魔法少女リリカルなのは -レジェンド・オブ・BraveBattleHEROs- 作:龍牙
號斗丸は二本一対の愛刀を振るい黒い怪物の触手を切り裂いていく。ほぼ無制限に何度も再生されている事には多少厄介と言う感覚はあるが、それでも目の前の敵は早さも力も半分程度の力しか出せないとは言え號斗丸にとっては大した相手ではない。
もっとも、今まで天宮の国を救った英雄達の一人である號斗丸が苦戦する相手は負抜けてでも居ない限り早々居る訳は無いが。
そうなると、矢張り問題になってくるのは相手の戦闘能力よりも再生能力だろう。
(……やっぱり何らかの核が有って、それを何とかしないとダメなのか?)
號斗丸の経験が与えてくれる閃きが真実に近い答えを導き出す。だが、本来號斗丸は魔法……號斗丸の居た天宮の国では法術と言うべきそれは得意ではない……と言うよりも使えなかったりする。どちらかと言えば、
『オレの専門と言う訳か。変わるか?』
魔法関連は騎士であるゼロの方の専門だ。
ゼロガンダムの居たスダ・ドアカワールドとは別の世界……正確には世界の名さえ代わるほどの未来の時代であるリオン・カージに於いて騎士とは剣士、闘士、魔法使い等の道を極めた者が到達する一つの上級職となっている。
つまり、騎士を名乗る以上魔法に付いても知識は有る。この世界の魔法は全くの別物だろうが、ある程度は理解できる。
(いや、大丈夫だ。専門外なんて言ってられない。オレも今のうちに慣れておく必要が有る。それより、司は大丈夫か?)
『……かなり辛そうだ』
辛うじて號斗丸の戦いに集中しているが、どうしても後ろに居るなのはの存在に対してトラウマが発動している状況なのだ。実際、かなり辛い。
(……早く相手の核を破壊した方が良いか。問題は……)
問題は司の意思が無ければ全力で放てない奥義で核を破壊できるかと言う点だ。
(いけるか?)
「あのっ! どなたか存じませんが、あれはジュエルシードと呼ばれるロストロギアの思念体です。攻撃するだけでは倒せません! 早く封印を!」
なのはと一緒に居るフェレット、ユーノが叫ぶが號斗丸には封印等は出来ない。付け加えると、ゼロも其処まで自在に魔法は使える訳も無く、二人の専門はどちらかと言うと戦闘全般だ。
「いや、封印しろと言われてもオレには封印なんて出来ないんだけど……」
「え?」
號斗丸の言葉にユーノは固まってしまう。司自身魔力は持っているだろうが、少なくとも號斗丸は魔力に由来する力は持っていない。
……敢えて言うならば號斗丸達武者ガンダムの場合は『武者魂』と言う所だろうか、武者○伝的に?
「えええええええええええええっ!? 確かに魔力やデバイスを使ってる様子も、バリアジャケットも無いけど……って、だったら、貴方は何者なんですか!?」
「武者だけど」
正しくは武者ガンダムです。
「えっと……色々と言いたい事も有るんですけど、全然説明になってませんよ! それに、武者って何!?」
號斗丸の言葉に対して混乱気味なユーノだった。流石に魔力も何も無しに戦う姿を見せられては混乱するしかないだろう。魔力や魔法と言う力の存在を知っている者としては特に、だ。まあ、號斗丸の姿についてはバリアジャケットやデバイスの一種として勘違いしていても無理は無いだろうが。
「それなら、これを使ってください! 『レイジングハート』には封印の術式がインプットされています!」
そう言って號斗丸へと赤い宝石『レイジングハート』を差し出してくるが、
「いや、
そう言った後、號斗丸は心の中で『ゼロと司は使えるけど』と付け加える。
そもそも、ユーノの声が聞こえた司はこの世界の魔法を使う為の器官である『リンカーコア』の存在の有無は間違いなく“有”だ。
ゼロの済む世界『スダ・ドアカワールド』には魔法と言う概念が存在し、法術師や僧侶と言った魔法を扱う者は当たり前の様に存在しているため、当然魔力も存在している。そもそもゼロの技も一種の魔法剣に近いだろうし。
だが、號斗丸の居た天宮の国には魔法と言う物は存在して居ない。
