魔法少女リリカルなのは -レジェンド・オブ・BraveBattleHEROs- 作:龍牙
「これで最後の一つか」
「ザクロードを囮にして奴等と戦わずに他の石の回収を優先した甲斐が有ったな」
「そうね。これで三つ、奥の手と合わせれば……ガンダム共を始末する事が出来る」
そう言うジオン三魔団の手の中に有るのはそれぞれが一つずつ持っている三つのジュエルシード。本来の歴史ならば、別の形で回収されるはずのジュエルシードの中の三つをザクロードを囮にガンダム達に気付かれる前に素早く、隠密裏に回収していた。
闇の化身に復活させて貰った時に与えられたのは黒い三武具だけではなく、新たな奥の手を与えられた。
だが、それを使ったとしても勝てるとは限らない、現にジュエルシードの力を取り込んでパワーアップしたマグマゴレームや
一度はアルガス騎士団の前に敗れたジオン三魔団にとって、こうして再び蘇った以上は二度目の敗北だけは許されない。例えどんな手を使ったとしてもだ。
まあ、ジオン三魔団にどれだけ誇りと言う物が有るかは疑問だが。アルガス騎士団の騎士団長『騎士アレックス』を捕虜にしたのは人質を使って得た勝利でも有るのだし。
そして、その為の手段として三人で力を合わせると言う手段も使っている。力には技、技には魔法、魔法には力、それがジオン三魔団がアルガス騎士団に敗北した事で学んだ結果だ。もっとも、後年のガンダム族には力や技だけではない者が多いのだが。
別の場所……
ジュエルシードの暴走によって巨樹が出現した場所……。其処の裏路地にジュエルシードとは違う光を放つ欠片が落ちていた。
號斗丸が
炎水の玉の欠片を拾い上げた人影は、その表情に笑みを浮かべ、ゆっくりと闇の中に消えて行った。
時の庭園……
「本当にありがとう、二度もフェイトを助けて貰って」
「は、はぁ……」
にこやかに司に礼を言うプレシアに対して、視界の隅に狼の姿でガタガタと震えているアルフの姿を留めながらリアクションに困る司だった。
「ああ、あの子の事は気にしないで……。二度もフェイトを危険に晒した事について色々と注意しただけだから」
『ん?』
『どうした?』
ふと、ゼロがブレシアの着けている妙にゼロにとって見覚えのある“龍の頭”をデザインしたネックレスが視界の中に入る。
『いや……知り合い(神様)の痕跡を見付けてしまってな……』
『……スペリオルドラゴンか……?』
『ああ』
號斗丸の言葉に同意を示すゼロ。心底『何やってんだ、あんたは?』と言いたくなる心境だろう。通称『竜の首飾り』と言う皇騎士の物語の中で登場したスペリオルドラゴンの盾(ドラゴンの姿では頭)と同じ形をした首飾りである。
思いっきり、影も無かった筈のスペリオルドラゴンの間接的な協力があった可能性を物語っている品である。
まあ、後の
何故プレシアの元にスダ・ドアカワールドのアイテムが有るのかは分からないが、明らかにスペリオルドラゴンが何らかの形で関わっているは間違いないだろう。
『本当に何をやってるんだ、あの方は?』
ガンダム達が司達の世界に渡った闇の化身と戦う為に色々と神としての立場として他の神と一緒に行動しているのは知っているが、何をしているのか疑問が沸く。
まあ、スペリオルドラゴンも
だが、司のリンカーコアに自分達の力の一部を渡した事からも分かる様に物理的干渉でなければある程度は干渉できる。
何気に司が将来的に変身せずに神機でも扱えるように成らないか心配である……。
「あの、プレシアさん……何でフェイトさんにジュエルシードを集めさせてるんですか?」
ふと、話題がそんな方向に向かう。何故危険な事をさせているのかは疑問だが……考えてみれば、ある程度
「……そうね……出来る事ならフェイトだけじゃなくて私がやりたい所だったんだけどね」
遠い目をしながらプレシアはそう呟くと軽く咳き込む。口元を押さえていた手には微かにだが血が付いていた。
「っ!?」
「お母さん!?」
「ごめんなさい、大丈夫よ。これでも最近……このペンダントを着けていれば楽になるんだけどね」
そう言って司達に見えるように手に取るのは彼女の身に付けていた竜の首飾りだ。
「ちょっと無理しちゃって体を壊したのよ……お蔭であとどれだけ生きていられるかも分からないし、禄に魔法も使えないのよ。それで、歪んだ形とは言え願いを叶えるジュエルシードを研究すれば、もう少しだけ生きられると思って仕方なくフェイトに集めてもらっているんだけど……」
そう言って哀しげに視線を司へと向ける。
「あんな危険な奴等が狙っているなんて思いもしなかったわ」
「まあ……普通はそうですよね」
カードの中で號斗丸とゼロ、アルガス騎士団も司の言葉に同意する様に頷いている。重すぎる話でどんなリアクションをして良いのかも分からない思いの司だった。しかし、目の前のプレシアの様子からはどう考えても『延命』と言うよりも『治療』を選択すべきだとも思う。少なくとも、願いを叶えるジュエルシード等と言う代物を研究するのだから。
『僅かに命を繋ぐ事』を『生きる事』よりも優先している様にも聞こえる。
「あの……失礼ですけど、一つだけ聞いていいですか?」
「良いわよ」
「……さっきの言葉、何で“体を治せる”じゃなくて、“もう少しだけ生きられる”なんですか?」
「その事ね」
そう言って、口元の血を拭うとプレシアはカップに淹れられたお茶を一口だけ飲んで口を潤す。
