二人の再開の翌日……。
「どうです響ちゃん?」
大潮が自慢げに控えめな胸を張り、海辺を指差す。
大潮が指を指した先には、貨客船
「これは……」
「ふふふふ、この船はですねー?来る!司令官さんとの
現在の世界では艦娘建造使用としても、通常の船舶しか出来ないという、設定を逆に利用して産み出されたのが、この貨客船
本来であれば、
「
この大潮の提案に対して、
それもそのはず、艦娘である自分達が何故通常の船舶に搭乗しなければならないのか、真面目で合理的な思考の
「うーん?響ちゃん、なんですか?その顔は?」
「あ、いや!違うんだ……ただ、なんでわざわざ船に乗るのかなと思ってね?」
良いわけが出来る程、
「えー!?響ちゃん!!そんなの決まってるじゃないですかー!?」
「え?決まってるのかい?」
「いや、決まってないとおもう……けど」
「響ちゃん!?」
「はっ!はい!!」
「私が響ちゃんと船旅をしたいと思ったからですよ!!」
大潮のまっすぐな瞳とまっすぐな心に打たれた
「あはっ、流石は大潮だよ……私の理解の更に斜め上を行っているね?」
「えー?そうですか!?響ちゃんだって鎮守府の提督さんになれるなんて、凄いと思うよ!!」
「……その事何だけど……、少し長い話になると思うけど、聞いてくれるかい?」
「もっちろんですよー!!響ちゃんのお話だったら、何時間でも聞いちゃいますよー!?」
大潮は
そして、一時間が経過した。
「大湊警備府までは大体3日位でつく予定だね、夜間は20時までの航行としよう」
「わっかりましたぁー!!操舵は大潮に任せて響ちゃんは休んでいてください!!」
大潮は舵を派手ぶん回しながら言った。
「いや、私も一緒にやらせてくれないか?」
「……響ちゃん」
「あ、ご、ごめんよ!」
この時
「い、いえ、大潮は大丈夫だから、あの、響ちゃんが大湊警備府を立ち上げたわけ、教えてもらえますか?」
「そうだったね、あれは今から大体4年程前にさかのぼるんだ……当時舞鶴鎮守府の秘書艦だった北上と喧嘩した時の事だった……」
ーー4年前舞鶴鎮守府ーー
「全く!まさか北上が
後に
この事件により、北上は
「わ、私は悪くない……、北上が勝手にやった事だ」
「でも……こんな騒ぎを起こす奴を提督とは認めては貰えないかもしれない……ふふっ、提督になってからもずっと大潮の事だけしか考える事が出来ずに、提督としての責務は全て北上や大井に任せっきりと言う有り様であったのに、今更認めて貰える筈もない……な」
現在は幾らかマシにはなったが、この頃の
冷静さを取り戻した今ならば、多少の聞く耳もあるので、北上の話もこの後おこる出来事にも、理性的に対処出来た可能性が高かった、しかし人生にはifなど存在しない。
「それなら、自分のしたいことが自由に出来る、そんな鎮守府を作れば良いじゃないか?」
突然
これは
「だ、だれだ!?」
「ふふ、私はヴェールヌイ、久しぶりだね?」
そこには、
「お、お前は確か佐世保鎮守府の秘書艦の……」
「よく覚えていてくれたね?君と会うのは6年ぶりだと言うのに」
演習と言えど初めて艦隊戦において、真っ向勝負によって敗北を喫した相手なのである。
「どうやって此処まで来れたのかは知らないけど……」
「お前は私が倒さなければならないリスの、上位にランクインしているんだ!!」
因みに、ランク1位は刻輪台鎮守府の元提督である。
「うわっ、ちょっと待った!」
飛んできた主砲をキャッチしながら、
「いきなり仕掛けてくるなんて、提督ならもっと慎重に行動するべきだよ……私は貴女の助けになるために此処まで来たんだ」
「助け?」
「そうさ、貴女は恋人の大潮を見つけ出して、ついでにあの
当たらずとも遠からず処ではなく、まさにビンゴっ!!であった。
「流石だね?良く調べ上げられてるよ、そしてこのタイミング……この舞鶴鎮守府にも佐世保のスパイが潜んでいるってわけだね?」
舞鶴からも数名佐世保に対して、スパイを送っているので、それ事態は不思議か事ではなかった。
「でも、何故危険をおかしてまで事実上の佐世保No.1と言われるお前が単身乗り込んで来るんだい?」
彼女ほどの有名人でおれば、下手をすれば見つかって捕らえられるか、攻撃を受けて舞鶴と佐世保の関係が悪化しかねない、これほどのリスクを省みず此処までやって来た目的、
