BLAZBLUE CLUSH DAILY   作:南条

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 どうも南条です。
 本来私の専門はギャグです。バトル系とか恋愛系とかそれ以上にギャグなんです。むしろ私にはギャグしかないんです。分かってください。

 とりあえず、これは更新速度遅いです(誰だ今「お前自身が更新遅いんだろうが」とか言った奴は。全くその通りだよこんちくしょう)。
 元々ただの自己満足なので。こんな世界があったらいいなぁーくらいにしか考えてませんので、そこら辺よろしくお願いします。


第一話 ~平和な日常~

「ちっ…めんどくせえ…」

 

 ぼやきながら青い空を見つめる。

 微妙な時期に居場所を変えるのは居心地がいいものではない。だから俺が今イラついてるのは自然なことだ。少なくとも他人にとやかく言われる筋合いはないと思ってた。

 そしてイラついてるからこそ、俺が今 見晴らしのいい場所でくつろいでても問題はないはずだ。心を鎮めるために。心を安らげるために。

 

 だってえのによぉ…

 

 

 

「ラ、ラグナさ~ん…?」

 

「ラグナく~ん!早く降りてきてよ~!」

 

 

 

 なんだって邪魔されなきゃいけねえんだよ…!!

 

「うるせえなぁ…。俺がいなくても何とかなんだろ?適当に決めといてくれや。」

 

 気怠い声で返す。ついでに向こうから見えているであろう足も揺らす。

 

「だ、だめですよー…。ちゃんと皆で決めないと…」

 

「そーだよー!だから、はーやーくー!!」

 

「うっせえな!俺は何だっていいって言ってんだろ!!」

 

 催促の声がやかましくて、つい声を荒げる。

 おとなしめの声は「ヒッ…」と小さい悲鳴をこぼす。それとは対照的な元気のいい声は「む~…」と頬を膨らませてるのが見なくても分かった。

 役目に囚われすぎなんだよお前ら…。

 

「…ラグナくん、早く降りてきて」

 

 低めのトーンでまだ諦めない意思を表す声。

 …っとに、めんどくせえなぁ…。

 

「嫌だね」

 

 俺がそう答えると、相手のため息が聞こえた。…諦めたか?

 

「分かったよラグナくん。そこまで戻りたくないって言うんなら…」

 

 少しの間を開け…低めに告げる。

 

 

 

「担任を呼ぶよ」

 

 

 

 更なる強敵の予感。

 

「………」

 

 返答に困る。今ですら面倒だってのに、今度はこいつらの百倍は面倒な担任だと…!?

 

「………」

 

 相手も返事を待っている雰囲気が伝わってくる。なんとなく片方は笑ってる気がする。

 

「…仕方ないね。じゃあ呼んでくるよ」

 

「ちょ、待て!ストップストップ!」

 

 死の宣告に条件反射で体を起こして待ったをかけてしまう。

 

「…来る?」

 

 計画通り、そんな風な笑みを浮かべるリス人。

 くっ…謀ったか…!

 

「…わーったよ!!行きゃいいんだろ!行きゃ!」

 

 うるさい二人がいる場所に乱暴に飛び降りる。正直会いたくはねえけど…すっぽかしたら、それはそれで後々が面倒だ。

 

 諦めて目的地へと向かう。おどおどしてんのが前、すばしっこいのが後ろに位置する形で歩くため、そう簡単に逃げられない。もう逃げる気もないが。

 

 そして奇しくも、目的地へとたどり着いてしまった。ふと、扉の上に取り付けられているプレートに目をやる。

 

『二年 B組 担任:セリカ=A=マーキュリー』

 

 この゙学校゙は不思議なことに、クラスプレートの下にデカデカと担任の名前まで書いてある。その名前を見て足が勝手に動きそうになるから嫌なんだよ。

 逃げないための対策か、元気なリス人が俺の腕を拘束してきた。まるでカップルがする腕組みのように。

 

