篠ノ之家の弟は阿頼耶識使い   作:木の人

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私が変われた理由

「もう無理だ……わけ分かんねぇ……」

 

 

 時間は止まる事は無く気づけば放課後。いやぁ早いね? もう放課後だよ? 楽しかったなぁ~だって久しぶりの学校って感じなんだもん。といっても休み時間とか昼休みとかはちょこっとだけ辛かったけどね。だって他のクラスの子達が僕とイチ兄を見に来て話したい、けど話せないって感じの表情で見てくるんだよ? ご飯食べる時も移動するたびに大行列。もう一種の王様気分を味わったね……あまり味わいたくないけどさ。

 

 そして現在、イチ兄は机の上でぐったりしていた。それはもう朝以上のものだね。休み時間の度にここはこんな意味だよ~とかこれはこうなるんだよ~って教えてたんだけどやっぱり僕の教え方が悪いのかイチ兄は頭の上にハテナマークを出しっぱなし……くっ僕ではクロエさんのような分かりやすい授業は無理だということか……! そして肝心な箒姉は恥ずかしいのかイチ兄に近づけない始末……ダメじゃん。頑張ろうよ箒姉! 気持ちは分かるけど!

 

 

「休み時間とかに教えてもらったりしたけどやっぱり分かんねぇよ……なにが何だか、ISってこんなに難しいんだな?」

 

「当たり前だよ。だってロボットだよ? 男の子のあこがれだよ? 難しいに決まってるよ」

 

「いや確かにそうだけどよぉ……はぁ、とりあえず帰るか。凪、一緒に帰ろうぜ」

 

「うん? イチ兄どこ行くの?」

 

「何処って家だよ。なんか寮の部屋が決まってないみたいで一週間ぐらいは自宅から通うことになるらしい。そう言えば凪はどこに住んでるんだ? 箒と一緒か?」

 

「ううん。僕は寮だよ? ちー姉ちゃんと一緒の部屋――どうしたのイチ兄?」

 

 

 突如イチ兄は真剣そうな表情で僕の肩を掴んだ。なんだろう……今日はよく肩を掴まれるなぁ~? そしてなんだろうこの雰因気? い、イチ兄は何を言おうと言うんだ!?

 

 

「――気を付けろ」

 

「へ?」

 

「良いか千冬姉は外見カッコイイが内面はダメなんだ。すぐ部屋を散らかすしゴミも片付けない、片付けろって言っても後でやると言って放置だ、仕方なく掃除しても僅か一日居るだけで大惨事になる……凪、歩くときは足元をよく見るんだぞ? ビールの缶を踏んで転んだらあぶな――いってぇ!?」

 

 

 バコーンと景気の良い音が響く。い、痛そう……というより絶対に痛いよね!? だって出席簿だよ!? ちー姉ちゃんがいきなりイチ兄の背後に現れて頭を思いっきり叩いたことに驚くよりも響く音の大きさの方に驚いたよ! 出席簿ってこんな音だせるんだ……アッハイワタシハナニモキイテマセンミテマセン、チーネエチャンハスバラシイジョセイデス。

 

 

「い、痛いって千冬ね……ぐへぇ」

 

「織斑先生だ。全く、貴様はどこに行こうとしている?」

 

「何処って家だよ? あれ? このやり取りさっきもしたな?」

 

「そんなことは知らん。凪、お前に渡しておく。今日は遅くなるから先に寝ていろ。遅くまで起きていたら説教だ」

 

 

 ちー姉ちゃんは部屋の合鍵らしいそれを僕に渡してくる。そう言えば部屋の鍵貰って無かったね? そして今日は遅くなる……つまりこれは僕に部屋掃除をしろという事だね? おーけいいよやってあげよう! 自慢じゃないけど箒姉との同居生活、そしてたばねぇとクロエさんとの逃亡生活で僕の家事スキルは飛躍的に上がっている! 今の僕なら埃一つ残さない掃除を行えるんだ! ふふふ……ちー姉ちゃん見ているが良いさ……帰ってきた時の部屋の綺麗さに驚くが良い! 言っておくけど妥協しないよ? さてそうとなれば今すぐ向かって始め――へぶぅ。

