いっぱいちゅき
「やれやれ、まさかこやつ等と本気で闘う日が来ようとはのう?」
野郎と入れ替わるようにして闘技場へ現れたのは、暫く姿を見ていなかった佐世保鎮守府提督、利根さんだった。
「まぁそう言うな、前に演習でやり合った事があるだろう?」
そう言って奴は闘技場の出入口の辺りで振り返り、コチラを見ている。
何故奴が利根さんと刻輪台鎮守府の演習のことを知っているのだろうか?
いや、そんな事は言うまでもない……あの佐世保の利根が敵のスパイだったという何よりの証拠だ!それ以外に有り得ないだろ……。
「随分久しぶりの様な気がするね?利根さん?」
「うむ、佐世保も色々とあってのう、訳あってこの男に協力しておる」
深海提督の異常聴力により、響(ヴェールヌイ)と利根さんの会話が聞こえてきた。
「そうかい?だったらそこの男が世界中の鎮守府を壊滅させたのも利根さんの仕業かい?」
「う〜む……それについてはちと話が長くなるからのう、勝負が終わってからゆっくり話す、と言うことで良いか?」
ちっ、すげぇ気になるが仕方ない……あの利根さんも平和主義を謳っているが、うちに二度も演習を申し込んで来た程のバトルシップである。
ここは2人の奮闘を見物させてもらうとするか。
「了解、それじゃあ……すぐに終わらせるよ!」
言い終わるやいなや、響(ヴェールヌイ)が突っ掛ける!
「ほぅ?流石は武闘派で知られる大湊警備府の提督、陸上でも変わらぬ動きじゃな?」
響(ヴェールヌイ)の高速の踏み込みに対して、利根さんは余裕で応じて間合いをとる。
「そう言う利根さんも流石だね……」
ふーむ、遠目で見ていると速さはお互いに五分と言ったところか?
リーチに関しては若干利根さんが有利だろう。
響(ヴェールヌイ)の間合いの外から、利根さんの拳が打ち込まれる。
その拳に触れるだけでも重傷は免れないだろう。
だが……。
「うおっ!?」
利根さんの拳が響(ヴェールヌイ)の顔面を捉えた様に見えたその刹那、利根さんは反対側に数メートル吹っ飛び背中を床に強打した。
そう、響(ヴェールヌイ)にはコレがあるのだ。
「うぐっ、成程……相手の攻撃に自身の力を加えて相手に返す、堪能しだぞ?合気道の真髄とやらをな」
小さな駆逐艦が身を守る為、生き抜くために自然と身に付いたこの技術は、響流と言っていい響のオリジナルだ、この俺ですら真似出来んな。
これで利根さんは迂闊に前に出れなくなったぞ?
「ふっ、じゃが甘いわぁ!」
利根さんはすぐに立ち上がると俺の予想に反し、再び響(ヴェールヌイ)へ向かって全速力で突っ込んだ。
「無駄だよ利根さん、この技はどんな運動エネルギーも無効化して跳ね返す」
響(ヴェールヌイ)の忠告など聞く耳を持たず、利根さんは加速を付けたまま、右拳を響の顔面目掛けて放った。
そして俺の予想通り、響(ヴェールヌイ)のミステリアス武道合気の技によって利根さんの身体は宙に浮いた。
「流石は利根さん、すごい馬力だね?」
そう言って響(ヴェールヌイ)は天井を見上げる利根さんの顔に手の平を当て、地面に叩きつけようとした。
「甘いぞヴェールヌイよ!改ニとなった吾輩の本当の力を見るが良い!!」
利根さんが空中で腰を激しく捻る。
利根さんのフンドシ……もとい前掛け?の様なものが響(ヴェールヌイ)の顔に覆いかぶさる。
「逆転サヨナラ満塁ホームランだー!!」
俺は無意識でつい口走ってしまう、それ程の利根さん奇策だった。
響(ヴェールヌイ)は一瞬ではあったが怯んでしまう。
「まだまだ、若いのぅ?」
その絶好のチャンスを見逃す利根さんでは無かった。
利根さんは響(ヴェールヌイ)の腕を掴み、腕拉ぎ逆十字固めの体勢に持ち込み、そのまま地面に叩き付けられた。
「ゔぁっ!」
利根さんは後頭部に自身と響(ヴェールヌイ)の全体重がかかった状態で叩き付けられたため、その場で動かなくなった。
「響!!」
武蔵が血相を変えて響に駆け寄った。
「くっ……」
響の右肘と右肩があらぬ方向へ曲がっていた。
「肩と肘を外されたね、神経もねじ切られているみたいだ」
響(ヴェールヌイ)は苦悶の表情を浮かべ脂汗を流している。
「引き分け……だな?響?」
野郎が利根さんに肩を貸して支えながら言った。
「そう……だね?これ以上戦えそうもないからね」
響(ヴェールヌイ)は残念そうに答える。
試合終了!!待て次回!!
熱い戦いは続く!