鷲巣-Washizu- 宿命の闘牌   作:園咲

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お久しぶりです。…弁解は後書きにて。


副露

 新宿にそびえ立つ超高級ホテルの一角。そこに龍門渕高校麻雀部一同は宿泊している。

そして軽く朝食を終えたばかりの龍門渕透華の機嫌はなぜか悪い。特に低血圧で朝に弱いというわけではなく、原因は先程からついているテレビにあった。

 

『本日は全国高等学校麻雀選手権大会の6日目。シード校である臨海女子と永水女子が今大会初お目見え…』ピッ!

『私は特に永水女子の神代選手の活躍に注目しています…』ピッ!

『今年の臨海は隙が無いね。アレキサンドラ監督はよく仕上げてきた…』ピッ!

『永水女子に姫松、龍門渕の三つ巴ですね。実績では永水女子、姫松がやや優勢でしょうか。初出場の宮守女子は少し苦戦を強いられるかも…』ブツッ!

 

「…全くどいつもこいつも見る目がない評論家ばっかりですわ!どの局も我が龍門渕についてろくな事を言ってないじゃありませんの!」

「そりゃしょうがないだろ透華。うちが誇るエース2人が揃ってマスコミ嫌いだからな」

「ああ…そうでしたわね…」

 

 この時期のテレビ局はどの局も麻雀のインターハイ一色になり、プロ雀団チームのスカウトも目を光らせている。すなわちそれ程日本中の注目を集めているのである。

 そのことを百も承知の透華も期待してテレビをつけたのだが、取り上げられているのはどの局もシード校や古豪校がどう凄いのか、どういうパフォーマンスを見せてくれるのかという話題ばかり。

 透華は素早くチャンネルをザッピングして確認するが、この時期にしか見ないような元プロや指導者の評論家が我が物顔で持論を話している姿を見て腹を立てつつ、テレビの電源を乱暴に切った。

 その姿を見かねた純はいつもの調子の透華をなだめる。全く対局を前にして欠片も緊張していないのはいいことだが、少しくらい落ち着いててもいいのではないか。

もう何度目になるかも分からないため息をつきながら今更どうにもならない事を考える純であった。

 

『大会6日目2回戦第3試合。まもなく先鋒戦が始まろうとしております!申し遅れました、私この対局の実況を務めさせて頂きます佐藤です。解説には大宮ハートビーツ所属宇野沢プロにお越しいただいております。本日はよろしくお願いします』

『よ、よろしくお願いします』

『すいません。本日は急に解説をお願いして』

『いえいえ…呼んでいただけて光栄です』

(解説大丈夫そうね。少し緊張してるみたいだけど…)

 

 それから数時間後、インターハイ会場は対局開始の時間が近づくにつれて徐々に熱気が高まっていた。何せ全国の厳しい予選大会を勝ち上がってきた猛者達の真剣勝負である。

既に観客席も満員で会場外のモニターにも人が集まっており、また全国各地でパブリックビューイングも開かれており否が応でも麻雀が国民的競技だという事実を認識させられる。

 また今日は放送席側でもひとつの修羅場があった。解説として呼んでいたプロ雀士の都合が悪くなり、急遽当日代打が必要になったのである。

どうしようかと大会スタッフが慌てていると偶然その現場に居合わせた瑞原はやりが推薦してきたのが、白糸台OGでもある宇野沢栞であった。実力もあり、ルーキー(プロ1年目)で知名度もあり、たまたまオフであった彼女に白羽の矢が立ったのである。

ちなみにこの日ハートビーツ指定のメイド服を着用しており、恵まれたスタイルを生かしてのグラビア露出が多い彼女の登場にネット掲示板を中心に熱狂的ファンが大いに賑わったのだがそれはまた別の話である。

 

***

 

「んじゃ行ってくるな」

「純君、頑張って!」

「純!龍門渕高校先鋒の力を今一度見せつけてくるのですわ!」

「ファイト…」

「純!虚心坦懐!」

「…今日は儂と衣にも回せ」

 

 仲間たちの激励を受け、途中取材にきた記者を適当にあしらいつつ純は対局室へと向かう。

 後ろに衣と鷲巣が控えている以上、自分が余程大きな失点をしない限りこの2回戦、2位以上は堅いだろう。自分は原点を維持できれば上出来だということも分かる。しかし2人に頼り切るつもりは毛頭なかった。

 

(要注意は永水の神代か…流れには乗らせねぇ)

 