 

 頭に激痛が走った。い、痛いよちー、織斑先生ですね。はい、ごめんなさい! 出席簿……あれは使い手によっては武器になるものなのか……! 恐るべし出席簿! とか思ってたら織斑先生に続いて教室に入ってくるのは山田先生、な、なんてことだ……揺れてる。いや、失礼だけど本当にごめんなさいだけどこればっかりは見ちゃうって……痛い、また叩かれた。

 

 

「織斑先生早いですね……お、織斑君、寮の部屋が決まりましたのでこ、ちらおお渡ししますね」

 

「は、はい……あっでも荷物とか全部家なんで帰っても良いですか? すぐ戻り――」

 

「心配するな。荷物なら既に私が用意している。着替えと携帯の充電器程度で充分だろう?」

 

「……はい」

 

 

 ち、織斑先生……流石にそれは無いよ……せめて本とかそう言うのも……アッハイ黙ります。

 

 

「ふぅ、それでは一度お部屋を見てください。寮の規則で夕食は6時から7時、一年生用食堂でご飯を食べてください。各部屋にはシャワーが付いていますが大浴場もあります……でも残念ながら織斑君と篠ノ之君は使用できません」

 

「え? なんでですか?」

 

「馬鹿かお前は……どこの世界に同年代の男女を一緒の風呂に入れる学校がある? お前達は部屋のシャワーで我慢しろ」

 

「……俺足伸ばせる風呂でゆっくりするの好きなんだけどなぁ~」

 

「諦めようよ。流石に僕達は異例なんだしこうなるのはしょうがないって。多分後で男子用の浴場位手配してくれるよ?」

 

「そっか。それじゃそん時は一緒に入ろうぜ? 久しぶりにさ」

 

 

 う~ん、そうしたいのは山々なんだけど阿頼耶識がね……見られると拙いから僕は何があっても部屋のシャワーで我慢しないといけないんだ。ごめんねイチ兄……決して嫌というわけじゃないけど僕の方も事情があるから。それはそうとなんで周りの女の子たちは鼻血を出しているんだろう? 甘いもの食べ過ぎた? よく分かんないけどお、お大事に?

 

 そして僕とイチ兄は一緒に寮まで歩く。話すことはISって難しい、これからよろしくな、あとで部屋に行くよ、そんな青春みたいなものだけど僕にとっては楽しく思っている。だって懐かしいんだもん。こんな風に並んで歩いて何かを話すのは……今までが今までだったからなぁ~とと、それじゃ僕はちー姉ちゃんの部屋だからお別れだ。

 

 

「それじゃイチ兄、あとで部屋に行くね? 何番だっけ?」

 

「えっと1025だな。はぁ……凪は良いよな~千冬姉と一緒だし。俺なんて顔を知らない女子だぜ? 気まずくなったらどうしよう……な、なぁ? 今からでも変わらないか?」

 

「ごめん無理」

 

「だよなぁ……」

 

 

 なんだろう……出社するのが嫌なお父さんのような背中を見ているようだ。今まで一度もそんなの見たことないけどなんかそんな感じがする。さてさてイチ兄と分かれたし早く部屋に行って着替えようそうしよう。えーと確か……あった此処だ。鍵を差し込んで開けてはいただいま~誰もいない。当たり前だけどなんか寂しい。

 

