魔法少女リリカルなのは -レジェンド・オブ・BraveBattleHEROs- 作:龍牙
ジークジオンと闇皇帝の出現した事件は無事解決した。後にDE事件と呼ばれる事となる事件は終わり、時の庭園を占拠されていたプレシアはフェイトと共に事情聴取の為に時空管理局の本局に向かう事になった。
……その際、龍の首飾りを外したせいで今まで軽減されていた病状が一機に悪化、大慌てで治療が施されるも再び首飾りを身に付けたら症状は楽になったりと、アースラスタッフに『これって一体?』と言う顔で見られたり、曹操ガンダムから息子の『曹丕ガンダム』を己の代理でクロノの仮の相棒として出されたり、等と言うエピソードがあった。
曹操ガンダムが言うには『色々とクロノを見習え』だそうだ。……やっぱり曹操に見込まれているクロノだった。三璃紗の生まれだったら曹丕じゃなくて、クロノを養子に迎えて機駕を継がせたのに、と一瞬だけ思ったのは本人以外誰も知らない事だった。女心を学ぶ勉強として12人の妹と戯れる恋愛ゲームを朝までやってる奴に国は任せたくないだろう……。某白いサザビーの陰謀だろうが。
さて、新たに何枚かのカードに眠っていたガンダム達が目覚めたある日の事、
「いや、離して!」
「ちょっと、離しなさいよ!」
「うるせぇ、このガキ共! さっさと乗りやがれ!」
少し距離があるが、目の前で誘拐事件が発生している。誘拐されようとしているのはアリサ・バニングスと月村すずかの二人。
この法治国家の日本の同じ街で二度も同じ人間が誘拐されようとしているのだ。……流石のガンダム達も唖然としてしまう。
『……此処は、日本だよな?』
「日本……だよね」
號斗丸の呟きに司が答える。現代日本での生活経験のある號斗丸だけに、目の前の状況に呆然としてしまうのも無理は無い。何しろ、戦乱の時代を戦い抜いてきた武者ガンダム達の仲で號斗丸以外の全員が武者魂を失う程の平和な時代なのだ。
そんな状況で二度も誘拐事件が起こってしまったのだから、呆然としてしまうのも無理は無いだろう。
他の世界出身のガンダム達でさえ平和な世には一種の憧れさえも覚えるほどだった……。
彼らが呆然としている間にも車に乗せられて連れて行かれる二人。
『っ!? 何時まで呆けている、連れて行かれたぞ!』
「『あっ!?』」
ゼロの叱責によって正気に戻る司と號斗丸。
「……どうしよう……」
流石に見過ごすわけには行かないが、助けに行くという選択肢を取るには一つだけ大きな問題がある。……『月村すずか』の存在だ。
司にとって何気に関わりたくない相手としての順位はなのはに続く第三位の彼女だ。……別に彼女自体に何か思う所がある訳ではないが、彼女と関わりたくない最大の理由は係わり合いになりたくない相手ランキングの同道の一位『高町 恭也』の存在だったりする。
「警察に電話して後は任せたほうが良いかな……?」
『いや、通報するべきだが万が一の場合があるだろう』
『気持ちは分からないでもないがな』
號斗丸とゼロも司の判断の意味を理解した。……いや、理解してしまったと言う所だろう。
『だが、此処で見捨てたら最低だぞ! 助けられるだけの力が有るのに、見捨てるというのならば尚更だ!』
「……でも、あの人に会う……なんてのだけは避けたいんだけど……。仕方ない、アルガス騎士団に……」
『それならば我々に任せてもらおう!』
新たに響くのは新しく目覚めたガンダム達の声。
「分かった。コール!」
彼の魔力によって現れるのは新たに目覚めた武者ガンダム達。
『外道共め、俺の大砲で吹飛ばしてくれる!』
爆火隊を率いる歴代大将軍の大目牙砲をモデルとして主砲を持った鉄機武者『爆炎頑駄無』
『一度は汚してしまったこの誇り、汚名を晴らす事もできぬ部下達の為にも晴らさせて貰う!』
袂を分かってしまった弟子に討たれた鉄剣隊を率いていた鉄機武者『貴龍剛頑駄無』
『オレ達鉄機武者の誇り誓って、与えられたこの機会を無駄にするな』