 自分の持ち味は自分が一番よく知っている。今日もやる事は同じ。たとえ相手が超弩級の怪物であろうと流れを断ち切ること。傾きかけた天秤を押し戻すことである。

対局室には自分以外の3人が既に揃っており着席している。純もいつも通りのルーティーンである座禅を組み気持ちを整える。

 

***

 

先鋒戦前半戦東一局 親・永水女子 ドラ・{八}

東家 神代小蒔 (永水女子)

南家 井上純  (龍門渕)

西家 小瀬川白望(宮守女子)

北家 上重漫  (姫松)

 

小蒔配牌 {二三169⑦⑨⑨東東白発} ツモ {赤⑤} 打 {9}

 

純配牌  {一四赤五九②⑤⑧247西北発}

 

白望配牌 {三五34赤5①④④東南中中中}

 

漫配牌  {⑧124678北北六七八八}

 

『さあ始まりました各校のエース級がぶつかり合う先鋒戦!まず各家の配牌はどうでしょう』

『そうですね…神代選手はダブ東が対子、上重選手が配牌がドラドラで三色も見えます。また小瀬川選手は中が暗刻で仕掛けやすい形になっています。対して井上選手は少し苦しいですね』

 

六巡目

 

漫手牌 {⑥⑦⑧145678六七八八} ツモ {八}

 

(よっしドラがきた。張ったで!)

 

「リーチ!」 打 {1}

 

『姫松上重選手リーチ!これはいきなりの大物手炸裂なるか!?』

 

 場に動きがあったのは六巡目。姫松の上重漫がドラの八萬を引き込みリーチをかける。3面張の高めメンタンピン三色ドラ3の倍満をテンパイ。開始直後での倍満和了はあまりに大きく、もしツモれば永水に親かぶりを食らわせることができる。また安めでも裏ドラ次第で跳満まで伸びる。まさに絶好のチャンスだろう。

 

(チッ…リーチがかかったか。和了られると厄介だな…)

 

純手牌 {四五六②⑤⑧24西西} ツモ {9}  副露 {横678}

 

 純はここまでどうにか鳴いてツモをずらそうとしたのだが、手牌がバラバラでうまく鳴けず、今の自分に流れはないと本能的に察知していた。逆に姫松に流れが向いていると純は漫の捨て牌に視線を移す。

 

漫捨牌

{白北北九2横1}

 

 不要牌を整理していたら張った…と言わんばかりの捨て牌。手出しの連続であった事からほぼ無駄ヅモがなかったのだろう。また早い段階で自風の北を対子落とし、辺張を払ってのリーチである為十中八九タンピン形…打点もそこそこ高いはず。このままツモを回せば一発ツモもありうる。

 何とか流れを切りたいが牌勢が悪く、この局は和了れそうにない。しかし他家の手を潰す方法はなにも自分が和了る事だけではない。県予選が終わってからの四校合同合宿で嫌というほど痛感させられた。

 

(借りるぜ福路さん…あんたのやり方)

 

純手牌 {四五六②⑤⑧249西西} 打 {4} 副露 {横678}

 

 小考の後、純はツモってきた9索を手牌に取り込みカンチャンを崩す4索を切り出す。タンピン形のリーチに対して切るにはかなり危険な牌である。

 

(だるっ…そういうこと…)「…チー…」

 

白望手牌 {三四五4赤5④④東中中中} 打 {東} 副露 {横423}

 

 この4索を下家の宮守女子の白望(シロ)が鳴き、両面待ちのテンパイが入る。そして手牌から場風の東が切り出された。鳴かれるのを嫌い、テンパイギリギリまで絞っていた役牌である。

 

「ポンです」

(うっ…ツモれへん…)

 

小蒔手牌 {二三67赤⑤⑥⑦⑨⑨白白} 打 {⑨} 副露 {東横東東}

 

 さらに白望が切った東を対面の小蒔が鳴き、ダブ東を確定させ受け入れの広いイーシャンテンに構える。既に牌に右手を伸ばしかけていた漫だったがツモを飛ばされあえなく手を引っ込めた。純は四枚目の東を引き、手牌に入れることなくツモ切り。続いてツモった白望(シロ)がそのまま手牌を倒した。

 

「ん…ツモ。500・1000」

 

白望手牌 {三四五4赤5④④中中中} ツモ {6} 副露 {横423}

 

東家 永水女子  99000(ー1000)

南家 龍門渕   99500(ー500)

西家 宮守女子 103000(+3000)

北家 姫松    98500(ー1500)

 

(う、うちのリーチがそんな安手で…)

 

『あっと上重選手ツモることも出来ませんでした!小瀬川選手がリーチを軽くいなして初和了りです!』

『点数以上に価値のある和了りですね。効果的です』

 

