魔法少女リリカルなのは -レジェンド・オブ・BraveBattleHEROs- 作:龍牙
「死ね、衛府弓銃壱ィィィィィィィィィィィイ!!!」
硬質化される事で
「くっ!」
號斗丸は二刀で受け流しながら
既に
二個のジュエルシードの魔力は伊達ではないのだろう、それを取り込んだ
「逃がすか!」
巨大な球体と化した体の中央の目から青白い炎の竜が打ち出される。それに続く形で無数の鬼火が號斗丸へと向かう。
號斗丸は己へと迫る鬼火を時に二刀を操り切り払いながら、それを避けていく。だが、直線的にしか飛ばない鬼火は簡単に避けられるが、放たれた炎の竜は意思を持っているかの様に避けたとしても號斗丸へと襲い掛かる。
(くっ! 父上が戦った時よりも強くなっていると言うわけか!?)
流石に號斗丸が直接戦った相手は出て来ていないので比較対象は無いが、少なくともジュエルシードの力を自らに取り込む形で己の力を強化している事は間違いない。
“既に若い日の父を超えている”等と自惚れては居ないが、
不定形の炎が形を持った竜を相手に刀による斬撃は効かないだろう。避けるしかないのだが、避けた所で炎の竜は正確に號斗丸を追いかける。
(なら……)
床を蹴って一直線に
「させるか!」
球体状の体の中に二つある九尾犬の上半身が隠れ巨大な球体へと変わる。同時に無数の尾が体を覆いつくし硬質化するとそのまま號斗丸へと突進し来る。
「くっ!?」
號斗丸は素早くそれを避けるが先程まで號斗丸の居た床を削り取りながら、振り向き様に
「ど、どうしよう」
號斗丸と天孤九尾犬の戦いを何も出来ずに見ていることだけしか出来ないなのはは無力感を感じていた。先程の巨樹の被害も、九尾犬の事も、自分がもっと早くジュエルシードの存在に気付いていれば何とかできたかもしれない。
「残念だけど、ぼく達に出来ることは無いよ」
こうして見ているだけでも號斗丸の強さには自分達では及ばない事がよく分かる。號斗丸の強さは、あの戦いの中に自分達が下手に飛び込んでも邪魔にしかならないほどの実力である事がよく分かる。
「ぼく達じゃ邪魔にしかならない」
「で、でも……」
なのはは悔しげにレイジングハートを握り締める。
「どうした、弓銃壱」
「くっ」
鬼火の直撃を受けながらもそれによって巻き起こされた爆煙の中を潜り抜け、
「その程度か!?」
一斉に號斗丸を串刺しにしようと
「矢張り、お前の宿主に掛けられた“呪い”はお前の枷になっている様だな」
「呪い……だと? まさか、司が」
「死ねぇ!!!」
言動から考えると
(ゼロ、オレの想像が正しいなら)
『彼のトラウマは精神的な傷だけじゃない、そう言う事か?』
そもそも、話を聞く限り司の直接的なトラウマの原因はなのはでは無い筈だ。それなのに、どちらかと言えば直接的な原因でない筈のなのはに対して怯えていると言うのは疑問だった。単に切欠となったからだと思っていたが……。
(オレの考えが正しければ、司のトラウマは奴等がもう一つの原因になっている筈だ)
『呪い……実体を持てず強い力を使えなくても、精神に影響を与える程度は可能と言う事か』
少なくとも、闇の戦士……その上位に位置する闇の化身達になら、この世界に於いてガンダム達が力を発揮する為に自分達の力を使う事の出来る“特別な人間”の存在が必要である事は知っていたはずだ。考えてみれば、何も手を打たないと考える方が可笑しい、闇の化身達はその時代のガンダム達に既に一度、場合によっては二度も敗北しているモノばかりなのだ。
この世界の中心人物と言うべき少女の近くに居た司と言う特異点の存在に気付いたのは偶然か必然かは、今は関係ない。だが……本来ならば時間は掛かっても癒えたであろう
(全てはオレ達の責任か)
『……そうなるな……』
もっと早く自分達の中の誰かが司と出会えていれば、そう悔やまずには居られない。
「トドメだ、死ね!!!」
「っ!? 爆熱の陣!」
一瞬、號斗丸とゼロの意識が思考へと傾いていた隙を突いて
「熱火! 爆輪斬!!!」
必殺技である熱火爆輪斬で対抗しようとするが、
「なっ!?」
本来の半分程度の力しかないとは言え、正面から直撃した必殺技が効かなかった事は號斗丸に同様を与える。それによって出来た隙は、
「ガハッ!」
號斗丸にとって致命的な隙となってしまった。直撃した巨大な槍となった
「司君!」
なのはの叫び声が響くが落下していく號斗丸にはその言葉は届かなかった。
「くっ!?」
幸いにも吹き飛ばされた事や炎水の玉が守ってくれた事、熱火爆輪斬の直撃は思ったよりも號斗丸へとダメージを軽減してくれた様子だ。とっさにビルの壁に刀を突き刺し落下の速度を軽減・減速させる。
『思った以上の力だったな』
「ああ。せめて司の意識が有れば……」
ゼロの言葉に號斗丸はそう返す。少年である司の体を借りている故に全力も出せず、タダでさえ制限されている所に司のトラウマが枷となっているのは、余計に力を制限されていると言う事だ。