「先生ー!ラグナくんを捕まえてきましたー!」

 

 空いた方の手で勢いよく扉を開ける。

 腕をがっしり掴まれて(こいつの胸は)後ろにはおどおどしてるやつ(なかなかにハリがあって)がいるため逃げられない状況(これはこれでいいな)だ。仕方ない(しかし本当にデカいな)な…諦めて(女医さんにも負けてないな)お叱りを喰らう(是非とも確かめたいところだ)か…。

 

 そんなことを考えていると、

 

「こら!ラグナ!」

 

 怒りながら俺のもう片方の腕をホールドするポニーテールの担任。何故!?

 

「勝手に抜け出しちゃダメでしょ!後でお説教だからね!」

 

「って!お、おい担任!何してんだよ!」

 

「ラグナが席に着くまで逃げないようにしてるの!」

 

「アホか!?ここまで来て逃げるわけねえだろ!!どんだけ小物だって話だよ!!」

 

 何考えてるか相変わらず分かんねえ!なんでこんな人が教師やってんだよ!

 

「ほらラグナく~ん?席までご案内しますよ~?」

 

「お前はもういいよ!腕離せ!」

 

 その胸の誘惑もやめろ!気が散るんだよ!

 

「はーい。じゃあちゃんと席に着いてねー」

 

 と、俺の片腕が解放される。よし…!これで移動が楽に

 

「ラグナー!!」

 

「ごふっ!!?」

 

 なったと思ったら今度は顔面に何かが飛び掛かってきた。きちんと衝撃を受け流してなかったら今頃俺の首は床にポロリしてるところだ。

 

「てめっ…ニュー!いきなり飛び掛かってくるんじゃねえよ!」

 

「ラーグーナー♥」

 

 人の話を聞かないやつが現れたおかげで余計に訳の分からん事態になった。というか首への負担が…!

 

「こらっ、ニューちゃん。席に戻ってくださいっ」

 

「やーだー!!ラグナと一緒にいるー!!」

 

「いい加減に降りろこんにゃろう!前が見えねえだろうが!」

 

「ラグナ!女の子に対してなんて口のきき方してるの!」

 

「この状況で怒るべきは俺じゃねえだろ!?」

 

「ラグナく~ん。もう一回はさんであげよっか~?」

 

「お前はさっさと席に戻れよ!!」

 

「こら!ラグナ!!」

 

「だからなんで俺なんだよ!?」

 

「せ…」

 

 

 

「席に着いてくださーーーい!!!!」

 

 

 

 教室の入り口近くでの騒ぎ声よりも一際大きい声が後ろから響く。

 俺だけではなく、皆がそちらを振り返る。

 

 そこにはさっきの、おどおどしていた女がいた。

 

「…あっ…」

 

 静まり返る教室。皆の視線を一つに集めた張本人は慌てながら喋る。

 

「あ、あの、このままだと埒が明かない、って、言うか…何も始まらない、っていうか…」

 

「「「「あー…」」」」

 

 俺を含め騒ぎを起こしていた奴らは顔を見合わせる。まあ俺は何も見えないんだが。

 

「…じゃあ、早速始めよっか」

 

 担任がそう言うと、俺の首に抱きついてるやつを強制的に席に着かせる。

 俺もさっさと席に着こう。

 

 …頑張りを無駄にしないためにも。

 

 

 

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 

 

 

 

 俺がいる学校は『蒼碧(そうへき)学園』っつー場所で、それなりにデカい学校だ。俺はここに転校してきた。

 前の学校で問題を起こして停学喰らってたら、ここに転校することが決まった。どうやら問題を起こす生徒はこの学校にくるようだが、卒業時には真人間に変わってるらしい。世間ではその特殊な在りかたから゙更生学校゙とも呼ばれてる。

 

 しかし酷いやつばかり集まるってわけじゃない。普通にこの学校から進学するために受験する、普通のやつもいる。たとえばさっきの大声で事態を鎮圧したやつとか、胸のデカいリス系亜人種のやつとか。