 とりあえず制服脱いでISスーツはどうしよう……いっか、このままで。だってたばねぇが作ったものだし汗とかそう言うの吸収して自動で脱臭除菌とかしてくれると思うし。違ったらあれだけど。とりあえずジャージでいっか。うん完璧。さぁ~て――覚悟はいいかい? 今日の僕は加減はしない、全力でキミたちに挑む! 覚悟しろクローゼット!!! いざ勝負!! ぎゃ~~~~!?!?! お、重い……! なんて奴だ! 開けた瞬間の雪崩攻撃! こんなの初めて喰らったよ! というかちー姉ちゃん!! 整理整頓ぐらいしようよ!? なんで全部一緒に入れるのさ!? そしてこの黒いのなんだろ? あっなんだ下着か。やっぱりちー姉ちゃんは大人系なんだね? たばねぇは逆に可愛い系だしクロエさん? あれ……そう言えば洗濯して見た記憶が、ない……思い出してみれば僕がやろうとする前にすでに終わらせていたような……いっか。あんまり思い出すようなことじゃないし。

 

 クローゼットの中にチェストのようなものもあったから下着は下着、肌着は肌着、スーツはスーツ、パジャマはパジャマと分別しながら整理していく。もう、なんで僕の周りの年上の人達はこんなにだらしないのだろうか。クロエさんを見習うが良い! 見た目小学生だけど! この数年で身長あんまり伸びてなかったみたいだけど!!

 

 

「完成……僕の腕も捨てたものじゃないな」

 

 

 見るが良いさこの素晴らしき整理整頓術! なんということでしょう、あれだけ膨らみ雪崩攻撃をしてきたクローゼットさんが気持ちよさそうに寝ているではないか。いや寝てないと思うけど何となくそんな感じがする。さて空いている所に僕の着替えとかを入れてっと。そうだ! 分かりやすいように線引きしておこう。ここから先は僕、ここからはちー姉ちゃんと。部屋のメモ帳を勝手に使うのもあれだからルーズリーフ使おっと。よし完成!

 

 そして最後は僕の命綱であるチョコレートを冷蔵庫に入れてっと……お、おかしいな……入れる場所がない、だと? なんだこの自己主張するかのように存在するお酒の缶は!? 何がよう、新人だな? って言いそうな存在感を放っているんだよ! と、とりあえず隙間作ってそこに入れておこう。さて次は第二試合……だけどイチ兄の所に行かないといけないから後でいいや。に、逃げるんじゃないからね!! 戦略的撤退だからね!!

 

 

「たしかイチ兄の部屋は1025番だっけ……うん? なにあれ?」

 

 

 廊下を歩いていると女の子たちの集団が見える。良く見えないけど誰かを見ている? あっイチ兄の声がするからそれを見てたんだ。なにしてるんだろう?

 

 

「ねぇねぇ? 何見てるの?」

 

「ひゃ!? し、篠ノ之君……? きゃ~~~!!! 可愛い!!」

 

「ジャージ着てる! か~わ~い~い」

 

「な、凪!? 良かった助けてくれ!? 頼む! お前なら箒の機嫌治せるはずだ!」

 

「箒姉? うん、良く分かんないけどやってみる~ノックしてもしもーし、箒姉?」

 

『な、凪か!? な、なんで此処に居る!?』

 

「いやなんでってイチ兄の部屋に遊びに来たんだけど……もしかして一緒なの? なんかよく分かんないけどイチ兄が困ってるから入れてあげなよ?」

 

『ま、待て!! まだ開けるな! すこし、待て……』

 

 

 待つこと数分、僕とイチ兄は箒姉の許し? を得て部屋の中に入ることが出来た。ふむ~ちー姉ちゃんの部屋とは作りが違うんだね? でも広いしホテルより良い感じなんじゃないかな? あんまりああいう所に入ったことないけど。

 

 

「ところでなんでイチ兄は追い出されてたの?」

 

「あ、い、いやそれはな……」

 

「う、うむ……そ、れはだな、うん」

 

 

