中立の艦娘達と大湊警備府の艦隊が戦闘をしている海域……。
「こ……こんなのって……」
絶望感漂う表情で水面に膝をつくのは、大湊警備府の第1艦隊旗艦、足柄であった。
彼女の回りには大破し轟沈寸前の艦娘が5人、水面に横たわっている。
「わ……私がっっ!!ここまでやられるなんて……」
「もういいでしょ?轟沈していないとは言え、貴女の仲間はこのままだと……死ぬわよ?」
足柄に感情のこもらない声で諭したのは、重巡である足柄よりも数倍はあろう巨大な艤装を装備した、身長2mはあろう大型の艦娘であった。
その髪は鮮やかな銀髪で日の光に照らされて白く輝いている。
そのボディは大和型よりもさらにグラマラスであり、胸部装甲は龍穣や瑞鶴であれば見ただけで消し飛ぶ程の豊満さを誇っていた。
「ふっ、ふざけないで!!!このままおめおめと逃げ帰るなんて!出来るわけ無いわ!!勝利こそが私の全てなんだから!!!」
足柄は挫けそうな己を鼓舞し自らを奮い立たせ立ち上がる。
「……そう、死を望んでいるというのね?わかったわ、もう何も言わない……」
足柄の20cm主砲に対してその巨大過ぎる艤装には、足柄の4倍程の巨大な連装砲、80cm砲が8門搭載されていた。
「あれで皆がやられた……でも、戦艦の貴女には無い私達の最後の武器があるわ!!!」
足柄は両足に装備されている61cm魚雷を相手に向ける。
この近距離でしかも巨大すぎる艤装ではまず回避は不可能、足柄の口元はにわかに緩み勝利を核心的した……。
魚雷を発射する直前の事であった。
足柄の身体に大きな衝撃が来たと同時に、爆音と共に自らの艤装が破壊されていく。
「え?……な、なんなのよ!!」
足柄は気付いていなかった、いや、気付ける筈もなかった。
「いつから戦艦に魚雷が撃てないと錯覚していた?」
その言葉が示す事実はただ1つ、雷撃である。
「そんな……馬鹿な……戦艦が……」
気付いて悔やんだ時には、時すでに遅しである。
足柄は大破しその場で仰向けに横たわる……。
「あのサイズで水偵も飛ばせて……魚雷も撃てるって……酷く出来の悪い冗談ね…………」
足柄の部隊は弾着観測による射程外からの砲撃により壊滅していたのだった。
「……何時までも此処で苦しむのは辛いでしょ?」
「……」
足柄は無言のまま目を閉じる。
「私の砲撃もあと一発しか撃てないから、一撃で全員仕留めてあげるわ……」
「そこまでよ!!足柄!無事かしら?」
そこに現れたのは妙高型1番艦であり、大湊警備府第2艦隊旗艦を勤める妙高秘書艦であった。
「……なんてこと……精強を誇る我が軍の第1艦隊が……」
妙高は目の前に広がる惨状を見て青ざめる。
今までの戦いの中で大破撤退した経験は数えられないほどあるが、大破して全艦行動不能状態になるなど、初めて見る光景であったからだ。
「くっ……全艦戦闘準備を!!」
既に戦闘体勢をとる第2艦隊と次いで到着した那智率いる第3艦隊も戦闘体勢を取り始める。
「……良いのか?このままでは貴女の仲間は死ぬだけよ?」
「……足柄……」
「姉……さん……私は大丈夫だから、此処でアイツを倒さないと……きっと後悔するわ……」
「………………」
「全艦!!撤退します!第1艦隊の人達を二人一組で運んで下さい!!」
「……姉…………」
足柄はそこで気を失った。
「姉妹を見捨てて敵を倒したとしても……やっぱり後悔するわ……」
そう言ってい妙高は足柄を抱き抱えて後退する。
「……ふぅ……この場所はもう駄目か……急いで引っ越しの準備をしなければ……友鶴、引っ越しの手伝いお願い出来るかしら?」
「あ~い、何処かいく宛はあるのですかぁ?フリードさん?」
巨大戦艦の背後から現れた、重量感溢れるヘルメットを被った黒髪ツインテールの幼女は去りゆく大湊艦隊を眺めて言った。
「……さあね……」
フリードと呼ばれた艦娘は同じ大湊艦隊を見ながら、静かに答えるのであった。
80cm主砲は実在してました。
攻城兵器としてですが。