とある木原の確率操作   作:々々

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文字数が少なかったので、約2.5倍にして再投稿です。


とある8月31日の過ごし方 そのに

 pm.9:00

 

「おまたせぇ」

 

 胸の谷間を強調するようにかけられたポーチと胸を揺らして食蜂はやっていた。セリフ的には小走りでやってくるものを想像させるが、体力がない彼女はゆっくりと優雅に歩いている。それに気づいた木原は開いていた端末を閉じそちらに視線を向ける。

 

「それほど待ってないから気にするな」

 

「それでも待たせたことに変わりはないの。だからねっ」

 

 えいっと木原の腕に抱きつく。

 

「これがそのお礼。嬉しいかしら?」

 

「あぁ。ありがとな」

 

 確かに感じる心地良い感触に満足しながら二人は歩み始める。学園都市製の高級な服を着ている二人は真夏日にくっついていても、通気性やらなんやらのお陰で全く暑くないのだ。

 これを見せつけられる平凡学生達は天候的な暑さとイチャイチャした雰囲気を見せつける二人の暑さのダブルパンチを受ける事となる。

 

「それで今日はどこに行くのかしら?」

 

「日が出ているうちは街中をブラブラと。公園によって適度に休憩を挟みながら、今日着るドレスを見にいこう」

 

「という事は、夜に素敵なことがまっているのねぇ」

 

「そういうこった」

 

「やっぱり分数さんはサプライズ力が素敵☆」

 

 より一層ぎゅーっとする食蜂を連れて木原は街を歩いて行く。

 

 

 

 pm.10:00

 

「ここが噂のファミレスかー、ってミサカはミカサははしゃいでみたり。わぁ、こんなにたくさんのメニューがあるってミサカはミサカはアナタに見せている」

 

「うぜェ」

 

 モノクロの少年とワンピースの少女がとあるファミレスの一席にいた。少女は楽しそうに足をパタパタさせながらメニューを眺めており、少年は眠そうな目をしながらこの現状にため息をつく。

 

――どうしてこんなことになってやがる。

 

 昨日と今日の境目。ひょんな事から打ち止めと出会った一方通行は面倒くさがりながらも、自宅兼研究所まで連れて行った。そして数多に殴られた。

 そしてなにかうるさいなと思って目を覚まして、自分があの一撃で眠ってしまったこと、そしていま目の前で出会った少女がワンピースを着てはしゃいでいるのが目に入る。それと同時に、そんな少女見て笑顔な数多を見たことを忘れたくなった。

 

――飯に連れて行け。能力は使えるようにしとくから

 

 そう言われて家を放り出された。そうしてきたのがこのファミレスだ。

 

「ねぇねぇ。何かお店の人が言ってるよ、ってミサカはミカサは報告するの」

 

 肘をつき窓の外を眺めて回想していると、正面に座る打ち止めに服を引っ張られた。

 

「なンだ?」

 

 打ち止めが指している方向を見るとウエイトレスが少し気まずそうな顔をして立っていた。

 

「お店が混雑しており、相席をお願いしたいのですがよろしいでしょうか」

 

「わリィが他を――「いいよいいよってミサカはミカサは店員さんの意見を聞いてみたり」――おィ」

 

 言葉を割りこまれた一方通行が面倒くさいことになったなと思う事数十秒、先ほどの店員が客を連れてきた。

 

「それではごゆっくりどうぞ」

 

「ありがとな」

 

 足音から二人と判断した一方通行の隣に一人、向かいの打ち止めの方に一人。

 

「よぅ、一方通行。ここで会うなんて()()だな」

 

「アァ!?」

 

 隣には確率を操る能力者がいた。

 

「オマエなンでここにいやがる」

 

「へぇ君が打ち止めか。アレの最長前がこのような感じだとわからないほど可愛らしいじゃないか」

 

「幼女力が高いわぁ☆」

 

 嫌そうな顔をする一方通行を放っておき二人して打ち止めを愛で始める。

 打ち止めは食蜂に抱きつかれたわわと実った胸に隠れてしまう。

 

「はわわわ、あなた誰なのってミサカはミカサはあまりにも急すぎる展開に付いて行けなっ、あわわわっ!!!」

 

「おィ」

 