上に跳ぶのは無理と判断すると號斗丸は刀をビルの壁から抜き、そのまま地面へと着地する。
『『(司!)』』
そして、號斗丸とゼロは司の意識へと言葉を告げるが、司からの返事は返ってこない。今までもなのはを前に二人の姿に変身していた時は時々有ったことで異常だとは思っていたが、
闇の化身達によって打たれた先手、ガンダム達の力に枷を与える事で優位に戦う事が出来る状況を整えられたと言う事だろう。
『……號斗丸……ゼロ……? 戦いは……?』
何度目かの呼び声にやっと司の意識が覚醒する。
『あの石……ジュエルシードを二つ取り込んだ九尾犬の能力はオレ達の予想以上だった』
『それに司……奴は気になる事を言っていた。よく聞くんだ……お前が彼女に対して持っているトラウマ……それが深くなっているのには“闇の化身”の呪いらしい』
『呪い?』
ゼロの言葉に思わず聞き返してしまう。號斗丸やゼロだけではなく、彼等よりも以前の時代や後の時代、他の世界で起こったガンダムの名を持つ英雄達と闇の化身に率いられた闇の軍勢との戦い、その戦いの中で敗れて行った闇の化身達による呪い。それこそが司のトラウマを根深くしていると言う訳だ。
ガンダム達に敗れて力の多くを失ったと言っても、その程度の呪いを掛ける程度ならば造作も無い事だろう。
『ああ、意識を無くす寸前に何か無かったか?』
『……分からない……』
號斗丸の言葉に否定する事しかできない。まあ、直接的な原因になった人物への評価に付いては未だに不動のままだが……。
「仕方ない、今は
號斗丸は壁を蹴りながら再び屋上へと上っていく。
「次はお前だ、小娘」
「ひっ!」
再び天孤九尾犬(アモンドック)の体から現れた二つの九尾犬(バウンドドック)の上半身に睨みつけられ、なのははレイジングハートを握ったまま震え上がる。
「なのは、早く逃げよう、こいつにはぼく達じゃ勝てない!」
「う、うん……だけど……」
恐怖心で足が震え上がって逃げられないのだろう。
「死……」
「させるか!!!」
屋上へと飛び上がってきた號斗丸が背後から
「生きていたか、弓銃壱ィィィィィィィィ!!!」
『……司……意識は有るか?』
『う、うん……』
やはりなのはの近くではトラウマによって動けなくなる。それでも何とか號斗丸の言葉通り
『……させない……これ以上あいつらの、思い通りには』
『もう一度頼む』
『この世界を守る為に』
『『オレ達に力を貸してくれ』』
號斗丸の体に新たに装着される金色の鎧、『天鎧王』より与えられた天帝の武具を装着する。そして、それだけではない。
「ありがとう……司。君の勇気に、オレも答える」
再び爆熱の陣の形に鎧を変形させるが、號斗丸のパワーアップはそれだけでない。
「闘志の激しき事炎の如く。心の澄み渡る事水の如く」
二本の愛刀を振りかざしながら重ねた瞬間、兜に新たな兜飾りが現れ、両肩の『爆熱』の文字が『鳳凰』へと変わる。
「これこそ、“炎水の境地”なりィ!!!」
「な、なんだそれは!?」
そして、二本の刀は一本の剣『石破天驚剣』へと融合する。
「『鳳炎! 水凰!』」
舞い踊るは赤と青、炎と水の力を宿し鳳凰。
「『斬!!!』」
「グギャャャャャャャャャャャヤヤヤ!!!」
號斗丸の天動奥義『鳳炎水凰斬』は
「くっ……」
剣は二刀に戻り、爆熱の陣から戻るだけではなく天帝の神器も消え、元の號斗丸の姿に戻る。万全の体制なら自由に放てた奥義を放つだけでも大きく力を奪われる。
「司君!」
「っ!? ジュエルシードは任せた」
「あっ、待って!」
そう言って予め回収していたジュエルシードを置いて號斗丸はその場から姿を消す。呪いとトラウマに耐えながら最後まで力を貸してくれた司にこれ以上負担をかけないためでもある。
「はぁ、はぁ……」
矢張りなのはの前に立つと恐怖心に耐えるのが辛い。……呪いで悪化したトラウマだとしても。
「やっぱり辛いな……」
実際、司にとってなのはと関わるのは“怖い”。呪いさえなければ単なる苦手意識で済んだのかもしれないが、その為に今までなのはには関わらずに過ごしていた。號斗丸達に力を貸す為に意識を保ち続けるだけでも辛い。
『今日は休んだ方が良いだろうな』
「そうする」
號斗丸の言葉に同意を示す。
『それにしても、早めに接触した方が良かったな』
『そうだな』
「うん」
ゼロの言葉に號斗丸と司もまた同意する。
『奴等が本格的に動いたらもっと酷い事になるかもしれない』
「……だろうね……」
『ああ。その為に奴等は……ジュエルシードを集めているんだろう』
マグマゴーレムや
「オレ達の世界を守る為にも、もっと強くならないと」
司は改めてそう決意する。
「うぅ……」
帰り道、司は倒れている少女と出会う。恐らく彼女の乗っていたと思われる車椅子が倒れている。恐らく巨樹の一件に巻き込まれたのだろう。
「えっと、大丈夫?」
「え?」
それがなのはやフェイトと同じく深く関わることとなる少女、司とその少女『八神はやて』との出会いだった。