「理由は二つ有るわ。一つは治療よりも延命の方が可能性が高いと思ったから。もう一つは……生きていられるのは、少しだけで良い……そう思ったからよ」
「お母さん……あの……」
言葉を濁すプレシアにフェイトが小声で何か話しかける。プレシアはプレシアで彼女の言葉に驚いた顔をしたが、
「貴女の好きな様にしなさい……」
プレシアの言葉を聞いてフェイトは不安そうな表情を浮かべながら司へと向き直る。
「あの……司に、聞いて欲しい事があるんだ……」
「聞いて欲しい事?」
『……オレ達は聞かない方が良いのか?』
『そうだな。聞いて欲しいのは司だけのようだ』
(いや、別の意識って認識されて無いだけじゃ……)
内心で號斗丸とゼロにそんなツッコミを淹れつつ、フェイトへと視線を向ける。
「あ、あの、私ね……。私は……お母さんの本当の娘じゃないんだ……」
辛そうにそんな言葉を続ける。
『『「え?」』』
何と言うか……更に重過ぎる話に本当にリアクションに困る司だった。
「私は……昔事故で死んだ姉さんの細胞を元に作られた……クローンなんだ……。母さんが体を壊したのもその研究のためで……」
フェイトの言葉に驚いてプレシアへと視線を向ける。
「ええ。あの頃は失った娘……フェイトの姉の“アリシア”を生き返らせるための研究として“プロジェクトF”と言う人造魔導師を生み出す計画に手を出したんだけど……フェイトが生まれる前に、夢の中に……」
其処で一息入れてプレシアは独白する。
「夢の中にアリシアが、金色の龍と鳥と一緒に出てきたの『ゴンッ!』って、大丈夫?」
「は、はい……大丈夫です……」
プレシアの言葉にズッコケてテーブルに頭を殴打してしまった司だった。プレシアの夢の中に出てきた鳥とか龍は明らかにスペリオルドラゴンと
「その夢を見た時に前後する様に研究に対する気力も失っていたから……思えば、あの頃からアリシアは生き返らないって薄々思っていたのね」
『……気力が……』
『無くなる?』
プレシアの言葉に引っかかるものを覚える號斗丸とゼロ。プレシアの言葉を聞く限り、娘の夢を見た時に握っていたのが竜の首飾りだったそうだ。
「ふふ……それにね。少しでも可能性のある延命の研究を始めたのも、フェイトが一人前になるまで護るためなのよ」
「護るため?」
「あの子はプロジェクトFの現在での唯一の成功例。だから、フェイトが独り立ちできるまで護ってあげないと……」
『彼女を狙う者がでると言う事か……』
『成功例なんて、研究している連中にしてみれば最高のサンプルだろうからな』
(……二人とも、何処で覚えたのさ、その知識?)
ようするに、プレシアがジュエルードを求めているのはフェイトが自分の身を守れる様になるまで守るためと言う訳だ。その為に治るか分からない研究に時間を取られるよりも、まだ可能性の高い延命の為の研究を行おうとしていると言う訳だ。
「ええ。偶然、黒い影が輸送船を襲っている所を見てチャンスだと思ったのよ。研究が終ったら、折を見て持ち主に返そうとも思っていたし……。フェイトの事は信用できる相手にしか伝えられないから」
『『黒い影!?』』
イメージする姿こそ別だが、號斗丸とゼロの脳裏に浮かぶのはそれぞれの知る闇の化身の姿。
「出来れば、時空管理局が来る前に集めておきたかったんだけど……」
プレシアはそう小さく呟く。
「ねぇ……こんな私でも、司は……その、友達になってくれる?」
「良いよ」
『そもそも、クローンだからなんだと言うんだ?』
『ああ。彼女は心を持った人間だ。生まれこそ違っても大きな違いじゃない』
ガンダム達との出会いのお蔭かフェイトの告白を聞いても一切動じる事無く、迷い無くそう答える司だった。それに続くようにゼロと號斗丸も言葉を続ける。
特に號斗丸は過去の戦いで共に戦った仲間……いや、親友である師の『超将軍 爆流頑駄無』によって作られた『鉄機武者 鋼丸』やその兄である『鉄機武者 爆進丸』の事を思い出す。
生まれと生きる長さこそ違うが鋼丸を祖として誕生した鉄機武者達と武者達は天宮の国で対等の仲間となった。武者の中に鉄機武者を道具などと思う者等一人としていなかった。更に大将軍となる鉄機武者さえ存在するほど、武者との差は無かった。ならば、生まれが違う程度の人である彼女と司が友達になれない訳はない。
「本当に……良いの?」
「うん。生まれが違うだけで、心を持った人間だからね、クローンだろうとフェイトはフェイトだよ」
「ありがとう……司」
フェイトは涙を流しながら笑顔で礼を言った。
そんなフェイトと司を見ながらプレシアは……
「ふふふ……フェイトも好きな人が出来たみたいで、これで私も安心して逝けるわね……」
「「ええ!? って、それより何で縁起でもないことを!?」」
思わずプレシアの言葉に声を揃えてツッコミを入れる司とフェイトだった。
「フェイトを安心して任せられる人が出来て良かったわ」
遠い目をするプレシアと満更でもないと言う表情のフェイト。本気でリアクションに困る司だった。
『號斗丸、この一連の事件……』
『闇の化身が裏で動いている……か。恐らく、プレシアが研究に対する気力がなくなったと言うのも……』
號斗丸とゼロは其処まで考えを広げた後、
『彼女の誕生を阻害するためと、自身の復活の為に当時のプレシアの意志を支えていた、心の闇を奪ったと言う事、か?』
『奴らがそんなに早く動いているとは……』
まだ見ぬ闇の化身の影に改めて脅威を感じるのだった。