無拍子、無意識、無殺意。
撃つ意識すらなく撃つ!
「あっちは何だか盛り上がってるみたいだけど、こっちはこっちで派手に行くよ!」
川内のやつ妙高さんが相手だと言うのに、気合十分の様だな?
「あら?貴女はいつぞやの……ふふっ、少しは長く楽しませて下さいよ?」
笑顔で威嚇する妙高さん、既に臨戦態勢という事か?
「……」
川内が無言で左手を上げる、ギブアップか?
そうでは無かった、川内が合図を送ると同時に会場の照明が全て消えた。
「成程、盲剣の川内……その異常聴力を活かす為の……うっ!」
くそ!妙高さんの呻く声が聞こえたが会場で何が起こっているのか全く分からん!これが一人称視点の弊害だとでも言うのか!?くそ!!
「私の背後を取るだけでなく、そのおかしな刃物で私の太ももを貫くなんて、前よりは腕を上げたようですね?」
妙高さんが細かく解説してくれる、助かったぜ!!このまま勝敗が決した後に照明が点いて三百文字で終わらせられても困る!
「この暗闇の中では妙高さん!貴女は手足をもがれた達磨同然よ!」
「……成程、私も貴女の異常聴覚では無いけれど、心眼を使えますよ?」
「ほぅ?」
「私の心眼は経験からくる洞察力とでも言うのかしら?なんとなく相手の心が読める」
「ふっ、して貴様はその心眼で何を見る?」
「川内さん、貴女は私への復讐を諦めているわね?」
「はぁー?何を言ってるんだよ?」
「貴女がわざわざこの戦いに出たいと志願したのは、以前私にやられた仕返しがしたかったから……違いますか?本来なら此処は私の元上司の佐世保のヴェールヌイさんが出る所だったはずですよね?」
「うぅっ!?」
「あら?心拍数が上がったみたいですね?動揺しているのですか?」
「ち、ちが……わないよ……確かにヴェールヌイ秘書艦に頼んで代わってもらったんだ……」
川内の声から明らかに気迫が希薄になっているのが分かる。
「おーい!皆の衆!こやつが何か言っておるぞー?」
利根さんが騒ぐが誰も聞いてはいなかった。
「図星、でしたか?ふふ、そして貴女は過酷な修練によって自分は強くなったと思っていた、しかしこうして再び出会った私は死線をくぐり抜け更に強くなっていた……」
「……」
川内は否定も肯定もしなかったが恐らく妙高さんの言う通りだったのだろう……。
「だから照明を消して自身に有利な環境を整えた、違いますか?」
「ふっ、ふふ」
「ふはは、ふはははは」
「あっーはっはっはっはっは!!」
「あっーはっはっはっはっは!!」
2人は大声で笑った、笑って笑って笑い続けた。
「何が可笑しい!!!」
「……」
川内の理不尽な恫喝に会場一瞬にして静まり返る。
「自分の信念も貫けないと言うのは、生きていても死んでいても惨めですね?」
「黙れ!!ならば!これでどうだ!」
「亀甲の盾ですか?中に何を仕込んでいるのか知りませんが、無駄な事です」
「仕込む?何の事かな?このティンぺーはその丸みを利用して敵の攻撃をさばく道具!そしてこのローティンでぇ!!穿つ!!」
肉を切る音が聞こえるような気がしたが、肉を切る時にそんな大きな音は鳴らない事を俺は知っている。
「うがぁっ!何だこれは?牙突か?」
「違いますよ、これは無空拳と言って無拍子、無意識、無殺意……撃つ意識すらなく撃つ拳です」
「勝負あり!!!」
野郎の声が合図となり照明が再び点いた。
そこには太股から流血する妙高さんただ1人だけが立っていた。
「川内は?」
「ぐぐ……」
川内は呻き声を上げながら三階席上段で泡を吹いて気絶していた。
「手は抜きましたから、死んではいませんよ?」
笑顔の妙高さんの勝利であった。
待て次回!!
次回は核心編!
サービスサービスぅ?