付け加えるならば、號斗丸やゼロに変身する時、司の持っている魔力は使えない。これは、彼等の力を扱える特異点である司が彼等の姿に変身する際に彼の魔力を媒介としている為である。
そんな訳で、號斗丸には思念体をコアであるジュエルシード毎倒す為の手段は有っても、封印する為の手段は存在して居ない。倒せりゃ十分かもしれないが。
「そ、そんな……じゃあ、どうすれば……」
「不本意だが、彼女の力を借りるしかないだろう。元々君は彼女の力を借りようとしていた様子だしな」
「わ、私っ!?」
號斗丸はユーノと共に居るなのはへと視線を向けて言った。自分達の存在しない場合の本来の正しい歴史では、此処で彼女が魔法と言う力に関わる可能性が高いと言う点は理解していても、素直に納得できるものでは無いのだ。
「はッ!? そ、そうか!」
ユーノは本気で忘れていた様だった。
「私、やるよ!」
ユーノから受け取った赤い宝石、レイジングハートを手にとって、なのはが決意を込めてそう言うと號斗丸と戦っていた思念体が再び動き出す。
「うっ……」
その様子に一瞬たじろぐなのはだが、再び號斗丸によって切り裂かれる。兄である『飛駆鳥大将軍』に成り代わった悪の大将軍『魔星大将軍』率いる悪の手に落ちた頑駄無軍団や、現代日本に渡った歴代の武者頑駄無達と共に『堕悪魔刃頑駄無』率いる堕悪闇軍団と戦ってきた歴戦の勇者、不意打ちだろうが並の相手に掠り傷さえ許さないほどの実力は持っている。
「君、心配するな……封印が完了するまでオレが守る」
「…………うん、信じる!」
なのはは思う。もう一度、一度だけ会った……主に兄のせいで疎遠になってしまった司と、やっと再開出来た彼とまた友達になりたいと、何度も願っていた(全力で避けられているが)。だからこそ、その願いを叶えるためにも、こんなところで死にたくは無い、と。
號斗丸の鎧の胸部にある師である“超将軍”『爆流頑駄無』より受け取った『炎水の玉』に“號”の文字が浮かび上がり、バックパックとショルダーアーマー『闘覇の羽織』が広がり三枚の翼が広がる、同時に手甲『爆熱甲』の一部が変形し爪の様なパーツが展開する。
最後に兜から折り畳まれていた『爆熱心眼翼』が前方に展開し、鍬形の部分に鳥を思わせるパーツが来た瞬間、翼と頭にある緑色のパーツが輝き翼に光輪が現れる。
「爆熱の陣!」
それは、號斗丸の必殺技用の形態『爆熱の陣』。そして、二本の刀を十字に交差させる。
「熱火! 爆輪斬!」
號斗丸の必殺技『熱火爆輪斬』に飲み込まれた思念体がジュエルシードを残して完全に吹飛ばす。流石にこんな街中で全力の奥義等は使えないので多少加減したが……。
「凄い……」
「えっと」
桜色の光の柱の中でバリアジャケットを纏った魔法少女と言うべき姿に変身した機械仕掛けの杖《レイジングハート》を持ったなのはと、ユーノが呆然と呟く。
付け加えて言うなら、ジュエルシードから再び號斗丸によって消し飛ばされた思念体が再生しようとしているので、問題は何も解決していないだろう。
「今だ!」
「う、うん! リリカル・マジカル。封印すべきは忌まわしき器、ジュエルシード! ジュエルシード、封印!」
『SEALING MODE SET UP』
なのはの声で変形したレイジングハートの形が変形すると、桜色の光の帯が再生しようとしている思念体を拘束する。
『STAND BY READY』
「ジュエルシード、シリアルⅩⅩⅠ! 封印!」
『SEALING』
光の帯が思念体を貫くと、再び消滅させ、後には青い宝石《ジュエルシード》だけが残された。
「これが、ジュエルシードです。レイジングハートで触れてみてください」
「う、うん」
なのはがユーノの言うとおりにレイジングハートで触れると、それは先端の赤い宝石の様なパーツに入っていった。それによって、封印作業が終わったのか、彼女の服装も元に戻り、レイジングハートも元の宝石に戻った。
「お、終わったの?」
「はい、ありがとう……貴方達のお蔭で大きな被害は……」
それだけ言い残してユーノは再び気絶してしまった。
「あっ、あの! 號斗丸さん? 私聞きたい事が!」
なのはが號斗丸に何か聞きたそうにしているが、それも無理もないだろう。彼の存在には色々と疑問があっても無理は無い。
