鷲巣-Washizu- 宿命の闘牌   作:園咲

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おまたせしてしまいすいません!やっと書き上がりました!


本気

 観戦席は前局の華菜の役満和了でにわかに盛り上がっていた。やっと出てきたか…ここから巻き返すか…などとあちらこちらから聞こえてくる。

 去年全国出場を逃した風越女子だがその人気ぶりはまだまだ健在のようだ。会場全体が華菜を後押しするような空気になっていた。

 

『多少差が縮まったものの依然龍門渕の大量リードには変わりありません。藤田プロはどう見ますか?』

『ここだな…この手を風越が生かせるかどうかで戦況が大きく変わってくる』

 

 藤田の言う通り、正にここが分水嶺(ぶんすいれい)といえる。

 親番で華菜に舞い降りた好配牌…確実に場の流れが変わりつつある。もしも大物手に仕上げ、龍門渕鷲巣から直撃でも取れれば一気に差が詰まり、龍門渕、清澄、風越の三つ巴の様相を見せることとなる。

 しかしそれはもちろん逆にも言える…この配牌はさながら竿にかかった大魚…釣り上げるか否かで今後が大きく左右される事になるだろう。

 

大将戦後半戦東三局 親・風越女子 ドラ・{7}

南家 清澄   102300

北家 龍門渕  161400

東家 風越女子  77200

南家 鶴賀学園  59100

 

(張ったか…)

 

六巡目

鷲巣手牌

{四五⑥⑦⑧⑨発発中中} 副露 {白横白白} ツモ {中} 打 {⑨}

 

 二巡目にゆみから切られた白を鳴いた鷲巣は六巡目で三、六萬待ちの小三元…満貫をテンパイ。本来トップの鷲巣に求められるのは、早々に和了って華菜の親を流し場を進めることだろう。しかしこの時の鷲巣は華菜以外は眼中になかった。ゆみ、咲から当たり牌が出ても、見逃し…いや気づきすらしないかもしれない。

 

同巡

華菜手牌

{二二三五777②③③北北北} ツモ {③}

 

(テンパイ…でも跳満くらいで和了ってられないし!)

 

 その直後華菜もテンパイに至る。2筒切りで嵌四萬待ちの三暗刻ドラ3。鷲巣と同じく満貫…リーチかツモ和了りで跳満となる。親っパネでも十分な打点だが、華菜は2筒を曲げなかった。

 華菜にはある確信めいたものがあった。今の自分なら手を伸ばす事ができる。それに跳満程度で和了ってしまえば逆に流れを逃す事になる…と直感的に察していた。

 

『風越池田選手リーチとはいきませんでした。一旦ダマテンにとります』

『冷静な判断だ。手替わりのチャンスも十分にあるし待ちの四萬は鷲巣に1枚、宮永に暗刻で純カラだ…それに四暗刻イーシャンテンだ』

『役満といえば鷲巣選手も大三元まであと1手ですね。両者とも満貫ですし…これはほぼ五分ですかね?』

『いや…』

 

 確かにほぼ五分のようだが、藤田は風越池田の方が優位と見ていた。役満テンパイになる牌の数こそほぼ同じなものの問題はその後。

 鷲巣は発が手牌に入らなければどうあがいても満貫止まりだ。だが発は既に1枚咲の捨牌に見えているため残るは1枚。咲が発を切った直後に重なった為、僅かに間に合わなかった。

対して池田は四暗刻単騎(スッタン)になれば最高だがツモり四暗刻(ツモスー)の形でもリーチをかければロン和了りでも倍満以上が確定し、なおかつ柔軟な対応がしやすい。

 しかしこれは役満を和了る前提での話。大差をつけられている池田はともかく両面待ちの好形で張っている鷲巣は無理矢理狙う必要はない。

 

ゆみ手牌

{一一五②④④⑤⑦⑨1378} ツモ {西} 打 {④}

 

(手が重いな…この局は厳しいか)

 

 ゆみの配牌は良いとは言えずツモもいまいちしまらない。この局での和了りは難しいと判断し、後々危険牌になりそうな4筒を処理。早くもオリる準備を始めていた。

 大した打点が望めないこの手で中途半端に突っ張って振り込んではそれこそ目も当てられない。それにまだ親番が2回残っている…ここは無理をする場面ではない。このあたりの割り切りの良さもゆみの長所といえるだろう。

 