 なんなのこれ? 二人とも気まずいって顔しながらチラチラとそれぞれの顔見てさ……なにこれ? 何度も言うけどなにこれ? 青春なの? 新しい1ページなの? まっ多分イチ兄が箒姉の着換えかを覗いたんでしょ? それぐらいしかこの反応で思いつかないし。

 

 

「そ、それそうと一夏! きょ、今日は疲れただろう……? 早めにシャワーを浴びたらどうだ……?」

 

「お、おう! そ、それじゃあお言葉に甘えて……」

 

 

 イチ兄はそそくさと着替えを持って脱衣所と思われる所に向かった。う~ん、前途多難だなぁ~しかしこれはチャンスだよ箒姉! 今まで離れていた分を取り戻す絶好のチャンス!

 

 イチ兄が居なくなったタイミングで箒姉は小さな声で僕を呼んだ。うん? なに?

 

 

「呼んだ?」

 

「……な、なぎぃ……! ど、どうしよ、う……い、一夏に暴力を……き、嫌われてしまった……!」

 

「なにがあったのさ?」

 

「しゃ、シャワーを浴びていると部屋に誰かが入ってきて……あぁ、同居人の者かと思って出てみれば一夏だったんだ……そ、その時の服装がば、バスタオルを巻いただけで……まさか一夏だとは思わず恥ずかしくなって……つい木刀で追い払ってしまって……ど、どうしよぉぉぉ! きらわれたぁぁぁ」

 

 

 箒姉まさかのガチ泣きである。それはもう見事なまでに。どうしようこれ……と、とりあえず落ち着かせよう。というよりそれは仕方がないでしょ? 誰だってお風呂上りに異性がいたら驚くし恥ずかしいって。それぐらいの出来事だったら僕だってあるさ。たばねぇとかたばねぇとかたばねぇとか……稀にクロエさんとか。言い訳させてもらうとその時は本当に事故でした。単純にクロエさんが入る時間帯をど忘れしてお風呂場に行ったらご対面……その時初めての土下座をしたね。許してくれたけど! むしろ逆に謝られたけど!

 

 

「箒姉泣かないで? それぐらいだったら問題ないから落ち着いて、ね? イチ兄も悪気があってやったわけじゃないんだしお互い知らなかったんだから一言謝って終わればいいじゃん」

 

「そ、それでゆ、るじてもらえるだ、ろうか……こんな、ぐすっ暴力を振るう女にいやげがざじて……」

 

「ないない。うん、大丈夫大丈夫。イチ兄がその程度で箒姉の事を嫌うわけないって。だからまずは泣き止もう? イチ兄が見たら余計に混乱しちゃうしさ」

 

「う、うん……」

 

 

 ふぅ、とりあえず落ち着かせることには成功っと。う~ん、それにしてもやっぱり変わったよね? もう確信で良いよね? 僕が居なくなる前と今とじゃ全然違うんだけど? 良い機会だし聞いてみよっと。話題を変えればもっと落ち着くでしょ。

 

 

「す、すまないな……す、こし楽になった」

 

「良いよ。それにしても箒姉って変わった? なんか僕が居なくなる前となんか、落ち着いたっていうか、そんな感じになった」

 

「……あぁ、そうだろうな……そう、なろうと努力したんだ……お前が居なくなって、からな」

 

「僕?」

 

「そうだ。すぅ、はぁ。小学生の時、姉さんが原因で私達は離ればなれになった、無論一夏ともだ。これから一人になるんだと思うと怖かった……姉さんが嫌いになった、なんで私がと。でもお前は私から離れたくないと言って年の離れた大人相手に一歩も引かないで、私と一緒に生活してくれた」

 

「あ~そのことは忘れてよ……すっごい我儘だったって思ってるんだからさ」

 

「お前はそう思っていても私にとってはどれだけ、嬉しかったか。それなのに私は……何かあるたびにお前に当たって、怒って……でもお前は気にしないと笑って……監視と聴取の毎日だったがそんなお前がいたから辛くは無かったんだ。でも……お前は私の前から消えた、いきなりだった……帰ってみるとお前がいるはずの部屋が静かで、監視の者達から攫われたと聞かされて……それで気が付いたんだ」

