武蔵が無造作に重い扉を力ずくで開ける。
この一連の動きだけで、武蔵がこれまで如何に自身を鍛え抜いて来たかが容易に見て取れる。
「俺達は敵の正体を全く知らない状態だ、慎重に進んだ方がいいぞ?」
これまで俺はこの謎の敵とは、戦闘は愚か出会ったことすら無いということに気付いた。
「ふん、何を恐れる必要がある?いい加減この訳の分からない騒動にも嫌気がさしていたところだ!出て来い!!私が相手になるぞ!!」
「……」
闘技場に大声が響き渡る。
そして静まり返る。
「いいぞ武蔵、日本最強の戦艦の名に相応しい威勢だな?」
パチパチパチと乾いた拍手の音と共に現れたのは……。
「え?俺なのか?」
俺と瓜二つの優男だった。
「……まさか、私はお前では無いよ?」
奴はその場で上着を脱ぎ捨てる。
野郎の体には1ミリも興味はなかったが、俺はそいつの上半身に釘付けになった。
「お前は……人間か!?」
「ば、馬鹿な……」
武蔵が驚愕した表情で固まる。
武蔵だけでは無かった。
北上さんに大井っち、多摩に響(ヴェールヌイ)……神通ですら固まっている。
「……ふっ、実際に会ってようやく理解したか?」
野郎は得意げな顔で上着を着直して武蔵達にも歩み寄る。
「そ、そんな事が……」
武蔵は警戒する事も無く野郎の接近を許した。
「武蔵!!敵が目の前に来ているんだぞ!?しっかりしろ!!武蔵!!!」
俺の叫びにも武蔵は無反応だった。
「む……さし?」
「む?いや、すまない……あまりの急展開にイマイチ状況に理解が追いついていなかった……」
武蔵はそう言って一応野郎から距離を取るが、やはりぼーっとしている。
なんとなく、嫌な予感が脳裏をよぎる……。
コイツは一体何者なんだ?ただの人間が世界の鎮守府を壊滅させたと言うのか?
「さてと、どうする?このまま私と戦うかね?」
何故か得意げな顔で武蔵達に問い掛ける男……。
そんな事は聞かれるまでもないだろう?
「あたり前田のクラッカーだ!!武蔵よ!さっきまでの威勢はどうした?何を戸惑っているんだ?コイツは世界を征服しようとするラスボスだろうがっ!!」
俺の怒号も暖簾に腕押しの如し……。
「無駄だよ……もう、私達の声はトドカナイ……ニンゲンには私達のコエハトドカナイんだ……ョ」
突然レ級が俺の肩を掴んでうなだれる。
「は?一体何を……」
俺がレ級を見ると、レ級は無表情のまま涙を流していた。
「お前ガニンゲンと深海棲艦の提督ダッタカラ私達は共存スルコトガデキタンダ……」
うーむ、コイツが何を言っているのかさっぱりわからん……さっきまで普通に話していたはずなのに、いきなり話が通じなくなるなんてありえるか?
俺は思慮を巡らせ考えるが、答えが導き出される事はなかった。
「さてと、決着を付けようか?深海棲艦よ?」
妙に馴れ馴れしい口調の俺にソックリな男は、俺達に背を向けて反対側の出入口へと行ってしまった。
「武蔵よ?一体アイツは何者なんだ?」
俺が不屈の精神力で武蔵に問い掛ける。
「貴様こそ何者だ?」
待て次回!!
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