咲手牌

{三四四四七八①①①②南南南} ツモ {六}

 

(よかった。これで和了れる…)

 

 咲の手は順調に伸びていき2筒切りで3面待ちとなる絶好のテンパイ。普通なら2筒切りリーチだろう。だがここで咲は上家であるゆみの前の牌山…正確にいうと次の自分のツモに一瞬目を向ける。咲が感じ取った次のツモは1筒…つまり槓材。そして嶺上ツモは南と2筒。三萬を切って2、3筒待ちに受ければ次巡この形で和了ることができる。

 

咲仮想手牌

{四四四六七八②} 副露 {■南南■ ■①①■}  ツモ {②}

 

 嶺上ツモ三暗刻の満貫確定手。2枚の新ドラが絡めば打点も伸びるが、どういう訳か手牌に新ドラが乗った事はほとんど記憶にない為、咲は最初から期待していない。とはいえ満貫の和了りでも逆転の口火を切るのには十分だろう。

 前半戦の東場を最後に和了りから遠のいている咲はツモってきた六萬を手牌に引き入れ、迷わず三萬を手に取った。暗槓に備え牌は曲げずリーチはしない。

 

咲 打 {三}

 

『あっ…出ましたね』

『なんで3面待ちに取らなかったのかは…まあ大体予想がつくが。ともかく鷲巣への放銃だ。池田は残念だったな…』

『…!いやちょっと待ってください…鷲巣選手牌を倒す素振りを全く見せません!』

『おいおい見逃すのか…発はあと1枚しかないんだぞ…』

 

 自身の当たり牌が切られたのにも関わらず、まるで眼中にすら入っていないかのように無造作に牌山へと手を伸ばす鷲巣。まさかの見逃しに実況を始め、藤田も独り言のように呟く。この場面でなぜ和了らないのか。考えられる要因は2つ。 

 1つは役満である大三元狙い。しかしこれは藤田の言う通り、余りにも可能性が低すぎる。他家に握りつぶされているかもしれないし、山の深い所に眠っているかもしれない。ましてや王牌などにいたらもう手詰まりだ。

 まあまだ六巡目で巡目も浅い…両面待ちの為一旦様子見の見逃しも考えられる。そしてもう1つは清澄からの出和了を良しとしていないかだ。しかし2位につけている清澄からの直取りは理想的のはずだが…

 …藤田は鷲巣の本質についてまだ見誤っていた。引ける引けない…ではない。鷲巣は牌を()()()()()()()。故に…

 

七巡目

鷲巣手牌

{四五⑥⑦⑧発発中中中} 副露 {白横白白} ツモ {発}

 

 必然の発引き…鷲巣大三元テンパイに至るラス発引き。この神がかりとも言える引きの強さに観戦席を含め実況解説すらも言葉を失い、辺りに奇妙な静けさが漂う。

しばらくした後その静寂を破ったのは我に帰った興奮気味の実況であった。

 

『…その発を一発で引いてきたー!大三元確定です!』

『何なんだあいつの引きは…』

 

 手広さより手の高さを優先する…もちろんそのような打ち手は山ほどいる。しかし鷲巣はその中でも異質の存在だ。

なにより驚かされるのは驚異のツモ。少ない有効牌を的確に引いてくるその様子は最早運がいいという言葉では片付けられないだろう…それほどまでに軽々と大物手を作り上げていく。

 当然この場面はノータイムで四萬か五萬を切って大三元テンパイに受けるだろう。しかし鷲巣はここで少考…手が止まる。

 

(大三元…いや違う…)

 

 鷲巣再びの直感…いや天啓が舞い降りる。大三元に構えていては和了れない…となれば…

鷲巣はツモってきた発を手牌にすら入れずそのままツモ切った。実況が絶叫とも言える声を上げていたが無論対局室には届かない。

 

鷲巣 打 {発}

 

同巡

華菜手牌

{二二三五777③③③北北北} ツモ {赤五}

 

(やった…四暗刻(ツモスー)テンパイだし!)

