魔法少女リリカルなのは -レジェンド・オブ・BraveBattleHEROs-   作:龍牙

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Battle014

―フフフフ、フハハハ……―

 

 

 

 六つのジュエルシードが作り出したそれを包み込む黒い暗雲から聞こえる不気味な笑い声が海上に響き渡る。

 

 

 

―これで、まだ完全と言う訳ではないが、貴様等を始末するには十分過ぎる力が戻った―

 

 

 

 暗雲が収束した鎧がジュエルシードによって作り出された仮初の肉体を包む。

 

 

 

―ワシの名は『闇皇帝』。そして、この仮初の体は『闇将軍』よ!―

 

 

 

 闇将軍を通じて二つ重なる歓喜に震える声が響く。

 號斗丸達と対峙するのは完全では無いとは言え、仮初の『闇将軍』の肉体で復活した天宮の国の闇の化身の一角、『四代目頑駄無大将軍』となった『武者荒烈駆主(ムシャアレックス)』によって歴史を変えられたとは言え、単独であるのならかつて最強の武者の一角である『初代頑駄無大将軍』を葬った武者頑駄無達の最初の戦いの影に潜む闇の支配者『黒魔神/闇皇帝』。もっとも、初代大将軍が敗れたのは荒烈駆主が過去の時代に跳ばされなかった為である可能性が高いが。

 全ての始まりを告げる序章の決戦に繋がるまでには、僅かに時は遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「白状します。貴方達の言った様に、そうなる様に誘導したのは事実です」

 

 実際、大人であり艦長と言う多くの部下を扱う立場のリンディにしてみれば、相手の性格を分析するも、どう言う風に誘導すれば思ったように動いてくれるかは容易く計算できるだろう。幾ら才能が有るとは言えなのはのまだ小学生……子供と言うしかない年齢だ。

 司の場合は完全に法術師ニューとゼロに交渉と判断を任せていたので見事に見破った訳だが……

 

「少なくとも私の立場からはあなた達に協力要請をする訳にはいかないから。こんな卑怯な手段を取ってごめんなさい」

 

 そう言ってリンディは改めてなのは達に謝罪する。

 

「母さん……どうして」

 

「彼の言う通りよ。今の私達には人手が足りない。それに、あんな相手がまだまだ何人も居る様な事態だと、正直今の戦力では不安でしょうがないの」

 

 そう言って思い出すのはジオン三魔団やカイザータイタニア。そのどちらもが強敵と言って良い相手……アースラの全戦力で戦ったとしても勝利できる未来が見えてこない、逆に無力にも全滅させられる、そんな未来さえ想像できる。

 しかも、その背後にはそんな相手でさえ“雑魚”に思えるほどのレベルの黒幕まで存在しているのだ。現状に不安を感じないほうが可笑しい。

 

「そんな時に観測された高い魔力値。しかも管理局で僅かにしか存在しないAAAランクが。なのはさんの事です」

 

((((((あー……))))))

 

 劉備達三人と鋼丸を除く司に號斗丸とゼロ、アルガス騎士団が納得した様に頷く。プレシアに有った時に聞いていたが、フェイトはなるべく魔力を測定され難いように行動する様に言われていたそうだ。流石に闇の化身の配下に襲われた時は、そうも言ってられないだろうが。

 カバーストーリーは用意してあるが彼女の生まれからすれば、それに気付かれる恐れのある要因は極力排除しておきたい(序でに管理局に関わる可能性も)との考えと言う話だ。

 

「そして、魔力ランクこそ上手く測定できないものの、アースラの最強戦力であるクロノが手も足も出なかった奴等を単独で討伐できた司君」

 

 リンディのその言葉にゼロとニューは微かに違和感を感じる。嘘は言っていないだろうが何処か肝心な事を隠している、そんなイメージを受ける。

 それが何かは分からないが、闇の化身達と戦うための戦力として求めているのだけは間違いないだろう。

 

「「それで?」」

 

 奇しくもゼロとニューの言葉が重なって響く。

 

「私はあなた達の力が欲しい。でも、あなた達が拒絶するようなら無理強いはしません。もし、協力してくれていたとしても、危険が有れば必ず守るつもりでした。……あなた達の敵を相手に何処まで戦えるかは疑問ですが……。どうかそれだけは信じてください」

 

 そう言ってもう一度頭を下げる。

 

「お願いします。私達に力を貸して下さい」

 

(どうする?)

