「まさかお前も来ていたとはな?正直驚いたぞ?」
武蔵が床に置こうとしていた46cm三連装砲を再びかつぎ上げる。
「……そう、私は本物の提督から頼まれたから来ただけ」
そう言った加賀さんの懐には噴式艦載機 橘花改が見え隠れしている。
「物で釣られるとは、全く変わらんなお前は?」
マイペースな加賀さんを軽く笑い飛ばす武蔵、二人の間には確かな絆でも繋がっているのか?
「……始めるわ……」
加賀さんは矢筒から矢を取り、武蔵に向かって弓を構える。
ようやくこの格闘技路線から脱却出来るらしい。
「まさか原子爆弾は積んでないだろうな?」
「今回はエノラ・ゲイもボックスカーも持って来てないから、安心していいわ」
本当かどうかは疑わしいが、取り敢えず加賀さんの言葉を信じてこの場を離れるのは止めておいた。
「フッ、それならば良いだろう……一撃で決めてやろう!!」
武蔵が先制攻撃を仕掛ける!
お互いの距離は20km離れているが、これは互いに必殺の距離である。
「ちっ……」
加賀さんは爆撃機を二中隊発艦させたところで回避行動をとる。
雷撃機、戦闘機の発艦させる暇は無かったようだ。
加賀さんの回避はギリギリ間に合い、武蔵の第1射は当たらなかった。
「流石だ加賀よ!良い状況判断だ!しかし油断はするなよ?」
武蔵は加賀さんの回避を読んでいたらしく、数km程加賀さんとの距離を縮めていた。
「ふっ、46cm砲は貴様を追い込む陽動に過ぎんぞ!」
お互いの距離が16km位になった時、武蔵は46cm砲を投げ捨てた。
「貴様等これ十分だ!」
武蔵は余裕の笑みを浮かべ、副砲である20cm連装砲を構えると同時に斉射した。
「くっ……」
砲撃は加賀さんの飛行甲板的な存在である弓を炎上させる。
加賀さんは弓を手放すと諦めた様に両手を上げる。
「ほぅ?降参か?随分潔くなった……うごぉっ!?」
武蔵が勝利宣言をしようとしたその時だった!
「ぐっ、馬鹿な……」
武蔵の背後から二中隊もの爆撃機が特攻を仕掛けていたのだ!!
艦載機は全て武蔵の艤装に命中し、武蔵の副砲を全て破壊した。
「……油断していたのは、私の方だったか……」
武蔵は苦笑いしながら燃える副砲を捨てる。
加賀さんも薄ら笑いを浮かべていた。
俺にはもう分かった、このあと行われるのはやはりスデゴロだと言うことを……。
「ゆくぞ!加賀ぁ!!」
武蔵は地響きを鳴らしながら突撃する。
常人が喰らえば悪くて即死、良くても重体は免れない程の拳が加賀さん目掛けて打ち込まれる!!
これが合気の達人であれば難無く勝ちを得るだろうが、合気が使えない加賀さんであればこの攻撃を対処する事は不可能だろう。
武蔵の拳がぶつかる瞬間、俺は目を瞑ってしまった。
「……」
しかし俺の予想していた爆発音は無かった。
「どうなったんだ?」
俺は薄目を開けて戦場を見る。
「うおっ!?」
俺はその光景に目を疑った、そこには武蔵の拳を掻い潜り、逆に自身の拳を武蔵の眉間に叩き込んでいる加賀さんの姿があった。
所謂カウンターなのだろうが、加賀さんは妙に前のめりの前傾姿勢だ、まるでこのカウンターパンチに自身の全体重を乗せたかのような……。
「ジョルトカウンター」
加賀さんが小声でボソッと言った。
加賀さんが拳を武蔵の眉間から離すと、武蔵の眉間から血が吹き出た。
「うお!早く応急処置を!!」
俺が叫ぶのと同時に妙高さんが駆け出す。
「……引き分け……みたいですね?」
加賀さんが呟く、引き分け?いやどう見てもこちらの負けじゃ……な、なにぃ!!
俺は加賀さんの手を見て凍り付いた。
なんと加賀さんの手首から先が原型を留めておらず、あらぬ方向に指が曲がり骨が皮膚を突き破っていた。
「相変わらず頑丈ね?暫く艦載機はいじれそうも無いわね……」
苦悶の表情で加賀さんは自陣へと戻って行った。
「ふむ、加賀も引き分けたか……次も楽しみじゃのう?じゃが、吾輩の話もしっかり聞くのじゃぞ?」
二回戦も引き分け!!
待て次回!!
次回は提督のお話です。