篠ノ之家の弟は阿頼耶識使い   作:木の人

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新たな同居人

「――この度は僕の不注意により皆さんに多大なるご迷惑をおかけしました。誠に申し訳ございませんでした!」

 

 

 学園祭が終わり、時刻は夜。僕とちー姉ちゃんの部屋にイチ兄や箒姉、鈴さんにシャルロットさん、セシィにらーちゃん、生徒会長さんが集まっていた。その中で僕はベッドの上で深々と、そう深々と土下座をしています。何故かと言うと織斑マドカに負けた後、どうやら僕は本気で死にかけてたらしい……いや正確には頭を撃たれた時に脳が殺されたと誤解して僕を死なせようとしたみたい。それを耶識が僕の記憶をごっそりと奪い去って真っ白な凪君状態にしたせいでイチ兄達に不安と誤解を与えてしまったそうだ。あはは……本当にごめんなさい!!

 

 

「いや謝らなくていいって……凪が無事だったんだしもう終わった事だろ?」

 

「い、いやぁ~そうは言っても記憶喪失になって不安にさせちゃったし耶識がイチ兄達に襲い掛かったんでしょ? あとちー姉ちゃんと生徒会長さんにも……謝らないといけないじゃん」

 

「あら。私は良い経験だったから特に不都合なんてなかったわよ? そもそも織斑先生が殆ど対応してくれたからね……もう何なのあの人、IS展開かつ人機融合状態の凪君を相手に生身で挑んで制圧するとか人間じゃないわ。もうあの人はIS無しでも世界取れるわ」

 

「ちー姉ちゃんは既に世界最強ですけど?」

 

「……その称号は絶対に織斑先生以外には渡せないと言っても良いわ」

 

 

 生徒会長さんがあまりにも遠い目をするからイチ兄達もなにかを察したんだろう。うん、僕は全然覚えてないんだけど目が覚めたら体中がすっごく痛かった。そして何故かクロエさんが上に跨ってました……何故僕の周りでは逆レっぽい事をしようとする人が多いのでしょう? ああいうのはちゃんと好きな人にやるべきなのにさ。そもそも僕とクロエさんは先生と生徒って間柄なだけで特に仲良いってわけじゃ……あれ? そうだっけ? うーん何かが違うような気がするんだよねぇ~? 本当にそれだけだったかな……まっいっか。思い出せないって事はきっとそうだって事だろうし。

 

 

「それよりもたばねぇやちー姉ちゃんから聞いたけど皆は……その、阿頼耶識の事を知っちゃったんだよね?」

 

「あ、あぁ……凪と耶識の精神世界に入った時と入る前に束さんから……聞いた」

 

「……お前は何故黙っていたんだ……私にも教えてくれても、よかっただろう。お姉ちゃんをもう少し信頼しろ!」

 

「そもそもアンタ、よくあんな目にあって笑えてるわね?」

 

「えっ? だって背中に機械埋め込まれただけでしょ? そりゃぁ~痛かったけどちゃんと生きてるしIS動かせるし特徴が無い僕に特徴が出来たって思えばなんだかそれだけでラッキーとか思わない? 不便な所も今の所は寝にくいって所だけだし」

 

「……やっぱり凪って大物だよね」

 

「普通はそう考えられませんわ……」

 

「流石は私の嫁だな」

 

 

 何故か分からないけど皆から呆れられた。な、なんで……? だって僕ってたばねぇのようにキャラ濃くないし箒姉よりも特徴が無いよ!? だから僕を象徴する阿頼耶識の存在が出来てラッキーとかちょっと思ったけどそれが悪かったのか……!

 

 

「と、とりあえず俺も皆も凪のサポートができるからなんかあったら言ってくれ。いやさせてくれ……幼馴染である前に友達だし、世話になりっぱなしだから恩返しぐらいはさせてくれよ」

 

「うむ。姉として弟の世話は当然だ! これ以上お前を苦しませることはさせん!」

 

「わたくしも凪さんのお世話をさせていただきますわ! 友人として……そう友人として!」

 

「まっアンタの事を国にバラしたら世界終わるし……一応友達だしね。なんかあったら言いなさい」

 

「僕も大きすぎる恩があるから何かあったら言ってね」

 

「嫁の世話をするのは当たり前だ――それに今の私にはこれがある!!」

 

 

 そう言ってらーちゃんがどこからか取り出したのは一つのティアラ……なにそれ? それが一体どうしたんだろうか。あれでも何か忘れているような……なんだろうなぁ~このすっごい嫌な予感は!