 

 まあ、だからと言って校内の雰囲気がいいわけでもない。荒れてるやつは荒れてるし、頭のおかしいやつはおかしい。変人もいれば、ムサいやつもいる。

 正直いい学校とは言えない。ここの教師陣も変なやつばっかだし。

 

「━━━という訳で…早速、クラスの係を決めたいと、思います…」

 

 段々と小さくなっていく声に気づく。これは確か…さっきの女か。

 

 見ると教団に立つ金髪碧眼の自信無さげな顔をしたやつが立っている。さらにその後ろには、無言で係名をもくもくと書き綴っている金髪碧眼が一人。

 容姿が驚くぐらいに似ているが、姉妹なんだとか。見分け方としては、自信がなさげなのが髪型がストレート。無言なのが長い三つ編みだ。

 むしろ似すぎててそれぐらいしか違いが分からん。

 

「えっと、とりあえず、委員長と副委員長は決まってるよね…」

 

 その呟きが聞こえたのか、無言な方が委員長の下に『ノエル=ヴァ―ミリオン』と、副委員長の下には『Λ(ラムダ)-No.11-(イレブン)』と書いた。

 

 …初見じゃ絶対に分かんねえな、あれ。

 

 ちなみに無言がラムダで、おどおどしてんのがノエル。性格は似てない姉妹だな…。

 

「そ、それじゃ…ラムダお姉ちゃん、係名とかよろしくね」

 

 お前が妹なの!?それは知らなかったよ!!

 

「………うん。じゃあ、ノエルは挙手とか頑張って」

 

 …どっちも声小せえな。新しい共通点発見だよ。

 

 っと、ラムダが書記を始めたな。正直俺はどれでもいいけど、できれば楽なのがいいな。

 さて、最初の係は何だ?

 

 

 

『復讐係』

 

 

 

 一発目からぶっ飛びすぎだろ。

 

 なんだ復讐係って。訳分からん。そんな係は初めて聞いたし初めて見たぞ。

 まったく…どうせ教師のミスだろう。あんな係作るなんて偶然でなければ困る。

 

「………」

 

 しかし無反応の教師。

 

 …ん?

 

 

 

 まさかマジで作ったのか?

 

 

 

 いや…ウソだろ…?まさか、そんなことが…?

 

 そ、そうだ!周りの反応を見れば分かる。生徒ならさすがにツッコむ奴の一人や二人…

 

「………」

 

 しかし無反応の面々。

 

 ウソだろ!?あれに違和感を感じないってのか!?

 

 と、俺が一人驚愕していると、ラムダが次を書き始めた。

 

 

 

『色物係』

 

 

 

 色物係!?なんだそれ!?二つ目も聞いたことねえ係だ!!

 色物ってあれか!?色っぽいアレか!?もうどういうことなのか全然分かんねえ!!

 

「………」

 

 そしてこの無反応!何!?こいつらにとってはこれが普通なの!?

 

 どうなってんだよこの学校…?そう思っていると、ラムダが三つ目を書い

 

 

 

『露見係』

 

 

 

 もう…!分かんねえよ、俺…!!

 

 さっきから知らねえ係ばっかりだし、それを平然と受け入れてるこいつらが分かんねえ…!!

 

 

 

『遺書係』

 

 

 

 つーかなんでさっきから暗いのが多いんだよ!もっと明るいの出せよ!

 

 

 

『パイオツ係』

 

 

 

 下ネタじゃねーか!いや正確には上の部分だけど!

 

 

 

『聖遺物係』

 

 

 

 それ別作品じゃねえか!!

 

 

 

『性育係』

 

 

 

 また下ネタじゃねーか!つーかそれ保健係でいいだろ!!

 

 

 

「………終わり」

 

 

 

 これで終わりなの!?まともな係がねえじゃねえか!!

 

「何か、質問のある方は…いませんかー…?」

 

 ノエルがおずおずと呟く。どう考えてもおかしい部分だらけだ…!考えるまでもねえだろ!