 結局この局を制したのは白望(シロ)だった。中ドラ1で500・1000の和了りにリー棒を加えて3000点の収入となる。

よりによってオナテン待ちでリーチを蹴られた形となった漫はガックリと肩を落とした。

 

***

 

「え~和了れんかったん~」

「いきなりの爆発やと思ったんやけどな…」

「ダマテンでもよかったのよ~」

 

 大物手を逃した姫松高校の控え室。そこでは麻雀部員4人と監督代行がため息をついていた。東一局である為、そこまで焦る必要もないのだがここは和了ってほしかったというのが本音である。

 姫松高校の先鋒である上重漫は波に乗れば爆発し大きく稼ぐのだが、逆に乗れなければズルズル失点するという安定感のない両極端な打ち手である。

 ただ爆発した時の勢いは全国区のエースと比べても遜色ないものであり、その将来性を期待して大将である末原恭子がレギュラーメンバーに推したという逸話もあるのだが…問題は滅多に爆発せず不発が多いという点であった。

 

「…龍門渕の井上が思ったより上手いですね。鳴いてツモをずらすくらいやと思うてたんですけど」

「…?…今のは宮守が上手く鳴いてかわしたんじゃ」

「絹…あれは鳴いたんやない、井上に鳴かされたんや」

 

 前局のターニングポイントは間違いなく純の4索切りだろう。もしリーチの現物に頼って2索を切っていれば白望(シロ)は鳴かずそのまま4枚目の東をツモり2索の合わせ打ちで4筒、東のシャンポン待ちでテンパイ。白望(シロ)が最終的にツモった6索で漫が高め一発ツモだった。正に紙一重で漫の倍満手を封殺したわけだ。

 明らかに漫を警戒した打ち回し。漫の手に爆発の兆しがあっただけに悔やまれる。

 

「いやいやそんなん…鳴いてくれるかも分らんし、その先のツモ牌が分かってないとそんな芸当できないですよ…」

「つまり水を差されたっちゅうことやな~爆弾だけに!…あれ?おもろくなかった?」

(結果的に漫ちゃんの倍満手は流された。今日の爆発は期待薄やな…)

 

 つまらない事をドヤ顔で言っている主将を無視して恭子は頭の中で龍門渕の警戒レベルを一段階上げる。去年は大将の衣に繋げる堅実な麻雀を打っていた印象だが一年間で成長しているということだろう。

 また未だその全貌を見せない永水女子も宮守女子も手強(てごわ)い。えらい難儀な組み合わせになったなと恭子はもう一度ため息をつくのだった。

 

***

 

先鋒戦後半戦南四局 親・姫松 ドラ・{六}

南家 永水女子  83800(ー15200)

西家 龍門渕  114100(+14600)

北家 宮守女子 122500(+19500)

東家 姫松    79600(ー18900)

 

(あ、あかん…3万点差どころやないやん…)

(神代…動きなしか…)

(…)

 

 対局開始から数十分後。対局はそれぞれの思惑が交錯しながら進み、遂に後半戦のオーラスとなった。大物手を逃した漫はその後あからさまに配牌が悪くなり、それに反比例するかのように純と白望(シロ)が親番で軽い手ながら連荘を重ね、2人から大きく引き離されていた。

 だが気になるのは永水女子の神代小蒔。ここまで目立った和了りもなくただただ点棒を削られているだけである。昨年大暴れした実績があるだけに音沙汰なしというのは不気味に感じる。嵐の前の静けさというべきだろうか。他家に和了られての親番だが少しでも連荘して盛り返していきたい漫は少し期待しつつ理牌し始めるのであった。

 

漫配牌  {三赤五②③④赤⑤⑤2678北発} ツモ {4} 打 {北}

 

(おっ行けるんちゃうかこれ…)

 

 配牌時点で2つの面子があり赤ドラ2枚に他の形も悪くない。鳴いて軽くタンヤオで和了るのもいいし、面前で仕上げれば打点も期待できる。久々の好配牌にここは迷うことなく浮いているオタ風の北を切っていった。

 

純配牌  {六①①②⑤⑧11赤599北北} ツモ {南} 打 {⑧}

 

(チートイのリャンシャン…)

 

 純は対子が固まった配牌。一応七対子のリャンシャンテンだが七対子は役の性質上、有効牌が面子手より少なくなる為手が滞りがちになる弱点もある。

早めに聴牌出来れば儲けものと引いてきた字牌を残し8筒を切り出す。

 