「わりぃわりぃ。寂しがりやなウサギちゃンも構ってやらなきゃな」

 

 堪忍袋の緒が切れる音ともに一方通行は隣に座る木原に右手を伸ばす。触れれば必殺即死の手は確かに木原の体に届かない。ソファーに深く寄りかかる事で腕を躱す。

 

「どうしたよ?」

 

「お得意の確率操作はどうした?」

 

「ははは、今日使えるのは観測だけなんだ。だからあまり攻撃してくれるなよ」

 

 メニューを見ながら淡々と答える。いい事を聞いたとばかりに木原に攻撃を仕掛けるが少し体を動かすだけやメニューを使って全て不発に終わる。

 

「あまり攻撃するなよ。結構確率的には曖昧だから下手したら本当に死ぬ。それで打ち止めは何食べたいか決まった?」

 

「うんっ!てミサカはミカサはそんな生命の危機に面しているのに普通に話しかけてくるアナタに驚きながら相づちしてみたり」

 

「それじゃ、そこの呼び出しベル押してもらってもいい?」

 

 何とか食蜂から抜け出した打ち止めはえいっとボタンを押す。まもなくしてウエイトレスがやって来る。

 

「ご、ご注文は?」

 

 明らかに木原と一方通行の攻防を見てひいてはいるのだが、木原はそんな事を意に返さずそのまま注文をする。

 

「ドキドキオムライスとシーザーサラダ。それと、最強ハンバーグステーキコンビ。打ち止めは何を頼む?」

 

「お子様セット!ってミサカはミカサは元気よく注文してみたり!!」

 

 ウエイトレスが注文してその場を立ち去った。

 

「何勝手に頼んでやがンだ?」

 

「打ち止めが食べたそうにしてたものをね。気になる物があったら一口あげようと思って」

 

「随分と優しィな。木原とは思えねェ」

 

 実験対象を使い捨てる木原とは思えないほどの優しさ。しかし現に彼からは木原の臭いがしている。

 

「未来ある子供は大切にするものだ。それが産まれることを望まれていなかった子だとしても」

 

 その考えが理解できない一方通行は舌打ちをして窓の外を見る。そこには天井亜雄が血相を変えて車に乗り込もうとしているのが見えた。

 それを見た一方通行は席を立ち後を追おうとするがタイミング悪く料理が運ばれ、それは叶わなかった。

 

「それじゃあいただこうかしらぁ」

 

「それじゃアレしたいってミサカはミカサは手を合わせてみたり」

 

「それじゃ打ち止め頼む」

 

「はーい!いただきますっ!!てミサカはミカサは大きな声でいってみる」

 

「「いただきます」」

 

 一方通行以外の三人が声を揃えていただきますと言う。一方通行はいきなりベクトル操作で熱ベクトルを操り鉄板を鷲掴みにしてステーキを切っていく。

 

「それは人間としてどうよ」

 

「食えればいい」

 

 持ってきてもらった分け皿にオムライスを少し移し打ち止めに渡しながら木原がつぶやく。

 

「おねえちゃんはそれで足りるの?」

 

「私はこれで十分よぉ」

 

 既に仲良くなった食蜂と打ち止めは和気あいあいと食べている。

 

「ちっ!」

 

 その風景に嫌気が差した一方通行はある程度口に詰めたら席を立った。

 

「どこに行くんだ?」

 

「何処でもいィだろ?」

 

「そうか。まぁ、暇があるなら芳川桔梗に会いに行け。何かしらヒントになることがあるかもしれない」

 

 ちょっとずれた木原を尻目に一方通行は席を離れていく。

 それからしばらく会話を続けていると、前触れもなく突然テーブルに突っ伏す。

 

「あ、れ?ミサカはどうしてってミサカはミカサは……」

 

「今は喋らなくていい、ゆっくり深呼吸をしてろ」

 

 料理を移動させ苦しそうにする打ち止めの頭をなでる。

 

「これからどうするのかしら」

 

「取り敢えず緊急パッチをあてて、移動だな。ここに置いていった場合サイアクノコトガ起こってしまう」

 

 例えば打ち止めの死、それに近い何かが。

 

「とりあえずは場所を移そう。ちょうど近くによさそうな人たちが集まっている」

 

 


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