 

 

「なっ!? ら、ラウラさん……! 何故それを……!!」

 

「ラウラ! 何故お前がそれを持っている!!」

 

「愚問だな。嫁から直々に渡されたに決まっているだろう――つまり嫁、いや凪と共に過ごす事が出来るのはこの私なのだ!!!」

 

「……えっ? なにそれ?」

 

「……なに? お、お前が私に渡したのだぞ!? お、覚えていないとでもいうつもりか!!」

 

「あれそうなの? というよりなんでティアラ渡しただけで一緒に暮らすとかになってるの? イチ兄何か知ってる?」

 

「い、いや俺もよく分かんないだよ……どうなんですか楯無さん?」

 

「実はね。一夏君の王冠と凪君のティアラを手にした人は2人と一緒の部屋になる権利が与えられるの。つまり一夏君の王冠を持っているのはこの私、そして凪君のティアラを持っているのはラウラちゃん――もう分かるでしょ?」

 

「……おい箒、鈴。俺はそんな事のためにお前達に襲われたのか!? 言っておくけど本気で怖かったんだぞ! おいなんか言えって!」

 

 

 イチ兄の抗議も空しく箒姉と鈴さんは知らな~いと言わんばかりにそれぞれ別の方を向いていた。なんと言う事だ……まさか僕の知らない所でそんな事、そんな事……? あれ? 渡したんだっけ……いや分かんない。と言うより一つ言わせてほしいんだけどなんで僕のがティアラなわけ? 王冠で良いじゃん! 僕は男だよ!

 

 生徒会長さんに聞いてみるとどうやらその灰被り姫って劇の最中、僕は猫の着ぐるみを着てたらしい。ほほう、なら納得だね! 全然覚えてないけど!!

 

 

「そ、それよりもだ! 凪! 自分でラウラに渡したのではないのか!? ど、どうなんだ!」

 

「いや全然覚えてない。そもそも学園祭って何やってたっけレベルなんだよねぇ~覚えてるのは織斑マドカと戦って殺されたという事だけだし……あれ皆どうしたの?」

 

 

 僕が織斑マドカという名前を出した途端、全員が黙ってしまった。あぁもしかしてイチ兄と同じ織斑だから? そうだよそれ気になってたような気がしないでもないけどやっぱり気になるから良い機会だし聞いてみよう。

 

 

「もしかして織斑マドカの事が気になった?」

 

「お、おう……凪と戦った相手がその名前の人なの、か?」

 

「うん。本人がそう言ってたし間違いないと思うよ。ついでに言うと素顔はちー姉ちゃんそっくりだもん」

 

「……耶識も言ってたけどマジだったのか」

 

「マジだよマジ。あと付け加えるならその子も阿頼耶識使い」

 

「最悪ね」

 

 

 鈴さんの言葉は僕も同意しかできない。だってあの操縦技術に加えて阿頼耶識の高反応が加わって普通に戦っただけじゃ勝ち目がない。僕がそれを証明しちゃったからね……まさか人機融合しても勝てないとは思わなかったよ。あれそう言えばその辺りは覚えてるのにそれよりも前の事はおぼろげなのは何故だろう? ふむぅ~謎だね!

 

 

「まっこの事は後でちー姉ちゃんに聞けばいいんじゃない。それよりも……らーちゃん、僕と一緒の部屋になるの?」

 

「当然だ……お、お前が私なら良いと言ってきたのだろう……今更返せと言われても返さんぞ」

 

「ごめん。その時の事全然覚えてないから分かんないけど返してとかは言わないから安心してよ。でもホントに戦闘中の事は覚えてるんだけどそれよりも前の事がおぼろげなんだよねぇ~あのさイチ兄、精神世界に入ったって言ったけどそこで何かした?」

 

「……い、いやなにもしてない、ぞ」

 

「う、うむ。お、お前の記憶を見てしまった以外はな、なにもない!」

 

「おいこら。何かしたでしょ? 絶対に何かしたよね! こっちをむけぇ!!」

 

 