 

 結果的に華菜は即リーしなかったことが吉と出る。赤五萬を引き当て、三萬切りで四暗刻(ツモスー)テンパイ…とはいえ安めのロン和了りでも三暗刻トイトイドラ4で最低でも親倍満と十分の打点を持っており、そこに裏でも乗れば数え役満もあるかもしれない大物手…いやがおうでも高揚する。

 待ちが二、五萬と筋シャンポンだが、さして気にするほどでもないだろう。それに…と華奈は清澄咲の河に視線を向ける。三萬はさっき清澄が切ったばかりの牌。龍門渕もツモ切りだったため振り込むことはない…これだけの好条件が揃っている。

 華奈はこれがこの手の完成形と見て、迷うことなくリー棒を取り出した。

 

「リーチせずにはいられな「…ロン」にゃっ!?」

 

 …しかし満を持してのリーチ宣言は鷲巣からの発声により遮られた。予期せぬ放銃に思わず変な声が漏れ、一瞬何が起こったのか分からず状況を把握するのに幾ばくかの時間がかかった。

 

(ふ、振り込んだのか…?なんで…?)

 

「小三元…満貫8000点…」

 

鷲巣手牌

{四五⑥⑦⑧発発中中中} 副露 {白横白白} ロン {三}

 

(そこから発切り!?)

 

 本来通るはずの牌で振り込んだ。なんで山越し…なんで私から…などと答えの出るはずのない疑問が頭の中で渦巻く華菜だったが、鷲巣の和了形を確認しそれはますます強くなる。逃した魚は余りに大きい。華奈は体の中の燃えたぎる闘志が急速に冷めていくのを感じた。

 

西家 清澄   102300

北家 龍門渕  169400(+8000)

東家 風越女子  69200(ー8000)

南家 鶴賀学園  59100

 

***

 

「惜しかったわね。この局は咲が和了っていたのに…」

「…どういうことじゃ?」

 

 久がボソっと独り言のように呟いたのをまこは聞き逃さなかった。まるで咲が近いうちに和了ることが分かっていたように聞こえる。確かに咲もテンパイしていたが…

周りも聞きたそうな顔をしていることに気づいた久はアハハ…と苦笑いしつつ皆に説明する。

 

「あの子ちょっとした癖があってね…ツモる予定の槓材が近づくと僅かに視線を泳がせるのよ。次のツモにでも槓材があったんじゃないかしら」

「なるほど…そういうことですかって大丈夫なんですか…それ」

 

 今の話で皆が思ったであろう事を代弁する京太郎。槓材のタイミングがバレてしまいかねない癖である。見抜かれてしまったら、鳴かれてツモがずらされてしまうかもしれない。

しかし久は問題ない問題ないと手を振る。

 

「大丈夫…そもそも癖自体は本当に小さいものだから…今のもたまたま咲がアップで映ったから気づいただけだしね。現にあなたたちも今まで気づいてなかったでしょう?」

「そうじゃの…」

 

 彼女たちは咲と何回、何十回と対局している。咲のスタイルも熟知している彼女たちでさえ気付かなかったのだ…気づかれる可能性はゼロに近い。

 それに咲にこのことを妙に意識させてしまうとこれ以上に厄介な癖がついてしまうかもしれない。手癖なら少々問題だが顔…表情の癖だ。対局中に相手の顔を見続ける打ち手などいないだろう。

 これらの理由からこのままのほうがいいと久は判断したわけである。

 

「まあそれでも…たった数回の対局、映像から気づく人がいたら…恐ろしい観察眼よね。人間の所業じゃないわ。龍門渕が咲の当たりを見逃したからもらったと思ったんだけど…」

「あの場面での見逃しはありえません…大三元テンパイに取らないなら尚更です…」

「あればっかりは分からないわね…本人から聞きたいくらいだわ」

 

 デジタル打ちの和から見れば鷲巣の打ち筋は理解に苦しむものだった。非効率極まりないものだがなぜかそれが成立している。

和のみに関わらず清澄高校の面々は皆、鷲巣という雀士の底が知れなかった。

 

***

 

 同時刻南大阪のとある会場…ここでも麻雀のインターハイ予選…決勝が繰り広げられていた。

 

「クシュン!」

「なんや恭子…夏風邪でも引いたんかいな」

「体調崩されたらたまらないのよー」

「いやそんなはずないんですけどね…ちょっと…噂でもされとんかな…」

「ほーん…と、絹が倍満ツモ…おっ!裏も乗って三倍満や!」

「いやー絹ちゃん調子いいですねえ!もう決まるんやないですか…」

 