 

『協力しない理由は無いけど』

 

『だが、彼女はまだ何かを隠している。そんな気がする』

 

『だけど、あの人達との協力はした方が良いんじゃないの……かな?』

 

 司の意識の中で行われる號斗丸、ゼロ、劉備、司の四人の話し合い。

 なお、翔の国の国主と言う立場である劉備、騎士達では後輩に当たるゼロだが一番初めに目覚めたと言う事で、號斗丸の場合も鋼丸が判断を任せたためにこのメンバーが現在目覚めているSDガンダム達の代表となっている。

 

 その結果……

 

「頭を上げてください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アースラから転移魔法で転送されるとそこは臨海公園だった。

 

「ふう」

 

 ゼロへの変身が解けると倒れそうになる体をニューが支える。

 

「大丈夫か?」

 

「思ったよりも、ね。それより、あれで良かったのかな?」

 

 結局の所、彼等の出した答えは『闇の化身の手下と戦う時のみ協力する』と言う物だった。飽く迄緊急時(闇の化身絡み)の救援なので、ジュエルシードの回収については完全に手を引いた形になった。

 

『良いも何も……学生の本分は勉強じゃないのか? 疎かにするのは感心しないぞ』

 

「えーと……」

 

 號斗丸のもっとも過ぎる一言が響く。號斗丸、何気に留学経験も有り文武両道を行く武者だったりする。號斗丸の言葉には劉備と関羽も同意していたりする。

 

『それに、お前の呪いは完全に解けていない。流石に必要以上に彼女と関わるのは、まだ負担が大きいだろう』

 

 実際にはそれが最大の理由だった。あの状況ではなのはがアースラに協力するのは間違いないと思っての判断だが、案の定なのははアースラへの協力を申し出た。だからこそ、ゼロはジュエルシードの回収からは手を引いたのだ。

 付け加えるなら、ある程度自由に動ける方が闇の化身を相手にするには、対応し易いという考えも有る。

 

「それよりも今は休む事を考えた方が良い。ジオン三魔団との決戦や、ドラグーンの召喚の負担は大きい様子だからな」

 

「そう、だね」

 

 ニューのターンの魔法でその場から彼等の姿は掻き消えた。本当に便利な移動魔法である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、

 

 

「高町さんには悪いけど……平和だ~」

 

『『『いや、本当に悪いだろうそれは!?』』』

 

 学校の机に突っ伏しながら呟く一言にガンダム達が一斉にツッコミを入れる。確かにトラウマに悩まされないのは良いんだろうが、実際には原因となっている本人は悪くなかったりするのだし。

 

(ごめん。でも、それを抜きにしても今の所闇の化身がジュエルシードを狙っている様子は無いみたいだね)

 

『ああ。フェイトさん達も動きは無い様子だから、彼女達も一旦家に戻ったのか?』

 

『プレシアさんは管理局と彼女を関わらせたくなかった様子だからな』

 

 特に毎日ジュエルシードを狙う闇の化身やその配下が動くと言う訳ではなかったが、それでも今日はまだその兆候さえ見られない。まあ、闇の化身本人が動くと言うのはそうそう起こらないだろうが。

 

 クラスメイトの噂でなのはが家庭の事情で何日か学校を休むと言う様な話が聞こえてくる。実際には、管理局のジュエルシードの回収に協力する為に拠点となるアースラに居るので学校を休んでいると言う事を知っているのは校内では司だけだろう。

 

(家族には何て説明したんだろうね……)

 

『正直に話したら……司の一件を考えると間違いなく反対しそうだけどな』

 

(ごめん、その事は思い出させないで貰えると嬉しいんだけど……)「っ!?」

 

 昼休みの時間を楽しみつつそんな会話をしていると司の直感が警鐘を鳴らし、それに従って慌てて立ち上がると急いで教室を出ようとする。

 丁度司がドアに触れた時だった……“反対側”のドアが開いたのは。

 

「「あ」」

 

 一瞬だけ、ドアを開けて司のクラスに入ってきた金髪の少女と目が合う。……『アリサ・バニングス』、なのはの友達の一人だ。

 

 急いで目を逸らして教室を出ようとするが、

 

「あっ! あんた、待ちなさいよ!」

 

 待てと言われて待つくらいなら最初から逃走などしない。呼び止める声を無視して急いで教室を飛び出していく。

 

(昼休みが終るまで何処かに隠れてやり過ごそうか?)