「まず、うちの鎮守府には単身誰にも悟られずに、舞鶴の中枢に侵入できる人材が私だけだった事、もうひとつはこの話は私の独断であり、佐世保鎮守府は一切関わってはいないと言うこと、利根さんは私がマグロ漁船に乗っていると思い込んでいるよ、可愛いだろ?」
そう、ヴェールヌイは秘書艦でありながら、提督である利根を欺き、数名の部下と共に秘密裏に活動していたのである。
「……そこまで話してよかったのかい?」
「あぁ、問題ないさ、貴女もこれから舞鶴を離れて独立するのだからね」
「……とりあえず、話だけは聞かせて貰うよ?」
常識はずれな
「話は簡単さ、貴女は恋人の大潮さんを捜しだしたいけど、鎮守府の皆は半ば諦めかけている、そして佐世保やアメリカ、世界連合の台頭で大潮さん捜索にかける人員や費用が削られ続けている」
「……」
「自分が提督なのに、何も思い通りに行かない毎日にうんざりしているのだろう?」
「……まぁ、そうだね……」
今回の北上との騒動も、
「それじゃあ本題に入るよ?」
「…………」
「私の知り合いに、兎に角血の気の濃い3人の妹をもつとある艦娘がいるんだけど、その妹たちと言うのが本当に戦うことしか脳が無い艦娘達で、舞鶴と佐世保の平和思想とは正反対だと言う理由で今は何処にも属せずに、悶々とした毎日を過ごしているんだとか、それでその姉がなんとか妹たちを満足させてやりたくて、近々鎮守府の様なものを立ち上げたいと私の所に相談に来たんだ」
「……そこで私にその新鎮守府の提督になれってわけかい?」
「悪い話では無いだろ?」
「で、でも私は大潮に会いたいだけだし……その血の気の濃い妹さん達を満足させてやれるかどうかは……」
「大丈夫だよ、人捜しには人やお金ががいる、人やお金を増やすためには……戦いが手っ取り早いだろう?」
「……私に海賊の真似事をしろと言うつもりかい?そんな事をすれば他の鎮守府が黙って無い」
「
「確かにそれならば新鎮守府を立ち上げて、大潮の捜索に専念することもできる」
しかし
「何故その話を危険をおかしてまで、私に持ってきたんだい?そのお姉さんでも良かったのではないか?」
同じヴェールヌイのよしみ、と言うにはこの潜入はあまりにもハイリスクなものであった。
「簡単な理由だよ、貴女の大潮捜索にかける信念は誰よりも強く、貴女ならきっと見つけ出すことが出来ると思ったから、というのと…………これが本当の目的、私は大潮と一緒にいると思われる
「何故
酷い言われようであるが、真実なので仕方がなかった。
「たしかにそうかも知れないけど、
「ず、随分と物騒な事を真顔で言うね?……でも」
その状況に比べれば、明確な敵が深海棲艦のみであった以前の方が、精神衛生上は良かったのではないかと思っていたのである。
「艦娘は深海棲艦を倒す目的で存在しているはずだ、だが今現在、その役目を見失い深海棲艦と共闘し、あまつさえ艦娘同士で傷つけあっている!!私はこんな世界の平和なんて、1ミリも興味は無いんだ」
「それで、お前の目的は艦娘
「そのあと?その後なんて考えてはいないよ?艦娘は艦娘と手を組み、深海棲艦は深海棲艦と共に戦う、それだけだよ」
そう断言する
先程から公言しているように、
恐らくは大潮と世界を天秤にかければ、迷わず大潮を選ぶだろう。
「それでこの話、引き受けてくれるかい?」
「……」
「寝食を共にし、共に命をかけて戦ってきた舞鶴鎮守府の皆は今でも大切な仲間だと想っているし、今まで私を支えてくれている事にも凄く感謝している……」
「でも、此処には大潮はいない……」
交渉成立の瞬間であった。
そしてその日、
「………………」
「…………」
「……」
「そんな感じだったかな?」
大潮と二人、真ん丸のお月さまを眺めて語る
「あはは」
あまりに自己中心的で、あまりにも盲目的な
「……兎に角、恐らく今大湊警備府の提督をしているのは、
大潮の手前
「そう……そうですね!!響ちゃん!二人で何とかヴェールヌイさんを止めましょう!!響ちゃんへのお説教はそれが終わった後ですよ!!」
「う……なんでお説教?」
そんなすれ違いを交えつつ、二人の船旅はこのあと数日間続くのであった。
筆がもとい、指が重い。