「ねぇ大井っち?」
佐世保鎮守府より帰還した北上提督は、自室で秘書艦の大井と話している。
普段と変わらないのほほんとしたその雰囲気から、深刻な内容の話でないことは容易にわかる。
「どうしました?北上さん?」
北上の布団に全裸で潜り込む大井、その大胆な行動も北上にとっては普段と変わらない日常であるかの様に、いつも通りスルーして話を進めている。
「響……あの駆逐艦に回天母艦って言われたよ……」
「……そう、ですか……そんな事!気にしないで……良いですよ……」
大井の表情は寂しそうなものであるが、布団の中ではしっかりと北上に抱きついている。
「あいつ……あの時の事、ずっと恨んでるからね~」
「M作戦の事ですね……でもアレは提督さんが自分の意思で……」
ときわ台鎮守府の元提督は自らの意思で回天に乗り込み、自らの意思で特攻していった。
それは事実ではあるが、当時の提督や他の艦娘は気付くことがなかったが、最後の提督の特攻の補助……と言うより事実上の
「4年前のあの日……私が真実を隠しておきたくないって思って……」
「えぇ、解っていますよ……北上さん、そんな北上だから長門元帥を始め他の艦娘の人達は、此処までついてきたんですから」
4年前、ヴェールヌイが独立を決めた日、北上から真実を聞いて怒り心頭のヴェールヌイが北上と大喧嘩になり、北上の射った主砲がヴェールヌイと北上の間に立って喧嘩を止めようとした、大井の腹部に至近距離で命中するという大事件があったのだ。
「ごめんね大井っち……」
その時の傷が大井のお腹に痛々しく残っている。
傷を消すことは可能であったが大井の要望で残してある。
本人曰く、北上さんに付けられた初めての傷(ハート)だからだそうだ。
北上は布団に潜り込んで大井の傷を優しく撫でる。
「もう、北上さんったら……そんなに悪いと思ってるなら、提督のお仕事もしっかりやってくださいね?」
「……善処するよ……っていうか大井っち、また裸じゃん……」
呆れる北上だったが大井のすべすべの肌の感触を堪能しながら眠りにつくのであった。
舞鶴鎮守府 元帥執務室
「長門さん!大変なのです!!」
ノックもせずに慌ただしくやって来たのは電であった。
「どうした?そんなに慌てて?」
長門元帥はむっちゃん人形の新たな洋服の製作中であった。
「たった今偵察隊から入電があったのです!!」
「ほう?佐世保と大湊に忍び込ませてあるスパイか……」
「はい!そのスパイさんからなのです!」
舞鶴鎮守府は戦闘力も去ることながら、情報戦の分野では他の鎮守府より頭1つ抜きん出ている。
電は1枚の紙切れを長門に手渡す。
そこにはカーンカーンカーンと一見ただの落書きのように見えるが、舞鶴だけで通じる暗号で調査報告が書かれている。
「……姉二人が大怪我しちゃったよ!もう帰りたい……これだけか?」
「あ、まだあるのです」
電はもう1枚手渡す。
「氷山空母に動きありだよぉ~!一緒の部隊に配属されちゃった!よっろしくぅ~!!!」
「長門さん、感情がこもってて可愛いのです」
あやねるは神である。
「こほん、成る程佐世保の切り札が動くとなると……ただ事では無いな……電!すぐに大井に艦隊の編成を急がせろ!目標は氷山空母だ!!」
「了解しましたのです!!」
その数分後提督執務室から電の悲鳴が聞こえたとか聞こえないとか……。
あやねるは神である。