「確かに小さくて可愛らしい駆逐艦を沈めるのは、私としても不本意な事だわ……」
「余所見は禁物っぽいよ!!」
改二となり狂暴性の増した夕立が突っ掛ける!
戦闘開始と同時に互いに距離をとり、お互いの距離は18km程度、夕立は挨拶とばかりに12.7cm主砲を撃ち込む、射程距離ギリギリにも関わらず、その弾丸はフリードの顔目掛けて正確に放たれる!!!
「腕は良いみたい……」
フリードは素早く右腕を振り上げ、飛んでくる弾丸目掛けて拳を叩き込んだ。
「……う、嘘っぽい……ぽい」
弾丸は軌道を変えたと言うより、その場で粉々に砕けて海の藻屑となる。
「駄目だ夕立!この距離じゃ此方の攻撃は、例え直撃してもダメージはほとんど与えられない!!」
「え?じゃあ、じゃあ~……どうするっぽい?」
改二となって戦闘力は上がったが、知能の方は御粗末なものであった。
「決まってるよ、奴に接近するんだ!接近してからの砲雷撃だったら私と夕立の火力なら倒せるはず!
「ん?良くわからないけど解ったわ!」
夕立は砲撃で牽制しながら距離を詰めようとする。
牽制と言えどその狙いは正確で、駆逐艦や軽巡洋艦であれば最悪でも小破、相手によっては中破や大破も有り得る程の効果を発揮している。
「……距離を詰めるか、さっきの重巡も同じ作戦をとっていたわ」
「まぁ、これだけ頑丈でおっきいフリードが相手だと艦載機でもないと、それ以外に作戦なんてないと思うけどねー?」
僚艦の友鶴がフリードの後ろからひょっこり顔を出した。
「出てこない方がいいわ、この二人を相手に貴女を守りきれる保証は出来ない……」
「も~!わかったわよ!私だって重武装の水雷挺なんだからね!いざって時はやってやるから!」
友鶴は頬を膨らませてフリードの艤装の陰に隠れた。
「私は小さな船と戦いたくはないけど、直ぐそこに迫る死への恐怖すら乗り越えて挑んでくる相手には、手を抜くことはしない……」
フリードはその巨大な艤装を展開し、自慢の80cm主砲4基8門を真っ直ぐに向かってくる夕立に向ける。
「う~、相手も速いっぽい~!!」
フリードは後退しつつ20cm副砲で牽制をしているため、夕立との距離を一定に保っている。
副砲と言っても重巡洋艦にとっては最大の火力を誇る主兵装、駆逐艦の装甲では副砲の直撃すらも致命傷となりかねないのである。
「よーしっ!!本気の本気だすっぽい!!」
夕立は一切の回避をやめて、全力でフリードに向かって突進する。
「ふふ、その速力なら確かに接近は出来るけど……」
フリードは20cm副砲を夕立に向けて放つ。
「甘いっぽい!!」
夕立は速度をそのままに斜め右方向に横っ飛びをして回避した。
「な、なに?あの動きは……」
始めてみる艦娘の行動に狼狽えるフリード。
狼狽えながらも砲身の位置を調節して更に大量の砲撃を始める。
「うわっ、砲弾の雨みたいねぇ」
しかし夕立は、右に左に斜めへの横っ飛びを駆使して全ての砲弾を避けきってしまった。
この動きはかつて響が戦った、佐世保鎮守府の利根があみだした高等技術である。
当時の利根はある程度速度を落とし、左右への横っ飛びをしていたが、夕立は更にそれを進化させ、最大速度のまま斜め方向への横っ飛びを完成させた。
これは夕立に直接教えた響(ヴェールヌイ)ですら不可能なテクニックであり、夕立のオリジナルと言っても過言ではない。
「面白い、駆逐艦にしておくには勿体無い程の戦闘力ね?」
フリードはお遊びは終わりとばかりに、80cm列車砲を2門、夕立の左右に挟むように発射する。
「ぽい?それなら避ける必要はないね?」
「夕立!!とまれ!!!」
「ぽい?」
響の叫びは夕立には届かなかった……。
そして……。
夕立の左右数mで巨大な水柱が立ち上る……。
「夕立!!!」
直ぐ様夕立に駆け寄るヴェールヌイ、夕立の周囲は真っ赤に染まっている。
「夕立!大丈夫……」
「い、痛い……なんなの?これ……」
響が目にしたのは、全身に傷を負い右足の膝から下が千切れ落ちて、そこから大量の血液が止めどなく流れ出ている夕立の無惨な姿であった。
「ゆ……夕立っっ!!!!!!」
しかしまだ眠い……zzz