 

「じゃあ、はーい」

 

 ふと、隣に座っているリス女が手を挙げる。

 

「あ、いいよマコト。何?」

 

 親しそうに質問を促すノエル。親友とか言ってたっけか…。

 

「あのさ、係名一つ目から思ってたんだけど、」

 

 

 

「ふつう、そんな係ってないよね?」

 

 

 

 ………。

 

「えーーーーーーーーーーっ!!!??」

 

 最初から思ってたんかーーーい!!

 

「え?なにラグナくん?もしかして前の学校にはあったの?」

 

「いやあるわけねえだろ!」

 

 あったとしたら大分問題を抱えた学校だよそこ!!

 

「そうじゃなくて、おかしいって思ってたんなら早く言えよ!こっちが混乱するわ!」

 

「いやーだってあり得ないでしょーあんな間違い。それに最後まで見てみたかったし」

 

「あったけれども!その気持ちちょっとあったけれども!」

 

 担任がポンコツだから可能性はあるってのがまたいやらしいぜ…。

 

「でも確かに、おかしい…よね…」

 

「おいラムダ!なんでそんなの書いたんだよ!」

 

「………私は、用紙の通りに書いただけ。ちなみに、用紙を作ったのは先生」

 

 そうだろうよ…。担任の低スペックは学校中に知れ渡ってるって言うしな。正直会ってみるまでは信じてなかったけど、今ではすっかり納得できるレベルだ。

 

「おい担任。何なんだ、あの係はよ?」

 

「…ふむ。まずこの状況において言うべきことは一つ」

 

 担任は少しの間を開け…言い放った。

 

「ラグナは言葉遣いがなってないよね」

 

「おい失敗を認めろよ天然。言うべきことはそれじゃねえだろ」

 

「いやー…先生もなんでこんな風に記載されてるのか分からないんだよねー」

 

 頬をかきながら言う担任。あんたが作ったんだろ…?

 

「先生が作ったんじゃないんですか?その用紙」

 

「ううん、ちゃんと先生が作ったよ。そして全クラスの担任の先生にちゃんと渡したよー」

 

 まずい。他のクラスでも混乱が。

 

「と、とりあえず…先生。係名をきちんと書かないと、進められないですよ…?」

 

「うーん…ちょっと用紙借してー」

 

「………はい」

 

 間違った用紙を受け取った担任は黒板に向き直ると、意味不明な係名を書き直していく。

 

 

 

『復讐係』➔『学習係』

 

 

 

 あ、まともになった。

 

 

 

『色物係』➔『生き物係』

 

 

 

 一文字違うだけで全然別物じゃねえか…。

 

 

 

『露見係』➔『保健係』

 

 

 

 つーか一文字違うにしても間違いがピンポイント過ぎるだろ。

 

 

 

『遺書係』➔『図書係』

 

 

 

 さて、それじゃあ真面目にどれでサボるか考えるか…。

 

 

 

『パイオツ係』➔『配達係』

 

 

 

 今のところは保健係が有力候補だな…。

 

 

 

『聖遺物係』➔『掲示物係』

 

 

 

 うーん…ダメだな。仕事が多そうだ。

 

 

 

『性育係』➔『体育係』

 

 

 

 論外。

 

「これでOK!それじゃ、先生ちょっと他のクラスのも直してくるから、みんなで仲良く決めてねー」

 

 しかも俺に対しての抑止力が消える。これなら楽そうな保健係に…

 

「ちなみにラグナは体育係ね」

 

 なんつう置き土産だよこんちくしょう。

 

 なんなのあの担任?俺に恨みでもあんの?前世でなんかあった?

