんだよ。多分人機融合状態で倒された時に脳が殺されたと誤解してなっくんを死なせようとしたのを耶識が止めたんだ……記憶を切り離して一度、まっさらな状態にして脳の誤解を解こうとした。つまりムカつくけど耶識は間違ってるようでまともな事をしてたってわけさ】
マジかよ……多分この場にいる皆が同じことを思っただろう。俺だって嘘だろって思ったぐらいだ……でも束さんの言葉がそれを否定する。えっとつまり耶識は凪を助けようとしてたってわけだよな? 先に言ってくれよ!!
【正直、耶識のおかげで記憶の崩壊は殆ど無い……ムカつくけど。うん? あれ? ねぇいっくん? なっくんに何かした?】
「えっ……いやただ動かそうと触ってただけ……そういえば凪の腕が外れちゃったんですけど拙かったですか? いや拙いですよね……?」
【……それかぁ!! 今すぐ直して! さっきからなっくんの記憶データが変だと思ったらちょっとずつ崩壊してる!? 今すぐ直して!! じゃないと本当に私達の事を忘れちゃう!!】
その言葉で急いで直そうとする……けどやり方が分からない! どうするんだよ!?
すると鈴とラウラからの拘束から抜け出した耶識が凪に駆け寄ってナイフで腕を貫いて繋げる……いやいや何で元に戻し、あれ? それでいいの? いやダメだろ! 見た目的に!!
「バカなのバカだよね凪を殺したいの殺したいかそうなんだねだったら今すぐ殺す優しい言葉を言いながら凪に近づいて殺そうとするお前達をワタシが殺す!」
「ま、待ってくれ! 違う! 俺達は本当に凪を助けたいだけだ! 信じてくれ!!」
「その言葉に嘘は無い! 信じてほしい……私は、凪の姉だ。弟を裏切るような真似はしない!!」
「嘘嘘嘘嘘お前たちは凪を殺そうとしている殺そうとしたワタシから奪おうとした信用できない誰も信用できない信用しない消えろ消えろ消えろ凪はまだ目覚めない目覚めてくれない目を覚ませば治るのに目が覚めないお前たちが邪魔した邪魔したから凪はこのまま目が覚めない」
【……ムカつくなぁホントに。でもなっくんの記憶データの崩壊は何とか免れたからいっか……後はなっくん自身が目を覚ましてくれれば全て解決! ちょっと調べてみるから5分ぐらい時間ちょうだ~い】
そして束さんの声は聞こえなくなり残ったのは無言の俺達だけとなった。耶識は先ほど俺達を殺そうとしていたのが嘘のように凪の近くに座って目が覚めるのを待ってる様子だった……もしかしてこの子はドがつくほどのコミュ障なのかもしれない。鉈を振り回してる時点で凄い危険だけどさ……
「凪凪凪ごめんなさいごめんなさいワタシのせいワタシのせい弱くてごめんなさい相手を殺せなくてごめんなさいもっと強くならなきゃ凪を護らなきゃ一緒に頑張ろう頑張ろうよだから目を覚ましてよいつでも夢は見られるから見せてあげるから凪の声が聞きたい凪の言葉が聞きたい凪の優しさに触れたい」
「……もしかして僕達って凄い勘違いをしてたのかな?」
「こうしてみると凪を大事に思うISに見えるのが不思議よね……厄介な子に好かれんのねコイツ」
「おい。何故私を見る」
「何故わたくしを見るのですか鈴さん?」
「アンタらも厄介な子に入るからに決まってんでしょ。もっとも一番はあのクロエって子でしょうけど」
「……凪」
