危険な提督と娘達   作:片栗虎

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提督が最後の様です。


提督の最後

「さてと、邪魔者は消えたぞ?あとは何をすべきかはりかいているな?加賀さん?」

 

俺はそっとマイサンを座っている加賀さんの眼前で振り回す。

 

さながら、空を舞う青狸のひみつ道具よろしく高速でぶん回す。

 

「いえ、全くわかりませんが、一つだけ分かることがあります」

 

流石は加賀さんだ、俺が何を欲し何を望んでいるか、全てお見通しと言う訳か?

 

「良いだろう、君のやりたいように奉仕してみたまえ、初めての事だろうと思うが、そのぎこちない様子もまた見どころだ」

 

「……」

 

加賀さんの石の様に固く握られた拳が大きく振りかぶられる。

 

「提督、例えこの場で命を落としたとしても、それはご自身の行いによって引き起こされた事だと、くれぐれも理解して下さい」

 

「うん?よく分からないが理解したぞ?さぁ!どう来る!?松葉崩しか?燕返しか?乱れ牡丹もおつだな?」

 

「むっ?いかん!加賀を止めろ!」

 

まぁまぁ遠くの方で武蔵が、叫び声にも似た大声でわめいている。

 

「加賀ぁ!おぬし!血迷ったか!!」

 

利根さんがフンドシをパタパタと靡かせてこちらへ向かってくる。

 

「おいおい、そんなに慌てて走ると、とんでもなく大事な部分が隅々まで見えてしまうぞ?」

 

それが、俺が現世で発した最後の言葉であった。

 

「……こんな汚物は生きていて害悪となるだけ……せいぜいあの世で自分の行いを反省すればいいわ……」

 

そして、その言葉が、俺が現世で聞いた最後の言葉であった。

 

「……加賀……お前……なんて事を……」

 

「あら?貴女も前に処刑したじゃない?私を責められる立場かしら?」

 

「う〜む、まぁ、そうじゃな?あやつがおった所で、この戦いでは何の役にも立つまい……」

 

「この戦い?」

 

武蔵が疑問に思った事は、利根が発した言葉にである。

 

「この戦いとは、世界中の鎮守府が襲われている現状の事か?それはお前達佐世保鎮守府の仕業では無いのか?」

 

武蔵が疑問を持つのは当然の事であった。

 

フランスに居るという謎の敵を追ってここまで来た自分達に、戦いを挑んてきたのがこの佐世保鎮守府の連中と、先程加賀に首を落とされたこの男なのである。

 

ならば今回の騒動は佐世保の仕業だと思っても仕方の無い事であった。

 

「うむ、武蔵よおぬしは勘違いしておるな?今世界中で暴れておる連中は佐世保鎮守府ではない、我々と刻輪台の提督はその件の連中を追ってフランスにやって来たのじゃ」

 

「……しかし、それならば轟沈したと報告があった川内が生きているのはどういう事だ?」

 

川内はフランスの鎮守府に助太刀する為に艦隊を率いてフランスへと赴いたが、敵の襲撃により艦隊全てが轟沈したと言う報告があったのだ。

 

「それは私から説明するよ」

 

盲剣の川内が割って入った。

 

「悔しい話だけど、私の部隊は全滅した……私は視力を失いながらも命からがら逃げ出したんだ、それ程の敵だった……そこで確かに、私の心臓は一度停止した……、そして猛烈な喉の乾きが私を襲い目を覚ました。私は走って走って走り続けて、数キロ先の川のせせらぎを聞き分けていたのだ……」

 

「うむ、川内だけは何とか救う事が出来たが……」

 

悔しさで表情を曇らせる利根、それを見て武蔵は納得したようだった。

 

「それで、敵の正体はわかったの?」

 

加賀が訊ねる。

 

「大和……」

 

利根がボソリとつぶやく。

 

「大和?」

 

自身の姉の名に反応する武蔵。

 

「うむ、奴らは独立国家大和を名乗り現在世界中およそ6割を支配しておる、そしてここ、フランスも奴らの支配下になっしまっておる」

 

フランスは現在、大和に完全降伏して支配されている状態であった。

 

「独立国家……大和……?」

 

利根の話をにわかには信じられないと言った様子の武蔵、それを察した利根は闘技場の出口へと歩きだした。

 

「おい!利根提督?」

 

「着いて来い、恐らくあやつがおるじゃろう」

 

利根の後を他の艦娘達も続く……。

 

「はぁ、はぁ……皆さん……お話は、終わりましたか?」

 

闘技場を出ると、そこには轟沈寸前で横たわる妙高の姿があった。

 

「な、妙高!?」

 

慌てて妙高に駆け寄る武蔵、武蔵自身妙高の実力は分かっている、そしてその妙高をここまで追い詰める敵の強さも理解せざるを得なかった。

 

「武蔵さん……敵は……只の深海棲艦では……ありません……一旦鎮守府へ引き返して……準備を整えなければ……勝てません……」

 

妙高は最後の力でそれだけ言うと、ぐったりと倒れた。

 

「う、み、妙高……」

 

狼狽える武蔵の肩を利根が掴む

 

「大丈夫じゃ、轟沈寸前ではあるが生きておる、すぐに入渠すれば問題無い」

 

「そうか……では妙高の言うように一旦鎮守府に引き返して体制を立て直すのが……」

 

「いや、入渠ならば我々が乗ってきた工作船で出来る、入渠が済んだらすぐに敵本陣へ攻め込むのじゃ!」

 

武蔵の言葉を遮って利根が声を荒らげる。

 

「お、おい利根提督?何を焦っている?」

 

「分からぬか?今ここで引けば、フランスの周辺国も敵の手に落ちる……そうなれば日本を除く全ての国が敵となる、それだけは絶対に避けねばならぬ、このフランスの地を足がかりに、世界を解放して行くのじゃ!!」

 

「……成程、確かに利根提督の言う事は一理あるか……では一度佐世保の工作船へ向かう、作戦はそこで建てよう」

 

一行は負傷した妙高を連れて、港へと向かった。

 

待て次回!!




提督の最後でした。
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