荒潮は更に無理っぽいな……。
あと2日で75まであと38……。
久しぶりにまともに開催された鎮守府合同会議も無事に終わり、刻輪台鎮守府はいつもの穏やかさが戻る。
ふっ、昔はグータラで仕事なんかまともにやらなかったこいつ等が、今や各鎮守府(佐世保以外)の提督とはな?ずっと側でお前達を見続けてきた身としては、感慨深いものがあるな?
「武蔵、加賀さん……俺の教えを守ってよくここまで成長したな?」
「……」
「……」
ふっ、相変わらず返事は無いか……。
「提督……元提督、別に貴方に教わった事など何もありませんよ?」
相変わらずの無表情で冷たく言い放ったのは、加賀さんだった。
眼力だけで並の人間だったら3回は死んでいただろう……。
「そうだぞ?我々は貴様が居なくなってから……長門元帥の教えのもと、共に成長してきたのだ……惜しい人を亡くしたものだと、改めて思わされるな?」
長門か……そう言えばアイツとは昔ガチンコバトルをした記憶があったな、奴は良きライバルであった。
「いや、バトルしたのは響だぞ?」
「っっ!?」
武蔵の奴、俺の心を読んだと言うのか?
「……相変わらず心の声をそのまま口に出すのね?」
「はっ!?」
加賀さん……何だかんだ言って俺の事を覚えていてくれたのか!!
「……妄想ばかりしているのも昔のまま……」
「加賀よ、どうした?」
「加賀さん……」
加賀さんの切れ長の瞳から、一筋の涙が流れ落ちた。
「やっと……帰ってきてくれたのね?……提督」
なんだこれは?何故加賀さんは嬉し泣きみたいな感じな表情をしているんだ?……なにかの罠……なのか?
俺は困惑して後ず去ろうとしたが、身体中に槍が突き刺さっている状態で身動きが取れなかった。
「加賀よ!正気なのか?何を感涙の泪を流している!?」
くっ、武蔵の奴めいつからそんなに演技が上手くなった?俺を嵌める為に練習したのか?俺はハメるのは好きだが、嵌められるのは嫌だ!
「む、武蔵……何を企んでいる?加賀さんと結託して、ここまで殺られている俺を更に罠に嵌めようと言うのか?」
「……いや、そんな事は無い……と言うかそんな事をする必要は無い、今更貴様を嵌めることに何の利益も無い事が判明したからな?」
……ぐぐぐ、確かにこの前の鎮守府合同会議でも俺は発言することすら無く終わった……。
「だったら何故加賀さんが嬉し泣きを?」
「馬鹿者!それが分かれば苦労はない!」
……この武蔵の慌てようは演技では無い様だな?
「そんなの当然よ……私は提督が失踪したその時から、貴方を捜していたのだから……」
俺の目がイカれていなければ、加賀さんの頬は僅かに紅潮している様に見えなくもなかった。
「加賀!貴様!!
武蔵はその剛腕で加賀さんの胸ぐらを掴み上げる。
「ま!待て武蔵!!」
「……貴様は黙っていろ……」
物凄い形相で睨まれて少しチビる……。
「説明して貰おうか!加賀ぁ!!」
「……説明も何も、そのままの意味だけれど?私は提督に復帰して貰いたいだけ」
「くっ!血迷ったか!!」
今にも殴り掛かりそうな勢だ……しかし、無力な俺にはただリョナるのを見てる事しか出来そうもなかった。
「違うわ、貴女も本当は望んでいる筈よ?違うかしら?」
「な、何を馬鹿な事を……私がこんな奴を求めてなど……」
「私はもう秘書艦なんてやりたくないの、赤城さんと艦載機に囲まれた生活に戻りたいの……」
……いや、昔のままなのは加賀さんの方だったか、そう言えば今思い返すと、この人だけは最後まで我を通していたと言うか、マイペースな感じだったな……。
「……ばっ!馬鹿者がぁ!!」
武蔵は加賀さんを、勢いよく床に叩き付けた。
「ぐっ……」
床が原型をとどめない程の衝撃によって、俺に刺さっていた槍が抜けた。
「情けない奴だ!今更そんな我儘が通ると思っているのか!!私は違う!!私は刻輪台鎮守府の提督だ!!昔の私は遠の昔に捨て去ったんだ!!」
「そうなの、立派ね?……でも私は私……そうよね?赤城さん?」
「そうね、加賀さんは全く変わっていなわね?」
ボーキサイトをかじりながら、加賀さんの背後から赤城が姿を現した。
うーむ、この場合武蔵の言っている事が正しくて、加賀さんが我儘を言っているだけなのだが……。
「加賀さん!俺、提督になる!!」
俺は加賀さんと赤城の手を取り、部屋から脱出した!!
「赤城さんに気安く触らないで頂戴?」
軽く中指をへし折られる。
「ぐっ」
めちゃくちゃ痛くてオシッコが大量に漏れているが、今は気にせず突き進んだ!!
「二人共!一緒に来てくれ!!」
「深海棲艦の所へ行くのね?」
加賀さんが言った。
赤城は不安げに俺を見つめて来る。
「あぁ、そうだ……」
「鎮守府と敵対するつもり?」
「いや、そんな事はしないぞ?」
「?」
俺の何も考えていない脊髄反射的な回答に対して、2人は首を傾げるばかりだった。
「敵対はしない!それだけだ!!」
故橋本慎也氏顔負けの適当発言に、赤城は笑い加賀さんは微笑んだ。
「そうね、それなら行ってあげても良いわ」
初めは刻輪台に復讐なんて考えていたが、正直そんな事などどうでも良くなってしまった。
「よし!それじゃあ俺の第三の故郷へ戻るとするかーー!!」
「一航戦赤城!抜錨します!」
「一航戦加賀、出るわ!」
うおぉおぉぉ!!
2人が水上スキーの様に水面を滑走する後ろを俺は、右足が沈む前に左足を出し、左足が沈む前に右足を出す走法で海面を走る!
「1人なら沈まないか……凄いね深海棲艦!!」
待て次回!!!
ようやく話の先が見えてきた気がする、しかし慢心はダメ!すぐに路線変更したくなる悪い癖が出てしまう、主に提督を苦しめる方向へ進みたがる悪癖……。