初めの最初
天龍ちゃんが遠い世界に旅立ってから、もう1年かぁ~
深海棲艦と戦いたくて、我慢の限界を超えた天龍ちゃんとサーモン海域に連れてってあげたまでは良かったのだけれど、まさか天龍ちゃんが武器を持たずにドラム缶を担いで来ちゃうなんて……。
さすがに天龍ちゃんを助けることが出来なかったわぁ。
私はいつもの様に天龍ちゃんの遺影の前で自慰行為に
天龍ちゃんが居なくなってから毎日……私にとってこの腐った現実を忘れる事が出来る唯一のひととき……。
「おーい!龍田先輩!!提督がお呼びだぜー?」
私を下らない現実に引き戻す後輩、摩耶の煩わしい声、今日もこの価値の無い1日が始まるみたい……。
「はぁ~い、もう少ししたら行くから、摩耶ちゃんは先に行ってて良いわよぉ~?」
「うぃーっす!そんじゃあアタシは先に行って待ってますんでー、龍田先輩も早めに来て下さいねー?」
騒音が去っていく、このままもう一度淫靡な快楽に浸りたい気持ちを、ぐっと堪えて出掛ける仕度を始める。
「うふふ、天龍ちゃん~?また後でねぇ〜?」
と言っても毎日の申し送りが終われば私の仕事は無い、出撃は提督と駆逐艦2人だけ、この刻輪台鎮守府の提督は直接深海棲艦と戦える程の力を有している。
だから私はいつも通り、天龍ちゃんがこの世に戻ってくる為の方法を探す事に1日の殆どの時間を費やす事が出来るのだ。
「天龍ちゃん、必ず貴女を救い出してあげるから……例え、どんなに犠牲を払っても絶対に……」
私は毎日の日課となっている決意表明を呟いて、提督のいる執務室の戸を開ける。
「遅れてゴメンなさ~い……あら?」
「あの、提督さんはどちらに?」
何故かそこに居た掃除係の青年に声を掛ける。
確か彼は……随分前に掃除夫としてこの鎮守府にやって来た男、提督の様な屈強な肉体も若者の快活さも皆無の人……。
「お?龍田か、今後とも宜しく頼むな?」
「……は?」
私の思考が数秒の間停止してしまった。
「おーい?龍田?どうしたんだ?」
私は頭で考えるよりも先にその男の首をはねた……つもりだった。
「た!龍田さん!?いきなりどうしたのですか!?」
私の薙刀は小さな駆逐艦の砲塔で受け止められていた。
刻輪台鎮守府の駆逐艦二枚看板の1角、大潮……私の最速の斬撃を一切の躊躇いもなく涼しい顔で受け止めるなんて、相変わらず可愛くないわぁ~。
「どうしたも何も、掃除夫が何やら調子に乗っているみたいだったからぁ、お仕置きしようかなって思っただけよ~?」
「龍田さん!!この人は今日付けで提督かっこカリに就任なされたんですよ!」
「え?そうなの?」
正直どうでもいい事だけど、あの提督が引退するなんてねぇ、世の中解らないものねぇ?
「あらあら、提督カッコカリさんに対してとんだ無礼を働いてしまいましたねぇ?私は解体処分かしらぁ?うふふ……」
提督カッコカリは戸惑いながら頭を掻いている。
気が弱そうで頼り甲斐の無い、提督としての器や素質はまるで感じる事が出来ない、こんなのが提督に選ばれるなんて、此処もいよいよ人材が枯渇したのかしら?
「お話は終わったみたいなので、私は失礼しますねぇ?」
「あ、あぁ、そんなわけで、皆これから宜しく頼む」
涙目の提督カッコカリを大潮さんが慰めている……あの子が推薦でもしたのかしら?
私は執務室を出るとその足で資料室へと向かった。
艦娘や深海棲艦に関する資料は大概ここにある。
轟沈した
工廠の人に無理言って、生命だけは維持している状況で現在に至る。
今の天龍ちゃんには魂が存在していない、人型の
資料室の文献によって、艦娘の魂と体の関係には深海棲艦が深く関係している事は解ったけど、それ以上の詳しい事は解らずじまい……。
今まで艦娘を生き返らせ様とした者は、何らかの理由で諦めざるを得なかった……或いは資料として残す事が出来なくなった……。
どちらにしても、これから私の取る行動は1つだけ。
「深海棲艦を使って実験するしか無いわ……」
もうこの資料室で得られる知識は無い、私が出来ることを精一杯やるだけよ……。
数ヶ月通いつめた資料室、もう来る事が無いと思うと少しだけ寂しさを感じるけど、うふふ、これからが本番なんだから……天龍ちゃん、もう少しだけ……あとほんの少しだけだから、待っていてね~。
それから数日後、中国の漁船を鹵獲した功績?が認められて、あの男が正式な提督に就任した。
それまで私に、とって取るに足らない存在であったあの男だけど、これからは有効に利用させて貰うから。
提督の権限で深海棲艦を捕まえさせて、私は好き放題実験が出来る。
私は意気揚々と明るい未来設計を胸に、提督執務室の戸を叩いた。
「提督さ~ん?少しお話宜しいですかぁ?」
待て次回!?
天龍田の壮絶な戦いの記録である。