 何と言うことでしょう!この2人は僕の精神世界で何かをしてきたらしい……今すぐ言えば許してあげるから言いなさいイチ兄に箒姉。大丈夫だよ、怒ってないから。うん怒ってないから。次の模擬戦の時に半殺しにするけど絶対に怒ってないから。

 

 

「凪君。忙しいと思うけどちょっと良い?」

 

「はい。なんですか?」

 

「さっき記憶がおぼろげみたいなことを言ってたけれどそれってどの辺りまでかしら?」

 

「うーんと、とりあえず今日は織斑マドカと殺し合ってた事以外は何してたか覚えてません。あと昔の事もちょっとだけ思い出せないですね……ちょっと落ち着いて思い出してみます」

 

 

 そう。昔の事がすっぽりと抜け落ちてる所がある気がする……たばねぇがISを作った、それが原因でイチ兄とちー姉ちゃんと分かれることになった、それから……あれ? どうしたんだっけ? うーんと何かがあって……箒姉とも離ちゃったんだっけ? あれ違う、違うよね……どうだっけ? まぁいいや。それから月日が経って変な奴らに攫われて阿頼耶識を埋め込まれてたばねぇに助けられてクロエさんとも出会って……うん此処までは覚えてる。よし次だね。襲撃されたからIS動かして撃退してそれからクロエさんにISを教えてもらって……うん、やっぱり逆レもどきされるほど好かれてた気がしない。まっ今は置いといて……IS学園に入ってイチ兄と箒姉と再会、再会したんだったら箒姉とも別れたのかな? ヤバい自信ない。

 

 とりあえず皆にその事を伝えてみると箒姉は真っ青な顔になり、セシィとらーちゃんは箒姉を心配しつつどこかやった! と言いたそうな表情になった。あれどこか間違ってたところあったかな?

 

 

「……日常生活には支障がないけど過去の事が曖昧な部分がある、ね。大丈夫よ箒ちゃん、凪君は全部忘れたわけじゃないんだもの。箒ちゃんや皆の事を覚えているだけラッキーと思えばいいわ。思い出なんてこれからいくらでも作れるじゃない」

 

「そ、そうですね……まだ、未来がある。うん……まだ未来があるんだ」

 

「そう言えば何でラウラの事をらーちゃんって呼んでるの? 前まではラウラさんって呼んでたのに――な、なにするのラウラ!?」

 

「シャルロット! 余計な事を言うな! せっかくの愛称をなかったことにされては困る! お、お前だって織斑一夏からシャルではなくシャルロットと呼ばれるようになれば困るだろう!」

 

「そ、それはそうだけどぉ!」

 

「――こほん。凪さん? どうなのでしょうか?」

 

 

 セシィが怖い。笑顔が可愛いけどなんか怖い。背後にお嬢様っぽい何かが見えて非常に怖い。な、なんでセシィが怒ってるんだろうなぁ~あははは……そ、そうか! 恋人でもない僕とらーちゃんが一緒に暮らすのに反対なんだね! ですよね! 僕だって女の人との同棲は……あれ? 昔にそれをしてたような気がする。むむむ……覚えていないのになんだか変な感じ。でも今もちー姉ちゃんと同棲してるようなものだし別にいいかもしれない――実質ダメな夫を支える妻みたいな感じになってるような気がしないでもないけど。誰が妻だよ。

 

 いやそれは置いておいて何故らーちゃんと呼ぶ、かぁ。なんて言うんだろう……やり残した宿題みたいな感じで心に残ってた感じなんだよね。それを言うと凄く怖い事になるような気がしたさ……うん、何も問題ない。それに呼びやすいもんね! らーちゃん。うん呼びやすい!

 

 

「え、えっと……なんかやり残した宿題みたいな感じで心に残ってたと言いますか……よく分からないけど呼びやすいから良くない?」

 

「何も問題は無い。それで呼び続けるがいい」

 

「……それほど真剣に考えていたといいますの……!」

 

「……箒、心に残ってたって絶対にクロエのせいよね。言ったら怖いとかそんな感じの」

 

「……だろうな。くっ! 次に凪を押し倒したらその身を刺身にしてくれる……!」

 

 

 何やら我が姉は何かを覚悟した様子。よく分かんないけどカッコいいよ箒姉! そのカッコよさをイチ兄に見せればいいのに……ふぁあぁ、眠い。うんなんか疲れたね……皆には悪いけど今日はお休みさせてもらおう。

