「うぅ……なんか、もう、だめっぽい……ぽい……」
夕立の失った右足を手でおさえるが、出血が止まることは無く、夕立の顔から血の気が引いていく。
至近弾……直接砲弾が当たらなかった時でも、砲弾の爆発により強大な衝撃波が発生する。
その威力は駆逐艦の装甲ならば破壊する事もある程である。
更に今回夕立が受けたのは、80cmの超巨大砲弾の至近弾である。
戦闘力は向上している夕立であったが、装甲は並みの駆逐艦と大差はない……。
当然この強大な至近弾を食らえば甚大な損害を被ることは必至であった!!
「くっ……」
ヴェールヌイは夕立の腕を肩に掛けて立ち上がる。
「そうりゅうさん……夕立をすぐに大湊まで運んでくれ!!!」
ヴェールヌイの直ぐ後ろの海中から突然現れたのは、スクール水着を着用した正規空母蒼龍とそっくりの艦娘であった。
「あらー?良く私の無音潜行を見破りましたね?」
「心配性の貴女の事だから、こっそり戻って来ていると思ったよ、兎に角早く夕立を!!」
「了解!全速前進!!このそうりゅう!命にかえても夕立ちゃんを救ってみせるよ!!」
そうりゅうは夕立を曳船して海域を離脱した。
「……貴女も逃げれば良かったのに、一人で挑むなんて、勇敢だなんて思わないわ……無謀……」
「……勝算も無く挑むのは無謀だね……」
ヴェールヌイはその身に付けられていた装備を全て海へ投げ捨てる。
「?」
「夕立のお陰でこの距離まで来れた、勝算は充分だよ!!」
ヴェールヌイは装備を捨てて軽くなった為、駆逐艦最速の島風をも凌ぐスピードで駆け抜ける!
「速いっっ!!装備を外しただけで此処まで速くなる筈は……」
フリードは慌てて距離をとろうと後退するが、速力に差がありすぎるため、あっという間に後ろに回り込まれてしまった。
「そうさ、装備を外しただけで此処までスピードが増すのは、常日頃から鍛練を重ねて足腰を鍛えているかさ!!」
強大な火力を誇る艦娘ほど、その火力の源である艤装の扱いや戦術を重視しており、自身の肉体には無頓着である事が多い、フリードもご多分に漏れず装備の扱い、知識に関しては艦娘でも随一であったが、何処かの脳筋戦艦同様艤装を扱うための筋肉がついているだけであった。
「くっ!!接近したのは良いが、武器も無く何が出来るというの!?」
フリードが言った言葉は小学生にも解る簡単な理屈である。
力だけのボディービルダーと小学三年生が、接近してのタイマンバトルをやったとして、どちらが勝つか等1+1=2と答えるようなものである!
しかしそれは……。
「甘いよ!」
ヴェールヌイの小さな手がフリードの手に触れるやいなや、フリードの2mを超える巨体は宙へ浮き、くるりと1回転して海面に全身を打ち付けた。
渋川流を極めし艦娘、ヴェールヌイの格闘技術はもはやそこらの戦艦や空母では大人と赤子ほどの差が出来ているのだった!!
「夕立のお陰で此処まで来れたんだ……、絶対に此処で仕留めるよ……」
ヴェールヌイの反撃の始まりであった。
春の時は始めたばかりだったのでイベントはやらなかった。