 

「……」

 

「私の我儘がお前を苦しめていたんじゃないかと……怒ってばかりで、素直に謝ることもできずお前が気にしないと言う言葉だけで解決してきた事に……だか、らだな。私が変わればお前が戻ってきてくれるんじゃないかと思って……でもいきなり変わるのが難しくて、やっと、やっとここまで出来るようになったんだぞ? 凪、お前から見て私はどうだろうか……? まだ、怒りっぽいままだろう、か……? な、凪……?」

 

「箒姉!!!!」

 

 

 がしっと強く箒姉を抱きしめる。ごめんなさい……ごめんなさい……たばねぇとクロエさんとの逃亡生活が楽しいとか思ってごめんなさい……箒姉は居なくなった僕をこんなに思っていてくれたのに一回も連絡しないで毎日特訓と勉強だけして……ほんとうにごめんなさい!!!

 

 涙が止まらない僕を箒姉は優しく頭を撫でてくれた。うぅ……ほうぎねぇ……!!

 

 

「ごめん……しんばいがけてごめんなさい……! だいじょうぶだよ? ほうきねぇはがわれてるよぉ……」

 

「凪……泣くな。男子たるもの堂々と、だ。全く、だからお前は弟なんだ……ありがとう凪、そしておかえりなさい」

 

「だだいまぁ!」

 

 

 立場逆転。僕のガチ泣きにも拘らず箒姉は優しい雰因気で包んでくれる。たばねぇ……クロエさん……決めたよ、僕は箒姉を護る。イチ兄と一緒に……頑張る。

 

 

「……え、えっと……おじゃま、だったか?」

 

「だいじょうぶ! イヂ兄はわるぐないぃ!!」

 

「良いから泣き止め。全く……すまないな一夏、弟の見っともない所を見せている」

 

「気にすんなって……あぁ~と、箒。さっきは、悪かった……返事があるまで入らなきゃよかったな……?」

 

「わ、私もだ……手が出てしまったのは……謝ろう、す、すまない……」

 

 

 なんという事でしょう。これぞ大団円。うぅ、涙がぁ~!! 結局僕が泣き止むのに5分くらいかかった……恥ずかしいな。でもあんなに泣いたのって初めてかも? というよりさ……落ち着いて考えてみるとあの頃って箒姉にとって一番つらい時期だったんだよね。僕はほら、男だし少し痛い思いをすることが多かったけど箒姉の場合はそれじゃなくて精神的にね……なんて言うか聴取の際の相手の大人、ちなみに男、ちょっと小太り、その人が箒姉を見る目がなんて言うか……うん、男の僕ですら気づくくらいあれだったんだよ。女の人ってそういう視線に敏感みたいだしかなり辛かったんだと思うと箒姉から怒られても嫌だなぁとかなんでだよとか全然思わなかったんだよね~だってそれで箒姉が楽になるならそれでいいし。というより僕が居なくなってから大丈夫だったんだろうか……! 箒姉に何かしてたらとりあえず首にバンカー連打と腹をドリルパンチ&ドリルキックだね。ちなみにこれでジャブ程度、本番は更なる苦痛を味あわせてやろう……ウフフ。

 

 

「ごめんね? なんか泣いちゃって?」

 

「言っただろ? 気にすんなって。折角会えたんだし昔のように仲良くしてに誰も文句は言わないと思うぞ?」

 

「そっか。うん、ありがとイチ兄。あっそういえばISの勉強する?」

 

「……お願いします。でもその前に飯食いに行こうぜ? なんか腹減ってきちゃってよ」

 

「そうだな。だが一夏、食事の後は勉強だ。あそこまで啖呵を切った以上、負けることは許さぬぞ」

 

「分かってるって」

 