武者紅零斗丸のライバルにして親友の鉄機武者、伝説の三本の刀のうちの一振り『鉄斬刀』を持った鉄機武者『鉄機武者
『その通りだ。汚してしまった誇り、此処に居ない者達の分まで我等の手で取り戻すぞ! 何より、か弱い少女を攫う外道を許しては置けん!』
鉄機武者達を鼓舞するは彼等の将たる『鉄機将
『うむ』
彼等の言葉に頷くのは最も新しい鉄機武者『鉄機武者 斎胡』
「オレも忘れるなよ」
そして、號斗丸の親友たる鋼丸。
「同じ鉄機武者として私達に力を貸していただける事、心から感謝します。鋼丸殿、斎胡殿」
そう言って最初の鉄機武者である鋼丸と最新の鉄機武者の斎胡へと頭を下げる飛閃。
「気にするな、先輩方。そんなことより、今は彼女達を助ける事が先決だ」
斎胡の言葉に頷きあう鉄機武者達。
「彼女達が乗せられた車はオレの獣鉄の鎧が追っている!」
「そうか。それでは……行くぞ、者共! 出陣だ!」
『オー!!!』
歓声と共に出陣していく鉄機武者達だった。随時、真星勢多へと情報を送る獣鉄の鎧によって相手の位置は掴んでいる。そんな車を空が飛べる者は空を飛べないものを背に載せて直線ルートで追って行く。
「ねぇ……」
『なんだ?』
「犯人達……ぼく達が行くまで生きてるかな?」
やる気満々の鉄機武者達を見てそう思う司だった。
数分後、車はある建物の前に止まった。其処が誘拐した二人を閉じ込めておく場所なのだろう。
薄暗い建物の中、アリサとすずかの二人は縛られて座らされていた。すずかは泣きそうになり、アリサも強がっているが内心では怖がっていた。
「おい、ボスはまだ来ないのか?」
「もう少しだろ? どうせガキ共は逃げられないんだ」
「それにしても、月村のガキだけだったがバニングスのガキも一緒だなんて、ついてるな」
誘拐犯達の会話が続いている。彼女達は知らない事だが、全員が拳銃を隠し持っている。その事から考えて計画的に彼女達の誘拐を行なったのだろう。
縛られているので二人とも携帯電話は取り出せず、助けは呼べない。
「おい、ボスが来た……なんだありゃゃゃゃゃゃゃゃゃあ!?」
「何を騒いでる……うわぁぁぁぁぁぁあ!?」
誘拐犯達の絶叫があがる中、二人も其方へと視線を向けて言葉を失う。……窓の外から何かか覗いていた。
金剛鋼丸形態の鋼丸だ。誘拐犯と人質が唖然としている中で鋼丸は天上を外す。……力技で。
「な、ななななな……なんだあれは!?」
彼等のボスとやらも混乱の局地だ。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
そんな中に真っ先に切り込むは鉄剣隊の貴龍剛。峰打ちではあるが人間を超えた力で振るわれる刀は容易く骨を粉砕する。
「ぎゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃあ!!!」
「安心しろ、命までは取らん。だが、その痛みと裁きを持って罪を償うが良い!!!」
刀を突きつけながら告げる貴龍剛。それに合わせる様に真星勢多、飛閃、爆炎の三人の鉄機武者が天井を屋上毎外された……屋上へと変えられた部屋に降り立つ。
「な、なんだお前達は!?」
明らかに人ではない鎧武者の様な姿……と言うよりも外から覗き込んでいるのは巨大ロボット。そんな中、外から破壊音が聞こえて見てみると犯人達が誘拐に使った車や、ボスと呼ばれた男が乗ってきたであろう車を、斎胡が金棒を叩きつけてスクラップに変えていた。……ボスと呼ばれた男の車はかなり高級そうだが、残骸と化した姿にそんな面影は残っていない。
「お前達の様な外道に名乗る名は無い!」
「ふざけるな! 殺せ!!!」
真星勢多の言葉にボスと呼ばれた男を除いて一番上位者に当たるであろう男……不幸にも最初に貴龍剛に腕の骨を砕かれた男が部下であろう男たちに命令する。
それに従って銃を取り出して撃つが……相手は鉄機武者。そんな物が効く訳が無い。鋼鉄の体に弾かれるだけで終る。
