目をそらさずに刮目して見よう!
ーー刻輪台鎮守府ーー
「おかわり!いやぁー、やはり千歳の作る飯は抜群に美味いぜ!」
「……はぁ……」
千歳の奴、俺の身体を精密検査してくれた翌日から、どうにも様子がおかしい、俺が話しかけても適当な相づちを打つだけですぐに会話を終わらせようとするのだ。
「千歳お姉様の焼き魚は本当に絶品ですぅ!良いお嫁さんになれますよ!」
「そ、そうかなぁ?曙ちゃん、私の料理なら何でも美味しいって言うよね?」
そう言いながらも千歳はまんざらでもない様子だ。
曙や那珂ちゃん達と話すときは普通なのに、俺と話すときだけおかしくなる……。
「なあ千歳?後で一緒に海に行かないか?」
ここは二人っきりになって直接聞いた方が手っ取り早いな。
「えっとぉ、そうですねぇ……」
またもや生返事である。
「千歳御姉様ぁ、私と海で泳ぎましょう?」
「う~ん、そうね、いいわよ行きましょう?」
くっ……、何故なんだ千歳よ!!お前は俺に惚れてるんじゃ無かったのか!?
いや……待てよ?
こうは考えられないだろうか?
あまりにも俺の事が好きすぎて、目を合わせただけでも緊張してしまうのでは?
う~む、確かに有り得ないことではないぞ?
千歳は俺があまりにもナイスガイ過ぎて、自分では釣り合わないのではと不安に思ってしまっているのだろう、それで俺と話すときはギクシャクしてしまう……。
であるならば、俺が出来ることはたった一つだな?
「千歳、今から一緒に風呂に入らないか?」
シュッと言う風切り音と共に、俺のこめかみに曙の丸太ん棒が直撃、その衝撃により俺は数メートル吹っ飛ばされ、壁に全身を
「うぐ……、あ、曙……お前……」
全身に巡る痛みに耐えながら、何とか喉から声を絞り出す。
「はぁ?喋んな……」
曙はそれだけ言うと千歳と腕を組んで、外に出ていってしまった。
「提督さーん?生きてるぅ?キラリ~ん!」
那珂ちゃんがマイクを口元に持ってきたので最後の力を振り絞ってぺろりと舐めてやった……。
「……那珂ちゃんと……間接キッスしてやった……ぜ」
そこで俺の意識は途切れた。
「那珂ちゃんは皆の$¥@%……」
那珂ちゃんがイラつく口調で何やら怒っていた様な気がしたが、もはや俺の耳には届いてはいなかった。
「………………」
「…………」
「……」
それからどれくらいの時が流れたのだろう?
俺が
「もう夕暮れ時か……今日も刻輪台鎮守府は平和でしたとさ」
「あら?提督さん?気が付かれましたか?」
俺の頭のすぐ上から秘書艦となった神通の声が聞こえてきた。
「え?神通?」
その時、俺の後頭部に柔らかな感触が伝わっていることに気が付いた。
「はい?」
視線を真上に向けると、神通の胸と顔をしたから見上げる形であることに気が付く、そう、全男性の憧れ……所謂膝枕と言う、神と成り得た男のみが体験できると言う、史上最強の秘技を使っていたのだ!!
「す、すまない!」
脊髄反射的に謝罪の言葉が飛び出してしまった。
「え?何がです?」
うほっ!こいつは一体全体どう言うこった?
今まで神通が俺を見る目は、道端に落ちている使用済みの整理用品に唾を吐き捨てている時の様な、にわかに興奮を覚える冷徹な視線であったが、今の神通は提督である俺を、命を賭しても守りたいと言う思いが
「い、いや!なんでも無い……神通……良いの?」
「は?何ですか?いきなり……」
「いや、俺を提督として認めてくれるのか?なんつって……」
心の内に秘め続けていた俺の本心がだだ漏れてしまった。
「え?でも、貴方はこの刻輪台鎮守府の提督さんですよね?そして、この川内型2番艦!この神通がっ!!秘書艦なんです!!!」
物凄い気合いの入り様で、神通が高らかと宣言した。
「私が居れば提督を、世界一の提督にして差し上げます!!……
あんな娘?が誰のことなのかは知らんが、ようやく俺の提督としての資質が理解できる艦娘が現れたようだな?