 

『いや、下手な所に隠れたら見付かった時に逃げられないだろう?』

 

 妙に逃走についてアドバイスしてくれる號斗丸だった。濡れ衣とは言えお尋ね者にされただけの事はある。

 ……その『お尋ね者』と言う肩書きが鋼丸の試作品である『鉄機武者 爆進丸』に妙な誤解を与えてしまったのは関係に無いので置いておこう。

 

「やっぱり逃げたわね。すずか、そっちに言ったわよ!」

 

「うん!」

 

「っ!?」

 

 そう言われて前に視線を向けると丁度司の逃げ道を塞ぐ様に、もう一人『月村 すずか』が立っていた。

 

『なるほど、本格的に司を捕まえ様とした訳か』

 

『逃げ道が限られている以上、それを塞ぐのは当然だな』

 

(感心しないでよ、そこ!)

 

 納得して頷くゼロと劉備。流石になのはの友人二人が司を捕まえようとしている以上、その理由は間違いなくなのはに関係している事だろう。

 

(月村さん……だっけ。彼女をかわして逃げる)

 

 後ろからはアリサが追いかけて来るので回避に急ぐ必要が有る。念には念を入れてフェイントを混ぜて逃げ道を塞いでいるすずかをかわそうとした司だが。

 

「嘘ッ!」

 

 司の服の一部をすずかの手が掠る。フェイントに引っかかりながらも司の動きに完全に反応していた。

 

「惜しい!」

 

(あ、危なかった)

 

 フェイントを入れてなかったら間違いなく捕まっていただろう。

 

『彼女、見かけによらず運動神経良いんだな』

 

(あのさ……そんな二人から逃げてるぼくの身にもなってよ!)

 

『いや、二人はトラウマとは関係ないんだから捕まっても問題ないんじゃ……』

 

(ぼくの直感が言ってる。間違いなく高町さん関係だよ)

 

『そ、それが当たってるなら、凄い直感だな……彼女達も』

 

 妙な感心を覚える號斗丸だった。トラウマの影響でなのはを回避する為に直感を全て使ってるのかと時々疑問に思う司の直感が訴えているのだから間違いないだろう。

 

「待ちなさいよ、あんた!」

 

「お願いだから、ちょっと待ってよ」

 

「いーやーだー、待ちたくない!」

 

 アリサとすずかとのそんな追いかけっこは昼休み中続くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後、即座に荷物を纏めて教室を飛び出していく。例によって直感に従っての行動だが……

 

「待ちなさい!」

 

「待ってよ!」

 

 運悪く下駄箱の所で二人に遭遇。急いで逃げたものの、こうして追いかけっこが再開されてしまった。

 

「あんた、何かなのはの事知ってるでしょ!?」

 

「っ!? いや、何も知らないよ!」

 

「じゃあ何で逃げるのよ!?」

 

 アリサからの問いにそう答えてみたものの、それで納得してくれるようならば初めからこんな追いかけっこ等展開されはしない。

 

(逃げないで知らないって言ったら納得してくれたかな……?)

 

『無理だろうな、どっちにしても』

 

『それにしても、鋭いな……あの子』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな一件から数日、闇の化身の配下の出現も無く、アースラからの連絡では未だにジュエルシードは一つも見付かってないそうだ。

 ジュエルシードの残数は現状で“六つ”。後の“六つ”が未だに見付からないらしい。

 

 

 

―ふふふ……ここか。あの石が有るのは―

 

 

 

 海上で海を見下ろす何かの黒い影が浮かび上がる。

 

 

 

―ワシの完全な復活にはまだ足りんが、僅かとは言えワシの力が使う分にはこれだけ有れば十分だろう―

 

 

 

黒い影が翳した掌から打ち出された雷が六つ海へと落ちる。同時に発動した六つの竜巻を中心に海上では幾つもの竜巻と雷が荒れ狂い始めた。

 

 

 

―あとはあの石を手に入れるだけだ―

 

 

 

 その場へと近づいてくる気配に気付き、邪悪な笑みを浮かべながら黒い影は消えていく。

 

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