箒が耶識の隣に座る。予想した通りと言うかなんというか耶識は凄い嫌そうな顔で箒を睨む……どれだけ人嫌いなんだ? 凪ってやっぱり束さんの弟だな、凄い。
「隣に座るな離れろ消えろ近づくな邪魔だよ邪魔なんだよ殺されたいの」
「……お前も凪が好きなのだな」
「当たり前凪はワタシを救ってくれた手を差し伸べてくれた周りから変な目で見られて孤立させられてたワタシを認めてくれた好きと言ってくれただから好き大好き愛してる凪の敵はワタシの敵ちゃんと殺す殺して凪を安心させる誰にも傷つけさせはしない」
「……私も凪が好きだ。弟として凪が好きだ……何度凪に救われてきたか分からん。凪が居なければ今の私は居なかっただろう」
「知らないお前の事なんて知らない話したいなら壁とでも話せ消えろ離れろ無駄な脂肪を見せつけるな消えろ消えろ」
「……もしかして箒を毛嫌いしてる理由って、えぇ~? それなの?」
「胸が大きいからという理由ですの……?」
「よしあの子は良い子ね、今分かったわ――ってそんな理由で私達殺されかけたわけ? どんだけ口下手なのよこいつ!」
俺はよく分からないが鈴達は何かを察したらしい。なんか……ズルいな、俺にも教えてくれてもいいのになんでシャルもセシリアもラウラも鈴も俺に行っても分からないっていうんだよ? 俺はこう見えても空気を読める凄い男なんだぞ? 何度弾と数馬の窮地を救ったか分からないぐらい空気を呼んで……なんで皆してため息をつくんだよ。酷くないか?
「お前の言う通り私は凪がこのような事になっているとは思わなかった。凪の言葉だけを信用して中身を見ようとは思わなかった……姉失格だ。お前は、お前だけはそれを知っていたのだな」
「当たり前ワタシは凪で凪はワタシだもん凪の思いなんて手に取るように分かるだからお前たちが嫌い大嫌い殺したい凪の心を覆いつくすお前達を認めないズルい苦労もなく凪と一緒にいるお前達はズルいうさみみも銀髪もお前もお前達もワタシは認めない」
「……構わん。今は認めなくても良い、しかしいずれは認めさせてみせる。私は凪の姉だからな」
「勝手に言って――なにそれ」
箒が持ってた紅椿の刀が光りだした。暖かく優しく包み込んでくれるようなそんな光だ……箒、お前何したんだ? あ、あれ……なんか凪の身体も光ってないか? それどころか傷、治ってないか?
「紅椿、お前が……凪を助けてくれるのか。ふふっ流石私の専用機だ、お前も立派な凪の姉だ」
【ほ、箒ちゃん一体何したの!? 紅椿が耶識とリンクし始めたんだけど……なっくんの記憶データが修復されてる? もしかして絢爛舞踏? 何この現象! 束さんでも知らない現象なんて久しぶりだよ!! 箒ちゃん! 今ならなっくんを取り戻せるから頑張って! 紅椿の刀をなっくんにぶっ刺さってる刃をぶった切って!!】
「凪が治る凪が目覚める今ならデキル今だけ今だけ早くやれ……少しだけ認めてやるから早くしろ」
「全く……素直ではないなお前は。行くぞ紅椿! お前の力で、私達の力で凪を助け出すぞ!!」
凪の身体に刺さっている刃に向かって一閃。するとまるで最初からなかったように消えていく……皆で駆け寄ってみると腕も足もちゃんと繋がって動かしても問題なさそうだ……よかった!
箒に抱きかかえられた凪が静かに目を開けた。だ、大丈夫だよな……これで皆誰とか言われたら本気で落ち込むぞ……頼む、凪! 覚えててくれ!