「そうだな、神通と俺でこの刻輪台鎮守府を、世界最大最強の鎮守府にするために頑張っていこう!!」
千歳の事はまた後で何とかするとして、今は俺の目の前で熱い視線を向けてくる、この美人さんとの栄光へのロードを歩むことを第1に考えなければならないのだ!!
「さてと、神通?今は何時だね?」
「はい!ヒトロクマルゴー、午後4時5分になりました」
「そうか、他の皆はどうしている?」
「曙さんと千歳さんは先程海から帰って来て入浴中です、那珂ちゃんは……多分、もう帰っては来ないと思います……」
「え?もしかして俺がマイクを舐めたから?」
「違います……恐らく……」
神通は真剣な表情でディスプレイの電源を入れる。
「この画面は、今日の内に鎮守府の外周に100台設置しておいた、監視用カメラの映像が映されます」
なんと!
「それで、何が映っているんだい?まさかっ!!」
俺の予想では、那珂ちゃんが一人で茂みに隠れて、背徳的な行為に及んでいるのでは?と思い、鼻息を荒くして画面を食い入るように凝視した。
「じ、神通!!これは流石にプライベートの侵害なのでは?」
俺がやや狼狽えながらも、画面に食い付いていると、神通は溜め息混じりに説明を始めた。
「はぁ、提督さんが何を想像したのかは解りませんが、恐らく提督が思っているような映像は出てこないと思いますよ?……あっ!!提督!これを見てください!!」
神通が指を差したところには、那珂ちゃんと何者かが向かい合って話をしている様な、映像が映っていた。
「誰だ?」
那珂ちゃんと話している奴は、夕日を浴びている為に、逆光となり顔が良く見えなかった。
しかし、あのシルエットには見覚えがあった。
「神通、あの角みたいな偽装……」
神通は俺の顔を見ながら頷いていた。
「えぇ、アレは舞鶴鎮守府の元帥、長門ですね」
成る程、たしか那珂ちゃんは舞鶴鎮守府のスパイだったな?
って!長門元帥だと!?
「元帥自ら出てくるって、おかしくないか?」
「……提督、此方も見てください」
神通がリモコンでチャンネルを変えると、長門の後ろに見知った顔の艦娘達が、武器を構えて辺りを警戒している映像が映し出される。
「これは……」
俺はこの映像を見て全てを悟った。
恐らく俺と別れてからの10年間、俺に会いたいと言う思いだけを道しるべに、俺を捜し続けていたに違いない
そして念願叶ってようやく俺の居場所を捜し当てた時、長門元帥の脳裏に、だだ再会するのではつまらないと考えが芽生えたのだろう。
より感動的な演出をするための、
「長門元帥め、顔に似合わず粋なはからいをしてくれるぜ!」
それにしても、奴らを見るのは10年ぶりなのだが、やはり見た目は全く変わってないな?
俺などすっかりオッサンになって、アダルトな魅力がだだ漏れだと言うのに……。
「あの、提督?如何致しましょうか?千歳さん達を読んで迎撃しますか?」
「いや、あいつらの実力は俺が1番解っているつもりだ!」
そう、あいつら何だかんだ言っても俺の事を愛しているのだ、俺には全てお見通しだが、せっかくのサプラーイズなんだ、此方は気付かない振りをしてやるのが紳士と言うものだ。
「ではどうしますか?退却……でしょうか?」
「いや、俺一人で十分だ、曙達と君は晩飯の支度を始めていてくれ」
ふふふ、あいつらも長旅で腹も減っているだろうし、恐らく俺と離れ離れになってからは、傷心で飯もろくに喉を通らなかったに違いない。
「流石提督ですね!あの
神通が感動の涙を流しがらキッチンへ向かっていった。
さて……と、それでは感動の再会を演出するとしますかー!!
待て次回!!!
サプラーイズは大切ネー!