 

 

「ごめん。なんだか眠い……今日はもう休むね」

 

「あっそっか。まだ1日も経ってないんだもんな……ゆっくり休めよ」

 

「うん。明日からまた迷惑かけるけどよろしくね」

 

「お互い様だ」

 

 

 そんなわけで皆は部屋から出ていきました。そう言えば部屋はどうなるんだろう……? いいや、それは明日分かるでしょ……と言うわけでお休みなさ~い。

 

 

 

 

 

『凪よかった目が覚めた元気になったやったやったよ元気な凪優しい凪ワタシの凪がちゃんと目が覚めた血の繋がった他人のおかげ今だけ褒めたい誉めてあげるやったやったよえへへ』

 

 

 夢を見た。真っ黒な世界、その中ではしゃいでいる女の子の夢を。

 

 あぁ……また来たんだ。もう耶識ってばはしゃぎ過ぎじゃない? ただ死にかけてただけ……ってそれは結構酷い事だよね。うん、キミのおかげで死ななくて済んだ。ありがとう耶識。でも聞こえてないみたいだね……もうそんなに嬉しい事でもあったの?

 

 

『凪の記憶凪の思い出凪の過去見た見ちゃった見えちゃった見つけちゃったこれが凪子供の頃の凪血の繋がった他人が邪魔何でいるの邪魔邪魔消えてよでも良いもんあの銀髪に凪はもう靡かない好きにならない関わらない此処にあるもん銀髪との記憶は此処にあるもんあはあはははは死ね死ね死ね死ねお前なんて嫌い嫌い嫌い凪に近づく奴は皆嫌いワタシだけの凪ワタシしか凪を好きになっちゃダメだもんでも今のままじゃ凪にまた迷惑を掛けちゃう死なせちゃう嫌だよ死なせたくないよどうしようどうしよう』

 

 

 一心不乱になにかを鉈で叩いてるけどどうしたの? あれやっぱり聞こえてない……? そこまで熱中するような事なのか。流石耶識だね! 鉈で何かを叩くことが凄いのかどうかは置いておいて僕の事を心配してくれるなんてやっぱり耶識は良い子だよ。こんな子を見捨ててきた他のISはどうかしてるね! うん!

 

 

『またオリムラチフユと同じ存在と戦ったら凪が死んじゃう負けちゃうまた傷つけちゃうどうしようどうしようそうだそうだよワタシがもっと強くなればいいんだ強く強くもっと強く誰よりも強く邪魔な奴を殺せるほど強くなればいいんだよ凪を護るためだもん凪と一緒に生きるためだもん凪と一緒に戦うためだもん強くならなくちゃダメだよダメなんだよ――ワタシが生まれ変わらなきゃダメなんだ』

 

 

 1人で笑い続ける耶識の顔は目に光が宿ってなかったけど凄く可愛かった、気がする。

 

 

 

 

 

 

「……もう、あさぁ……ねむいよぉ」

 

 

 いつも起きる時間に目が覚めた。隣のベットを見るとちー姉ちゃんの姿はもう無い……いや当たり前だよね。だって先生なんだから早起きでいつもそうだし。さて眠いけどはさっさと起きて歯を磨いて顔を洗って着替えないとね。だって箒姉の部屋に行っていつもの日課をしないといけないし……他の事がおぼろげなのにこれはちゃんと覚えてるって少しだけ空しくなるね。訓練され過ぎじゃないかな僕……シスコンだから誇らしく思うけども!!

 

 そんなわけでいつもの日課を終えて箒姉と一緒に食堂へ。途中でイチ兄やセシィ、らーちゃん、鈴さんにシャルロットさんと合流したけど生徒会長さんが居なかった。どうやら今日の全校集会の準備があるみたい……あれ僕って生徒会所属だったよね? 何も聞いてないけど手伝わなくていいのかな? よし! ここは頼れるお姉さまの虚さんにメールだね! はい返ってきました! 何もしなくていいらしいです!

