大湊警備府の提督、ヴェールヌイが失踪してから3日がたった……。
「ヴェールヌイ提督が警備府に帰還しました!」
警備府内に提督帰還の府内放送がが響き渡る。
ーー提督執務室ーー
「お帰りなさい、ヴェールヌイ提督」
秘書艦の妙高が笑顔で提督を迎える。
「……はは、久しぶりだね?妙高」
ヴェールヌイは妙高に歩み寄り、握手を求める。
「えぇ、6年ぶり位かしらね?」
妙高は躊躇なく握手に応じる。
「それにしても……」
ヴェールヌイ提督は執務室を見渡してため息をはいた。
執務室には大潮グッズがところせましと、綺麗に陳列されていた。
「流石にこれは……恥ずかしいな?」
「後で倉庫にでもしまっておきますよ」
「そうしてくれ、そらよりも私が此処にやって来た意味は理解しているかな?」
ヴェールヌイ提督は、大潮クッションが置かれた椅子に腰かける。
わざとらしく尋ねたヴェールヌイ提督であったが、妙高の表情を見ただけですぐに納得する。
「ふふ、言わずもがなと言ったところか」
「いよいよ決戦の時が来たのですね?」
妙高は嬉々とした表情で拳を固く握っていた。
「あぁ、
「……障害はありますか?」
妙高は障害と言ったが心の内では獲物と変換されている。
「ふふ、そうがっつくものでは無いよ?クールで優しい妙高姉さんだろ?」
ヴェールヌイ提督はにやにやとしながら言った。
「あら?もうあのヴェールヌイ提督ちゃんではないのですから、猫を被らなくても良いでしょ?」
妙高もにやにやとして答える。
そう、血気盛んな戦闘狂の妹をもつ、妹思いの姉と言う設定は、
「そうだったね?本当は誰よりも
ヴェールヌイ提督は心の底から感心していた。
「まぁ、色々と発散する方法はありますから……ね?」
「そ、そうかい?」
「うふふ、知りたいですか?」
「いや、遠慮しておこう……」
妙高の笑顔に秘められた無言のオーラに、流石のヴェールヌイ提督も詮索はしなかった、
「……それで、障害だったね?」
何とも形容しがたい奇妙な空気に居心地が悪くなったヴェールヌイは、話をもとに戻した。
「えぇ、そうですね、今度は私が出撃しますからね?」
「うん、恐らく舞鶴の連中は嗅ぎ付けてくると予想される……」
舞鶴のスパイである川内型の那珂ちゃんから既に情報は漏れている、ヴェールヌイ提督はそう予測していた。
そして、その予測は的中しており、既に舞鶴鎮守府から刻輪台鎮守府に対して連合艦隊が向かっていたのである。
「舞鶴……ですか?あそこは武蔵に大井、加賀と役者が勢揃いですね?うふ、うふふふふ」
妙高は恍惚な表情で、20cm砲の砲身をひと舐めしながら笑っている。
「う……あぁ、確かに舞鶴は強い、正直
「その佐世保鎮守府の利根さんは動かないのですか?あの方も相当な実力者でしたね?」
挑発的に言いながらヴェールヌイの顎をクイっと持ち上げる。
「……佐世保は動かないよ、利根さんには真実を伝えてはいないからね、
ヴェールヌイ提督は妙高の手を力一杯掴むと、そのまま勢い良く振り払った。
「そうですか?あの真っ白な太股を……真っ赤に染め上げてあげたかったのですが」
妙高は振り払われる直前に、ヴェールヌイの手から逃れる。
「妙高っ!?」
「うふふ、冗談です、あの人はヴェールヌイさんのお気に入りですからね?……うふふふ、それではすぐに刻輪台に向かいますね?」
妙高は自らの身体の火照りを抑えるように、自分の身体を思い切り抱き締めている。
「戦場が!血生臭い殺戮が!私を呼んでいるわっっ!」
気合い十分に部屋を出ようとする妙高、
「あっ、ちょっと待って!」
退室しようとドアノブに手をかけていた妙高を呼び止める。
「……まだ何か?」
すぐにでも戦場に向かいたい妙高の語尾は、やや強くなっていた。
「あ、足柄の隊を警備府近海に配置しておいてくれ、恐らく
「あら?追い返すだけ……ですか?
妙高に次ぐ戦闘狂である足柄は一度戦闘になると回りが見えなくなり、妙高であっても止める事が難しい程である。
もっとも、実際は妙高が足柄を止めた事は1度も無いらしく、大体が一緒になって暴れまわっていたらしい。
「一応言ってはおきますね、それにしても、どうして
「……うん、彼女には24時間体制で監視を付けあるんだ、大湊が誇る監視衛星
金田中佐の500000トン戦艦、それは41cm主砲100基200門を搭載した、大湊警備府の最終兵器であり、
「はぁ、アレをだすと資材が吹っ飛びますが……」
「足柄達がやられたときの保険さ、弾薬は半分だけにしておいて出撃させてくれ」
佐世保鎮守府で行われた鎮守府会議にて、佐世保鎮守府の川内率いる第1艦隊と神通率いる護衛部隊をたった一人で壊滅させた、500000トン戦艦であるが、燃料と弾薬の消費が大和型の5倍以上もかかるため、鎮守府の資源が1度の戦闘で枯渇する可能性も否定できず、滅多な事では出撃は出来ないのである。
佐世保鎮守府に出撃したあとは、燃料弾薬ともに補給はされておらず、本人は少々ご機嫌斜めである。
「了解しました、……それにしても、いくら
「ふふ、備えあれば
南斗獄屠拳、相手に向かって飛び蹴りを放ち、すれ違いざまの一瞬に相手の四肢を切り裂く南斗孤鷲拳のシンの必殺技である。
「何とやらと言うか、憂いなしですけどね?」
「そうだったかな?」
長い間ロシアにいたヴェールヌイには、日本語はいささか難解であるのだろう。
「まぁ、いいですけど……あの戦艦が出るとなると、
「まぁ、それも彼女次第だよ、大湊の提督は二人も要らないからね、諦めて引き返すなら深追いはしないさ」
妙高は納得したように会釈すると執務室を後にした。
「いよいよ……最終決戦の幕が上がる……大丈夫さ、順調に来てるんだ、この後だってきっと上手くいくさ!」
ヴェールヌイ提督は、自らを鼓舞して両手で頬を打つ。
「利根さん、勝利の栄光を君に捧げるよ」
この瞬間から、
待て次回!!!
初めてのイベントは惨敗でした。
秋までにさらに準備をせねば……。