氷山空母ハボクックを失い、川内が大破して入渠、さらには舞鶴の間諜だと判明した那珂が神通と共に舞鶴へ逃亡……川内はショックのあまり入渠が終わっても出てこない……。
「ふっ、我輩の鎮守府もいよいよ追い詰められてしまったのう……ヴェールヌイ?」
「……利根さん、元気をだして……」
ヴェールヌイが優しく俺の頭を抱き抱えてくれる。
今まで黙っていたが、俺は所謂転生憑依の艦娘だ。
別の次元の日本で一度死んだはずだが、理由は解らないが運良くこの次元の日本に転生して、利根の身体に憑依することが出来た。
「利根さんには私がいるから……落ち込まないでくれ、元の世界に帰りたいなんて絶対に言わないで欲しい」
ヴェールヌイの左手の薬指には、キラリと光る指輪がはめられている。
俺とヴェールヌイの永遠の愛の証……。
俺の中身が男だと知っているのはヴェールヌイと夕張位だ。
まぁ大分長いこと利根を演じてきたお陰で、すっかり慣れてしまって妹の筑摩ですら気が付かないほどの名演技っぷりだ。
「すまないヴェールヌイ……不安にさせてしまったな」
漸くヴェールヌイが帰ってきたと言うのに、悪いニュースばかりでへこんでしまっていたな……。
「今夜はヴェールヌイの帰還を祝って宴でも開くかな?」
「利根さん!」
ヴェールヌイはいきなり俺に抱き付いてくる。
やれやれ、何処かの頑固者のヴェールヌイにもうちの素直なヴェールヌイの爪の垢でも飲ませてやりたいぜ。
「あ、そうだった、利根さんにうれしい報告があったんだ」
そう言うとヴェールヌイは、いそいそと懐から紙切れを取り出して少し眺める。
「えーと、私の独断で刻輪台鎮守府跡に張り込みをさせている千歳さんからの報告があってね」
刻輪台鎮守府というと……。
「あの男が提督をやっておった鎮守府じゃな?」
突然消滅したと聞いたおったが、我輩の知らぬところで調査をしておったとは……。
「やはり秘書艦はお主に限るのう?」
「え?あ……ふふ、ありがとう利根さん、それで千歳さんからの報告なんだけど、あの元提督と接触出来たみたいで、現在あの提督と共に刻輪台鎮守府の復興を目指して活動中みたいなんだ」
……成る程のぅ、あやつの事じゃ、大方、大潮との新婚生活にも飽きてきて、また大勢の艦娘に囲まれた生活がしたくなったのであろう……。
「なんでも、刻輪台鎮守府を大きくして大湊と舞鶴と合併するつもりらしいよ?」
「そうか……今の世の中艦娘を建造することは出来ぬ、鎮守府を盛り立てるのなら、中立の艦娘か他の鎮守府の艦娘を取り込むしか無い……ヴェールヌイよ、千歳に伝えておいてくれ?」
我輩が新たな指令を出そうとするが、ヴェールヌイは我輩の考えなど全てお見通しの様じゃった。
「大丈夫、千歳さんにはあの提督の精密検査をするように伝えてあるよ?」
……ふふ、嫌なニュースばかりであったが、ヴェールヌイの帰還によって全て帳消し所か、圧倒的に好転してきておるわ!
「とある科学者の仮説、お主も知っておったか……」
ヴェールヌイは当然とでも言うようににこやかに微笑んでいる。
「私もあの仮説は気になっていたからね?勿論外れていればそれに越したことは無いけど、もし的中なんてした日には、この世界が再び深海棲艦の脅威に怯えることになりかねない……調べられる事は全て調べないとね」
ふっ、確かにあの頃に比べれば今の世界のいざこざ等、ただの子供の喧嘩も同然じゃな……。
「よし!ヴェールヌイの帰還と手土産の情報、両方を肴に我輩と二人だけで呑まぬか?」
「……利根さんと……二人……とっ!利根さんが良いなら私は構わないよ……」
酒も飲まずに頬を赤く染めるヴェールヌイ、ふふ、今夜はさらに燃え上がらせてやるとするかの~?
こうして我輩と正秘書艦ヴェールヌイは再開を果たした。
待て次回!
この世界にはヴェールヌイが二人いるのである。