フランスを目指す俺達の航海は続いている。
「司令官さん!!!」
今日も元気な騒音が船内に響く。
「うるせぇぞ!大潮!!」
「……」
俺の怒声に反応したのはヴェールヌイだ、物凄く恐ろしい表情をして俺を睨みつけている。
うむ、いつもと変わらない日常だ。
「司令官さん!!今日が何の日か知っていますか?」
「いや、知らないな?結婚記念日は来月だろ?」
さり気なく結婚記念日を覚えているアピールをする、できる旦那のあり方を知らしめてやるぜ!
「……あの、結婚記念日は再来月ですよ?」
「そうだな?よく覚えていたな?偉いぞ大潮」
大潮の奴、頭を撫でられて顔を真っ赤にしてニヤついてやがる。
「それで大潮?今日は何の日なんだい?この男が結婚記念日を忘れている事が分かっただけで、そんなに愛らしい仕草をしないでくれ」
冷静さを装って大潮の真っ白な太股を撫でるヴェールヌイ、やはりいつもと変わらない光景だ。
「大潮、今日は1年365日のうちの只の1日に過ぎない、何の日でもないんだぞ?」
俺は頭の緩いと思われる大潮にも分かるように、優しく説明してやる。
「あぅぅ、司令官さん……今日は1年の中でも五指に入る程の特別な日、なんですよー?」
汚れのない無垢な瞳、流石は大潮だな、ただ眺めているだけで心が洗われるようだ。
「大潮?下らない妄想をしていないで、現実をみなさい!今日は只の平日だぞ?」
やれやれ、子供の子守りは疲れるぜ。
いつもよりも執拗い大潮を軽くあしらった俺は、モーニングコーヒーを飲もうと椅子に腰掛ける。
「ん?」
いつもなら机にはコーヒーが置かれているのだが、何故か今日は置いていなかった。
「大潮?コーヒーを入れてくれるか?」
「……」
大潮は何も反応せずに、先程と同じ所でうずくまっている。
「……?」
体調でも悪いのか?
そう思った俺は、大潮に駆け寄る。
「大丈夫か?具合でも悪いのか?」
俺はうずくまる大潮の肩を両手で優しく触れる。
大潮は一瞬ビクッと身を震わせるが、すぐに俺の手に身を任せてきた。
「司令官……さん、今日が何の日か本当にわからないんですか?」
涙声でたずねてくる大潮、こんな時の大潮は妙な色気が感じられる。
「大潮……お前が何を言いたいのかは知らんが、今日は平日!あまり俺を困らせるなよ?今日は平日以外の何物でもないんだぞ?」
「司令官さんの……くそインポー!!不能ー!!!」
「ぐふっ!?」
罵声と共に俺の鳩尾に左拳を打ち込んだ大潮は、泣きながら自室へ閉じこもってしまった。
「ヒュー……ヒュー……ググッ……」
呼吸困難に陥った俺は、助けを求めるようにヴェールヌイを眺める。
「司令官……わざわざ大潮に嫌われてくる貴方には感謝の言葉もないよ……」
心底嬉しそうなヴェールヌイはのたうつ俺の頭に、硬そうな靴の踵を思い切りめり込ませると、大潮の部屋へと
いそいそと向かった。
「……ぐふっ、今日は……只の12月25日……なんだ……」
待て次回!!
ふぅ、今日は何事も無く1日が終わりそうです。
西洋の文化なんぞクソ喰らえだ!!