 

 

「凪、昨日はちゃんと寝たか?」

 

「もっちろん。ぐっすりと寝たせいでお腹減ったね」

 

「そっか。なら良いんだ……昨日も言ったが何かあったらちゃんと言えよ? もう隠さなくていいんだからな」

 

「分かってる。皆には迷惑かけるけどちゃんと相談するから。はいこんな暗い話はもう終わりで早くご飯食べようよ? この後全校集会だから遅れたらちー姉ちゃんに怒られるよ?」

 

「それもそうだな」

 

 

 皆でわいわいと話しつつ朝ご飯を食べて体育館へと向かう。そして途中で篠ノ之君、昨日は可愛かったよとかまた女装してねとかクラスの子達に言われたけど……僕はいったい何をしてたんだろう? 何故女装? はっ!? まさか僕には女装趣味が……ないね。うんないない。きっとたばねぇがやれとか言ってきたんでしょ。あれはキチガイだから間違いない。

 

 体育館に着いてしばらくすると虚さんが全校集会を始めますと言いました。流石はお姉さま筆頭! こんなお姉ちゃんが欲しかった……! うんポンコツとかキチガイとかじゃなくて清楚で真面目なお姉ちゃんが欲しかった……!! 痛い、痛いよ箒姉? 何? はぁ……お前の姉は私だけだ? 知ってるよそんな事。あとたばねぇを自然に抜かすのはやめようね、あれでも一応僕達のお姉ちゃんだからさ。

 

 

「はい皆おはよう。さて全生徒が気になっているであろう織斑一夏君争奪戦の結果だけど――ごめんなさいね。1位は我が生徒会なのよ」

 

 

 大ブーイング発生! 大ブーイング発生! 全生徒……僕とイチ兄とかいつものメンバーを除いた人達だけど抗議の声をあげています! ですよねぇ~! 昨日何をしたか分かんないけどイチ兄争奪戦の内容は頭に入ってるし言いたい気持ちはよく分かる……でもちゃんと確認しなかった人が悪い。これがカードゲームなら効果を確認しない人が悪いと言われてもおかしくないもんね。

 

 

「あら? ちゃんと説明を聞かなかったのかしら? 劇の参加条件は『生徒会に投票する事』なのよ。つまり参加した人は全員生徒会に投票したと言っても良いわね。でも安心してちょうだい……織斑一夏君は生徒会所属になったけれど他の部にも貸し出しする予定だからマネージャーとか雑用に使っても良いわ。そ・れ・に忘れていないかしら? もう1人の男子、我が生徒会書記の篠ノ之凪君の手料理も付いてくるわ!」

 

「……あっそうだった」

 

「それは覚えてるんだな……」

 

「うん。抜けてるのは昨日の出来事大半とほんのちょっとの過去だからね」

 

「どの部から開始かは後程通達するわ。楽しみにしておいて」

 

 

 圧倒的なカリスマ……もどきを発揮している生徒会長さんの言葉により大ブーイングは大歓声へと変わった。僕は別に問題ないし料理できるならむしろありがとうございますなんだけど……何故我が姉は憤怒しているのだろうか。もう背後に武士が召喚されてるよ。怖いよ箒姉……いや気持ちは分かるけどさ。良いじゃん! これを機に剣道部に顔出しと参加すればいいよ。そうしたら僕も張りきって手料理を――うわ現金だこの姉。すっごいやる気に満ち溢れてるよ! 死ねばいいのに! 嘘だけど。

 

 こうしてイチ兄は晴れて生徒会所属となり僕達は教室へと戻った。そして我らが副担任山田先生から学園祭お疲れ様でしたと労いのお言葉があったけどちー姉ちゃんからは学園祭の空気のままでいるなという厳しいお言葉……いや実際その通りだけどね。特に僕は打倒織斑マドカという目標があるからね! いつ決めたって言われたらついさっき決めました。

 

 

「さてらーちゃん。今日からよろしくね」

 

「う、うむ。ふ、不束者ですが……よろしく、お願いします」

 

 

 時間は進んで放課後、学園祭の翌日という事で授業は午前中で終わり午後からは引っ越しの準備をしていた。生徒会長権限で僕はちー姉ちゃんと離れてらーちゃんと、イチ兄はそのまま生徒会長さんと相部屋になった……もう箒姉とか鈴さんとかシャルロットさんとかお怒りだったよ! 僕? あはははは、身に覚えのない殺気をセシィから浴びた事以外は特になかったよ!

