赤い……全てを覆い尽くす赤……。
「「「陸奥秘書艦!!!」」」
俺の後ろから悲痛の叫びにも似た声が聞こえる。
一体何が起きたと言うのか?
俺は現状を全く理解していなかった。
ただただ俺の視界を遮る真っ赤な液体を海水で洗い落とそうとするが、海水すらも真っ赤になってしまっている……。
とにかく俺は甲標的の中に入って顔を手拭いで拭き、再び海面を確認した。
「くっ……」
陸奥秘書艦が右肩の辺りを押さえてうずくまっている。
「陸奥秘書艦?」
「シャルルさん……つけられていたみたいね……」
陸奥秘書艦の右腕からは大量に流血している。
「だ、大丈夫ですか!?」
俺は無意識に甲標的から身を乗り出していた。
「出てこないで!!!」
彼女の突然の怒声に俺はおののきすくみあがってしまい、艦内に尻餅をついてしまった。
「ここは敵の射程圏内よ!皆さん周囲を警戒して下さい!!」
額に脂汗を滲ませて苦悶の表情で警戒を促す陸奥秘書艦、あの傷は大丈夫なのだろうか?
先程から流血がひどく陸奥秘書艦の右半身は真っ赤に染まっている。
「……陸奥?」
気絶していた長門元帥が目を覚ました様だが……たしかシスコンを自称していた様な……。
「長門……気を付けて……敵は近くに居るわ」
「陸奥!!!」
長門は勢いよく立ち上がり陸奥秘書艦に近付き傷口を見ている。
たしか脇の下あたりには大きな血管が通っているが、艦娘も同じなのだろうか?
もしそうだとしたら……。
「陸奥!!陸奥!!!」
「長門……そんな顔しないで……」
長門元帥は子供の様にわんわん泣いてしまった。
「元帥の貴女が泣いていたら……他の子達に示しがたたないでしょ?」
「陸奥!!嫌だ!!死ぬな!!!」
「ふふっ、無理言わないの……戦場で散ることが出来て……嬉しいくらい……」
陸奥秘書艦は長門元帥に支えられてゆっくり横になる。
そして、表情を変えずに涙を流す。
「うそ……本当は死にたくない……そんな顔の長門に見送られて逝くのは……嫌よ?……」
「……陸奥……」
何かを悟ったように長門元帥の涙が止まる。
「無論だ!……冥土の土産に勝利を贈らせてもらうぞ!!」
「楽しみに待ってる……うぐっっ!!!」
突如長門元帥の辺りに水飛沫が高らかと舞った……。
その飛沫は鮮血で染まった真っ赤な飛沫だ。
「長門元帥ー!!」
「……」
長門元帥は全身を真っ赤に染めて立ち尽くしていた。
長門元帥の周りには陸奥秘書艦だったモノが飛び散っている。
俺は空っぽになった胃から絞り出せるだけの胃液を吐いた。
「……陸奥……よくも陸奥を……」
長門元帥は一点に向かって眼光鋭く睨み付けている。
俺だったらその鋭い視線だけで、消しとんでしまいそうな程の威圧感を、全身に浴びながら不適に笑う声が戦場に響き渡る。
俺はチビりながら長門元帥の目線の先を追った。
「バラバラダネ?タノシイネ?アハッ!!」
続く…………。
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