「いや、此処に長居するのは拙い」
「え?」
まだ遠いがパトカーのサイレンの音が確実に近づいてくる。惨状を考えると流石にこんな夜中に此処まで暴れたのだから、誰かが通報していたとしても無理は無いだろう。
「早く此処から離れた方が良い。流石に君の年齢を考えると、補導対象なのは間違いないから」
『そう言うものなのか?』
ゼロが疑問の声を上げる。この世界でカードに封じられた状態とは言え、司の元で一年ほど生活しているがまだこの世界のルールには熟れていない部分が大きい。
流石にそう言う部分では現代社会で立派に生活してきていた號斗丸には負けていると言う所だろう。
そう言って號斗丸はその場から立ち去っていく。
「あっ……」
道路から跳んで塀へ、塀から近くの家の屋根まで飛び上がると、なのははそのまま立ち去っていく號斗丸を呆然と見送る事しかできなかったが、直ぐに正気に戻って慌てて其処から立ち去っていく。
『良いのか、一人で帰して?』
「確かに心配だけど、あまり司に負担をかけたくない」
どうも普段の生活でも彼女の家でやっている喫茶店だけでなく、彼女の家の近所にも近づかない様にしている司を無理に連れて行く事は避けたいと言う所だろう。
実際、號斗丸もゼロも一人で帰らせると言うのは確かに心配だが、なのはと言う少女に対してトラウマを持っている司に必要以上に無理はさせたくないとも思っている。
なので一度離れたと見せかけて遠く離れた位置から無事に帰るのを確認していたのだが、流石にこんな夜遅くに小学生の子供が出かけたのだから家族も心配していたのだろう、無事に彼女の兄らしき男性と出会っていた。
内心、それには安心していたが……同時に直接送る事を避けて良かったとも思っていた。少なくとも、もう一人のトラウマの現況と司を会わせたくないと言うのが、二人の心境だった。
一瞬號斗丸と男性の視線が合うが、號斗丸は無事を確認したので早々にその場を立ち去っていく。
(……ゼロ、気付いているか?)
『ああ』
(えっと、二人とも何が……?)
號斗丸の言葉にゼロと司の二人がそう返す。
『今日の事件で“闇”が動かなかった。帰り道で彼女を狙うかとも思ったが、それも無かった』
(そうなると、闇はオレ達の想像とは違った動きを見せている可能性が高い)
(まだこっちの世界に来ていないだけ、って可能性は……少し希望的過ぎるか)
(ああ)
『あのジュエルシードと言う物に有った番号から考えると、まだ他にも有る。それを利用して戦力の強化を優先していると言うのは?』
(……可能性として考えておいた方が良いだろう……。それに)
(それに?)
(上位の闇の復活には何かの媒介が必要になる。オレ達が君の力を借りなければならない様に)
???
そう、號斗丸の予想は当たっていた。
「何処だ、何処にある?」
ゼロや號斗丸と同じ物でありながら明らかに仲間では無いと言う空気を纏っている一匹のMS、否、“妖怪”が忌々しげに呟く。
背中に当たる部分から伸びているのは九本の白く長い尾、白を手とした体色を持ったそれは同じ一本の白い尾を持った小型の妖怪達へと指示を出している。
「お前達、一刻も早くあれを手に入れろ! “大蛇飛駆塞虫”様の完全な復活の為にも一つでも多くあれを手にする必要が有るのだ」
かつて“ガンダム”の名を持つ正義の戦士たちに敗れた闇の戦士達は、異世界に於いて復活を遂げ、再び光のガンダム達と戦う為に人にさえ知られぬ様にゆっくりとその爪を牙を研いでいた。
-かつての敗北の屈辱によって高められた“憎悪”と言う名の闇の力、-
また別の場所では騎士、闘士、魔術師と言う風貌の三体が集まっている。
「なるほど、コイツがあれば」
「今度こそヤツラに勝てる」
「その通りよ。今のままでは以前の二の舞、この石の力で強力な力を手に入れて」
赤い騎士、蒼い闘士、白い魔術師の順に魔術師の持つ水晶に映し出されたジュエルシードを見て呟く。
-そして更なる力を求めてこの世界で暗躍を続けている。その目的はタダ一つ、-
『今度こそ、ガンダム達を倒す!』
この世界にて再誕を果たした闇のMS達は奇しくも同時にそう叫ぶ。