 その言葉に恭子と呼ばれた少女はテレビの対局に意識を戻す。

そこには彼女の所属する姫松高校の副将が映っており、三倍満を和了したためか小さく笑みを浮かべつつ他家から点棒を受け取っている。

この和了りで現在4位の高校が飛び寸前となり、次局に決着がついてもおかしくなくなった。それは同時に大将である彼女の出番がなくなることを意味する。

 …というより彼女はこの予選ではほとんど打っていない。全国から見ても5本の指には入る激戦区…強豪校がひしめき合う南大阪地区。当然出場校は多くそれに比例して対局数も多い。その中にあってここまでほぼ大将に回すことなく勝ち上がってきた姫松高校…主に目の前にいる中堅を打っている主将の調子が良すぎたからなのだが…その激戦区から頭一つ抜け出していると言えよう。

 

「まっ…出んでええなら別にええけどな…手の内見せんですむし」

 

 この姫松高校の参謀とも言っていい彼女は既に全国大会を見据えている。全国屈指の強豪校の大将を任されているだけの事はある。  

 

***

 

 場所は長野に戻って龍門渕高校の控え室…

 

「仕返し…ですわね。全く衣和緒の悪い癖ですわ!」

「あいつめちゃくちゃ負けず嫌いだからな…親番で役満和了られたのがよっぽど効いたんだろうな」

「この局に限って和了りやすさを優先させてるのが悪質だよね。割と子供っぽいんだよなぁ…」

「ぬ…衣たちの中でも衣和緒は一番年下だからな…仕方あるまい!それも衣和緒らしいからな」

 

 結局鷲巣の目論見を理解していたのは龍門渕高校のメンバーだけだった。本人がいない中、言いたい放題である。鷲巣が聞いていたら激昂する事は間違いないだろう。

今までの対局で鷲巣が負けず嫌い…根に持つ性格だというのは重々承知している。

透華はまたため息を吐き、呆れている。

 

「まあ、今の和了り全く意味がないわけじゃない…いや意識はしてないだろうけどな」

「ん?」

「去年もあの風越の大将を見たが…波に乗られたら面倒くさいタイプだ。で常套手段として波に乗らせないよう立ち回るわけだが…」

 

 その中で鷲巣を擁護する声があがる。場の流れに敏感な純は自分が有利になるように打つのではなく、相手を妨害するように打つ。

純が見るに先程の池田は波に乗る寸前だった。そんな純が流れを奪うのに最も効果的だというのは…

 

「どんなに安くてもいい…そいつから直撃を取るのが手っ取り早いんだよ」

 

 この振り込みで風越に流れ…勢いはなくなった。少なくとも次の配牌はかなり悪くなるだろうなと純は見ていた。

 

***

 

(私の三萬は見逃したんだ…)

 

 強い…今まで対局してきた誰よりも強い…咲はそう感じざるを得なかった。挙句の果てには自分が視界に入っていないような見逃しをされた。それは耐え難い屈辱。穏やかな性格の咲でも悔しさを感じ下唇を僅かに噛んだ。

 対抗しなければ…でもどうやって?どうやったら龍門渕に勝てる…?とここまできて咲は昔…小学生の時同じような体験をしたことを思い出す。あの時私は…曖昧だった記憶がはっきりと蘇った時、咲は静かに手を上げ審判にこう告げていた。

 

「あの…脱いでもいいですか?…靴下」

 

『おや…清澄宮永選手が靴を脱ぎ始めました。これには一体何の意味があるのでしょうか?』

『あれだ。自然体ってやつだな』

『…というと?』

『例えてみよう…お前が雀荘でボロ勝ちしていたとする…頭も冴えて正に絶好調だ』

『はあ…』

 

 私雀荘自体滅多に行かないんですけど…と言いたくなったがこれはあくまで例えだ。話の骨を折らず聞き役に徹する。

 

『で、余りにも勝ちすぎてしまったため、いちゃもんをつけられてしまった。周りにいた怖いお兄さんに絡まれている…この状況でさっきと同じように打てるか?』

『いや…絶対無理ですよ。動揺してミスもすると思います…』

『そういうことだ。麻雀を打つにあたって自然体は割と大切なんだよ…』

『…例え極端すぎませんか!?』

 

 余りにも下手な例えに実況は思わず突っ込むが、正直なかなかいい例えが思いつかなかった藤田は対局に視線を戻しごまかす。都合がいいことに咲が靴下を脱ぎ終え、試合が再開されるようだ。

 

(さあ、これでどう変わるかだな…)

 

大将戦後半戦東四局 親・鶴賀学園 ドラ・{白}

 