「――なん、でみんな、がここにいるの」
「凪! 覚えているか!? 私が分かるか!!」
「なに、言ってんのさ……自分の姉を忘れるほど馬鹿じゃ、ないよ?」
「凪さん! わたくしを覚えていますか!? このわたくしを!」
「嫁! 私の事も覚えているだろうな!」
「……どうしたのさセシィ、らーちゃん……あっこれ違う、何か違う……まっいいや」
「寝ぼけてるわね」
「あはは……でも凪らしいよね」
「だな。ふぅ……これで解決か。束さん! もう大丈夫ですよね?」
【もっちろん!! んじゃくーちゃんに全部回収してもらうからちょっと待っててね! ふふん♪ あとはなっくんを優しくねっとりと看病――い、いぎゃぁぁぁ!? ちーちゃん待って待って待って!? 潰れる潰れちゃうぅぅ!!!】
「……もうたばねぇ五月蠅い、耶識……? 大丈夫、だった?」
「うんうん大丈夫だった凪のおかげで怪我もしてないよ」
「そっか……よかったよ、本当に……ありがとう、良い夢を見れたよ」
最後の最後で束さんの叫び声がBGMってのもあれだと思うけどもう何でもいい……解決したんだったらどうでもいいな。それに千冬姉に折檻されるのはいつもの事だし。
意識が消えて次に目が覚めると俺の部屋だった。箒も鈴もシャルもセシリアもラウラも無事に目が覚めて体には何も異常はない様子。これで何か異常があったら怖いぞ……それよりも凪だ! 速く凪の所に行かないと! 俺達は気絶している束さんを放っておいて楯無さんと一緒に凪の部屋まで走った。扉を開けて中に入るとそこで俺が見たものは――凪に覆いかぶさってるクロエって子の姿だった。あれ? 何かおかしい気がする。あっ凪が助けてって視線でこっちを見た……よしいつも通りだな!!
「イチ兄!? ちょ、ちょっと助けてくれないかな!? クロエさんが変! なんか変!」
「いえ何も変ではありません。ですが凪様……何故ラウラをらーちゃんと呼んで私をくーちゃんと呼んでくれないのですか? 何故ですか? お仕置きしますよ」
「えっ何それ……大体それっていつも呼んでた……あれ何か違うような、違わないような……まっいっか。と、というより降りてくれないかなぁ~? 何故か知らないけど体がすっごく痛いんだよね……あと箒姉の視線が凄いからさ!」
「……いえ問題ありません。そうですか、記憶データが一時的に崩壊した影響が此処に出てしまっているのですね。では凪様、私の事はくーちゃんと呼んでください。もし断れば――貰います」
「なにを!? 何を貰われるのさ!? いっつ、た、助けて箒姉!!」
その言葉が聞こえた瞬間、固まっていた箒が我を取り戻しクロエを凪から引き離す。おぉ! なんて身のこなしだ! 流石剣道部! あれ剣道関係あるのかこれ……?
「凪さん! ご無事ですかなにもされてはおりませんか!」
「嫁よ! 姉からなにもされてはいないな!!」
「だ、大丈夫だと思う。セシィもらーちゃんもありがとう……助かったよぉ~目が覚めたらクロエさんが上に乗ってたんだもん。もうビックリだね……ってどうしたの?」
「い、いや……いきなりその、ら―ちゃんと呼ばれてだな、驚いた、だけ……だ」
「うん? いつも呼んでた、あれ違う……違わない? あれ? 呼んでなかったっけ?」
「えぇ。いつも凪さんはラウ――んんん~!?!?」
「いやお前は私の事をらーちゃんと呼んでいた。間違ってはいないぞ――余計な事をするなセシリア」
「……心配して損した気分だわ」
「あはは……」
「貴様! 凪を襲うなどいい度胸だ! 今ここで滅してくれる!!」
「ふふっ箒様。一夏様との熱い夢はお嫌いですか?」
「……だいす、いや違う! ええい惑わすな!!!」
なんかよく分からないがこれで全て解決したっぽいな。はぁ~良かった……本当に良かったよ。
凪はまだちょっと記憶の混乱があるみたいだけど俺達の事を忘れているよりはずっとマシ、だと思いたい。よし今日は凪復活祝いで何か奢ろう! もう甘い物を好きなだけ食べさせてやらないとな!!
祝! 凪復活!
そして世界最強はやはり世界最強でした。