五巡目

 

純手牌  {六①①⑤11赤5599南北北} ツモ {南}

 

(…南が埋まったか…ひとまずダマだな) 打 {⑤}

 

 意外にもこの局真っ先にテンパイしたのは純だった。しかし七対子の待ち牌にしたかった字牌の南が対子となってのテンパイである。同じテンパイならドラの六萬か赤5筒をツモりたかったがそれは欲張りすぎであろう。この局面でリーチをすれば出和了りで12000。ツモっても跳満、さらに裏が乗れば倍満まで伸びる思いがけない手となった。

しかし単騎を5筒か六萬にしてのリーチでは出和了りは期待できない。またその後の状況変化に対応できなくなるリスクは背負いたくない純はダマテンで六萬待ちとする。

 この局面でもあのタコス娘…片岡優希ならオーラス断トツでも勇んでリーチするのだろうかと内心苦笑いしつつ5筒を切っていった。

 

「う、5筒ポン!」

 

漫手牌  {三赤五②③④456788} 副露 {赤⑤横⑤⑤} 打 {7}  

 

(よっしゃテンパった!和了れば取り返せる!)

 

『井上選手に続き上重選手にも嵌四萬待ち5800のテンパイが入りました!』

『んーと…これは少し焦ったテンパイですね…巡目も浅いので萬子の嵌張払いで好形テンパイを待ってもよかったかもしれません』

『しかし親番ですしテンパイに取っていい場面だと思いますが…』

『いや筒子、索子ともいい形だったのが勿体ない…十分多面待ちへの発展が期待できたと思います』

『でも他家も和了りに向かっているので…』

 

 純が切った5筒をすかさず対面の漫が鳴き、タンヤオドラ2のテンパイに取る。しかしこれは(いささ)か強引で前のめりなテンパイに見える。

漫の副露と序盤に役牌が切られている捨て牌から手役がタンヤオだと看破されやすく、また待ちが四萬と手牌に使われやすい中張牌であることも和了りにくさに拍車をかけている。実況席でも実況佐藤アナと解説である宇野沢栞の意見が真っ二つに割れ、ヒートアップしかけていた。

 

「…」 打 {発}

 

(うっ…)

(…これは…なんだ…)

(…!この土壇場でくるか)

 

小蒔手牌  {一一二二三三七七八八九九九}

 

『あっ~と!?神代選手途轍もない大物手をテンパイしています!い、いつの間に…』

『六萬から九萬までの4面待ちです。九萬ツモで高めの数え役満ですね』

 

 続く神代小蒔が発を手出しで切ったその瞬間、強烈な威圧感が卓上を支配する。漫や白望(シロ)は正体を掴めずにいるが、純はこの感覚に覚えがある。何度も体感した衣や鷲巣らが大物手を和了る前兆みたいなものだ。つまり張っているのは間違いない。打点も索子を一面子落としている以上染め手で相当高いと読んでいた。 

 

純手牌  {六①①11赤5599南南北北} ツモ {八}

 

『井上選手ツモってきたのはよりにもよって八萬!これは振り込んでしまうのでしょうか!?』

『テンパイに取ればどちらとも放銃ですよ!』

 

(チッ…初牌の萬子なんざ切れないっつーの!) 打 {北}

 

『あっと井上選手テンパイを崩して振り込みを回避!』

『…避けましたか。何かからテンパイ気配を感じ取ったんでしょうか…』

 

 佐藤アナと栞の予想に反して純は完全安牌である北から落とす。この局面鳴いて場の流れを乱したいが原点を割る可能性がある以上、振り込みだけは回避しなければならない為甘い牌は打てない。

 

白望手牌 {①②③12789西西西白発} ツモ {2}

 

「…ちょいタンマ…」

(んー。ここは残り牌の数では圧倒的に発切りなんだけど…んー。)

 

 ここまで淀みなく打っていた白望(シロ)の手がここに来て初めて止まった。当の本人は額に手をやり場全体を眺め悩む。配牌から手なりで打っていた白望(シロ)の手は順調に進みチャンタが狙えるイーシャンテンとなっていた。

 迷いなくここは2枚切れの発を切り手を広げる場面。先程小蒔が通している牌でもあるので振り込みもない。だがその小蒔から先程確かに感じた圧迫感。このままツモらせる訳にはいかないような気もする。

 

純捨牌   {⑧2②一北}

 

小蒔捨牌  {⑨432中発}

 

漫捨牌   {北東発⑧7} 副露 {赤⑤横⑤⑤}

 

白望捨牌  {東④⑥北中}

 