 

 そして僕達は一緒に食堂に行って夕食を食べる。言った通りでしょ? 一度謝れば大丈夫だったでしょ? いやぁ~泣いちゃったけどイチ兄と箒姉が仲直りできたんなら万々歳。それにしてもやっぱり周りの女の子からの視線がなぁ……初日だから仕方がないかもしれないけど、うん? これで初日? 何て言うか気持ち的に数日経った気分なんだけど? まっいっか。

 

 ご飯を食べ終えた後、イチ兄と箒姉の部屋に戻って勉強会。今日の授業で習ったところを最初から教えるけどやっぱりイチ兄は理解できねぇと嘆いていた。分かる、分かるよ! 無駄に専門用語多いよね!! でも慣れてくれば何となく分かるから頑張ろう!! でも箒姉もあんまり理解してなかったんだね? 仕方がないけど……大丈夫、一緒に勉強から鯉に発展、じゃなくて恋に発展するんだよ! 頑張れ箒姉負けるな箒姉!! 僕はいつでも付き合いましたと言う報告を受ける覚悟は出来ている! 時間的に2時間程度だったけど勉強会を終えて僕はちー姉ちゃんの部屋に戻る。う~ん、ちー姉ちゃんが帰ってきてないなぁ? まだ仕事中なのか。それじゃあ先にシャワー浴びよっと。

 

 

「ふぅさっぱり~でも湯船につかりたいなぁ~シャワーだけじゃ疲れが取れないよ」

 

 

 さてさてシャワーを浴び終えたけど何しよう……とりあえずメールしよっと。このたばねぇ作成高性能スマートフォン、なんと通信傍受されない上にハッキング対策としてたばねぇ渾身の力作のソフトがインストールされている。しかも通信速度は一般のものをはるかに上回る代物さ! たばねぇ……ありがたいけどこれに力注ぎすぎでしょ? う~んたばねぇには朝メールしたしここはクロエさんかな? えっと『たばねぇ気絶したみたいだけど大丈夫?』まずこれだね。あっ返ってきた……『お説教しておきましたのでイギリスに被害はありません。凪様は安心して学校生活を送ってください。もし何かあればまた束様を止めますね』なんて素晴らしい……ありがとう! えっと『お礼になにか出来ることあったら何でも言ってね?』返信完了。僕に出来ることならなんでもやるよ! だってたばねぇのせいで大変だろうしあっきた。ふむふむ『それではお時間がある時一緒にお買いものしてほしいです』良いよ! 別に良いよ! それぐらいなら何度でもするよ! あぁ~癒しだなぁ~ふむ? イチ兄専用機がもう少しでこっちに届く? うん、楽しみにしてる~どんなのなんだろ!

 

 

「まだ起きていたのか。夜更かしをしていたら説教だと言ったはずだが?」

 

「ほえ? あっおかえりなさ~い。仕事お疲れ様です」

 

「……はぁ、あぁ。ただいま。束と連絡でもしていたのか?」

 

「そんな所です。ふふふちー姉ちゃん! 見るが良い! この素晴らしき整頓術を!!!」

 

 

 クローゼットを見てくださいという表情と仕草と言葉で伝えるとちー姉ちゃんは呆れた様子を見せた。な、何故だ!? 渾身の力作だと言うのに!!

 

 

「何故一夏の様にお前もこういうのが得意に……いや束の所にいたのなら当たり前か。それはそうとだ、凪。見たか?」

 

「何を?」

 

「……いや、良い。シャワーを浴びる。覗いても良いが覚悟はしておけよ?」

 

 

