そこに立っていたのは……。
「大潮……なのか?」
俺が最後に見た大潮とは大分容姿が変わってはいたが、何となく確証の様なものがあった。
「はい!!大潮!改二!!帰還しましたぁ!!!」
「……」
どうすればいい?
どう返事をするべきなのか?
他の艦娘達と接する時には感じる事がなかった緊張感……昔の俺を彷彿とさせる不安感……。
「司令官さん!!私も作戦に参加させて下さい!!」
「作戦?」
そうか、大潮も大規模殲滅作戦の事を知っていたのか……。
「大潮は絶対に司令官さんのお役にたってみせます!!だから……」
大潮は以前より小さく見える瞳から大粒の涙を流している。
「何故……泣いているんだ?」
うまく思考が巡らない……。
「ごめんなさい!!司令官と直接お話出来たことが……すっごく嬉しかったから……」
大潮のつぶらな瞳は涙を流しながらも、俺の眼を真っ直ぐに見つめている。
「大潮……良いのか?」
「え?司令官?」
俺はふらふらと大潮に近付き両肩を掴んだ。
「俺は……お前とあんな約束をしながら……提督になってからお前の事をぞんざいに扱っていたんだ……」
そうなんだ……俺は大潮と婚約までしたと言うのに、他の魅力的な艦娘とも仲良くなりたいと……大潮が轟沈しかけて入渠していたり、話があると誘われた時も……他の艦娘の所に行ってしまった。
「俺は……立場が変わっただけで人格まで変わってしまうような、ケジラミの糞みたいな小さい男だった……」
「司令官さん……」
「今の今までお前の事を……婚約の事を忘れていた……すまない……」
俺はその場に崩れ落ちて土下座をした。
「……」
大潮は……何も言わない……当然だろう、これで俺を許す様な女がいるとすればそれは……。
「え?」
いきなり大潮がしゃがんで俺の頬に両手で掴み、自らの顔の方に引き寄せる。
「大潮っっ!?」
「ん……」
次の瞬間大潮の唇が俺の鼻水と涎がついた唇と重ね合わさる……。
…………
……
どれだけの時間が経ったのだろうか?恐らくは10秒位かもしれないが、俺には1時間位に思えた。
やがて大潮は顔を離して後ろを向いてしまった。
「司令官……私が司令官の事を恨んだ事なんて1秒だってありませんよ!」
「……大潮……」
しかし大潮は俺に愛想をつかして出ていったのでないのか?
大潮は俺の心を読んだ様に質問に答える。
「私はあの時のままだと司令官さんに迷惑が掛かると思ったから……自分自身を強くするために鎮守府を出ました」
くるりと可愛らしく俺の方に向き直した大潮の表情は眩い程の笑顔だった……あの時と同じ太陽の様な笑顔だった……。
「その結果……どうでしたか?司令官さん?」
ふっ、言うまでもないだろう?俺にこんなこと出来るなんて……。
「たしかに強くなったな?体も心も……」
「はい!!」
この時俺は大潮と添い遂げると心に固く誓った。
「司令官さん!この戦いが終わったら……その……」
「ふっ、解っているさ!この戦いが終わったら……結婚しよう!!」
俺がこんなことを言える様になったのは大潮のお陰だ。
「それじゃあ明日に備えて皆で作戦会議といこうぜ!」
俺と大潮は固く手を握り鎮守府へと帰還した。
「司令官さん!大潮は……まだ!!大丈夫です!!!」
感!!!
フラグも立った。
あとは勇気だけだ!!