(2索が全部見えてるけど1索が切れてない…つまり何処かに固まってる…)

 

「…決めた。こっちで」 打 {1}

 

(それだ宮守!)「ポン!」

 

純手牌  {六八①①赤5599南南北} 副露 {11横1} 打 {北}

 

(これで少しでも流れが変わってくれればいいが…)

 

 白望(シロ)は悩んだ末に1索を切りそれに純が食いついた。常人ならこのツモずれで足踏みすることになるが、今相手にしているのはそういう型枠から大きく外れた天照大御神である。しかし自分ができるのはあがくことだけ。あがかなければただただ蹂躙されるのみである。

 

漫手牌  {三赤五②③④45688} ツモ {九} 副露 {赤⑤横⑤⑤}

 

『上重選手これは苦しい!神代選手にド高めの九萬を握らされました!』

『完全に不要牌ですからね…ツモ切りではないかと…』

 

(九萬…切ってもええんかこれ…)

 

 純が鳴いてツモ番がずれた後、白望(シロ)は発を手出し。その後漫は四萬ツモ和了はならず。

 この九萬、漫がタンヤオ手で既に鳴いている以上ツモ切るしかないのだが本能がそれに待ったをかける。これは純の鳴きで自分に入ってきた牌…本来小蒔がツモっていたはずの牌である。ここまで純の鳴きで有効牌が他家に食い流され、うまくテンパイできず翻弄された手前、安易に扱えないのである。しかしここから九萬を抱えるということは実質の和了放棄。正に八方塞がりである。

 

(これ以上の振り込みはあかん。これは抱える…) 打 {8}

(8索手出し…ツモ牌は抑えたか)

 

 ここまで大きく点を削られ委縮気味になっていた漫は対子の8索を切っていく。何とかテンパイまで戻し、流局連荘を狙う腹積もりのようだ。逆に点数が浮いていれば強気に九萬を切り出していただろう。今回はこの臆病気味…よく言えば慎重な打牌が功を奏した。 

 場に切り出される8索を見て純は僅かに顔を(しか)める。純にとっては漫に振り込んでもらったほうが都合がよかったのだが、流石に学習しない木偶ではない。

そして8索に鳴きが入らない以上、自動的に小蒔のツモ番となる。小蒔はツモ牌を盲牌するやいなや卓に晒し続けて手牌を倒した。

 

「ツモ。4000・8000」

 

小蒔手牌  {一一二二三三七七八八九九九} ツモ {七}

 

(ずらしても和了るかこいつ…)

(はぁ…終わった)

(や、やっぱり九萬も当たり…)

 

 3人ともこの局は神経をすり減らしたようで椅子にもたれかかる。特に数え役満を振り込んでいたかもしれない漫は顔に冷や汗が伝っていた。

 

『神代選手自力で持ってきた!倍満です!』

『他家に和了牌を抑えられましたが待ちが多かったのが幸いでした』

『そしてこの和了りで先鋒戦終了!永水女子が原点付近まで復帰しました!現在初出場の岩手代表宮守女子がトップに立っています。なお次鋒戦は小休憩の後まもなく始まります!』

 

先鋒戦終局

南家 永水女子  99800(-200)

西家 龍門渕  110100(+10100)

北家 宮守女子 118500(+18500)

東家 姫松    71600(ー28400)

 

「お疲れさーん」

「対局お疲れさまでした」

「…お疲れさまです…うう…帰られへん…」

 

 対局終了後足早に立ち去った小蒔と漫の背中を見送りつつ自分もその場を立ち去る。宮守の小瀬川白望が椅子にもたれかかったまま微動だにしていなかったが物思いにでもふけっているのだろうか。

 トップは取れなかったが自分の麻雀は貫けた。場の流れも以前より明確に読み切ることができ、特訓の成果があったというものである。自分に出来ることは仲間を信じて見守るのみ。これが団体戦のもどかしさでもあると純は一息ついて控え室に戻っていくのであった。

 

 昨年までシード校にも選ばれていた強豪姫松高校が大差で4位に沈む波乱の幕開けとなった。しかし2回戦はまだ始まったばかり…




 まずお詫びを。2019年更新なしですいませんでした。仕事がすごく忙しく時間がとれず、それに合わせてモチベーションが下がった次第でございます。
 原作読み直したら対局前半後半で席替えしてるんですね…始めて気づきました。県予選含め書き直す気力はないので今後も席替えなしでいきます。今後もこんな感じで更新すると思いますが読んでいただけると嬉しいです。
追記・総得点に計算ミスがあったので修正しました。
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