 なんだろうこのドキドキ……目の前でちー姉ちゃんが着ていたスーツを脱いでいく姿が異様に……これがアダルティなのか! とりあえず覗かないよ? 命は大事、大事じゃないけどまだ命は大事。それにしても何を見たって言ったんだろう? まさか下着? まっさかぁあのちー姉ちゃんが下着程度で狼狽えるわけないよね? たばねぇだって僕に着てた奴渡してなっくん洗濯よろしくなのだ~って言ったし。その時の表情が何かを考えてるような感じだったけど箒姉ので見慣れてたから何事もなく洗ったけど。その後何故かたばねぇが悶えてたけど。うーん、大人は謎だね。というか脱いだのはちゃんと畳んで……えっとハンガーは此処だっけ。はい終わり。

 

 そして十分程度経ってからちー姉ちゃんは脱衣所から出てきた――大きめのシャツだけ上に着て。あ、あのぉ……下は? なんで下着だけなのかな? 短パンぐらい穿こうよ? ちー姉ちゃんが良いなら良いけどさ。

 

 

「あっそうだ。たばねぇから預かりものがあるんだ」

 

「……異様に嫌な予感がするが渡してみろ」

 

「はいこれ。読んだら燃やしてだってさ」

 

 

 拡張領域にしまっていた紙を展開してちー姉ちゃんに手渡す。それを読むかと思えば冷蔵庫からお酒を出して飲みながら目を通していく……学園でのあのカッコよさはどこにいった? なんだろうこのおっさ――ナンデモナイデス。

 

 

「……凪、ここに書かれていることは本当か?」

 

「何を書かれているのか分からないけどたばねぇの妄想以外なら本当だと思うよ?」

 

「そうか……お前は、背中のそれについて何も思わんのか?」

 

「もう慣れたしこれのおかげであんな風にISを動かせるし特になんともかな? そりゃぁ最初は死ぬほど痛かったし接続して起動してみれば頭の中ぐちゃぐちゃになるし糖分足りなくなるし寝るとき邪魔だし鏡見てうわってなるけどこれはもう僕の身体の一部みたいなものだから。心配してくれてありがとう」

 

「……お前が良いなら何も言わん。それとだ、クラス代表の件はすまない。ついいつもの様に流してしまったがお前の立場を考えるべきだった」

 

「別に良いよ~それよりもちー姉ちゃん? この学園に誰も近づかない、誰も使わない、何かしてても問題ない場所ってある? 今更だけどさ、専用機の整備が他の人にさせれないって思いだして自分でやるしかないんだ? そんな場所ってある?」

 

「一つだけなら心当りがある。あとで案内しよう」

 

 

 ちー姉ちゃんは簡易キッチンに向かって火を使い紙を燃やす。何て実行力だ! 憧れるね! 僕だったら後でいいやとか思っちゃうよ。

 

 

「一夏には言わんがオルコットは代表候補としての自覚が欠けている。良い機会だ、あの高すぎるプライドをへし折ってやれ」

 

「い、いやぁ~それは難しいと思うよ? 相手は代表候補生で専用機を貰ってるぐらい努力した人なんだし……」

 

「ふっ教員一人をトラウマにさせた奴の言うセリフでは無いな。やりすぎるなとは言わん、お前が言ういつもの様に動いて戦え。期待しているぞ」

 

 

 ふむ~もしかしてイチ兄が下に見られたから怒ってるのかな? さすがちー姉ちゃん! 弟思いなんだ――へぶぅ。どこからともなく出席簿をだされて頭を叩かれた。うぅ~事実じゃないの? もう素直じゃないんだからとか思ったらまた叩かれた。ハイワカリマシタモウナニモオモイマセンダカラタタカナイデボクワルイナギジャナイヨ。

 

 もう遅い時間だからそろそろ寝ろと言うお達しがあったから布団に潜り込む。それじゃあちー姉ちゃん、おやすみなさ~い。ふぁ~あ、明日も、頑張ろう……そして僕は睡魔に負けて意識を失った。




天才な兎は恥ずかしがる弟を見たかったがあまりにも普通に洗濯されたので逆に恥ずかしくなった様子。くーちゃん? きっと真面目だったんですよ。
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