(うっ…)

 

華菜配牌

{一六⑧⑨1579東西発中中} ツモ {四} 打 {西}

 

 華奈は純の危惧通り手牌からドラが消え、目に見えて配牌が悪くなった。覚悟はしていたがここまで酷くなるとは思っても見なかった。特急券の中が対子で揃っているものの、中は既にドラ表示に1枚見えてしまっており、他もてんでバラバラ。

 余程ツモが良くない限り和了る事は出来ないだろう。…そもそも高打点になりそうもない配牌だが諦めることなくセオリー通りオタ風である西から落としていく。

 

(よし…いい形になった…)

 

五巡目

ゆみ手牌

{二二赤五六七④赤⑤⑦⑧6789} ツモ {二} 打 {9}

 

 ゆみは前局と打って変わって好調。タンピンドラ2などが見込める手格好となった。親であるため決して無理をする必要はないがやはり面前で進めたいと思ってしまう。

この手は和了りきりたい…そう思いつつ9索を打つ。

 

同巡

華菜手牌

{四六⑥⑧⑨579白発中中} ツモ {西}

 

(西…駄目か…)

 

 一巡目に切った西を引き直してしまった。配牌から手も殆ど進んでおらず、これだけで今の自分にどれだけ流れがないか痛感させられてしまう。

 ここで華菜は自分の和了りを諦め、親であるゆみに上がってもらおうと考え直す。幸いゆみの河は典型的なタンヤオ系で必要そうな牌は読みやすい。ここら辺りか…と6筒を切り出していく。

 

華菜 打 {⑥}

 

 そしてこの6筒ゆみにとっては喉から手が出るほど欲しい牌。鳴けばタンヤオが確定し、テンパイに取れる。華菜の絶妙なアシストであった。

 

(6筒は2度受け…鳴いてテンパイに取るか…)

 

「チ「ポン」」

((邪魔ポン!?))

 

 しかしそこに思わぬ横槍が入る。ゆみと華菜は咲の方に視線を向けるときっちり2枚の6筒が晒されており、華菜の切った6筒を拾っていた。

 

(く…6筒が3枚見えてしまったか…)

 

 ここでテンパイ出来なかったゆみは苦しい。残り少ない有効牌を持ってこれるか…などと考えていたが、それは悪い意味で杞憂に終わる。

 

「カン!」

 

 咲は鳴いた直後に6筒をツモり加槓。新ドラ表示牌には3筒が見えた。つまり4筒が新ドラとなる。咲の手が嶺上牌に伸び、そしてそのまま手牌の横に打ち付けられた。

 

「ツモ!嶺上開花!500・1000です」

 

咲手牌

{六七八八八23456} ツモ {7} 副露 {⑥⑥横⑥⑥}(加槓)

 

「り…嶺上開花タンヤオ…だけ?」

 

 ゆみが声に出してしまうのも無理はない。この局面で満貫にも届かない手を和了るなんて考えられない。そもそも面前で打てばもっと高打点が狙えていた手なのに…

親番が流れてしまったことに危機感を感じながらも咲に少ない点棒を支払う。

 

『清澄宮永選手前半戦以来の和了り!2回目の嶺上開花です!しかしこの場面でこの和了は…』

『なにか考えがあってやっていると信じたいが…』

 

 流石に藤田もこれは擁護できない。分かりきっていることだが各校と龍門渕高校とは圧倒的な大差がついている。つまり和了ったら局が進む子番で求められるのはただ一つ、大物手のみなのだ。しかし咲は余りにも安い手で和了った。和了ってしまった。そしてこの時点でこの和了の意図を理解しているのは和了った本人である咲と鷲巣のみであった。

 

(和了れた…大丈夫和了れるんだ…)

(そうかそうか…そういう事をしてくるか…面白いっ…)

 

 詰まるところ咲は1回和了っておきたかったのだ。自身の力が通用するのかどうか。そして和了って最後の親番を迎えたかったのだ。流れを作るために。

 

南家 清澄   104300(+2000)

西家 龍門渕  168900(ー500)

北家 風越女子  68700(ー500)

東家 鶴賀学園  58100(ー1000)

 

 大将戦はついに大詰め…後半戦南場を迎える…




清澄の面々が気づかなかった咲の癖を見抜いた末原さんってやっぱすごい。正に最強の凡人!
5位決定戦も期待しています!ただ大将戦までは1年くらいかかるかな…
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