 

 というわけで今までシャルロットさんとらーちゃんが使ってたお部屋に僕がお邪魔してシャルロットさんは別のお部屋に向かう事になっちゃいました。なんだかごめんねって言ったら全然気にしてないよと笑顔で返してくれたシャルロットさんに一瞬惚れかけました。やはり時代は笑顔か……そうだよ! ポンコツとかキチガイとかに苦しむ僕を癒してくれる人は笑顔が可愛い人に違いない。それは置いておいて大して多くない荷物を持ってお部屋にお邪魔して整理整頓、お菓子類を冷蔵庫に入れるとお酒が無いという状況に密かに嬉しかったのは内緒。だってあんなに飲んでるのに冷蔵庫の中のお酒が一向に減らなかったんだもん……あれだけ飲んであのスタイルを維持しているちー姉ちゃんは世の女性方から怒られるべきだよ。

 

 

「らーちゃん、それ違う。それ結婚して同棲する人が言うセリフだからね」

 

「何を言う。私とお前はもう夫婦ではないか。だからこのセリフは合っているんだ」

 

「……そ、そっかぁ~なら仕方ないね。そう言えばらーちゃんのベッドはどっち?」

 

「私はこっちだ。そっちはシャルロットが使って、使って……っ! いや待て! 私がそっちを使うからお前は私が今まで使ってた方を使え! これは命令だ!!」

 

 

 何かに気が付いたらしいらーちゃんはシャルロットさんが使ってたらしいベッドを占領した。いや分かる、分かるけどそんなに焦る事かな? 確かに今まであのシャルロットさんが使ってたベッドで寝てと言われても数日ぐらいは寝れなかっただろうね。同年代の女子が使用してたベッドとか拷問レベルだよ……だからって自分が今まで使ってた方を渡さなくても良いのに。いやらーちゃんが気にしないなら良いけど。

 

 

「……く、クラリッサが言うには夫婦は一緒のベッドで寝るらしい、よ、よし! 姉がいない今こそ寝取るのだ……私は出来る! 私なら出来る!」

 

 

 何と言うか思ってる事が駄々漏れですよらーちゃん。あと僕のベッドに入って来たら問答無用で追い出すからね……何故泣きそうな顔をするのさ!? 普通そうでしょ!

 

 

「な、何故だ! 夫婦は一緒に寝るのが普通だろう!」

 

「あのねらーちゃん、そんな事をされると僕の精神的と言うか身体的と言うかとにかく色々大変だからやめましょう。それに阿頼耶識の端子がむき出しだからくっ付かれると……痛いんだよねぇ」

 

「うっ、そ、そうか……す、すまない」

 

「いや怒ってるわけじゃないから謝らなくていいんだけどね。あとはシャワーを浴びる時間とかだけど……先にご飯食べよっか。その辺りは夜に決めよう」

 

 

 僕とらーちゃんは一緒に部屋を出て食堂に向かう。いつものメンバーと一緒に晩御飯を食べたけど箒姉からは「何かあれば迷わず叫べ! 私はお前の声ならばどこにいても聞こえる!」とか「襲われそうになったら私を呼べ!」と安定のポンコツ姉全開でした。セシィ? 何と言うか眼の光が無かった事以外は大丈夫だったような気がする。きっと大丈夫。

 

 そして夜、シャワーを浴びているとらーちゃんが突入してくるというハプニングとかがありつつ基本的に平和でした。もうちー姉ちゃんのつまみを作らなくても良いしお酒を片付けなくても良い……なんて素晴らしい生活なんだ! でも何かが物足りない……や、ヤバい……ちー姉ちゃんのお部屋を掃除しなきゃ! これはもう使命感みたいなものだね! よし明日からちー姉ちゃんの部屋に通って掃除しよう! これはやらないとダメだ! たとえ記憶がおぼろげな部分があったとしても体が覚えている! 僕にちー姉ちゃんの世話をさせろと……ダメだこれ、もう義務になってるよ。悲しい……これが弟としての宿命なのか……!

 

 そんな事を思いつつ新しい部屋での1日は終わった。しかし翌日、目が覚めた僕は酷く体を震わせることになった――夢の中でクロエさんがひたすらくーちゃんくーちゃんと囁いてくる夢とか不気味すぎるでしょう。




凪君は耳元で寡黙な少女はひたすらくーちゃんくーちゃんくーちゃんと連呼される夢を見ました。
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