涙ながらの響の訴えに以前大潮に呼ばれていたのをすっぽかした事を思い出した。
思えばあの頃から姿を見ていない……あれ?それ以前も見ていない気がするが恐らく気のせいだな!
などと考えていたらすぐに大潮の部屋の前にたどり着いてしまった……どうすんだ?おれ?
自らに問いかける、今までの艦娘の部屋の前で躊躇したことなど無かった……何故事ここに至ってここまで気が引けると言うのだ!!!
「ええぃ!ままよ!!!」
ドアノブに手をかける……鍵がかかっていない事をここまで悔やんだのは初めてだ。
その扉の向こうは……まさに俺そのものであった。
解りづらいと思うので具体的な説明をすると、部屋中に俺の写真がこれでもかって位に貼られていた。
「お……おお……」
あまりのど迫力に声が出なかった。
呆然と立ち尽くしていると、後ろの廊下の方で物音がした。
俺はすぐに部屋から出て音のする方を確認したが、既に人影は無かった……
「まさか!!」
俺は嫌な予感が脳裏によぎり廊下を突っ走った!!
「大潮!!!大潮なんだろ!!!!」
叫びなら全速力で走る俺の姿はさながら人間火力発電所の様だった!うぉーん!!!
「きゃっ!!」
廊下の角を曲がると俺の目前に大きな桃がどんぶらこどんぶらこと迫ってきた!!!
「ぐふっ!」
鋼鉄の胸当てが俺の顔面を崩壊させる!
「あ、提督?大丈夫ですか?」
まるで感情のこもらない心配のされかたに少しだけ興奮している自分が誇らしい
「廊下を走ってはいけないと何度説明すれば記憶出来るのですか?」
「艦載機こわすぞ?」
「別に構いませんが……提督の命も今日限りとなりますよ?」
そう言うが早いか矢じりが俺の眉間にあてがわれる。
「冗談です、ごめんなさい」
俺は心にも無い謝罪をしたが、加賀さんは特に追及することは無かった。
「そんなことより提督が前も明日も見ずに廊下を爆走していたのは、もしかして先に私にぶつかった大潮さんを探しているのですか?」
加賀さんは角で待ち伏せでもしているのだろうか?と言う疑問はさておき、やはり大潮だったか……嫌な予感しかしない……
「大潮はどっちに行ったかわかるか?」
「軍港の方に走って行きましたよ」
やはりか……くそ!間に合うか!?
俺は加賀さんを置いて軍港に向かって走った。
「はぁ、忙しい人……忙しいのに、報われる事は無いのですね」
軍港
「大潮っっ!!」
真夜中の軍港は水をうったような静けさだけを残し、艦娘専用の出港口が大きく口を開けている……
「大潮っ!君が何故出ていったのか解らないが、君の帰還をいつまでも待っているぞ!!!」
俺の声が届いていれば大潮はいずれまた元気な姿を見せてくれるだろう、決して夜を徹しての捜索が面倒臭いからでは断じてないのである
「さてと、とりあえず部屋に戻って武蔵で一発と洒落混みますかな?」
軍港出港口のすぐ近くで愛しの提督が追いかけてくれる事を、この後2日間に渡りドキドキしながら待ちわびる1人の少女の姿を多数の目撃報告があがったと言う。
その後……その少女は姿を眩ませたとらしい……
完(艦)
大潮の小さな横恋慕はまだ序章にすぎなかった!