「司令官さん!!おはようございます!!!」
うるせっ!!
突如として鼓膜を揺らす騒音が耳元で打ち鳴らされる。
「大潮!うるせぇぞっ!!身体は貧相なくせして声だけはデカイ奴だ……おっ?」
「そこまでだよ?それ以上雑音を振り撒くなら、簀巻きにして深海に沈める……わかったかい?」
ヴェールヌイの冷静な忠告は、その右拳が俺の頭蓋を砕いたのと同時くらいに言い放たれていた。
「ぐっ、不死身でなければ死んでいたぞ!」
「……頭蓋骨骨折だけじゃ死なないか……」
俺の耳に良く聞こえるように呟くヴェールヌイ、俺が不死身になったのは天命だったのかもしれないと、心底思う。
「司令官さん!!大丈夫ですか!?お怪我はありませんか!?」
見て分かるとおり、俺の額は砕かれ骨が見えているのだが、大潮には何も見えていないのだろうか?
「……あ、いえ!あまりにもグロテスクな絵面でしたのでスルーが無難かと思いまして……」
意外と空気を読める娘だ、流石は俺の妻である。
「放ってオケバナオルヨ?深海棲艦の治癒ノウリョクは伊達じゃないヨ」
操舵しながらレ級が言った。
その言葉の通り俺のデコは少しずつ再生を開始する、我ながら気持ちの悪い生物と化してしまったものだ。
「……」
神通は敢えてコチラを見ないように、窓から漆黒の海を眺めている。
「あの、司令官さん!ちょっといいですか?」
ふぅ、正直俺は眠い……性欲も無い俺にとって航海はただただ暇を持て余すばかりだ。
そんな時は寝るに限るのだ、性欲が無い俺にとって大潮はタダのペットも同然なのである。
「明日にして貰えないか?俺はまだ眠いんだ……」
俺はわざとらしく目をこすって見せた。
「あ、おの、少しだけでも良いので話を聞いてもらえませんか?」
「大潮」
「はい!」
「俺は疲れているんだ分かるか?」
「は、はい、それは分かります」
「よって、お話は明日だ」
「あぅ、お話は明日……」
「おやすみ」
「ぅう……司令官さん、お休みなさぃ」
俺に軽くあしらわれた大潮は、子供のようにシュンとなって縮こまってしまった。
「大潮?そんなつまらない男の事なんて忘れて、私とお話しないかい?」
「……響ちゃん、すみません!私も少し眠くなってしまったので、隣の部屋で寝ますね?」
大潮は足早に隣の部屋へ行ってしまった。
「……チッ!!」
「うごふっ!!」
ヴェールヌイは足元に寝ている俺を踏みつけ、反対側の部屋へ行ってしまった。
大潮の提案で寝室は全員別々になっていたのだ。
俺は血を吐きながら、グシャグシャに砕けた肋骨の再生を待つのであった。
待て次回!!
ギリギリ千文字に収めました。
また平均文字数が下がります。