時は盲剣の川内とレ級の死闘へとさかのぼる。
「ふぅ、レ級のやつ無茶しやがる」
俺はレ級の艦載機によって遥か後方へ送られてしまっていた。
「ぬるいわっっ!!!」
川内のあやねる声が高々と響くと同時に数発の魚雷が俺の方目掛けて飛んで来た!!!
「……南無三!!!」
轟音と共に発生した爆風により俺は宙を舞った……。
「うおぉぉぉぉぉっっっ!!!!!」
訳もわからず叫んでみたが、誰一人俺の存在に気付く事はなく俺の意識は遠退いていった……。
「………………」
「…………」
「……」
「おーい?」
「………………」
「おーい?死んでんのか?」
「……」
それから何時間経過したのか解らないが、良くわからないおっさんの声で目が覚めるが、俺は野郎の声で目覚めるような屑ではないので、無視して眠る事にした。
「お?アイオワが全裸でビスマルクと泥レスやってんぞ?」
「ダニィ!!!そいつを早く言いやがれくそったれがぁっっっ!!!!!!」
全く!これだから野郎は駄目なんだ!もう少しで世紀の一戦を見逃すところ……。
「まぁ、嘘だけどな?この変態やろうがっ!!」
「うおぉぉおおぉぉぉっっ!!!」
俺は訳もわからず涌き出てくる悔しさを、この男の厚い胸板にぶつけてやった!!
「フフフ、男って生き物は悲しみも憎しみも愛情の裏返しだったりするもんだ、良いぜ?このままパーリーの始まりと洒落こむかい?」
「いや、もういいです、消えて貰えますか?」
俺は色気付くおっさんを尻目に辺りを見回す。
「あれ?」
俺は何処かで見たことある風景にデジャブ感を受ける。
「あの、ここって……刻輪台鎮守府……」
俺は振り替えっておっさんにたずねた。
「ほう?ここを知ってるのか?なんか知らんが、この鎮守府はある日突然消滅したらしい……艦娘と提督は何処かで生き延びていると聞いていたが、あんたがここの提督かい?」
「……」
まさか……レ級の情報で聞いてはいたが此処まで跡形もなく消滅していたとは……艦娘達は良く無事だったな……。
「いや、言葉に出さずともその乳首に安全ピンで止めてあるバッジで解るぞ!」
しまった!前にレ級の奴がふざけて付けたやつがそのままだったぜ!
バッジには大潮の可愛らしい文字で浮気したら殺すと書かれている。
「ふふっ、参ったなぁー?確かに艦娘と結婚カッコマジが出来るのは、提督だけだがなぁー?参った参った」
俺はわざとらしく参ってみせた。
どうだ!?悔しいか?口惜しいか!?解ったらさっさと海にでも見投げして溺死でも捗らせろってんだ!!
「悪いな?俺は提督では無いが、ほらよ?」
男は左耳に安全ピンで止めてある、響LOVEと書かれたバッジを見せびらかす。
「ぐぬぬぬぬぬぬぬ!!」
こいつ……提督でも無いくせに……響とラブラブだとぉ!!
「貴様ぁ!!!」
俺は男の胸ぐら掴みグイっと引き寄せた!!
「おわっ!なにしやが……んん!!」
「う……」
虚を突かれて勢い余った男は、俺に引き寄せられるがまま、俺の唇目掛けて飛び込んできた……。
男とキスをするのは初めての体験であった……。
「「………………」」
俺達は暫くお互いを見つめ合って頬を赤く染める。
男の口からは微かに重油の香りがした。
「……何しやがるっっ!!!」
俺が呆けていると、男は突然興奮しだして右の拳を俺の左頬に叩き込んだ!!
「ひでぶっっ!!」
俺はその場から数mぶっ飛んで地面にめり込んだ……。
「あがががが」
俺は声にならない呻き声を上げながら奴を見る。
こいつ……人間の力じゃねーぞ!?長門クラスの戦艦なら数発で轟沈させることも可能だろう……。
殴ったのが俺でなければ確実に死んでいるぞ!?
「……ごめんなさい、わざとじゃないんです」
「いや、俺もやり過ぎた……響ともやり過ぎた……」
奴が起きたまま寝言をほざいた瞬間、俺の秘密兵器黄金の左フックが奴の股間にヒットした!!!
「あがががが……ば、馬鹿な!まるで攻撃の気配を感じなかったぞ!……てめぇ!本当に人間か!?」
ふっ、馬鹿め、こいつは攻撃のための行動では無いのだ!無意識のうちに俺の左手が【マイサン】を握り締めようと振りかぶった際に、偶然奴の股間に握り締めた拳が当たってしまっただけだからなっ!!!
響とやり過ぎただと!?くっ、悔しいのに、羨ましいのに……感じちゃう!ビクンビクンっ!!
「……お前のその初な反応……お前……もしかして童て……」
「やめておけ、それ以上はお前ごときが踏み入れる事の許されざる領域だ……」
そう、男が男としてこの世に生を受けたその時から、既にその修行は始まるのだ!!
いくつもの誘惑を振り切り、強靭な精神力でもってその清らかな身体を守り続ける事……その生存競争に勝ちのこったこの俺に、貴様の様な浮わついた軽い男が話しかけることすら頭が高いと言うのが解らんとは……。
「ふっ、さっきのはただの嘘だ……、お前もこの世に残る数少ない益荒男であったか……」
この瞬間、男が先程よりも一回り大きく見えた。
そして俺達は硬く熱い握手を交わした!!!
物語はまだ始まったばかりである。