 

「………ラグナは、体育係でいい?」

 

 ラムダが静かに尋ねる。いや、ないわ。体育係だけはないわ。

 

「いや、俺は保健係がいいな」

 

「えー!?ラグナくんが保健係ー!?」

 

 マコトが騒ぎ立てる。なんだし。

 

「ラグナくん運動神経よさそうだしさー、体育係でいいんじゃない?」

 

「嫌だね。絶対(ぜってー)面倒くせえじゃん」

 

「えー」

 

 この話で周りに火が付いたのか、教室の中は騒然としてくる。

 

「そういうお前は何がやりたいんだよ」

 

「んー…体育係!」

 

「へー、さいですか」

 

 ていうか、こんな風に話してるけど、普通は第一希望とかで黒板に名前書いたりすんじゃねえのか?

 

「あ、えっと…あのー…」

 

 予想通りというか…ノエルが切り出そうとしているが、皆が皆好きに話していて、どうすればいいか分からなくなっている。…ここまでおどおどしてる奴は初めて見たぞ。

 

「………ノエル」

 

 見るに見かねたのか、ラムダがノエルの肩に手を置いて言う。

 

「………ファイト」

 

 あくまでも傍観者でいるつもりかアイツ。

 励ましじゃなくて状況を打開する策をくれてやれよ。さっきみたいな大声で言え、とか。

 

「ほらほら皆ー。一回落ち着いて話聞こうよー」

 

 パンパンと手を叩きながら静かにさせるマコト。…こいつが委員長じゃダメだったのか?

 周りがようやく聞く姿勢になると、小さい声で話を始めるノエル。

 

「そ、それじゃ、えっと…第一希望がある人は、前に来て書いてください…」

 

 よしよし、よく言えたな。及第点だ。

 クラスの大半がぞろぞろと前に出て黒板に自分の名前を書いていく。かくいう俺も白のチョークで保健係の下に名前を書き込む。

 

「ラーグーナー♥」

 

 一際高い声が聞こえる。振り返ると、案の定と言うか…さっき俺の首に飛び掛かってきた奴がいた。

 

「次チョーク借してー♥」

 

「ああ、いいぜ。ほれ」

 

「ありがとー♥ラグナ大好きー♥」

 

「はいはい」

 

 一歩後ろに下がり他が書きやすいようにする。

 すると他の奴まで保健係に記名していたのが分かった。配達係以外は二名までが上限だから、邪魔者がいるとじゃんけんで決めるとかいう話になる。できればそれは避けたい。

 

 見るとチョークを借した白髪の三つ編みも、自分の名前を書いていた。

 

 

 

『ラグナ』⇄『ν(ニュー)-No.13-(サーティーン)

     ↑りょーおもい♥

 

 

 

 何故か俺以外の名前を消した上で変なマークまで。

 

「…お前、なに書いてんだよ」

 

「へへー♥ラグナと一緒ー♥」

 

 こいつやべえな…これくらいのこと屁とも思ってねえ。

 

「つーか他の奴の名前消しちゃまずいだろお前…」

 

「お前じゃなくてニューって呼んでよーラグナー。」

 

「…ニュー、他の奴の名前を消したらまずいっての」

 

「ニューはラグナのことしか見ないもん!他の人間なんて蟻以下だもん!」

 

「さらっと酷いことを言うな!」

 

 あーもう!ここまで来るとありがた迷惑だ!!

 

「ていうかニュー…変なことまで一緒に書くのやめてくれねえか?おかしな噂が立ちそうだからよ…」

 

「ニューは本当にラグナのことが好きだよ?何も変じゃないよ」

 

「………」

 

 分かってる。コイツが妙に俺に絡んでくるのは、そういう気持ちがあるから。

 まあ嬉しくない訳ではないんだけどよ…あることを除けば。

 

「あ、あのー…ニュー・サーティーンさん…?」

 

 ふと、緑色の髪で常にヘラヘラしてる奴がニューに話しかけていた。身長(タッパ)はあるのに筋肉そのものがなさそうな、それこそ…もやしみたいな野郎が。

 

「僕の名前、消されると困るんですけど…」

 

 ん?こいつ…保健係志望の奴か。ははぁ…それでニューに名前を消されて声をかけたと…。

 でもやめとけ。゙あるこどってのはこのことなんだが…

 