「な、なんで倒れねぇんだ!!!」
「全員、抜刀!」
飛閃の命令に従い鉄機武者達が刀を抜く。当然峰打ちだが……
「成敗!」
弾丸を意に介さずに向かって来る鉄機武者達の姿に軽く恐怖を覚える男達だが、逃亡できないようにしっかりと叩きのめされていく。中には何とか外に逃げた物も居たが斎胡と鋼丸に捕獲され、元の階に強制的に戻される始末。
「やれやれ……流石に
その大型武器の都合上鎮圧への参加が難しい真星勢多は人質になっている二人の少女に流れ弾が当たらない様に護衛に廻っている。盾にされる危険も有る為に誰か一人はその役割に廻る必要が有る。
流石にそんな武器を持っている相手に近付きたくもないだろう。
「な、何故だ? 何故お前達は……」
あまりの光景に腰を抜かしているボスと呼ばれていた男がやっとの事で口を開く。既に手下の鎮圧は終っているために全員の視線が其方へと向く。
「お、お前達が助けようとしているのは化け物だぞ!」
絶叫に近い叫びで真星勢多が縛られている縄を引き千切ろうとしている二人の少女の片割れ……すずかを指差して叫ぶ。
「な!? 言うに事欠いて、すずかを化け物って……」
「……何を言ってるんだお前は?」
「戯言に付き合っている暇は無い」
憤慨するアリサ。一方で男の叫びを戯言と切り捨てて飛閃が男へと向かって刀を振り上げる。頭は避けた上での峰打ち、手加減すれば骨折程度で済むだろう。無益な殺生は避けるべきだと考えて大怪我だけで済ませている。
「ま、待てウソじゃない! そ、其処に居る月村は……」
だが、そんなアリサや鉄機武者達と違ってすずかは何かに脅えるように震えている。その男は自分の秘密を知っている。
「其処に居るのは、夜の一族だ! 吸血鬼の化け物なんだ! 人の血を吸う化け物なんだぞ!」
『だから? なんでそれが誘拐を見逃す理由になるんだ?』
男の絶叫に答えるのは號斗丸。鉄機武者達が鎮圧している間に到着したのだ。
「號斗丸殿の言う通りだ。彼女が吸血鬼であったとしても、誘拐などと言うマネをしたお前を見逃す道理は無いな」
「ば、化け物なんだぞ!」
「黙れ!」
「ガ……ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァア!!!」
腕を襲う激痛にのた打ち回る男。手加減の殆どを忘れた一撃が打ち込まれた骨は骨折……と言うよりも粉砕されている。
「……やれやれ、念の為に急いできたが、オレの力は必要なかったようだな」
「ええ。號斗丸殿の手を煩わせるほどの事はありませんでした」
『すずか!』
アリサの声が響く。其方へと視線を向けると既に真星勢多によって開放されたアリサが、同じく開放されながら自分の体を抱きしめてブルブルと震えているすずかの名前を叫んで彼女に駆け寄っている。
己の秘密が他人の手で暴露された事、それは彼女にとって重過ぎることなのだろう。特に友人にそれを知られたと言う事実は……。
『えっと、ぼく達が出来る事は無いと思うから……この人達を下に持って行って、後は警察に任せよう』
(それが良さそうだな)
何気に鉄機武者軍団の出陣時に警察には通報済み。車を態々破壊したのも逃走手段を奪いつつ、警察への狼煙代わりだ。
月村すずかにとって號斗丸は見ず知らずの他人。……と言うよりも人間と認識する事さえ難しいだろう。司と言う少年は単なる友達を避けている同級生程度の関係だ。……寧ろ、これ以上関わらない方が彼女にとっても良いだろうと言う判断だ。
四肢の骨を折られている犯人達を確保し、震えているすずかと彼女と話しているアリサを残して外へと飛び降りる。その後に彼等の服を利用して即席の縄を作って電柱に縛りつけ、頭には達筆な字で『この者達誘拐犯』と書いた紙を張っておく。
だが、司の判断は甘かったという他無い。寧ろ鉄機武者達に任せておけば良かったと思うのは、それから僅か数秒後の事だった。