 

 

「うるさい。私とラグナの邪魔すると殺すよ?」

 

 

 

 こいつはとにかく、特定の人物以外に一切の容赦がないんだよ。それこそ相手を病院送りでは済まさないような殺気を纏うもんだから、それで余計に人が近寄れないんだ。

 

 正直こんな奴でも好意を持ってくれるのは嫌じゃない。嫌じゃないんだけど…

 

「お前怖いんだよ…!!」

 

 不必要に殺る気にならんでくれ!こっちまで威圧されるから!

 

「す、すみませんでした…」

 

 もやし野郎はすっかりニューに脅されてしまった。引きつった笑みを浮かべながら別の係のところに視線をやるあたり…諦めたか。まあそりゃそうだよな。話しかけただけで「殺すよ?」とか言われたらそりゃビビるわな…。

 

 

 

「んふっ♥ニューは絶対、ぜーったいラグナと同じ係になるのー♥」

 

 

 

 結局、その後はニューの威圧に皆が負け、保健係は他に名前が書かれることはなかった。

 俺としてはラッキーなのかもしれない。無事に楽そうな保健係になれたのだから。

 

 

 

 …しかし、これはこれで、係の仕事とは別で疲れそうだと思った。

 

 

 

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 

 

 

 

「なんで保険係なのラグナ。きちんとした理由を説明して」

 

 体育係にならなかったからという理由で担任に呼び出された。理不尽。

 

「なんでって…楽そうだったからだよ。悪いか?」

 

「はぁ…まあそんな理由だと思った」

 

 ため息を吐きながら机の上の書類をがさがさとする担任。なんでそんなに俺に固執するんだか…正直面倒だ。

 

「ラグナは転校してきたばかりだから、色々と気を遣ってあげたいの」

 

 ふと、担任は急にそんなことを言い出した。

 

「三学期が始まって、ラグナが入ってきた。それから一週間経って…ラグナは問題なんか起こさずにクラスの皆と話せてる。マコトちゃんとか、ニューちゃんとか…。私はそれが嬉しい」

 

「………」

 

「だからこそ、ラグナにはこれからも問題なんか起こして欲しくないの。体育係になれば少しの時間でも私の目が届く範囲に来なきゃいけなくなるでしょ?それが目的だったんだけど…」

 

 思えば、担任の隣の席は体育担当の教師のものだ。予定を聞くためにここに来てほしかったのか…。

 

 …なんだそりゃ…。

 

「勝手な心配なんかすんなよ。前の学校でだって、向こうが悪かったんだ。自分から肩をぶつけてきた癖にいちゃもんをつけてきたから、ムカついて…殴っちまった。それだけだ」

 

 別に自分が悪くないとも考えてない。きっかけはどうであれ、殴ったのは俺だ。手をあげた俺にも責はある。

 だから面倒な手続きを踏まえたうえで、こんな面倒な学校に入ったんだ。

 

「俺自身から誰かに手を出すなんてあり得ねえからよ。その…なんだ、あんたのおせっかいは余計なお世話なんだよ」

 

「…そっか。うん、納得できた」

 

 担任は大きく頷き、満足したような笑みを浮かべる。

 

「じゃあ保健係になったことも許します」

 

「許されてなかったらどうなってたんだ?」

 

「教師の権限を使ってラグナを体育係にしてた」

 

「行動力ありすぎだろ!」

 

 そこまでする必要があるのか疑問に思った。

 

 

 

「おいお前、職員室では静かにしろ」

 

 

 

 突然後ろから声をかけられた。

 

 いや、かけられたと言うにはあまりにも威圧的だった。まるで気に入らない相手を牽制するかのような力強さが込められていて、その相手が俺のような…

 

「あ、バレット先生」

 

 担任がその教師であろう名前を呼び、俺は振り返ってその人物像を目の当たりにする。

 

 

 

 ジャージだった。

 

 

 

「ダ、ダセェ!!」

 

 白髪に褐色の肌。凛とした顔つきまではいいのだがそれ以外が酷過ぎる。白のシャツに緑のジャージを羽織り、上着であるジャージは前が全開。下なんてスポーツ用の短パンを履いてるだけだ。その服装が小脇に抱えている出席簿と驚くほどマッチングしてない。というかダサい。

 

 しかしそんな服装だからこそ強調される乳や尻に目が行ってしまう。無駄にでけえな…。

 

「ダ、ダサいとはなんだ!私はこのスタイルでずっとやってきたんだぞ!!」

 

 その恰好で!?ウソだろ!?教師やってる大人が普段からジャージ着てるとかヤバすぎだろ!!

 

「こらラグナ!先生に向かっていきなり何てこと言うの!」

 

 担任に言われハッとする。危ねぇ危ねぇ…あやうく問題になるところだったぜ。ギャグ的な。

 

「確かにバレット先生の恰好はアレだけど、言っていい事と悪いことがあるんだからね!」

 

「今お前が言ったことが悪いことだって気付け天然!!」

 

 お前が追い打ちかけてどうすんだよ!止めたいのか止めたくないのかどっちだ!

 

「わ、私の恰好はどうアレなんだ…?」

 

 ほら見ろ。同じ職場の同僚に酷いこと言われて傷ついてるじゃねえか。バレット(ジャージ)先生が可哀想だろまったく…。

 

「と、とにかく、職員室だけではない。学校の中では極力静かにするように。」

 

 風紀委員みたいなことを言い残して、ジャージ先生は職員室から出て行った。ただの注意のつもりが自分のファッションセンスへの指摘になるとは…不運な教師だ。

 

「ラグナ、確かに静かにした方がいいよ。あと言葉使いを直す。じゃないと教育指導だって受けかねないんだから」

 

「ハァ?どうせただの注意だろ?」

 

「ううん。ただの注意で終わらないのが有名なんだよ。この学校が更生学校って呼ばれてる所以(ゆえん)は、その厳しい指導があるからなんだって」

 

 ほー…なるほど。つまり指導をしてる奴は相当優秀なんだろうな。

 

「まあ覚えとくわ。それよりもういいよな?そろそろ授業始まるし」

 

 いつまでもこんなところにいるつもりはない。俺はさっさと教室に戻って寝るんだ。授業?知らんなそんなもん。

 

「うん、じゃあホームルームでね。ラグナ」

 

 見送りの笑顔で手を振る担任。恥ずかしがらずにそんなことが出来るのは一種の才能なのだろうか。かくいう俺は気恥ずかしくなり、そそくさと職員室から退散した。

 

 

 

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 

 

 

 

 ホームルームが終わり下校時間、もとい放課後になった。

 

 この学校は全寮制なため、学校の敷地内に俺たちの仮の家がある。大体は三人一部屋だが、四人とか二人とか結構なバラつきがある。人数に関してはさほど気にしてないんだろう。転入生が多いのがその理由かもしれない。

 

 俺も男子寮へと向かう。周りには同じように部屋へと帰る奴がいて、人ごみが好きじゃない俺は嫌な気持ちになった。

 ほとんどの生徒が行くのが、デカくて美麗な装飾が施されている男子寮。きちんと入学してきた奴らが住む建物だ。

 

 一方の俺は問題児が住む建物(魔窟)に足を進める。真面目と不真面目で仕切りをつけることで競争意欲を掻き立てるとかなんちゃらかんちゃら。

 その証拠に問題児用の寮は信じられないくらいにボロイ。外装なんてところどころが剥げてるし、カビも生えかかっている。しかし中はそうでもない。更生した奴らが内装は掃除したらしく、入ってみれば外観のイメージとは違う光景に驚かされる。更には金をかけて元々なかったエレベーターを取り付けたとか部屋のサイズを大きくしてスペースを作ったとか色々されたらしい。

 まあそれも大分前の話だから、俺としては先人達に感謝するばかりだ。よくやった。

 

 エレベーターに乗り目的の階まで昇る。そして自分の…自分たちの部屋に着き、鍵を使って中に入る。

 

 するとそこには、

 

 

 

「ヒャッハー!!ドラムも中々に面白えじゃねえかー!!」

 

 

 

 楽器を叩きまくりながら高笑いをするフードの変態が居た。

 

 こいつが俺のルームメイトであることに残念な気持ちで心がいっぱいになる。何故俺の周りには変人しか集まらないのだろうか…?誰か一人くらいでも癒しの存在が居てくれればよかったのだが…

 

「あん?なんだよラグナちゃ~ん、帰ってたのかよ?」

 

「たった今な。つーかテルミ、ドラムの音量押さえろよ。隣に迷惑だろ?」

 

「ハンっ!嫌なこったね!俺はこんなとこに転校させられただけでもイラついてんのに、趣味の楽器弄りさえも規制されなきゃいけねぇのかぁ?ラグナくんよぉ、お前俺をイラつきの頂点に立たせようとでもしてんの?どーなんでーすかー?」

 

 面倒くせぇな相変わらず…。この悪態にも慣れてきたけど、いつも思うことがある。コイツ絶対友達少ねぇな。

 

「そんなんじゃねぇよ。ただ周りに迷惑だって言ってるだけだ」

 

「ったく、ラグナくんはお堅いねぇ~。学校なんかに通っちまうからそんな思考回路に染まっちまうんだよ。それともそういうのが好きなのかぁ?」

 

「学校にすら行かねぇお前とは違ぇんだよ。とりあえず、音押さえろよ」

 

「は~いよ。仕方ねぇから下げてやるよ」

 

 そう言ってドラムの音量を弄るテルミ。これで少しは静かになるな…つーかヘッドフォンでもしろよこの野郎。

 とりあえず疲れたし、ソファーで寝るか…。そう思い、体を横にすると…

 

 

 

「ヒャッハー!!下げるつもりが逆に上がっちまったぜー!!ごめんねラグナく~ん!!」

 

 

 

 すぐ側でドラムの大音量が鼓膜に突っ込んできた。破れるかと思った。

 

「うるっせぇぇぇ!!今すぐ下げろテルミぃ!!」

 

「あぁん!?聞こえねぇなぁ!今何て言ったんですかー!!」

 

「てめぇ絶対聞こえてるだろ!!とりあえず下げねぇとそのドラムぶっ壊すぞ!!!」

 

「やれるもんならやってみなラグナく~ん!この俺様の華麗なスティック捌きで返り討ちにしてやんよぉ!!ヒャハハハハ!!」

 

「てんめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

 

 結局ドラムをぶっ壊して寝た。テルミは部屋の隅っこでいじけている。自業自得だバカ。

 

 

 

 

 

 …それにしても、面倒なとこに来ちまったぜ。こりゃこれからもっと苦労するな。

 

 無口な奴、おどおどし過ぎな奴、おせっかいな奴、一方的な奴、リスな奴、ジャージな奴、変態フードな奴…今日会っただけの奴らでこれだもんなぁ…。これから知り合いが増えていくと思うだけでぞっとする。それなら少数と面白いことできりゃいいか。まぁその少数でも変な奴しか集まらないんだろうけど。

 

 

 

 …本当に、面倒くせぇとこに来ちまったもんだぜ…。

 

 

 




 いかがでしたでしょうか?クスリとでもしてくれたら幸いです。

 前書きでも申し上げた通り、本当にただの自己満足なので更新もまちまちです。ネタが浮かんだら書くような感覚ですので。
 また、このようなネタをやってほしいとかのリクエストも受け付けています。何か案がありましたら感想とかにでも送っといてください。本編の中にぶっこんでおきますので。

 ぶっこんでおきますので(大事なことなので二回言いました)。

 皆様、それでは次の機会に。GETB!
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